2004.8.22-24
奥利根湖
ひとり漕ぎ






今年もひとりで漕いできました。
自己満足の報告です




<初日>
 22日、ちょっと遅めの出発。今回は2泊3日のゆとりの行程で、奥利根湖散策に行ってきたのだ。初日は現地入りしてテント設営のみの予定で、フネを漕ぐのは翌朝から。昨年は出張などで訪れることができなかったので、今回はとにかくゆったりと楽しめるスケジュールを立てたのだ。
 そのおかげというわけではないが、往きの車内は高校野球決勝の中継を聴きながら、大盛り上がり・・・ひとりで。なんたって、優勝旗が初めて北海道にやってくるっていうんだもん、道産子としては盛り上がるでしょ。一進一退の白熱のゲームは奥利根湖に到着しても続き、湖畔にフネを降ろしているときにようやくゲームセット。いやいや、うれしかったっす。駒大苫小牧になんら関係はないのだけれど、道産子としてうれしかったっす。
 勝利インタビューをガッツポーズで聴いていると、目の前をもぞもぞと動く集団が・・・。なんだ?と思って目を凝らすと、サルが集団で移動しているではないか。確かに新潟と群馬の県境には猿ヶ京という地名もあり、サルがいっぱい生息しているけど、奥利根湖周辺で見るのはこれが初めて。食料を求めて集団移動してきたのか?そのうちけたたましい泣き声を上げ、キツネを駆逐し始める。奥利根湖周辺でキツネを見るのも今回が初めて。動物愛好家ではないが、思わずカメラを向けてみたのだ。
 さすがに近寄って写すわけにもいかないし、バズーカーのような望遠レンズを装備したカメラでもないため、被写体が小さくしか写っていないのはご容赦願います。まだまだ動物写真家を名乗るのは難しいようで。
 今回の設営は右写真のような感じ。一人なのでタープは張らず(持ってもいないし)、雨天時などはワゴンRのハッチバックドアを跳ね上げて対応。このドアが大きいことが、初代ワゴンRの秀逸な点なんだけど、最近のは・・・。
 夕食はもっぱら七輪による焼き物で、締めにレトルトの汁物をカセットボンベで温めて食す。とても素っ気ないが、それに我が家の冷凍庫から持参したズブロッカがあれば、もうご機嫌。ご機嫌の度合いが過ぎて、20:00にはすっかり酩酊状態。周囲のキャンプ客の盛り上がりをよそに就寝。
 夜中、激しくテントを打つ雨音で目を覚ますも、快適な設営環境とズブロッカの酔いにやられて、すぐ眠れる。4:00過ぎにトイレに行きたくなり、再び目を覚ます。雨が小降りになったのを確認し、トイレへ。外はまだ暗いので、再びテントにもぐり込み就寝。

<2日目>
 6:00、蚊の飛ぶ音と足のかゆみで目を覚ます。どうやらトイレに行った際に蚊が多数テント内に乱入したらしい。しばしテント内で格闘するも、きりがないので外にでる。雨は小降り。カセットボンベでお湯を沸かし、モーニングティーと朝食用カップヌードルを作り、食べる。
 雨の中でフネを漕ぐのは体温を奪われる疲労と、雨により手がすべり効率よく漕げないことによる疲労がWできてしまうため、本来は避けたいところ。しかし、せっかくここまできて雨の中を立ちすくんで終わりというのは悲しすぎる。ここは勝負とばかりに8:00、小雨の中を1回目のエントリー。管理人のおじさんが心配してくれたのと雲行きが怪しかったので、雨が強くなったらすぐ引き返せるところを条件に、巻頭の図にある@の辺りを散策する。
 それにしても水位が低い。今年の梅雨はまともな雨が降らなかったとはいえ、湖岸には露頭が広い範囲で見られるのだ。関東の水瓶ゆえに溜めた水は供給しなければならないとはいえ、少し痛々しいような感覚さえ覚える。
 どれだけ水位が低かったかは下の写真を見てちょうだい。
左:1999年撮影 中:2001年撮影 右:2002年撮影
 ちょっと字が見づらいけど、赤字&⇒で示したのがこれまでの水位。激減でしょ。おかげでこれまで上陸できた浜がはるか上空に位置してしまい、上陸ポイントも激減。それってトイレが困るんだよね・・・。
 などと思いながら漂っていたら、大粒の雨がボタッ!雨脚は徐々に強くなり、グラサンに水滴が付いて視界が非常に悪くなるではないか。管理人のおじさんをやきもきさせるわけにも行かないので、ひとまず引き返すことに。身体はすっかりずぶ濡れ状態。
「風邪ひかないようにしろよ」
と管理人のおじさんにあたたかい声をもらい、テントのところまで引き返す。10:00。
 テントの中で着替えをしていたら眠くなってきたので、一眠り。なぜだろうか、やたらと眠れる今回のキャンプ。テントを叩く雨の音が心地よいのかな?
 14:00、雨が上がったので再びエントリー。
「山の天気は変わりやすいから、気を付けてな」
との管理人のおじさんの声をしかと受け止め、上図Aの奈良沢方向へ。
 水位が低いと奥利根湖はタコラ・パラダイスとなる。ダム建設のために伐採された樹木の根っこなのだが、長年の水位の上下動により、表土や軟弱層が洗い出され、根の全貌が明らかになったものである。この根が不思議と流されないで残っているのだ。しかし、今年の水位低下は過去に例を見ないものだったせいか、タコラがずり落ちた擦痕が地層についているくらいなので。
 それにしてもタコラはかわいいのだ。ひとつひとつに表情があり、根の広げ方にも特徴がある。もちろん彼らにとっては生きるため、水と養分を求めるために広げた根なのだが、急斜面ではすべり落ちぬよう耐え凌いでいる風に見えて・・・。それでいて緩斜面では爪先立ったりもしたりする。
 2001年に見つけ、2002年の年賀状にもなった水際のタコラトリオはあんなに高みでじゃれていたのだ。

