「海の上のピアニスト」を観る
('99.12.28)

 涙目になるのを覚悟で、「海の上のピアニスト」を観た。場所は有楽町ピカデリー1。平日だから空いているかと思ったんだけど、涙目予備軍が大挙して殺到。28日は平日ではないね。とはいえ、客の70%はおばさまだから、一般peopleにとってはまだまだ平日なのかもしれない。
 船の上で生まれ、船の上で育った1900の物語。凡人であるぼくには想像もつかない設定なんだけど、船の上にいることによる世間への疎さを楽しい?エピソードに仕立てたりするあたり、少年期の1900に無理に悲哀感を与える事なく、先のstoryへ導いてくれているので、ぼくもすんなり乗船することができた。
 天才であるがゆえ、望みもしないのに世間が彼を陸に降ろそうとする。思春期?の葛藤も彼を駆り立てる。その中での彼の世界感は、ぼくを「へっ?」と思わせる。ジャズ界の大御所との勝負でさえも満たせなかった彼の世界感。ビル建ち並ぶ摩天楼でさえも開けることのできなかった世界感。乗客達が口々に叫んだ希望の国「America!」に見いだせなかったもの。
 ぼくが大人になりかけてたころ、感銘を受けた「破戒」や「田舎教師」にある主人公達の抱いた焦燥感とは正反対に思える感情がそこにはあり、それを理解できるぼくが今ここにいる。決して1900に自分を重ねている訳ではなく、そうありたいと願っている訳でもないのだろうけど。
 それだけに彼との別れ=下船はぼくにとってもつらいものだった。彼が唯一心ひかれた女性を想い弾いたあの曲は、いつまでも胸に残る旋律でした。
 ラストはVocal入りではないほうがよかったなぁ。
 とにかく、久々に恥ずかしいくらい泣けた映画でした。  

エスニック
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