ライン

中日(7/21)

明け方の出来事

 犬が吠えていた。どうやら残飯をあさっているらしい。
 小山隊長のテントから人の気配。誰かトイレに行ったらしい。
 うり坊のテントからいびき。いつもながら、大きな音だ。
 そして地震。これはかなり大きかった。ぼくのツェルトなんて、倒れてしまうのでは・・・と思い目を開けると、目の前にツェルトの内室の天井が。
 地震のせいで倒れてきたのかと思いきや、夜露で湿ってたのに加え、ぼくの体内から発せられた熱気が内室にこもり、明け方外気温が下がるとともに水滴となって内室に付着し、その重みで天井が倒れこんできたようだ。しかも、水滴がポトポトと顔に落ちてくる。
 もうここでは寝てられないとツェルトのファスナーを開けるとそこにはKibunの顔が・・・。
 たじろいでいるぼくを見て、
「地震だろ?地震で起きたんだろ?」
と言いながら、イヤホーンをぼくの耳にねじ込む。
「宇都宮・震度5。東北自動車道は通行止め」
 ラジオから流れる地震情報に驚きながらも、今の時間(4:00AM)を考えて、
「Kibun、なんでこんな早くにおきてるの?」
「いやぁ、昨日寝すぎで早くに目が冴えちゃったんだよね。でさぁ、・・・」
 話を続けようとするKibunに背を向け、ぼくは愛車Rに乗り込むと再び眠りについたのだった。


朝ごはん。

 周りがやけに騒がしくなってきたので目を開けると、朝の5時。起床時間まであと1時間もあるというのに、もうみんな起きている。みんな、雄国沼ハイキングが楽しみで早起きしてしまったんだろうか。
  
 朝食はおかあさんの持ってきたパンと焼き物。元祖焼き物班のKibunが楽しげに炭火を起こしている。
「だって、マルシンのハンバーグ焼くんだもんっ!」
 ところが木炭が湿ったせいでなかなか火がつかない。そこでnaoto-okの簡易ガスバーナー登場。バーナーの強烈な火力で炭に火をつける・・・と、「ぼぉっ」という音おたててぼくの目の前が炎上。炎はすぐに消えたものの、あまりの出来事にしばし呆然。
 あとでSAYUKIに指摘されたんだけど、ひげの一部が焦げたらしい。
 Kunnyが手招きするので近づいて指差すほうを見てみると、おかあさんが顔を作っていた。
 あぁ、この写真、正面から撮りたかったなぁ・・・。
 そんなことしたら、確実に殺されるか。
 ぼくらの声に目が覚めたか、うり坊・さとし・みおがテントから出てきた。
「もう、みんな早過ぎるよ。」
 うり坊は眠い目をこすりながらも、ご自慢の特製ベーコンを切り、朝食に添える。
 
 朝食もさることながらぼくらが気になってしょうがなかったのは、Yasの作った謎のデザート『フルーツういろう』。
 Yasの言葉どおり、一晩置いたらホントに固まっておいしくなっているのだろうか・・・。
 ぼくとさとしが恐る恐る少しちぎって食べてみる。
「だめだ、こりゃ。」
 意気消沈ながらも向上心を持ちつづけるクックドゥYas。
「ちょっと自宅で研究して、次回までになんとかしてくるよ。」
 この向上心がくや探の食卓を豪勢にしていくんだよね。


Let’s ハイキング!

 中日のメインイベントは雄国沼ハイキング。「富士山登山」ですっかり山に対する恐怖感の取れた隊員一同、心待ちにしたイベントなんだけど、Kibunは乗り気でないようで、
「俺、留守番してるから。」
 みんなで誘ったけど、留守番に徹すると言う。
「だって、脱肛だから・・・」
 出発するにあたって、各自身支度。いつもは家庭の匂いなど見せない小山隊長のほのぼのシーンをキャッチ。女王様に仕える下僕のような小山隊長の姿など、そうそう見ることができません。
 靴はさとしのお下がりのサッカーシューズで、スパイクがあるから土主体の林道も登りやすいだろうという配慮がなされている。
 さすがっ!
 登山道入り口へ向かう車中でも、みんなにこやかに闘志を見せている。
 
