水

終わらない楽しいとき


その1 釣りは日の出と日の入りが勝負

 誰も気付かなかったに違いない。深夜2時過ぎ、おどろおどろしく言えば草木も眠る丑三つ時。約1名、テントを抜け出し、夜の海へと姿を消したらしい。
「釣りは日の出と日の入りが勝負よ。」
 彼の口癖である。
 男の名は釣り部長・Kibun。
 なぜかいつも一人で出かける。横で寝ているハズのSAYUKIをも置いて。みんなの意向も聞かず。とはいえ、散々飲んだあと、夜中に起きて釣りに行く人など他にいるわけもないんだけど…。
 みんながKibunが釣りに行ったのを知るのは、朝起きて人数が足りないと気付いた時。
 夜中に一人で出歩いて、淋しくないのかなぁ…。


その2 起床

 なんだか騒がしくて目が覚めた。ぼくが寝ていたツェルトは、外見はモスラの幼虫。人一人が寝るためだけのスペースしかない変わりモノで、暗いうちは快適だけど、明るくなると目の前に天井があるため、閉塞感このうえない代物。隊員達はこれが珍しかったらしく、ぼくが寝ているうちからガサゴソ覗きにくるので、その物音で起きてしまったのだ。
 ツェルトから出ると雲ひとつない晴天が広がり、深夜〜早朝にかけての寒さ対策に着込んだ長Tやフリースが暑苦しい。
 どうやらぼくが一番寝ていたみたいで、みんな元気にはしゃいでいる。と思いきや、二日酔いがひどい小山隊長は再びテントへ。昨夜の激飲が相当残っているらしい。
「富士山が見えましたよ、展望台から。」
 Yasは早起きしてあちこち散策してきたらしく、情報を流してくれる。それにしても元気なこと。
 富士山か・・・。ずっと遠目に見て壮大な山かと思ってたけど、1ヶ月前に制覇してからはなんだか親近感が沸いてしょうがない。レベル的には北海道開拓百年記念塔と同レベル。テレビや雑誌で見かけると、「あそこね」といった感じ。遠くからだけど、挨拶しておくか。
 あとで判明したんだけど、ぼくが起きた時じつよはまだテントの中だったそうで。「起きてた」と主張しているけど。


その3 さあ、冒険だ!

 晴れた日は出かけよう何処か遠くへ〜
 富士山に挨拶をしに、さとし・jawaを引きつれてLet’s Go!
「さとしは富士山登山、逃げたんだもんね。」
「違うよ、子供会の行事があったんだもん。ホントは行くつもりだったんだよ。」
「俺も登るつもりだったんだけど・・・」
「jawaは黙ってろ。」
 富士山の見えそうな海岸ぺりの高見を目指していると、いつしか林の中へ。
「こんなに木が立ちこんでたら、景色なんて見えないよ」
 しかし、そこには大地を切り裂いたような地下空洞が・・・。息を呑む岡本。腰が引けるさとし。ビデオをまわすjawa。
「今、我々の前にはコンクリートで固められた謎の地下空洞が・・・。房総に突出した岬の林の中に、一体何が隠されているのか?これから我々はこの謎に迫るべく、暗闇の中へ足を踏み入れたいと思います。あっ、こうもりっ!」
「いない、いない。」
 そこは太平洋戦争中に海軍の作った要塞だそうで、当時はミサイルの発射台なんかもあったらしい。今はそんなもの取り外されており、観光用にコンクリートも吹き直しされていて、とっても安全。テポドンに狙われることもないだろう。
 気を取り直して展望台へ。
 絶景かな、青い空と青い海。見えるでしょ、富士山が。よーく見て見て。中央にほら、見えてきたでしょ、富士山が。
 1ヶ月前より小さくなった富士山に挨拶を終え、近くにあるという洞窟へ。長い長い階段を降りてそこに見えたのは、確かに洞窟。だからどうしたといわんばかりの洞窟。中には入れそうもない。そこで、「さとしでもわかる地質学講座」。さとしを小山隊長の立派な跡取とすべく、ぼくが地質の手ほどきをしたんだけど、きっと小山隊長は「おかもっちゃんじゃなく、Yasに教えてもらえ。」と言うに違いない。
 それより何より、帰りは登り階段が長過ぎて、上にたどり着く頃は産気づいた妊婦状態。1ヶ月前の勇姿は何処えやら。