押すな、押すな!

抜き足・差し足・・・

2001年に見つけたタコラトリオ(鮮明画像はこちら

写真中の○印がタコラトリオ。
下にもいっぱいいたのね。
 漕ぎ進めていくとまたもや異変。奈良沢のはるか手前、図中の/部で水が途切れているではないか。奈良沢の西に位置するコツナギ沢にも漕ぎ進めることができない。こんなこと初めて。

沢よ、何処へ?
 雲行きがまたまた怪しくなってきたので、引き返すことに。えっちらおっちら漕いで停泊所にたどり着くと、ポツらポツらと雨が落ちてくる。17:00。テントに戻ってくる頃には本格的な雨となる。ワゴンRのハッチバックを上げ、ゆったりと雨宿り。確かな確証はないのだが、どうやら奥利根湖の天気は見切ったかな。そんな自身さえ持ってしまいそうな的中振りだったのだ。
 七輪に火を入れる。こんなときの七輪は食事のためだけでなく、暖をとるのにも使える優れもの。陽が落ちたあとに灯る七輪の橙色はなんとも優しく、なんとも暖かな気持ちにさせてくれる。ゆらゆらとゆれる炎を見つめながら、クーラーボックスの中で冷たさを保ち続けるズブロッカを胃の中に入れると、身体の外側と内側の両方から熱さが伝わってくる。それがこの上なく気持ちいい。
 簡素ながらも味のある夕食を終え、ちびちびとズブロッカを飲み続けると、またもいい塩梅に酔いが回ってきた。というか、独り泥酔状態なのかも・・・。ふらふらになりながらも後片付けをし、テントに潜り込む。昨夜のような蚊に悩まされることのないように、きっちり戸締り。日中蚊取り線香を焚いていたため、かなり匂いが充満していたけど、酔っ払っていたので気にせず睡眠。

<3日目>
 物音がしたので目を覚ます。釣り客が続々と車で乗り入れたみたい。雨音は聞こえない。起き上がり、お湯を沸かす。晴天ではないけれど、雨も降ってはいない。アテネ五輪が気になってラジオをつけてみると、野口みづきが女子マラソンで金メダル。女子レスリングもメダルラッシュだったとか。大和撫子がんばってるね。
 これまた質素な朝食をとると、早速湖に。昨日は雨におびえて伸び伸びと漕げなかったので、その分を今日で取り返さなくては。今日は利根川の源流、奥利根湖の東側(Topの図のB)を目指して漕ぐことにする。
 それにしても水位が低い。そして岸の近くでは水が濁っている。この条件のためか、水面が格好の鏡となり、岸の景色を映し出す。観てください、右の画像を。露頭する層理や断層が水面に映し出され、褶曲構造もX構造に見えてます。地質学会に発表しようかな。
 しかし、水位が低いことはいいことばかりではなく、昨日に続き奥に漕ぎ進めることができない。しかも水は汚い。毎回楽しみにしている断層の岩戸も何処にあったかわからないくらい。漕ぎ進められる入り江も少なく、のんびり漕いでいたはずなのに、昼前には全行程を漕ぎ終えて戻ってきてしまった。まっ、こんなこともあるわなと、艇を引き上げ、キャンプサイトへ後片付けに。
 テントとシート、寝袋とブランケットを干して昼食の準備に取り掛かる。取り掛かるといってもカップヌードルなんで、お湯を沸かして3分待つだけなんだけどね。昼食を終えて炊事道具や小物を片付ける。イスに座ってのんびりしていると、なんだか雲行きが怪しくなってきた。急いでテント類、寝具類を片付ける。休むまもなく湖畔にフネを引き取りに行って、積み込み完了。管理人のおじさんに「また来いよ!」と送り出される。
 車を走らせると、ポツリポツリと雨が降ってきた。見事なタイミング。奥利根の天気は完全に見切った!
 かなり調子に乗った天罰が下ったのだろうか。露天風呂が豪華な湯テルメ谷川へ行き、自慢の露天風呂で一息ついたところ、いきなり滝のような雨が降ってきた。あまりの勢いに露天風呂を出ることはおろか、呼吸することさえ困難な状況に。お湯も次第にぬるくなり、とってもトホホな気分。改めて山の天気を侮ってはいけないと再認識したのだった。


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