   
 雄国沼への道は数あるハイキングコースの中でも一番急峻で登頂困難とされている雄国せせらぎ歩道。うそうそ、雄国せせらぎ歩道は雄子沢川のせせらぎを聞きながら進む、一番短くて楽なコースなのだ。雄国沼のほとりにある休憩舎まで70分と、程よい道のり。
 一同、みおちゃんを先頭にハイキングコースを歩く。コースは出だしだけ急だけどその後はなだらかなのぼり斜面が続くコース。陽射しが強かったにもかかわらず、コースのほとんどが林の中なので、日陰が続き歩き易し。一番歩幅が小さく、体力のないみおちゃんのペースだけに、みんな余裕の笑顔で楽しいハイキング。さとしは横断する沢の数と沢に手を入れての温度調査。
「冷てぇ!」
としか言わないので、夏休み自由研究の課題にはならないだろうなぁ。
 みおちゃんのペースだけに、ぼくら一行は後ろから来る方々に良く抜かれる。でも、まれに同じペースで歩いているパーティがあったりして、休憩の取り方で抜きつ抜かれつのデッドヒートになったりなんかして。今回は小学生の娘とその母親の2人組とデッドヒート。互いの休憩中に順位の変動が見られるんだけど、そのたびに「お先に〜ぃ」とか「お疲れ様〜ぁ」って声を掛けたりして。
 山に入ると、普段は他人に声など掛けたことがないくせに、気さくに話し掛けられるのが不思議です。
 
 休憩舎まであと少しといいう所でハプニング発生。YasとKunnyが見つめ合っている・・・じゃなくて、みおちゃんのサッカーシューズのソールが剥がれた!
 小山隊長があわてて応急処置を施している間に各人ひと休み。
「ここが終点?」
 息を切らして登ってきた中年(老?)夫婦が尋ねるので、
「もう少し先です。」
と、優しく答えてあげる。ご主人は「まだぁ?」と疲れた表情を見せているけど、奥さんのほうは、
「次の機会はもう死んでいるだろうから、がんばって行きましょう。」
 ご主人がカメラを持っているのに気づいたので、
「冥土の土産にお二人の写真をお撮りしましょうか?」
と声をかけると、奥さん喜ぶ。
 それにしても、生き急いでいる夫婦だこと。
 みおちゃんの靴の応急処置が済んだので、休憩舎を目指し再出発。休憩舎までは5分とかからなかったなぁ。
 雄国沼を見渡せる休憩舎でとりあえず記念撮影。
 
 昼飯までまだ間があることから、雄国沼周遊道路を歩くことになったんだけど、みおちゃんの靴を修復していた小山隊長から、「みおドクターストップ」宣言がなされ、みおちゃんと小山隊長は一足先に昼飯を食べ、下山することに。
 残りの面々はしばしの休息のあと、さらなるハイキングに旅立ったのだ。
  

 雄国沼周遊道路は雄国沼をぐるりと一周するのではなく、雄国沼を挟んで休憩舎の反対側に位置する木道回遊を行き来するだけの道である。しかも、木道回遊以外は湖畔を歩くというよりも、ただ山を歩いているという風情のほうが強く、ぼく個人的にはイマイチ。でも一同は黙々と歩く。
 木道回遊まで辿り着くとそこに広がるのは優雅な自然。カルデラ湖である雄国沼と山のコントラストが見事なこと。
 くや探内ですっかり"自然派カメラマン"の地位を確保した(?)Yasとしては、ニッコウキスゲの時期が過ぎ枯れてしまっていたのがくやしかったみたい。重いカメラを2つも持ってきていただけに、くやしさもひとしおだっただろう。
 ちなみに動植物音痴のぼくは目の前に壮大なものや気持ちいいことがあればそれだけで十分なんだけど・・・。
  
 木道回遊で気が気でなかったのがさとし。
「おしっこしたい・・・」
と宣言するも、木道回遊は見晴らしの良い湿地。しかも、木道以外は立ち入り禁止で脇にそれて放尿というわけにもいかない。
 あわてて戻ろうとするも、コースは一方通行だし、先を急いで追い越そうとしても狭い木道ゆえに限界が。こういうときに限ってとろとろ歩いているやつが多く、なかなか前に進めない。
 やっとのことで森の中に駆け込んで事なきをえたものの、本人はあせったに違いない。
 うり坊曰く、
「小便は気合で我慢ダッ!」
 いつも「うんこしたい」と騒いでいるうり坊に言われたくはないよなぁ・・・。
 木道回遊では休憩場所が見当たらなかったため、そのまま休憩舎まで引き返すことにする。
  