その4 焼き物班見習、修行中。

 冒険から戻ると、みんなは朝ご飯の準備を始めていた。焼きおにぎり、ソーセージ、ハム、生ハムをはさんだフランスパン。どれもこれもお手軽な料理のわりに美味。優雅な朝のひとときです。
 そんな優雅な雰囲気の中、さとしは自分の目標を見つけたらしく、一生懸命励んでいたのだった。その目標とは、先ほど洞窟の前でぼくに教えてもらった地質学・・・ではなく、焼き物。焼き物班代表・ウリ坊の昨夜から見せる華麗な炭さばきに心ひかれたのだろうか、ウリ坊のそばでその動きを見つめてる。
「なに?やりたいのか?とりあえずじゃあ、これ焼いてみろ。」
 ウリ坊が渡したのはポップコーン。
「とりあえずこれで練習な。」
 さとし、さっそくガスストーブでポップコーンの入ったアルミを熱し始めるが、どうも身体が引けている。
「さとし、逃げるなよ。」
「もっとアルミを火に近づけなきゃ。」
 周囲は好き放題勝手にさとしに指示を出したりして、この上なくうっとうしかっただろう。見かねたKunnyがアシストをするが、ポップコーンは何度も火にかけたり離したりしたために、できはいまいち。
「ん、まだまだ修行が必要だなぁ。」
 こうしてさとしは焼き物班見習の任につくことになったのだ。


その5 釣り部長帰還

 夜中に一人、釣りに行ったまま姿を消していた釣り部長・Kibunが、朝食の匂いにつられて帰ってきた。両手いっぱいの釣り道具と、満面の笑み。SAYUKIがかけより、尋ねる。
「釣れた?」
「ボウズ。」
  眠い目をこすり起きてきた小山隊長が一言。
「釣り部長、いっつも成果があがらないね。」
 釣り部長、ちょっぴりすねる。
 昨夜の激闘のためか、隊員一同ちょっと疲れ気味。秋のわりに強い陽射しを浴びて、みんなだら〜。



その6 恋の駆け引き 

 みんなでだらだらと朝食の後片付けをしていた時のこと。Kunnyがにこやかに
「岡本さん、年末のドリのライブチケット、取れたんだよ。すごいでしょ。」
「いいなぁ。誰と行くの?」
「友達。」
「彼とじゃないの?」
「Mackyはダーリンとだけど、私は友達。」
「彼氏連れてけばいいじゃない。」
「彼氏いないもん。」
「バレンタインにチョコあげてる人とかいないの?」
「あっ、バレンタインは毎年あれ作ってくれとか言ってくるやつがいるんで、作ってあげるんだけど・・・」
「手作りで?」
「うん」
「それって彼氏じゃないの?」
「違うよ。来年もリクエストされてるけど、彼じゃないもん。」
「それって、Kunnyは彼じゃないって思ってるかもしれないけれど、相手の方は毎年リクエストに応えて手作りのチョコくれるんだもん、恋人同士って思ってるよ、きっと。」
「思ってないよ〜」
「思ってるって。だって、ぼくなら思っちゃうよ。」
 一同爆笑。
「おまえら、そこは笑う場所じゃないだろう。」
 なんでみんな聞いてないフリしてここぞとばかりに笑うかなぁ。確かにぼくは勘違いしやすいのかもしれないけれど。


その7 わたしを野球場へ連れてって

「さとし、ピッチャーの基本は左肩を早く開かないことなんだ。」
 空青く、陽射しが降り注ぐこんな日は、童心にかえって野球談義なのだ。
「わかんないよ、ちょっとやってみてよ。」
「いいか、まずはこう、重心を軸足にかけて、ためを作ってから体重移動をする。このとき胸を正面に向けないようにすれば、左肩の開きが遅れるんだよ。」
 岡本直人・実践野球教室を斜に見ながら、さとしため息。
「いっちゃんはそんな投げ方しないよ。」
「誰だ?いっちゃんって。」
「リトルリーグのエースやってるんだ。でも、フォームが全然違うよ。」
「あっ、あのいっちゃんね。おれ、ちゃんと教えてやったのに、教えを守ってないなぁ。」
「うそだよ。ホントはいっちゃんのこと知らないんでしょ?」
 当たり前だ。そんなやつ、知ってたまるか…と思いながらも、
「知ってるって。帰ったら聞いてみろよ。岡本さんに野球教わったんでしょって。」
「じゃぁ、ぼくと勝負してよ。ぼくに勝てたら、認めてあげるよ。」
 さとしは待ってましたとばかりに盛りだくさんの遊び道具からバット・グラブ・ボールを取り出すと、キャンパーが帰ったため開けたスペースへぼくを引っ張る。さとし、笑顔。
 ぼくにボールを渡し、バットを持ったさとしは自身たっぷりに
「本気で投げていいから。」
 なんとちょこざいな。振りかぶって第一球。ボコっ。
「いたいーっ!」
「わりい、わりい。」
 気を取り直して第二球、第三球・・・。さとし、のけぞりながらも、
「ねぇ、狙ってるでしょ?」
 決していじめではありません。ぼくのコントロールが極度に悪く・・・。
「よし、攻守交代。おれが打ってやる。」
 さとし、振りかぶって第一球・・・スカっ。
「打てないじゃない。」
 ぢぐじょーっ!
 でもまぁ、さとしもこんなもの。
「二人とも全然なってないですよ。」
 後ろで守るENOは呆れ顔。
 互いにまだまだ修行が必要なようで。


