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まずは飲むでしょ。

 キャンプ場に到着すると、予約を入れていた僕が受付で料金を払い、サイトへ移動する。一足遅れてサイトに車を回すと、さっきの受付のおばちゃんがYasや小山隊長に話し掛けた後、車の僕に向かって歩み寄ってきた。
「さっき間違えて料金計算したので、不足分払ってください。」

 こんなところでもめても面白くないと、思いっきり笑顔で不足金を支払う。きっと印象は良かったに違いないなどと思いながら、車を停めて降りるとYasが言う。
「さっきのおばちゃん、岡本さんのことおじさん、おじさんって言って捜してたよ。」
 なにおー。ばばあ、さっきの笑顔返してくれよな。
「ねえ、ねえ、まずはビール飲もうよ。」
「あなたはどうしてすぐ酒飲むことしか考えられないの?」
 SAYUKI&Kibunが夫婦漫才を始めるも、小山隊長が賛同したため、まずは祝杯から始めることにする。
「だって、クーラーボックスいっぱいで、ビールあふれちゃったんだもん、とりあえず胃に入れるでしょ。冷えているうちに。」
 まだまだ探検は始まったばかりだというのに、本当にこれで良いのか?
 などという危惧なんぞそっちのけで、乾杯。
 ビールは小山隊長供出の復刻ラガービール。明治・大正・昭和初期とおかあさんの生い立ちとともに味わう。
「いやだ、どの時代にも私は生まれていないわよ。」
 ほんのりと酔ったところで、テント設営を始める。いつもだと面倒くさくてだらだらとやる設営も、大人数でやると早いものだ。舞台が整ったので、さっそく昼食にする。
「おいおい、さっきビール飲んだばかりでは…」
 そうお考えの方もいらっしゃるでしょうが、さっきはビールだけで、固形物は口にしていなかったのだ。昼食はSAYUKIママの手作りのちまき。
 笹の葉でくるまり紐のついたちまきは見るもかわいく、肩に背負うとCuteなアクセサリーのよう。
「Kunny、これ背負って大学通学しなきゃ。」
「うん、おしゃれかもしれない。」
 食後は早速夕食の仕込み。魔法鍋を使った岡本特製ポトフ作りに取り掛かるも、岡本がしたのは野菜を切ることのみ。気づくとおかあさんとSAYUKIがかいがいしく働いている。岡本特製ポトフは岡本製作総指揮(口だけ)ポトフと化したのだった。
 


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