artな戯れ言2014


このページではartな戯れ言を集めて掲載しています。




永井するみ「秘密は日記に隠すもの」を読む(14.12.30)

 日記ってずるいアイテムだよね。そこに書かれている言葉はすべて一人称。本音が必ずしも事実とは異なる。不都合なことは書く必要がないし、都合のいいことは盛ることだってできる。そして、他人が読んだとき、フィクションだってノンフィクションに…。
 blogやfacebookが公開を前提としているのに対し、秘匿性があるから書けること、膨らむ世界。だましだまされ、もちつもたれてパーソナル世界はまわっていくのだ。
 四冊の日記が描き出すパーソナル世界は、四者四様の味わいを醸し出し、読み手を怖がらせもし、優しくもさせるのだ。ずるいなぁ。ひとりの日記じゃなく、複数人の日記で色を付けるなんて。
 先に観た映画『ゴーン・ガール』も日記が鍵のひとつだったっけ。すたれていきそうな(?)習慣にこそ、怪しい魅力が渦巻いているのです。


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「寄生獣」を観る(14.12.29)

 顏が割れても深津絵里。
 『寄生獣』に深津絵里の出演が決まった時から、ぼくの中でのキャッチコピーになっている。深津絵里なら食べられてもいい。彼女の血となり、肉となるなら・・・。
 そんな感情はさておいて、ぼくらが夢中になって読んだマンガ『寄生獣』がいよいよ実写で映画化とは。ハリウッドが版権を持っていたと聞いていたけど、まさか日本で映画化とは。10年、いや5年前でも拒否反応を示したと思う。でも、VFXが進化した今、予告を見て納得。これはいけるんじゃないかって。
 ちょっと上から目線の物言いだけど、すんなりかつしっくり。特殊技術ばかりに目が行っちゃうけど、主人公の染谷将太がまたいいのよ。原作のとっぽさを持った主人公じゃなく、いけてないグループに入っていそうな内気な感じが。そこからの変化が。まぁ、それでいて橋本愛に好意を寄せられているなんて、中高時代のぼくなら嫉妬の嵐だと思うけど。
 ハッとして、ドキドキして、ホロリとさせられる。原作を読んだ時にはあまり感じなかった感情が、どんどん湧き上がってくる、ぼくの中から。
 新一、君が泣けないときはかわりにぼくが泣いてあげるよ。
 完結編が4月に公開されるとか。まいった・・・我が家の本棚に眠っている原作本を読んでしまいそうだ・・・。耐えられるかな?


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安藤祐介「ちょいワル社史編纂室」を読む(14.12.20)

 一流企業で仕事一筋、家庭を顧みず。典型的な会社人間が、四十半ばで理不尽な上司に歯向かい、地下二階の社史編纂室に転属に。そこは会社にとって不都合な社員を退職に追いやるべく作られた、閑職だった。覇気のない社員、見いだせないやりがい。そんな状況に呼応するがごとく、家庭にも問題が。
 八方ふさがりの主人公が見出した光明は、恐れていたアフター5にあった。
 どこにでも輝ける場所がある?主人公ほど熱血でも、家庭があるわけでもないぼく。年代と上司に物言う共通点はあるだけに、やはり閑職はつらいかな。でも、いろんなアイデアを貯めることができるかも…なんて単純じゃないんだよね。自分の行動力が試されるとしたら、やっぱり足踏みしちゃうだろうし。
 そこをなんとか、一歩でも踏み出す勇気をくれるかも、この物語は。世の中そんなにうまくはいかない。それでもうまくいくことを思い描いて前を向くしかないんだよね、現実って。
 そんなこと考えちゃうような物語でした。


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「ゴーン・ガール」を観る(14.12.19)

 怖い…。その一言に尽きるんだけど、怖いだけじゃないんだよね。すっごい見応えのある映画だった。
 5年目の結婚式の朝、妻が失踪。憔悴する夫。有名人の妻を探すために集まった人々。時間が経つにつれ夫に向けられる疑惑の目。この先の詳しいことは、映画を観てのお楽しみ。
 ものすごく巧みなSTORY。一転二転する展開にもう釘付け。3時間近い尺もまるで気にならず、引き込まれっぱなし。真相が明らかになっていくたびに目を背けたくなるんだけど、どうにも目が離せない。すげぇ。
 怖いんだけど面白い。この相反する感情を導いてくれた、脚本が素晴らしい。観せる技術が素晴らしい。惜しみなくすべてを観せてくれる心意気が素晴らしい。
 こいつは間違いなくすごい作品だ。ただ、結婚に対するイメージが…。


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「西遊記〜はじまりのはじまり〜」を観る(14.11.27)

 追いかけられると〜、逃げ〜たく〜な〜る〜♪冷たくされると〜、泣き〜たく〜な〜る〜♪
 いきなり古内東子でスタートですが、周馳星待望の一作はラブソングの女王の名曲が思い出される、痛快ながらもせつない作品だった。
 それはまだ、玄奘三蔵が天竺を目指す前のこと。妖怪ハンターの彼が目指した愛、気づいた愛、失くした愛。悟空、八戒、悟浄との出会いは、彼の愛がもたらしたもの。痛快バトルの裏テーマでもある愛が、胸を突くんだよね。
 とにかく楽しめた。緊張と弛緩。この連続に完全に魅了された。そこにスー・チーの奔放的なかわいさが加わって、たまりませんわ、この映画。
 『少林サッカー』『カンフーハッスル』に続く娯楽大作。ガッツポーズしちゃいそうになるくらい、面白かった。そしてせつなかった。
 それにしても西遊記のはじまりなんて、うまいところに目を付けたなぁ。


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道新寄席 立川談春三十周年記念落語会 「もとのその一」を観る(14.11.24)

 なになに?立川談春って昭和41年の午年生まれなんだって?ってことは、ぼくと同学年じゃないか。落語家生活30年。高卒で入門したんだね。ぼくも何度か書いたと思うが、高校時代に落語家にあこがれていた時期があったりして、なんともシンパシーを感じるのだ。
 談春の『芝浜』の位置づけ〜現代落語論、なるほど。寄席の落語、ラジオの落語とホールの落語の違い。談春の言う本当の落語って語るものなのに対し、いまどきの落語って視覚も聴覚もフルに使った演じるものなのね。まさに劇場型。それを進化というべきかは談春も言う通り人それぞれなんだろうけど、円丈から始まったぼくの落語好きはまさにこの劇場型が好きなんだろうなぁ。喬太郎、三三、花緑などの芸についても聞けて、ほっほ〜、なるほど。
『おしくら』
 これぞ下ネタ、下世話な噺。落語ってきっと人情噺じゃなく、こんな下世話な噺から始まったんだろうな。だって、男の子なんだもん。
『芝浜』
 一昨年の道新ホールでの独演会でも演ったそうなんだけど、事情があり見逃したんだよね。劇場型落語の創始者(?)のひとり、談志のDNAを受け継ぐ談春の芝浜。それはもう、夫婦の情景が、情感があふれんばかりに演じられていて、何度も聞いてるはずの芝浜をまた新しいものとして感じることができたのだ。これだから落語は面白い。
 


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「EGO-WRAPPIN' tour "ニューロマンサー 黄金色の夢奏家たち"」を観る(14.11.17)