その8 撤収

「昨日の渋滞を考慮すると、帰り道ってめちゃくちゃ混むんじゃないかなぁ。」
 誰が言ったか覚えていないが、なかなか懸命なご意見。一同納得して、撤収開始。
 搬入同様、大八車に荷物を積んで、みんなでとぼとぼ運搬。
 それにしても、左下の写真って「夜逃げする若夫婦」って趣き。失意に肩を落すYasと、どこまでもついて行く決意を固めたKunnyの後姿。背中で演技しやがって。
 
 それに較べ、ウリ坊とさとしは終始にこやか。なんか好対照。
 帰り道のルートと昼食を食べる場所を決め、いざ出発というときに、jawaが一言。
「おれ、用事があるので昼食はPassします。」
 なんと、奴隷見習の分際で。
 帰りは車6台が連なって内房を北上。しかし、参加者10台に対し、車が6台。なんと贅沢なキャンプだろうか。
 都心へは一本道のはずなのに、先頭を走っていたjawa車が急に横道にそれた。しかも、車一台がやっと通れるような細い道に・・・。どういうこと?
 一体、その道の先には何があるというのか?
 jawaの用事とはなんなにか?
 奴隷見習の分際で・・・


その9 魅惑の世界へ、ようこそ

 jawaが抜けたあとも、一般国道では5台が連なり、館山道木更津南ICへ。次々と発券所を抜け、館山道へ出たときに異変が。
 左ハンドル車のため、出足が遅れたウリ坊が、意地になって追い越し車線を駈け抜ける。それに呼応するがごとく、各車一斉にアクセルを踏み込み、一気に加速。走行車線から追い越し車線に車線変更し、またたく間に消えてしまう。軽自動車Rのぼくは、あっという間に取り残される。あたかもチキチキマシン猛レースの岩石オープンにように・・・。そして、一人寂しく昼食予定の市原SAへ。
「おまえら、たいがいにしろよなぁ。」
 ふて腐れるぼく。
「いやぁ、悪いと思ったんだけど、ウリ坊が突っかけてきたから・・・」
「えっ、ぼくのせい?だって、発券所のところでみんな先に言っちゃうから・・・」
 よいこのみなさん、真似しないように。
 とりあえずトイレへ向かったのだが、Kibunの歩き方がちょっと変。左足を引きずり気味。
「足、怪我でもしたの?」
「いや、怪我した覚えはないんだけど、左足の親指が痛いんだよね。」
「それって、もしかして・・・」
 手を洗い終えた小山隊長がにこやかに近づいてきて、Kibunの肩をポンっ。
「ツーファーズ・メンバー入り、おめでとう!」


おまけ 打倒!Doragon Ash
     両手を顔の前で揺らしながら読んでください。

〜ビルの谷間のトホホ顔  くやしい探検隊〜♪

 心地良い場所を、目指す逃走劇。
 楽しい何か、見つけ総攻撃。
 老化予防兼ね、五感を刺激。
 目に映る全て、秀樹・感激。

 ヒゲ面そろい、見せる名コンビ。
 怠ることない、万端の準備。
 炭を使っても、出さない不審火。
 ENOの醸し出す、世界は淫靡。

 隊長の曰く、「飲むべか」は指令。
 ウリ坊が嘆く、いまだ身は奴隷。
 隊員は思う、我こそが端麗。
 シルバーズ隠す、自分の年齢。

 乾杯始まる、楽しみはこれから。
 胸のうち高まる、素敵な夜だから。
 友との絆は、大切なお宝。
 宴もたけなわ、脳ミソ空。 

〜宵越し銭にトホホ顔 くやしい探検隊〜♪

 高速PA、売ってるかき氷。
 いつの時でも、ボケは思い通り。
 誰かれともなく、岡本あおり、
 食べるは道理、それはセオリー。

 遊びの衝動、かられるは簡単。
 飛び出す言動、時代の最先端?
 何やらめぐらす、あやしい魂胆。
 マイケル・ダグラス、われらくや探。

〜レッツ・キッスほほ寄せて 面と向かえばグー、チョキ、パー
 背が低いと女子の列 オクラホマ・ミキサーよ 〜♪

〜会えぬ運命(さだめ)にトホホ顔 くやしい探検隊〜♪

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