 一本道を引き返すものだから、これから木道回遊へ向かう人々とすれ違うこと、すれ違うこと。そのたびに
「こんにちわー」
と笑顔で挨拶をする。
「さとし、ぼく今日ここまでだけで1年分のこんにちわを言ったような気がする。」
 口元も作り笑顔のためか、ツッパリ気味になったりして。
 休憩舎につくと、中学生か高校生の団体がいっぱい。登山遠足かなんかだろう。一同、適当な広場を見つけ、早速昼飯。各人コンビニで購入したおにぎりやパンをパクつく。
  
 休憩舎付近の平和な昼食風景をつけ狙う、ひとつの黒い影。女学生の集団が楽しく団欒している背後をついて、弁当に襲いかかる。
「キャーッ!からすーっ!」
 からすは弁当をGETすると、誇らしげに枝で仁王立ち。
 しばらくするともう一羽からすがやって来て、今度は2羽で周囲を威嚇する。広場で昼飯を食べている人たちの反応をうかがっているのだろう。目標を女学生に決めて再びアタック。ビビッた女学生が弁当箱を置いたまま逃げたので、からす難なくお稲荷さんをGET!
 騒ぐ女学生に先生が一言。
「逃げるからだよ。じっと座ってれば襲ってこないもんなんだぞ。しかも弁当箱置いて逃げるか?」
 カラスはますます誇らしげに仁王立ちするのだった。
 昼飯も食べ終わり、そろそろ下山の時間。登ってきた雄国せせらぎ歩道を下りることに。歩き始めて少し立つと、ビニールの買い物袋を割いて作った紐が落ちている。
「これってみおちゃんの靴の応急処置に使ったものだよね。」
 先に下りているはずの小山隊長&みお、悪戦苦闘したようだ。
 ぼくらが下山といってもまだまだ1時過ぎ、下からは雄国沼を目指して登ってくる登山客がいっぱい。ぼくは満面の作り笑顔で、「こんにちわ」を繰り返す。すると下から中学生の長蛇の列。しかも登山道が狭くなっているところで。すれ違うのが大変そうだったので、歩みを止めてやり過ごそうとすると、先頭を歩いていた先生が大きな声で、
「こんにちわーっ!」
 続いて生徒達も「こんにちわ」「こんんちちわ」「こんにちわ」・・・・・・。
 一応教職を目指していたこともあるぼくとしては、生徒達のあいさつを無視するわけにもいかず、
「こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ。こんにちわ・・・・・・」
 生徒全員が挨拶してくるわけでもなく、中には仏頂面で歩いているのもいるんだけれど、結構離れているところから「こんにちわ」を言うために目を輝かせて近づいてくるやつもいる。総勢100人くらいいたかなぁ。ぼくは「こんにちわ」を30回以上は言ったと思う。
「さとし、ぼく今日1日で2年分のこんにちわを言ったような気がする。」
 喉と顎が痛くなる登山だったのだ。


温泉でのんびり・・・

「やっぱりこのくらいがちょうどいいよね。」
「もう本格的登山はきびしいよね。」
 お手軽ハイキングコースに皆(Yas&隊長を除く)充実感を覚えた後は、身体にまとわりつく心地よい汗を流しに温泉へ。温泉の名前は「ラビスパ裏磐梯」。
 実は雄国沼からラビスパ裏磐梯までは雄国沼パノラマ歩道というハイキングコースで結ばれている。雄国山頂上をとおり、距離も長いのでせせらぎ歩道と比較するときつめのコース。富士山登頂をこなした我らくや探としては苦もないコースだろうが、今回はみおちゃんの靴が壊れたこともあり、見送ったのだ・・・。
 これもうそうそ。
「雄国沼から温泉まで歩いていけるけど、せせらぎ歩道よりきついみたい。どうする?」
「せせらぎ歩道を下りて車で温泉に行く。」
 考える余地のないこの会話で「厳しいのはイヤ」という基本方針が即決されたのだった。
 キャンプ場で留守番をしているKibunに温泉まで来るように電話をしてみると、Kibunは熱中病に近い状態だと言う。どうやら炎天下で無防備に寝ていたらしい。それにしてもよく寝ること。この分だと明日の朝も・・・。
 ラビスパ裏磐梯は室内プールも併設されている温泉で、福島県各地の児童会がプール目当てにたくさん来ていたが、温泉は結構すいていた。
 この温泉が熱いのなんの。露天風呂でも熱いのなんの。
 温泉フリークのお風呂好きを自認するぼくでも、長いことつかってられなかった。
 風呂上り、おかあさんが
「ねぇ、露天風呂でなに騒いでたの?」
と聞いてくる。
 ラビスパ裏磐梯の露天風呂には洗い場がついていて、ぼくが身体を洗っていたときのこと。Yasとうり坊が露天風呂の熱さに耐えきれず、ぼくが身体を洗っていた場所の横にあった石でできた長いすに並んで座ってたの。
 二人ともぼくに背を向けてたんだけど、これはなにかしてあげなきゃと思い、シャワーで冷水をかけてあげたの。でも、ただ水をかけるだけじゃつまらないと思い、冷たさが徐々に伝わるように、少量ずついすに流すようにして、じわじわと尻に水が届くように。
 反応はというと、最初のうちはもじもじしてるんだけど、水が十分行き届くといきなり「冷たっ!」と言って立ち上がる。なかなか面白かった。
「普通そんなことしないよね。」
 うり坊がおかあさんに同意を求めるように訴えるが、おかあさんは笑いながら、
「あなた達3人って、同級生みたいに悪ふざけしてはしゃいでるわよね。」
と、半ばあきれていた。ということは、ぼくはまだ30歳に見えるということ?それともうり坊が3歳老けて見えるってこと?・・・どっちでもないよね。
 温泉から戻る途中、突然の通り雨。寝袋を車の上に干しっぱなしにしていただけに、みんな気が気でない。Kibunは取り込んでくれているだろうか・・・。キャンプ場に近づくと、車の上の寝袋が見当たらない。
「さすがKibun!」
と一同感嘆の声をあげるも、風で寝袋がずり落ちてただけだった。結局キャンプ場では雨が降らなかったようで、一同ひと安心。