 待望のEGO-WRAPPIN'ライブ。中納良恵のナマ歌声は「川上つよしと彼のムーードメイカーズ」ライブで聴いてたんだけど、EGO-WRAPPIN'としては今回が初めて。うれしくてたまらない。
 EGO-WRAPPIN'の音が、声が、新たなバンドにより紡ぎだされる。手練れたちの繰り出す変幻自在の分厚いリズムが、衝撃となってぼくを揺り動かす。まさにそんな感じ。こっ、これがEGO-WRAPPIN'のライブなんだね。1曲のなかでもめまぐるしく変わる曲調。それが何曲もって、これは同じ人たちのライブなの?と素直に驚いて楽しめる。
 今日はツアー初日。「純真無垢なEGO-WRAPPIN'を楽しんで」とのMCがライブバンドの心意気。「上手いだけの演奏ならCD聴いて」なんて、ライブだぜ。
 最初のMCで「スカパラ大先輩と飛行場で会って。みんな、スカパラじゃなくてこっちを選んでくれたんだ」という後ろに、ドラムとして座るASA-CHANG。その答えはすでにステージ上にあるじゃない。
 『くちばしにチェリー』が聴けなかったのは残念だったけど、バンドにペットがいなかったから最初からわかってはいたのよ、今日はやらないって。でも、あれもこれもてんこ盛りで演奏してくれて、最高の一夜だった。
 また観に行こう。東京へでも観に行きたいぞ。


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「紫式部ダイアリー」を観る(14.11.16)

 
 三谷作品に斉藤由貴が帰ってくる。『君となら』の主役の座を竹内結子に譲り、いつの日か母親役でカムバックを期待していたけど、これはこれでうれしい誤算。しかも近頃清純派から脱皮をし、メキメキ女優カを上げている長澤まさみとの二人芝居。若かりし頃、斉藤由貴ファンクラブに入会していたぼくにはうれしい限り。でも、彼女肥えたから…。
 チラシの写真を見ておどろいた。あごが精悍に尖っている。『ごめんね青春』でシスター姿を解いた彼女が美くしい。期待が一気に高まる。早く今の斉藤由貴に会いたい。で、登場した彼女。才女でありながらもストールに座るのに四苦八苦の清少納言。かわいい。かわいすぎる。もちろん美貌あふれる紫式部もたまらない。あのツンツンさに指図されたくもなるが、従っちゃう清少納言がいいのよね。
 文筆を生業とする女性の嫉妬と羨望と腹の探りあい。現代に置き換えられているので、ネットも携帯もありだけど、きっとこんな女の闘いが平安の世にもあったんだろうと思いを馳せちゃう。バーカウンターを舞台とした女の闘いは面白くかつ魅了されてしまったよ。
 パンフレットの宮藤官九郎の斉藤由貴への寄稿文、サイコー!同じ斉藤由貴ファンとして激しく同意さ。でも、ぼくの下宿の部屋にはAXIAの等身大斉藤由貴がいたんだぜ!自慢です。ちなみに宮沢りえもいました。
 紫式部ダイアリー。それは三谷幸喜の新たな『赤い洗面器』なのかもしれません。


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「ティム・バートンの世界」を観る(14.11.16)


 あの陰をまとったイラスト、作風。たまらなくいとおしい。ティム・バートンの作品は中毒性が強いんだよなぁ。そんな作品がー同に会した展覧会。休日だけに混みまくり。でも、今日を逃すとせっかく買った前売り券がムダになる。それよりなによりとにかく観たい。
 
 もうさ、許されるならお持ち帰りしたいよ。いかにも美大系ファッションの方々がそちこちで講釈たれてたけど、ぼくには直感的な好き嫌いしかわからない。そんでもってここにある絵やオブジェは好きなのだ。
 幼少期から欠かさず描き続けてきたというティム・バートン。個性ってガラパゴス的に創られたりするじゃない。だから誰がなんと言おうと描き続けることが大切なんだなって。
 アラ50で他人の評価と真似ばかりのぼくでも、今から描き続ければなにか生まれかな?なんてよこしまな思いがふつふつと湧いてくる素敵なひとときでした。



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「奥田民生 いきあたり股旅」を観る(14.10.24)


 えっ?民生の股旅、札幌でやるの?
 ここ数年、奥田民生のライブから遠ざかっていた。正直、新譜もほとんど聴いていない。でも、弾き語りとなると話しは違う。広島の土砂災害へのチャリティーで始まった弾き語りライブ。気づけばツアーみたいになっていて、ここ札幌がオーラスだとか。そりゃもう行かねばならますまい。
 ステージに並んだギターの数々。今から凄いライブになるニオイがぷんぷんで。タオルを巻いた民生登場でぐわっとね、会場が。でもみんな座ったまま。ジングルの音量調整は民生のツマミ。かき鳴らす音は民生の思いのまま。
 今回は2部構成。1部は民生の曲を独りで奏でる。後半はリクエストアワーっぽくなって、民生の意図に反したかもしれないけど、それはそれで面白くて。「ちょっと待って、練習するから」なんて素の部分も見れて、お得感満載。ぼく、『Mother』って叫びそうになったけど、叫ばなくてよかった。
 2部は独りで1曲奏でてからゲスト登場。YO-KING、吉井和哉、斉藤和義、寺岡呼人。すっげー豪華。民生との会話が楽しそうで、民生とのセッションが楽しそうで。YO-KINGとは『Mother』を。あぶね〜、一部で叫んでたら、台無しにするところだった。寺岡呼人とのユニット”寺田”は遊び心満載。「意味のあるパクリ」は名文句だよ。『モニカマン』をナマで聴くの初めてだったんで、改めて大爆笑。かつての『Merry X'mas Show』を思い出しちゃった。「モンチッチ!」。
 2部ラストは『CUSTOM』。やっぱこの歌は響く。アコギ1本で演ると歌詞そのものがダイレクトに伝わって。届いてます。
 アンコールはゲストも全員登場して、『カリキュラマシーン』の『3は嫌いだよ』を。懐かしい。なんたって、ステージ上の面々はみなぼくとほぼほぼ同年代。若い奴らにはわかるまい。それを3回リピートだなんて、どんだけ3なのか。最後は『襟裳岬』。むちゃブリ過ぎて、吉井和哉のトシちゃんやYO-KINGの永ちゃんまで飛び出して、爆笑。ターシャン、千夏など、民生の新名称も飛び出して、たまりませんわ。
 終演コールの後、急ぎ足で会場を後にする観客をしり目にたらたらと帰り支度をしていたら、民生再登場。最後の最後に『さすらい』を。もう感動。最高!
 吉井和哉とのホモ疑惑が出た斉藤和義曰く、「ソープランド、はしごですよ、吉井さんなら、性欲的に」。豪華アーティストがそろって、すすきのの夜は盛り上がったのかな?


