「ゴースト・ドッグ」を観る
('99.12.30)




 どうしてジム・ジャームッシュ監督作品は全国ロードショーされないのだろうか。
 抑えた作風のせいか、ハリウッドスターが出演しないせいか。
 ハリウッド大作とは明らかに一線を画しているが、いい味の映画を作っているのに。
 残念なことに新潟での上映もないので、札幌で鑑賞することに。
 札幌の映画事情もぼくがいた10年前からは大きく変わり、昔通った単館はつぶれ、新しい映画館ができたりと、移り変わりが激しいようで。
 日本贔屓のジャームッシュが今では日本ででも見ることのできない武士道を現代に持ち込んでいるのだけど、弧高の殺し屋と武士道の組み合わせがGood。キャスティングも日系とかいかにもかぶれたアメリカ人を起用するのではなく、優しい目のどっしりした黒人俳優・フォレスト・ウィテカーを使うなんて、Cool。それも、脚本執筆時から決めてたなんて。
  「葉隠」の引用もストーリー展開にマッチしていて、武士道を知らない国の人にも解りやすくなっていたし。フォレストの居合をかたどった流れるようなガンさばきや、鳩の紋章など、細かいところの気の使いかたもジャームッシュらしさ満載で、おしゃれ。友人レイモンとの会話なんて、心のつながりの深さがほのぼのと見えていて、御洒落で愉快。 主人公と敵対するマフィアが一様に典型的アメリカン・アニメが好きで、みな高齢で・・・。
 登場するもの全てが今となっては希少価値的で、それらがどう散っていくのか、散り際の美学ってなにか。
 あくまで抑えた映像や手法で、熱くもなく、冷めてもなく、語りかけてくる作品。 ジャームッシュがハリウッドで巨額の製作費を手にしていたら、銃撃線は ド派手になっていたのかななどと思いながらも、そんなことになったら彼らしさがなくなるだろうから止めてほしいと思ったり。
 全国ロードショーの似合わない監督なのかもしれない。
 もしアメリカで武士道ブームでも起こったら、日本にも逆輸入されるのかなぁ。

エスニック
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