釣り部の覇権争い

 昨夜からさとしには気になって仕方ないものがある。それは、ぼくが持ってきた万能釣竿セット。
 定価7000円、実売1980円ながら、海・川どこにでも使えるというちゃっちい優れもの。いや、優れものかどうかはぼくも一度も使ったことがないからわからないんだけど。
 温泉から戻るとさっそく釣り竿を担いで湖畔へ。それを見た釣り部長・Kibunもさっそくアドバイス。このアドバイスが効を奏し、かなり大きな引きが・・・。慎重に釣り上げようとするも、直前でバラしたそうで、この逃がしたバスが大きかったらしい。
 それ以降、さとしは何かにとり憑かれたように竿を振りつづけるのだった。
 これを見た隊長と釣り部長、「釣り大会を開くべし」との緊急動議。10月のさんま焼きキャンプで開けるかどうか、検討することに。でも、ただつってるだけというのも芸がないので、釣り大会の結果で釣り部の役職が決まる、「釣り部格付け大会」とすることに決定。さとしの真剣な眼差しに、釣り部長の地位を脅かされるKibunなのでした。


後ろ髪を引かれる想い

 楽しい時間は早く過ぎるもので、そろそろ1泊2日のYas・おかあさん・Kunnyも帰り支度。Yasがくや探本活動を休んだり途中で抜けるのは今回が初めて。これで皆勤賞はぼくだけか・・・。
 ところが3人、支度は済めどなかなか腰が上がらない。残るものたちも、
「今帰ったら渋滞だって。」
「晩ご飯食べて帰ればいいじゃない。」
「今晩桧原湖で花火大会らしいよ。」
と、引き止め工作に走る。
「おれはいいんだけど、おかあさんとKunnyがどうかなぁ・・・」
「いや、私達はなんとかなるわよ。Yas次第。」
 こうして3人は夕食を食べてから帰ることに。



