くやしい探検隊・年忘れ酒飲み大会'99

 

3軒目 行 徳

 行徳駅前にたたずむ4人の酔っ払い。家路を急ぐ人々が避けて通っていく。
「ぜんぜん酔っ払ってないよね、今日は。」
 酔っ払いに限ってこういう台詞を吐いてしまう。道往く人は誰一人ぼくらの声に耳を傾けない。当然か。
「なんかスカした兄ちゃんが来たぜ。」
 その言葉の先に、おしゃれな自転車に乗ったYas登場。
「酔っ払いじゃないですか。もうアルコールはいらないでしょ。」
 明らかに警戒したYasの口ぶり。それもそのはず、この時間に行徳にいるってことは、もうみんな自宅へ帰る気がないということ。まぁ、ぼくとやましたはもともとYasの家に泊まる予定だったのだけど、さらに2人もYasの家に酔っ払いが増えるとなると、Yasも警戒するわな。
「いや、俺は帰りますからね。」
 ENOはかたくなに帰宅を主張するものの、タクシーに乗る気配もなく、ぼくらの後についてくる。どうやら自宅に電話したらしいのだけど、たちどころに切られたらしい。
 結局5人は東西線高架下のカラオケBOXへ。くや探はあまりカラオケに行かない集団である。みんな話し好きで盛り上がってしまい、カラオケに行く時間がなくなることと、ウリ坊がカラオケ嫌いというのが主たる原因。でも、隊員はカラオケ好きが揃っているのだ。上手い・下手は別として。
 BOXに入ると各自アルコールを注文し、戦闘態勢へ。まずはぼくが前日のサザンLiveの余韻を引きずって「女呼んでブギ」。続いてやました・ENO・Yas・小山隊長と、歌い込んでいく。このBOXの採点機、1000点満点なんだけど、辛口採点なの。一通り歌い終わったところで最高点はやましたの670点。いや、決してぼくらのレベルが低いわけでなく、BOX全体の最高点も800点なんだから。
 誰もが悔しさを胸に秘めながらも、点数のことは口にせずに歌っていたんだけれど、均衡が破られた。小山隊長がおハコのひとつ、「ミスブランニューデイ」(SAS)で710点を獲得したのだ。すっかりご機嫌の小山隊長。
「人として生きていくためには、700点台を獲得しなきゃだめだよね。」
 隊員一同、歯を食いしばる。なにせみんな心の中では「自分が一番上手い」と思っているのだから。
 すると、Yasが「ただぼくが変わった」(福山雅治)で784点をGet!とたんに余裕綽々になるYas。特に爽やか路線で高得点をマークしたのがうれしいみたい。
「なっ、Yas。人として700点は必要だよね。」
「当然ですかね。」
 かなりBlue入るぼく・ENO・やました。「こいつらにだけは負けたくない・・・」と心で叫ぶが、採点機には通じない。
 起死回生の1曲とばかりにぼくが洋モノ「With or Without You」(U2)で勝負。結果は820点でBOX全体でも最高点。思わずガッツポーズ。
「やっぱりおれ、World Wideな視野で生きてるからさ。」
「そうだよな、おかもっちゃん。やっぱり人としては700点はとらないとだめだよな。」
 頭を抱えるENO、あせるやました。
「こんな機械じゃ俺のSoulが判る訳ないんだよな。」
 ENOがぼやく。小山隊長は悠然と構えてやましたのミスチルを聴き流す。

 二度の時間延長Callがなされても、状況は変わらない。
「だめだよ、2人とも。やっぱり700点台じゃないと。」
 小山隊長の檄に応えるべく、ENOが背水の陣で「ひまわり」(山田 某 )を熱唱。得点はグングン伸びて809点。
「Wooooooooooooooooooooooooooooooooh!」
 雄叫びの如くあがる歓喜の声。
「やましたくん、やっぱり700点以上じゃないと人としてどうかな。」
 やました、あたふた。熱唱に次ぐ熱唱も、700点はおろか一番最初にマークした670点を超えることができない。
 Ring Ring Ring!
「あっ、30分延長。・・・えっ?できない?・・・店自体が閉店?」
 がっくりと肩を落とすやましたに、小山隊長が一言。
「人間はまず700点から始まるんだよなぁ。」
 そして一同はホテルYasへと向かうのであった。

 

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