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「ウィキッド」を観る(14.10.19)

 北海道四季劇場で上演されている『オペラ座の怪人』が11月に千秋楽を迎えるという。次はいよいよ『ウィキッド』か?めちゃくちゃ期待してWeb検索したところ、残念ながら『キャッツ』になったらしい。もしかしたらの期待が大きかっただけに、すぐにでも観たい気持ちが高まって、東京で観ることにしちゃった。
 『ウィキッド』観劇はこれが二度目。前回観劇からはや6年。とにかく面白く、哀しい物語。ぼくの中では劇団四季で一番好きな作品。でもさ、圧倒的なインパクト以外はかなり忘れてたりして。そんなお年頃なので。
 もうね、あらすじとかは前回の記載を見て頂戴。お恥ずかしい限りなんだけど、ほぼ全編初見のように楽しんじゃいました。さすがに大筋くらいは覚えているので、オープニングで末路を想い早くもうるうる。そんでもってそっから先はまっさらのように楽しめる。知ってるはずなのにドキドキワクワクの連続で。しかも同じように涙して。成長してないって言われそうだけど、こんな発育不良なら素敵でしょ。「物事を違う角度から見てるってことさ」。
 ミュージカル、劇団四季って女性に人気ってイメージじゃない。でも、ぼくの前の列6人男ばっか並んでて、ぼく以外にも『ウィキッド』好き男子はいるんだなってうれしくなっちまった。もちろん話しかけたりはしないけど。
 三回目も観たいなぁ。東京公演は来月で千秋楽っていうから、またしばらくはお預けかな?次こそ札幌?


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「THE RISING OF THE CURTAIN at 豊洲PIT」を観る(14.10.17)


 東北の復興をエンターテインメントの力で支援する拠点として誕生したライブホール・豊洲PIT。多種多様なアーティストが集結したこけら落としに行ってきました。出演者は以下に記すけど、今や大御所扱いされそうな方ばかり。ゆえに年齢層の高いこけら落としなのだ。ぼくにとってはみんなナマで聴くのは初めてで、なんともうれしいこけら落とし。
 トップバッターは岸谷香。バイオリンの高嶋ちさこをゲストに迎え、アコースティックにプリプリの『ダイヤモンド』『Get Crazy』『M』を熱唱。ぼく的にはカントリー風のアレンジが楽しい『Get Crazy』がお気に入り。ナマ『M』聴いて、当時女子たちが涙したわけがわかったような気がした。
 続いてバイオリニストの川井郁子。尺八とのアンサンブルで、荒川静香や羽生結弦が使用した曲など3曲を、和テイストで聴かしてくれる。尺八=虚無僧のイメージが吹っ飛んだ。
 『世界の車窓から』のテーマを奏でるチェリスト・溝口肇は、書家・紫舟とのコラボ。溝口肇の音に揺られるがごとく書画を描く紫舟。鶴を照らす朝日に浮かび上がる文字は『全力』。復興へ立ち向かう意志の強さを表しているようで、素敵です。あの羽模様はどうやって出したのかな…。そうそう、最初『全力』が『金力』に見えちゃって。俗世に蝕まれてるかな、ぼくは。
 こんな方々も?と驚いてしまったのが、倍賞千恵子とご主人・小六禮次郎、そして西田敏行のコラボ。倍賞千恵子はさすが元SKD(AKBグループではありません)、『さよならはダンスの後に』での歌声、ダンスは年齢を感じさせない。西田敏行とのトークも面白かった。西田敏行はもう最高の一言。名曲『もしもピアノが弾けたなら』の歌声は感動の一言。この歌、池中玄太ドンピシャ世代だけに、心に響くのよ。溝口肇の『鳥の歌』(同名異曲)と紫舟の鶴が伏線だったか。『淋しいのはお前だけじゃない』も聴きたかった…コンサートとかしないかな。最後は『ふるさと』大合唱。
 そして大トリは甲斐バンド。観客の三分の二は甲斐バンド目当てだったみたい。こちらもアコースティック編成で。昔は若すぎて彼らの曲が纏う陰を咀嚼できなかったけど、この歳になって聴くとすごくわかる気がする(なんだか元春の歌詞みたい) 。アコースティックVer.の雰囲気もあったと思うけど、ぼくも少しはオトナになったのかな。『安奈』や『HERO』などメジャーどころを4曲。ラストの『HERO』はもう大合唱。甲斐よしひろ、格好よかったよ。やすひ腰を体現できる数少ないアーティストだね。あと田中一郎の髪型、ブレないなぁ。
 オーラスに全アーティスト登場で…がなかったのは残念だけど、すごく楽しく、オトナのこけら落としだった。


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「バルフィ!人生に唄えば」を観る(14.10.13)

 ボリウッド映画から目が離せない。惜しくも見逃した作品もあるけれど、どれもが心に響くのだ。なんだろな、忘れかけていたものを思い出させるというかなんというか。なぜかしらぼくの心に響くんだよね。
 そんでもって今回の『バルフィ!人生に唄えば』もまた、ビシバシとぼくの心を揺さぶってくれた。純粋さが尊いものだってことはわかってはいるけど、誰だって人生に打算を持ってるわけじゃない。あの真っ直ぐな気持ちだけで生きてた日に戻りたいって思うじゃない。だから、バルフィとジルミルがすごい素敵に見えるんだよね。でも、ぼくはきっとシュルティにもなれない。バルフィの言葉を唯一理解できる友人にも、バルフィを追い回す警官にもなれないだろう。こんな打算で生きてきた、汚れちまったぼくには。
 耳が不自由だけど、表情で語る男バルフィ。シュルティとの恋に破れ、何もかもがうまくいかなくなったときにそばにいたのは、自閉症の幼馴染ジルミルだった。ストレートな心のぶつかり合いがもたらすものは?
 ボリウッド版『アメリ』と評する方もいるようだけど、とにもかくにも素敵な恋物語。名画のオマージュもいやらしくなく、素のままで受け入れられる。いい映画だよ、ホント。
 ジルミルを演じたプリヤンカー・チョープラーさん、20世紀最後のミス・ワールドだとか。役の入り方がすんごいです。シュルティ役のイリアナ・デクルーズさんも綺麗だったし、インドの女優さんたちの美しさにやられちゃいそうだよ。


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「喬太郎北伝説2」を観る(14.9.28)

 柳家喬太郎の札幌での、いや新札幌での独演会『喬太郎北伝説』も今回が2回目。札幌の高校教師が主催するアットホームな独演会。よくぞ我がホームタウン・新札幌に来てくれて。「いや、札幌じゃなくて新札幌ですから」の毒舌がかえってうれしい独演会。
 やっぱり喬太郎は巧い。しぐさ、声色を自在に操り印象付けする登場人物は、いかにも表情豊かで市井に生きる人々そのもの。そして彼らの表情が豊かなことこの上なし。まさに喬太郎劇場なのだ。メリハリの付け方がたまらないんだよね。新作も古典も喬太郎メソッドにかかればめちゃくちゃ楽しい世界に。ところどころ挟まれる本音はご愛嬌。
 これが本日の演目です。
 ちゃん平さんはこの回の主催者。高校の先生だそうです。元学生落語チャンピオン。この先生の授業って、面白いんだろうなぁ。
 『寿司屋水滸伝』は新作落語。寿司を握れない店主のいる寿司屋に集う職人たち。その素性は・・・。店主と職人の心意気の差が、ダイレクトに伝わります。
 『花筏』は大関・花筏になりすまし地方巡業に出かけた提灯屋のお噺。ヤマ場の立会に滴る脇汗が見えてきます。声の緩急に魅せられます。
 『井戸の茶碗』はいい人ばかりが出てくるはずなのに、ところどころに悪い顔が覗けたり。でもその悪人顔も愛嬌があるんだよね。いとおしいくらい。
 4編、枕も含め大笑いでした。
 間に道新寄席が入ったから、いよいよ喬太郎も新札幌とおさらばかと思いきや、高座のうえで次回独演会の日程まで決めちゃううれしいハプニングも。このLive感、寄席ならではだよね。粋だなぁ。