夕食はこないです。

「夕食、何作るの?」
「おれ、ダッチオーブンでベーコンとジャガイモとニンジンとにんにく焼いた料理作るよ。あと、岡本さんが何か作って。」
 うり坊の要請により、何を作るかをしばし思案。米は小山隊長に炊いてもらうとして、汁物がないなぁ・・・ということで、まずはポトフ。昨日焼きそびれた鮭の中骨とたまねぎが余りそうなので、それを使って・・・。
 大まかなメニューを頭に描いて、うり坊と買出しへ。
 買出しから戻ると、そこには腹を空かした隊員達が、イライラを募らせながら待っていたのであった。その殺気立った眼といったら、こわいのなんのって。
 うり坊がダッチオーブンにジャガイモ・ニンジン・にんにく・ベーコンを入れ、炭火にかける。待ちに待った、ダッチオーブンくや探本格的デビュー。前からデビューさせるさせると言いながら延期になっていただけに、一同期待に胸を膨らませる。そういえば富士山の山頂で料理するとか言ってたんだよなぁ。
 それと同時にうり坊がラビスパ裏磐梯で密かに購入していた空豆を生のまま炭火にかける。
「え〜?ゆでなくていいの〜?」
 すかさずくや探主婦連のチェックが入るも、
「いいからいいから、美味いんだからって。」
と言ってうり坊聞き流す。
 ぼくの方はまずは時間のかかるポトフつくり。とはいえ材料を切って煮るだけなので、ポトフはいたって簡単。
「岡本さん、ベーコン使う?」
 うり坊特製のベーコンも入れて煮込んでいる間に、余りものを使ってホイル焼きの作成。
 ぼくの料理の基本は余りものを使った簡単適当料理。大学時代の貧乏(?)自炊創作料理が源。いたって独学かつ独創的のため、普通の生活をしている人のはドキドキものらしい。今回は余ったたまねぎと鮭の中骨・舞茸をアルミに包んで焼こうと思い、調理開始。たまねぎを敷き、塩コショウで味付け。鮭の中骨を載せ、マヨネーズをかけ、舞茸を入れて出来上がり。と、まずはYas。
「それって、塩鮭じゃないの?しょっぱくて食べられないよ。」
「洗ったから大丈夫だし、そんなに塩が効いていない鮭だから、塩がたまねぎに染みておいしくなるよ。」
「そうかなぁ・・・。でも、おれが作ったときはしょっぱかったけどなぁ・・・。まぁ、今回はおれご馳走になるみだから、なんにもいえないんだけどさぁ・・・。」
 Yasのイジケが始まったので、塩コショウ抜きのパターンを作ってあげる。すると今度はおかあさん。
「マヨネーズ入れるのぉ?」
「えっ?嫌い?」
「いや、嫌いじゃないけど、マヨネーズ焼いたら溶けてドロドロになるの、わかってる?」
「でも、アルミの包み焼きって蒸し焼きだから、ドロドロに溶けたりしないよ。」
「ちがうわよ・・・」
 ぼくの言うことを聞き入れてくれないので、マヨネーズ抜きのパターンも作ってあげる。
 サイドメニューとして購入したカツオを切ってもらい、ひと通り下準備は終わり。一足先に焼き始めた空豆がいい感じに焼きあがる。すっかり焼き物に魅了されたみおちゃんが、楽しげに焼けた空豆をひとつつかんではテーブルへ、戻ってつかんではテーブルへ・・・。
「みお!ひとつひとつ持ってこないで、さらに入れていっぺんにもってこいよ。」
 小山隊長がビール片手につぶやいている。
 ダッチオーブンのふたを開け、出来上がり具合を確かめたうり坊がビールを持ってやってくる。
「にんにくとベーコンはいい感じなんだけど、ジャガイモとニンジンがまだみたい。とりあえず飲もっか。」
 料理の出来を確かめながら、空豆をつまみに乾杯。これがうまいんだなっ!
 しばしビールを楽しんでいると、うり坊の叫び声。
「あっ!黒コゲだぁ!」
 ダッチオーブンのふたを開けるとジャガイモもニンジンもにんにくもベーコンも真っ黒。
「あぁ、ビールに夢中になったからだぁ・・・。おれ、ビールとカツオとアジに弱いんだよなぁ・・・」
「あと、まるじにもね。」
「あぁ、あいつにも弱かったんだぁ・・・」
 うり坊のベーコン、ぼく作のポトフでいい味出してるぜ。
 ぼくのホイル焼きも、なかなかGoodな出来上がり。どうだ!とばかりに胸を張って夕食に挑も、一番人気はカツオの刺身。
「ただ切っただけなのに・・・」
と、くやしさが胸をこみ上げる。でも、ホントにカツオが一番旨かった。


みおの絵日記物語

 それはどのタイミングだったのだろうか・・・
 たぶん、さとしかYasがかっこつけてしゃべったのをぼくがやゆしたのが始まりで、語尾にさっをつけるブームが勃発。
「そんなことないさっ」
「しらないさっ」
に始まって、
「小林一茶っ」
に至るまで、とにかく語尾がさっの会話が延々と続く。
 大人はある程度の盛り上がりを見せると飽きてやめてしまうも、さとしはひどく気に入ったみたいで、ぼくのそばに寄ってきては続きをねだる。
 そんな馬鹿馬鹿しげな光景を、みおちゃんが夏休みの宿題の絵日記に。


