ここが日本の最高峰


その1 Goal !!

 9.5号目を出発し、30分くらい歩いただろうか、富士山山頂の鳥居が見えてきた。かなりバテてたんだけど、Goalが見えてくると急に元気になってくる。ENOに至っては、走り出す始末。小山隊長、ウリ坊、Yas、ENO、じつよ、ぼく、お母さんの順で、次々とGoal!



 鳥居をくぐり、山小屋前まで行くと、結構な混雑。9月に富士山に登ろうなんて考えている奴らが、こんなにいるなんて。しかも、みんなもぼくらと同じように充実感に浸っているのだろう。会話は交わさないものの、なんだかわかりあえたような気がしたりして。
 そんな中に変な髪の毛&厚底スニーカーのグループも。
 おかあさんはリタイアした娘二人に体力で優ったことを誇らしげに思っていたに違いない。
 山頂についてから、ウリ坊の動きが慌ただしくなった。顔色もどことなく悪いような気がする。
「あっ、ウンコしたいんだって。トイレが閉鎖されてるから、できそうな陰を探してるんだよ。」
 小山隊長がケタケタ笑いながら状況説明をしてくれた。
「ウリ坊ってすぐ下痢するよな。」
「違いますよ。山頂は気圧が低いから、ウンコが膨張するんですよ。」
 ウリ坊はムキになって否定したけど、そんな言い訳ないよなぁ。
「で、あった?できそうなとこ。」
 Yasが早口でウリ坊に問いただす。Yas、おまえもか。


その2 まだあるの?

 結局ウンコは我慢してもらい、一同富士山の噴火口へ。
 噴火口って、でっかいの。さすがは日本一の山。
「お鉢回りする?」
 Yasが聞いてきたけど、噴火口の大きさを見てしまうと、もうこれ以上歩きたくはなかった。
「でも、ここって本当の山頂じゃないんだよね。」
 Yasの一言に、ぼくらは耳を疑った。
「さっき山頂って書いてなかった?」
「いいや。ほら、あそこに測候所があるでしょ。あそこがホントの山頂。」
 Yasの指差す方向には赤い尖った山があり、白いボールのようなものがくっついている。
「マジかよー。」
「どうする?行く?」
「・・・ここまで来たら、行きますか。」


その3 本当の山頂

 赤い山はまさに最後の難関で、傾斜の結構きつい斜面がぼくらの前に立ちはだかっていた。ENOは鳥居をくぐる直前でのダッシュで力を使い果たしたみたいで、バテバテ。ほかのみんなもバテてるか便意をもようしているというのに、小山隊長だけはしっかりとした足取り。結局5号目からホントの山頂まで、誰にも抜かれることなくポールtoWin。さすが10年前、3時間半で登頂しただけある。
 遅れて登りきったENOは息を切らしながらこういった。
「小山さん、あんたただのデブじゃないよ。スーパーデブだよ」
 と言うことは、さしずめぼくがただのデブということか…。
 山頂では「日本百名山を登る会」のおじさん・おばさんが、百名山全登頂を祝して万歳をしていた。最初のうちはぼくらも付き合って万歳してたんだけど、これがあまりにも延々と続いたので、かなりへきへきしてしまった。
 ENOがザックから缶ビールを取り出す。とりあえず日本最高峰で乾杯。
 しかし、一同ビールを口にして驚いた。炭酸が抜けているのだ。決して不良品というのではなく、気圧が低いために、開栓と同時に炭酸が飛んでしまったみたいなのだ。
「富士山にビールはあわないか…」
 そうつぶやくと、小山隊長は自分のザックからリザーブ缶を取り出したのであった。



  5合目までは車で 
 山頂までは四苦八苦
 ここが日本の最高峰
 下山は膝が笑ってる

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