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「マダム・イン・ニューヨーク」を観る(14.9.21)

 インド映画が面白い。これまでの勧善懲悪ストーリー(それはそれで面白かったが)から、日常の中の物語を描いた作品が多くなり、今のインドの一面を知ることができる。
 『マダム・イン・ニューヨーク』は英語が苦手なため、家族から軽視されがちな主婦が、姪の挙式のお手伝いで単身訪れたニューヨークで一念発起。英会話教室に通い、英語習得に取り組むのだが・・・。
 主婦・シャシがなにより美しい。そのうえ、お菓子作りは商売としても成立させるほどの腕前なんだもん、自慢のお母さんじゃない。息子ならマザコンになってもおかしくないよ。ヒンドゥー語はインドでは公用語なんだから、英語が話せないくらいで一番身近な人を軽んじちゃいけないよって思うんだけど、これが今のインドなのかも。
 それだけに、ニューヨークでのシャシ、慣れない地での戸惑いを乗り越え、踏み出す勇気を手にしたシャシはより一層美しい。4週間だけの先生や悩みを共有するクラスメイトたちとの親交が眩しくて。ぼくもこんな一歩を踏み出したい。
 もちろん、いい事ばかりはありゃしない。でも、一度身につけた勇気はシャシをひと回りもふた回りも逞しくするのです。
 ほんと、観る者に勇気を与えてくれる映画。そして、シャシももちろんなんだけど、姪のラーダがとてもいとおしく思える映画。ぼくもニューヨーク・・・とは言わずとも、海外へ行ってみようかな。


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石田衣良「池袋ウェストゲートパーク青春篇 キング誕生」を読む(14.9.17)

 池袋の王(キング)を知ってるかい?氷の微笑と熱いハートを持ち合わせた絶対君主を。Gボーイズのトップに君臨するタカシ。同じく池袋でトラブルシューターの名を持つマコトのダチ。IWGPシリーズにおけるマコトのバディとしての登場回数が一番多く、同じ時にバディとして登場するサル(暴力団構成員)と違い組織に属さず、ー大組織の頭をはる男。
 IWGPのレギュラーメンバーはとても個性的で、どのメンバーも登場が待ち遠しいが、タカシは別格だろう。シリーズの語り手であり主人公のマコトを喰いまくってる。
 そんなキングがいかにして生まれたか。IWGP青春篇と銘打たれた本作は、誰からも愛された兄を失なったタカシが池袋の王になるまでの、哀しくせつない物語だ。
 帯に書いてあるからネタバレするけど、タカシの兄タケルは若くして命を落とす。人が死ぬことにより動き出す物語はあまり好きじゃないが、それでしか生まれない人格もあるわけで、それこそがタカシなのだ。タカシの冷たい笑も、熱いハートも。
 思い起こせばIWGPシリーズでタカシの家族のことを語られた文章ってなかった。よくぞ連載10年の間、書きたいという衝動を抑え続けてくれた。家族まる出しのマコトと対象的な立場にタカシを立たせることって、読み手にも切迫感が伝ってきたもん。
惜しむらくはTVシリーズとの完全なる決別。宮藤官九郎による脚色はあったにせよ、どちらとも好きなぼくは繋がっていると思いたかったので、TVシリーズでの銭湯シーンや武骨なオヤジの存在すべてがFakeっていうのはちょっと辛かったかな。
 10年前のストリート事情を取り入れたストーリーはいつものとおり最高に面白い。さすが石田衣良。
 でも、タカシを最高に魅力的に語り続けることこそが、マコトのタカシへの愛であり、約束なんだろうな。


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悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』を観る(14.9.14)

 わかるとわからないの真ん中で。
 テーマ曲で連呼されるこのフレーズが、この芝居のすべてなのかな。
 大阪出張、帰りの飛行機までの時間で初めて観た「悪い芝居」。予備知識ゼロで挑んだところ、見事に難問に当たった感じ。虚業を突き詰めようとするものと、現実を捨てられないもの。自由の中の依存。
 既視感っていうのかな?バンドの見せ方なんかも含め、どこかで…。
 これまでにいろんな劇団がいろんなチャレンジをしてきて、ある部分はもう一周しちゃってたり、違う部分はこれからだったり。表現方法だったり、テーマだったり、作りだったり。「悪い芝居」の立ち位置がわからないので上手くは書けないけど、推進力のある劇団なんだなって思った。これからどんな方向に進むのか。
 主役の女優さん、正当的な関西のフロントに立つ女性芸能人の流れをくんでます。将来関西系情報番組の司会をしてそう。


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早見和真「スリーピング・ブッダ」を読む(14.9.13)

 書店で平積みされた本書を見て、仏の道を志す若者たちの、ある意味青春小説だねって思って買ったのに、挫折も大き踏み出すための原動力かと思って読んでたのに。その展開には驚かされるばかり。宗教ってなんなのか、金儲けの手段と割り切れば楽なのかもしれない。しかし、突き詰めようとすればするほど、出口の見えないものなのか?
家族を失い、仏とはなにか、住職にできることはなにかを疑問に思いながらも、仏の道へ踏み出す二世修業僧と、安定を求めて仏の道に入る元バンドマン。親友である二人の歩みは時に寄り沿い、時に離れながらも、それぞれが宗教にできることを、その形を見つけようと、もがき苦しみ歩んでいく。読み手はハラハラしながらそのおぼつかない歩みを見守るのみ。手助けなんかできやしない。小説なんだから当り前だけど。
答えはいつも風の中。大きな大きなテーマを前に、青春小説なんて一括りにされちゃ困る。そんな著者の声が聞こえてきそうだ。未熟者でスミマセン。いつかぼくが宗教という存在にすがりたくなる日が来たら、彼ら若僧の奮闘を思い出し、思案することにしよう。


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「ゆうちょ笑福亭鶴瓶落語会」を観る(14.9.7)

 何度も書いているとは思うけど、ぼくは学生の頃落語家になりたいと思っていた時期があって。その時に弟子入りするならと思っていたのが、三遊亭圓丈と笑福亭鶴瓶。でも、その頃は鶴瓶師匠が落語をやらない落語家だってこと、そんなに知らなかった。北海道でも鶴瓶司会の『突然ガバチョ』は放映されていて、毎週楽しみに見ていて。そこには鶴瓶の師匠・笑福亭松鶴も出演していたし、松鶴師匠の落語は聞いたことがあったからさ。弟子の番組にレギュラーで出る師匠。その仲の良さがうかがえてたし。
 そんな師匠とのやりとり、落語をしない落語家誕生の秘話から始まる落語会。鶴瓶のやんちゃぶりに垣間見る師匠への愛情は、なんかうらやましいです。それを枕に『かんしゃく』を。完全に松鶴物語になっている鶴瓶Ver.。愛情と愛情の裏返しと、叱咤も激励も人生の糧になっていれば、すべてがありがたいお言葉なんだよね。
 続いては新作映画で共演した吉永小百合、阿部寛の話から兄弟、嫁の話へ移行してからの『三年目』。昔、まだ鶴瓶が東京に単身で進出してた頃の雑誌インタビューで、「毎晩ホテルで嫁を思いながらオナニーして寝る」と言ってたのを読んだ。この人、ホントに嫁さんを愛しているんだろうなぁ・・・って思ったもん。ゆえに、『三年目』に関しては嫁さんを想いながら語っているんじゃないかな。それゆえに愛情が伝わってきます。
 中入りを挟んで落語界の交流話から。、先輩たちが一門も何も関係なく、惜しげもなく演目チョイスやさげのアドバイスをくれたりするなんて、素敵だなぁ。それから故・中村勘三郎とのお茶屋にまつわるエピソードに続き、『立ち切れ(線香)』へ。この噺は朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』でも核になる噺のひとつなんで、どうくるかと思いきや、そこは鶴瓶噺。人情噺はお手の物だよね。こちらは大胆なアレンジはなく、元の話をじっくり聞かせる熱演。三味線が鳴り響くあたりはやっぱりグッとくるよね。
 鶴瓶の人柄がにじみ出る落語会。楽しいひと時でした。