<絵日記・本文紹介>
7月21日。今日、おかもとなおとという人が最後にさっをつけてしゃべろうと言い出しました。

Kibun:よっちゃんいかさっ
SAYUKI:ぴかちゅうさっ
うり坊:さっ
Yas:カヌーにのせたさっ
おかもとなおと:清水美砂
Kunny:しんじゅ ありがとうさっ
おかあさん:そらまめ おいしかったさっ
小山隊長:キャンプにきたさっ
さとし:さいごさっ
 おかげで、みおちゃんの絵日記に一同特別出演。
「みおちゃん、これ先生に提出するの?」
「うん。」
「先生の名前は?」
「こだま しま先生」
「えっ?先生、きれい?」
「・・・みお、子供だからわからない!」
 大人のよこしまな考えは純真な子供の前に脆くも崩れ落ちたのだった。それにしても、今から子供を口実に使うなんて・・・すえおそろしいぞ、みお!


花火もまた、くやしさを残して。

「今日、桧原湖湖畔で花火大会があるんだって。」
 Kibunが管理棟から仕入れてきた情報に一同沸き立つ。
「桧原湖方面となると、あっちに方だね。」
「違うだろ?あっちだよ!」
「え〜っ?そっちだよ!」
「花火、何時からかなぁ」
 などとつぶやきながら食後のゆるい時間を過ごしていると、なにやら遠くで花火の音。
「今、見えた?」
「この雑木の向こうで光ったよね。」
「じゃぁ、あっちか!」
 一同花火の見えそうな地点へ全速力で移動。
「ここなら見えるよ。」
と、準備万端整ったというに、なかなか花火が見えてこない。
「方角間違えたかなぁ・・・」
 しばしの沈黙を破って、再び花火が舞い上がる。
「田舎の花火は提供とか協賛者の名前をいっぱいいわなきゃならないから、打ち上げに間が空くんだよ。」
 Kibunの指摘に一同納得。
 しかし、ぼくらの見た花火は住宅の屋根に下半分をさえぎられた、かなり淋しい花火だったのだ。とはいえ、見れただけで十分満足。


スクープ ?!

 花火大会がまだ続く中(ぼくらはすでに鑑賞をやめていたけど)、Yas・おかあさん・Kunnyがとうとう帰ることに。ちょっぴり名残惜しげだけど、それぞれ翌日は仕事だと言うので、しかたなし。
「花火大会が終わってからだと道路混むだろうから、今のうちに出発します。うまくいけば車内から花火が見れるかもしれないし。」
 車に乗り込む3人の姿を写真に撮ったけど、これじゃまるで交際発覚のスクープ写真だよなぁ。
 Yas、この際交際発覚にしちまおうか?
 えっ?Kunnyが迷惑だって?納得。
 この3人のそれからを、Yasのメールでご報告。 
<Yasからのメール>
 くや探,海の日キャンプに参加された皆様,お疲れさまでした!
 最後まで参加した方達も,無事帰って来れたようですね.
 Yas&おかあさん&Kunnyは,深夜の高速をブッ飛ばし,10:30頃千葉に帰りつきました!
 途中,Mackyから電話があり,
「こんなに遅いとは思わなかった,電話ぐらいしてよ!」
と,お叱りのお言葉があったようですけど・・・.
 出発の時間を覚えていないんだけど、この10:30って早過ぎじゃない?


しりとり大戦争

 最後はなぜかしりとり大会。各人自らの英知を振り絞ってチャレンジ。
 断然大人が有利と思われたこのゲームも、妙なルールにより思わぬ展開へ。
「じゃあ、ぼくは車の名前シリーズでインテグラ」
 うり坊の大人としての威信をかけたジャンル限定しりとりに触発され、ぼくも
「かけ声シリーズでラリウホーラリホーラリルレロ」
 一周してまたうり坊が
「またまた車の名前で、アリスト」
 負けじとぼくも
「かけ声シリーズで、とうきょうとっきょきょきゃきょきゅ」
 当然ながら、一同のチェック。
「それってかけ声じゃなくて早口言葉だよ」
「しかも言えてないよ」
 大人有利、子供不利の状況を一変させる事態が発生。それは解答に困るみおちゃんに出した小山隊長のこんな助け船。
「ポケモンの名前でもいいんだよ。」
 するとなんたること、さとし&みおの口からぼくらの知らないへんてこな名前が出るわ出るわ。ポケモン効果で真夜中の決戦を制したのはみおちゃんなのでした。
 こうして2日目の夜も更けていったのでした。




アイコン初日(7/20)
アイコン中日(7/21)
アイコン楽日(7/22)

メール アイコン
メール
トップ アイコン
トップ


ライン