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「君となら」を観る(14.8.24)

 三谷幸喜が『君となら』をセルフカバーする。こう書いたのも、脚本は三谷幸喜だけど初演、再演の演出家は彼ではなかったのね。斉藤由貴は竹内結子に、角野卓造は草刈正雄にと、タヌキ顔からキツネ顔にイメチェンです。でも、宮地まさことイモトアヤコのチェンジはイメージ的にまんま。そこは変えられない軸だったのかな。
 変えていないといえば、脚本にも手を加えなかったとか(パンフの三谷幸喜インタビューより)。これは彼の過去への挑戦の一つだったようだけど、基本あて書きの三谷脚本、面白い効果となって表れたような。
 主演の竹内結子は斉藤由貴が持っていたおっとりや天然さが排除され、ずるい女感がひしひしと。それが最後の父の言葉につながって、違った意味でもずしりとくる。一方、父親役の草刈正雄はもちろん角野卓造とだぶらせるわけにはいかないけど、これがめちゃくちゃいい味で。二枚目の草刈正雄を見てきた世代にとっては、「こんな役もハマるんだ・・・」と、驚きを隠せないというか(失礼ですよね)。イメージ的に竹内結子の父を角野卓造ではないだろうけど、ダメおやじ的要素をしっかり受け継いでかつ、ずるい女のルーツもうかがえて。
 もうひとつ、脚本を変えなかったことにより、時代設定が観る者にとってあいまいになった。舞台の設定は初演1995年ころ。まだ携帯電話が一般には普及されていない、ポケベルのあった時代。でも、本作に時代考証的セリフは一つも出てこない。初演を(映像で)観ているものにはすぐ腑に落ちることも、所見の若い人には「おいおいポケベル!」とツッコミどころになっている(隣のお兄ちゃんが声に出してツッコんでた)。これも狙いなのかなぁ。観る者が勝手に想像すればいいやって。
 ネタはすべて知っている。それでもやっぱり笑わされる。人を変え、演出を変え、観客も変え。名作が代々受け継がれていく過程を、この目にしている幸せ。いつの日か斉藤由貴がお母さん役をやるVer.も観てみたいね。その時の娘役は誰なのかなぁ・・・。


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「KOKI MITANI'S SHOW GIRL」を観る(14.8.24)

 『君となら』との通し鑑賞券で購入した『ショーガール』。『君となら』終演2時間後に開演って、裏方さん大変だよ。だって、『君となら』の舞台セット、めちゃくちゃ大きいんだもん。
 『君となら』終演90分後、再び劇場に入り、ステージを見て驚いた。あのでかい家のセットがそのまま残っているじゃないか。細部に変化はあるものの。
 そこへ乱入したコソ泥風の5人組。居間と庭を舞台にショータイムの始まり。
 いやいや、これお洒落です。プチミュージカル・探偵との出会いから始まって、メドレーへと流れる構成なんだけど、なんといっても主演のお二人、川平慈英&シルビア・グラブが素敵すぎる。歌に踊りに、魅せ聴かせ。シルビア・グラブのナイスなBodyには、目のやり場に困っちゃって。高嶋政宏がぞっこんなのがわかります。
 この楽しさを言葉にするのは難しい。三谷幸喜の作・演出だけに、笑いも散りばめられているけど、なにより歌と踊りで勝負して、これがとても楽しいんだから、言葉なんていらないんだろうなぁ。
 もう一回観たい。このところ状況が多いから、チャンスはあるかな?今回は前から3列目だったので、次は全体を観れる位置で。
 大人のエンターテイメントを堪能したのです。


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神崎京介「芝の星 上〈春・夏編〉、下〈夏・秋編〉」を読む(14.8.23)

 W杯があったからというわけではないが、サッカー小説が読みたくなった。正確にはこの作品の紹介にあった「戦術を読む」的な言葉にひかれて、この作品を読みたくなった。戦術を読ますサッカー小説。これまでになかったアプローチだよね。
 サッカーが盛んな静岡県。とある女子高が共学化した初年度、男子学生は1年しかおらず、サッカー部は存在すらしない。そんな境遇のなか、クラブJrユース出身のムサシを中心に部員集め、顧問捜しからはじめた弱小サッカー部が快進撃をする物語。1年生12人のチームゆえ、伝統に縛られることなく、自分たちに適したスタイル、勝つための戦術を探究しながら。
 物語の舞台のほとんどが試合会場、グラウンド、部室。まさにサッカー潰けの小説なのだ。物語の序盤こそ顧問の過去が語られたり、いかにも問題児や美人マネージャーの登場など伏線が張られているけれど、全部まとめてうっちゃって(あっ、ネタバレ)、気持ちいいくらいサッカーなのだ。読み手としてはなにより展開が早く、結果を読むことができる。サッカーの試合同様のスピーディーさは大歓迎。中ダレすることなく弱小チームの快進撃を読めて楽しかった。
 作者はシステムを含めた戦術の大切さを伝えてくれる。ピッチ上の選手たちの気持ちを伝えてくれる。サッカーの面白さを伝えてくれる。いい小説だ。
 でもさ、高校年代の1年と3年の体力差って相当な差があり、全員がサッカーエリートじゃない限り1年生12人だけでの快進撃は厳しいと思うんだよね。まだルール上、野球の方が現実味あるかな。とか言いながら、マンガ『シュート』には心奪われたけど。


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大人の新感線「ラストフラワーズ」を観る(14.8.22)

 大人計画と劇団☆新感線。今を時めく2大劇団がタッグを組んだのが大人の新感線。新感線の舞台に大人計画のメンバーが出演することは多いし、宮藤官九郎のウーマンリブでは両劇団の人気キャラががっつりとぶつかり合った『剣轟天vs港カヲル』を上演しているだけに、友好関係は知れたもの。でも、今回は全劇団員ががっつり交わってのお芝居なのだ。
 松尾スズキの毒のある脚本をいのうえひでのりがPOPに演出する。それを古田新太、阿部サダヲをはじめとする両劇団員が見事に彩って。さらにスカパラの音楽があいまって、それはもう豪華絢爛。かっちょいい仕上がり。
 遺伝子操作、やくざの抗争、世界征服、諜報機関。なんとツボを突いたたま出し。しかも幕前、幕間には『0011ナポレオン・ソロ』や『チャーリーズ・エンジェル』のテーマを流して高揚感をあおる。それだけでも十分ワクワクじょないか。
 本編はどうだったかって?そりゃもう。あれやこれやが縦横無尽に張り巡らされ、こりに凝ったSTORY。面白くないわけないじゃない。やっぱ古田新太はかっちょいい。何を書いてもネタバレになりそうなので、ここは割愛。でも、面白い!
 舞台のメインテーマソング『ラストフラワーズ』。原曲はスカパラの『チャンス』なのね。収録されているアルバムを購入し、最近よく聴いていたので、びっくりしたような、うれしいような。星野源の歌声をまるまる聴けるのは、めっちゃ得した気分なのさ。サントラCD、売ってたのかなぁ。パンフは買ったんだけど・・・。


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「大友良英&スペシャルビッグバンド in SAPPORO」を観る(14.8.9)

 この頃、映画の番宣で能年玲奈を観る機会が増えた。そうなるたまたあまロスがぶり返すとでも言いましょうか。そんな中、大友良英がスペシャルビッグバンド(あまちゃんスペシャルビッグバンド改め)を引っさげて札幌にやってきた。そうなると、期待しちゃうよね、演奏を。
 本当なら去年の紅白であまちゃん卒業も、去年のツアーで札幌にはこれなかったからと(旅費が高かったそうで)、大盤振る舞い大宣言。通常演奏とあまちゃんをどどっと大放出。
 大友良英本来のノイズミュージック、フリージャズとあまちゃん音楽を聴き比べると、一見無縁に思われるけど、確かにあまちゃん音楽にノイズミュージックやフリージャズが根付いている。もちろん露出度に大きな差はあるけど。混沌さ、猥雑さの大きなうねりに浮かんでくる調和。その重なりが大きいほど、厚みが増すほど必要なコンビネーションの妙。音を楽しむだけでなく、交わされるアイコンタクトを追うだけでも面白い。
 大友良英ってサドだと思う。ルパン三世2ndシーズン「五右衛門危機一髪」では拷問にも用いられたノイズミュージックを観客に披露することもそうだけど、ロングブレスで息絶え絶えのホーンセクションを笑って眺めて止めないところなんて、本物だよ。リズム隊の汗だくプレイにもにやりと一番楽しんでいる。バンマス兼ギタリストの特権だよね。
 名前は知らないが聞いたことのある(ハズ)の音楽が、独自の解釈で大胆にアレンジされ、伝わってくる。そしてより一層あまちゃんの音楽たちが深く響いてくる。素敵だぞ。かっこいいぞ。『希求』と『灯台』には泣きそうになった。
 これがナマでの聴き納めなのかと思うと、感慨深いなぁ。これでほんとに卒業なのかな、あまちゃんから、ぼくも。


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五十嵐貴久「サウンド・オブ・サイレンス」を読む(14.8.8)

 誰にでも夢中になる資格がある。どんなことだって、チャレンジする権利は持っている。権利なんて大げさなものじゃなく、ごくごく普通で、とても当たり前のことなんだけど、そうでもないのが現実。そんな現実に風穴を開けるような物語が本作だ。
 三者三様の理由で聴力を失った少女たちが、大きなハンデを背負いながらもダンスにチャレンジする物語。そこに寄り添う健聴者の少女。理解することの難しさ、伝わらないことのもどかしさ。
 知りたい、隠したい、近づきたい、距離を置きたい、でも踊りたい!
 接することの難しさに始まり、共有する時間の尊さ、なしえたときのうれしさまで、そこに音はないのだけれど、深い絆が生まれていて。おじさんとしてはうるうるさ。
 音のない文学の世界で感じる、音に頼らない少女たちのダンスの世界を堪能するぜいたくさ。堪能してください。
 ヒップホップやダンスミュージックが主体の物語。でもタイトルがサイモン&ガーファンクルの名曲だなんて、Coolだね。


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「bananaman live 2014 Love is Gold」を観る(14.8.1)

 やっぱり好きだ、バナナマン。設楽&日村の織り成す世界観、もうたまらない。テレビでは観ることのできない、司会とリアクションじゃないバナナマン。大好きだ。
 ただでさえテレビに出まくってる二人。そのうえ設楽さんが帯番組持っちゃったから、地方公演は厳しいんだろうなぁ・・・ならば年イチのライブに参戦するしかない。チケット獲れただけで涙目だもん。
 愛?お金?永遠の難題をテーマに綴られるコント集。そこにはただ笑うではなく、ときに切なく、ときにあとすさりしちゃいそうなくらい、いろんな愛の形が詰まっている。6編のコント(「CRAZY for YOU」「wish」「the Supernatural」「AKEMI」「赤えんぴつ」「LOVED ONE」)と合間を縫う映像が、バナナマンの世界を構築している。
 AKEMIさんは朱美であって欲しい。ぼくには『めぞん一刻』の朱美さんに見えて仕方がなかった。朱美さんの放つ言葉の一つ一つが胸に突き刺さる。「心抱かれたら終わり」。たまらんぞ。でも、でも、でも。まさかあの秀逸なコントで日村さんが大失態を演じていたなんて。DVD発売されたら確認しなくっちゃ。
 あとはもうヒムドン。切ないです。でも、みんなそうやって大人になってきたんだよね。ひとりぼっちの子供のままのぼくには、まだヒムドンが見えるのだろうか・・・。
 やっぱ、札幌にも来て欲しいなぁ。さっぽろんが待ってるよ・・・って、なんじゃそりゃ。


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富樫倫太郎「謙信の軍配者」を読む(14.7.19)

 早雲、信玄ときて、トリは謙信の軍配者。足利学校で出会い、数奇の運命を歩いてきた3人の軍配者。iいつか学んだこと、育んだことのすべてをかけて、命のやり取りをする日を待ち望んでいる親友たち。なんとひねくれた関係なのか。いや、なんて純粋な関係なんだろうか。軍配者としての可能性をひたすら追求し、よきライバルとして認め合う3人。その最後がいよいよ描かれる。
 タイトルこそ謙信の軍配者・冬之助となってはいるけど、半分は信玄の軍配者・山本勘助(四郎佐)の物語となっている。長きに渡り謙信と信玄が競い合った川中島の戦いを、二人の軍配者の視線で描いているのだ。
 それにしても好対照な二人。名家に生まれ、なに不自由なく育ち、若くして軍師として名を上げた後、転落人生を歩み、四郎佐に命を救われた末に謙信に辿り着いた冬之助。幼少期から不遇の連続ながらも志をあきらめず、四十を越えて信玄にめぐり合った四郎佐。若き日の栄光を捨てざるを得なかった男と老いてから幸せを得た男。謙信と信玄の闘いの裏側にあったかもしれない、もうひとつの激闘。
 胸が熱くなる。直接剣を交える闘いではなく、思考をめぐらし相手の裏をかく心理戦。それでいてノーサイドの精神を持ち合わせている。なんとも素敵な友情の物語。やっぱり物語には好敵手が必要なんだよね。


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「女子ーズ」を観る(14.6.15)

 残念ながらぼくは女子という生き物のことがわかっていない。まぁ、だからこそ未だ独り身なんだろうけど。でも、女子には多大なる興味を持っている。だって、オトコだもの。しかも、かわいい女子が5人も揃ったら・・・。前売り買って待っちゃったよ。
 やりやがったな、福田雄一。女子の戦隊モノといえば、藤沢とおるの『ひみつ戦隊モモイダー』を思い出しちゃうけど、それとはまったく無関係。ショートコントというか、4コマ漫画を繋いだみたいな、いたるところのオチがある楽しい映画に仕上がっている。ただ笑いにするのではなく、異なるタイプの女子をなんともいとおしく描きながら。
 もちろん、戦隊モノのセオリーは踏襲している。責任感の強い赤。反発心を持つ青。生活観の滲む黄。マイペースな緑。お嬢様の・・・紺?桃は・・・?しかも全員揃わないこともしばしば。だって女子だもん。そこに生まれる葛藤。女子ゆえの悩み。なるほど、女子ってそうなんだ・・・。
 スクリーンに向かって叫びたかった。「ともだちがだれかなら、オレが教えてやる!」「オレも腹出てるけど、オレじゃだめか?」。でもぼくの好みは違うんだよなぁ。そこが難しいところ・・・いやいや。
 これを観て女子の生態がわかったなんて言っちゃうほど、ぼくもうぶじゃないんだけど、面白すぎて何回も観たくなる。やられたよ、福田雄一。


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朱川湊人「かたみ歌」を読む(14.6.13)

 アーケードのかかったアカシア商店街がある都内のとある下町。「アカシアの雨がやむとき」が流れるこの街で起こる、死にまつわる不思議な出来事の数々。それらは悲しくもあり、せつなくもあり。時を越えて語られる不思議な出来事は、昭和30〜40年代という時代のどことなく妖しい感じにあいまって、「あるよね、きっと」と思わせてくれる。神隠しって言葉が、犯罪じゃない不思議な現象に。
 そんな時代背景だからこそ成立する物語。人の情が織り成す綾が心に響くのです。この街にぼくが住んでいたら、だれの想いを感じることができるだろうか。あっ、ぼくの情がこの街に残ってるかもしれないよね。
 誰かが誰かを想い信じる。その気持ちがこの短編連作を成り立たせているんだよね。平成の世では描けない、ノスタルジックな物語でした。


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「篠山紀信展 写真力」を観る(14.6.6)

 イケてない学生生活を送っていたぼくにとって、篠山紀信は敵対心を持つ存在だった。だって、ぼくなんか女の子と話すのもドギマギするというのに、次々とアイドルや女優たちと関わり、ときにはグラビア、ときにはヌードを撮りまくる。まさかって女性までが脱いじゃったりして。しかも、南沙織と結婚したとか。羨ましいったらありゃしない。いってみれば、ただの嫉妬なんだけどね。
 彼が撮り続けてきた写真の中から、写真力の満ちたものを集めた展覧会。ちなみに写真力とはざっくりいうと、撮影者も被写体も予想しなかった奇跡の1枚のことで、写真の神様が降りてきた瞬間なんだそうで。
 確かにすごい。どの写真からも、テレビや映画では見ることができない瞬間が写し出されていた。言葉にするのは難しいんだけど、見ればたちどころに惹き込まれる。誰もが彼に撮られたがる理由がわかった気がする。でもね、インタビューVTRで本人が言ってたけど、毎回毎回写真の神が降りてくるわけではないんだそうで。
 ポスターにも使われているジョンとヨーコに始まり、『GOD』『STAR』『SPECTACLE』『BODY』『ACCIDENTS』に分けられた展示。凄すぎた。
 山口百恵はもう別格。王貞治の”意欲”と長嶋茂雄の”戸惑い”の対比もよかったし、撮りたて能年玲奈や国立競技場聖火台のももクロもタイムリー。幼き日の満島光の目力もすごかった。でも、一番写真力があるとぼくが思うのは、週刊朝日の表紙を飾った宮崎美子。他の方々は多かれ少なかれSTARとしてすでに歩んでいるのに対し、このときの彼女はまだ地方の女子大生。でも、この写真はまだガキだったぼくでさえ鮮明に覚えている。写真力が彼女をスターに押し上げたんだよね。
 『ACCIDENTS』は震災直後の被災者の方々の衰えることのない意志を写真力が引き出している。そんな風に感じられた。
 素の姿の美しさにあふれた『BODY』(ぼくは刺青には否定的だけど)、非日常空間の神秘『SPECTACLE』。どれもが彼でないと写し出せない世界だった。
 1枚だけパネルを持ち帰っていいと言われたら・・・荻野目慶子・・・宮沢りえ・・・いやいや迷わず宮崎美子で。


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夢枕獏「獅子の門 鬼神編」を読む(14.5.24)

 執筆開始から30年。ついに『獅子の門』が完結した。ぼくが読み始めたのは学生の頃。いやいや長かった。4人の格闘家を志す若者の成長物語。で始まった『獅子の門』。同じく夢枕獏の30年以上未完の格闘技小説『餓狼伝』がプロレスからのアプローチだったのに対し、『獅子の門』は空手からのアプローチ。空手の勝敗がハッキリするところが、成長物語にはピッタリだって思いながら読み始めた記憶がある。
 でも、30年だ。30年の執筆の間に世の中が大きく変わり、格闘技の取り巻く環境や獏さんの興味も大きく変化していく。その移り変わりがこの小説から読み取れる。30年前には存在しなかった携帯電話が自然と入り込み、ブラジリアン柔術の台頭が描かれる。そして、ルールのない何でもありの闘いに軸足がずれていく。この時点で空手としての若者たちの決着はないと思ったら、最後は若者たちの水先案内人の闘いだった。
 30年はすごいなぁ。正直、物語の細部なんてもう覚えちゃいない。昭和から始まって、物語の中ではたいした時間が流れてないのに、30年分のあれやこれやが濃縮され、すごい密度になっているのだ。闘いの面白さ、登場人物たちの心の動き。前を覚えてなくたって、その瞬間を読ませることができ、楽しませることができる。すごいなぁ、獏さんは。
 正直、心の荷がひとつ下りた気分です。


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「大野雄二&ルパンティックファイブ〜ルパンジャズライブ〜」を観る(14.5.22)

 毎年恒例になりつつある大野雄二&ルパンティックファイブ。大好きな名曲たちをナマで聴ける貴重な場なのだ。メンバーも固定、演奏する曲も主要なものはほぼ一緒。でも、毎回アレンジの細いところとアドリブを変えてくる。ジャズだもん、同じ演奏なんてありゃしない。あっ、そこで跳ねる、下げる、割る…なんて新鮮な驚きがいっぱいあるのだ。残念ながら昨年の演奏を覚えているかというと、そんな記憶力はないんだけど。
 ジャズマンたちのアドリブ力ってすごい。ついついソロ演者に目が行きがちだけど、恒に後ろを支えているリズム隊(ドラム&ベース)の適応能力たるや目を見はる。ソロのアドリブに合わせるばかりか、掛け合うようなプレイを随所に繰り出してくる。これはナマならではのお楽しみ。それが新たなアドリブを産み、グルーヴへと繋がっていくんだと。ギターの細いプレーはかくし味。
 御大?歳の大野雄二のピアノ&オルガンはやっぱり冴えていた。前に出るプレイも、後ろで支えるプレイも。特にぼくはオルガンの音色が好き。でも、『炎のたからもの』のピアノソロはいつ聴いても心打たれるんだよね。
 とはいいながらも、ぼくには聴きたい曲がある。大野雄二作曲の『大追跡のテーマ』。大好きだった刑事ドラマのテーマ曲。この曲とヘリから撮影した横浜市街。特に建設中の横浜スタジアムがすごく印象的で。ホーンとストリングスが織り成す軽快な曲だけに、6人編成のバンドでのジャズアレンジは難しいのかもしれないけど、この6人なら、大野雄二なら・・・。
 あと、『炎のたからもの』のVocal入りも聴いてみたい。



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「テルマエ・ロマエU」を観る(14.5.16)

 お風呂文化は日本だけのものにあらず。古代ローマではテルマエ技師が大衆浴場を用いて平和な世を造りだそうとしていた。テルマエ技師・ルシウスが古代ローマと現代日本をまたも行ったり来たりする。
 第1作が抱腹絶倒だっただけに、2作目はどうかななんて思ったけど、とんだ杞憂に過ぎなかった。最初から笑いにあふれていて、ぼくも含め館内爆笑の渦。今回は平たい顔族がパワーアップなのだ。もちろんぼくだって平たい顔族の、しかも最も典型的な一人なんだけど、でも画面いっぱいに並んだ平たい顔族の顔、顔、顔を客観的に眺めると、自然と笑いがこぼれてくる。これは自虐か?
 次々に難題を与えられ、そのたびに次元を超えて平たい顔族の風呂文化を学ぶルシウス。そしてなぜか傍らには平たい顔族の女が。
 ルシウス役の阿部寛はもちろんだが、今回は北村一輝が良かったな。覇気のある男、衰弱した色気。ぼくには男色の気はないけど、いい表情してるんだよなぁ。
 いろいろ書くと、即ネタバレになりそうなので、とにかく面白かったということだけはちゃんと伝えときます。そして、ラーメンと餃子が食べたくなることも伝えておきます。もちろん風呂にも浸かりたくなります。


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ねずみ三銃士プロデュース「万獣こわい」を観る(14.5.14)

 生瀬勝久がカーテンコールで言った。
「脚本・宮藤官九郎ということで観に来てくださった『あまちゃん』ファンの方、ゴメンなさい」
ねずみ三銃士プロデュース公演の魅力はなんといっても毒なのだ。宮藤官九郎が産み出す毒を、河原雅彦が形にし、生瀬勝久、池田成志、古田新太と3人のゲストが昇華する。その毒と相反しながらも散りば められた笑い。それらが怒濤の如く押し寄せ、圧倒されるのが病みつきになる。そして、今回は過去2回を上回る凄さに感動してしまった。めちゃくちゃすっげぇ芝居だった。
 とにもかくにも、毒の効き方がハンパなかった。最初こそインパクト勝負だった。でも、ハートフルな展開の中に仕込まれた毒が物語の進行とともに徐々に広がり、舞台のすべてを包み込む。心の内から感じる怖さがそこにある。でも、笑いもちゃんと。監禁〜一家惨殺の流れは西の方で実際にあったことだけど、パンフによると脚本の構想は事件発覚より前なんだって。現在、過去、未来がクロスする演出は、禍々しさを倍増させている。
 三銃士の演技が凄いのはわかりきっているが、三銃士が選んだゲスト3人もまたすごかった。夏帆ちゃんは『ヒトリシズカ』(WOWOW)、『みんなエスパーだよ!』(テレ東)、『箱入り息子の恋』(映画)とまるで違う役どころを演じ分け、ぼく的にはやられまくってたんだけど、その変幻がこれ1本で、しかもナマで見ることができる。前から二列目中央に陣取ったぼくは、のっけから倒れこんだ夏帆と目線ぴったり太ももバッチリ・・・いやいや、その変幻を目の前で堪能することができた。小池栄子も演技が上手いのは知っていたけど、とくに表情の作り方が上手かった。彼女特有の大きな目、大きな鼻、大きな口がその表情を際立たせている。これはまさに天性のものだね。それがゆえ、無になったときの彼女は・・・。そして小松和重。最初は本職の落語家かと思った。華はない。でも味がある。しかも底知れぬ味。華がない分の自由さ。他の5人の華を吸収しても余りある底の深さ。まったく、三銃士ったらナイスチョイスだわ。
 次にこの毒を味わうことができるのは・・・5年後?いやいや、今から待ち遠しいのです。それまで毎年ヘロインを・・・いやいや、ははは。


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「酒と涙とジキルとハイド」を観る(14.5.5)

 待望の三谷幸喜、パパになった三谷幸喜、待望の新作、待望のコメディ。主演はラブリン・片岡愛之助。二重人格ジキルとハイドを三谷幸喜が創作すると、とびっきりのコメディに変身するのです。
 ジキル博士が悪の心に満ちた人格を作りだす新薬を発表する前日、彼の研究室では博士の婚約者イヴが助手プールに、本当の自分について語っている。本当の自分を知って欲しい人の前では、緊張して本当の自分を見せられない。本当の自分を知っているのはどうでもいいと思う人ばかり。深いです。どうでもいいと思う人がどうでもよくない存在に変わるとき、本当の自分をさらけだせるのかもしれません。
 一方、ジキル博士は新薬の失敗を誤魔化すべく、一人の売れない役者に目をつけます。新薬を飲んだ自分の変わりに悪の心だけを持つ人格を演じるようにと。愛之助が藤井隆に大変身です。そりゃ無茶ってものです。でも、イヴは悪の人格ハイドがジキル博士のもうひとつの顔と信じ、惹かれていきます。お嬢様は不良に憧れるってやつでしょうか。そこからは変わり変わられ入り乱れる、ドタバタショーの始まりです。
 三谷幸喜がただ笑わすためだけに書き上げたこの作品、とにもかくにも面白い。4人とコンパクトなカンパニーのシチュエーションコメディながらも、どんどん世界が広がっていく。なんと言っても変身しないジキルのハイドとの葛藤。とくに愛之助と藤井隆のギャップにはやられます。「おいおいそっちかい」ってツッコミたくなる変身。傍観者を決めこみ弄ぶ憎らしさ。三谷ワールド炸裂です。
 それにしても、出演者を一層引き立てる当て書きは凄いなぁ。だって、この4人以外では成り立たない作品に仕上っているもん。特に優香のおしとやかに隠された華やかさと情熱は、惚れてまうやろレベルです。首のチョーカーと胸元に光る汗。やられちゃいます。志村けんの指導の賜物?
 迫田孝也の抑えた、それでいて扇動的な演技も作品のアクセントとなり、多いに盛り上げてくれます。
 このところの三谷幸喜は難しいテーマや海外作品の上演台本が多かったので、ホント待ちに待った大笑いでした。最高!


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誉田哲也「レイジ」を読む(14.5.5)

 既に何度か書いているが、ぼくは誉田哲也の作品では警察小説よりも青春小説の方が好きだ。まぁこれは彼の作品に限らず、全般的にそうなんだけど。で、誉田哲也といえば心に女子を飼っていると言われるほどに、思春期の少女は瑞々しく描くのに、男子が主役の青春小説の少ないこと。まぁこれは警察小説でも同じかもしれないけれど。
 そんな彼の男子が主役の物語がこれ。彼らが志すのはMusic!80年代のMTVブームで洋楽の洗礼を受けたワタルとレイジが、時代に飲まれながらもそれぞれに辿るあてなき道。ぼくは彼らより年上だけど、音楽を志しはしなかったけど、同じムーブメントをOn Timeで見てきただけに、たまらんのです。2人の目指す音楽の方向性、その差から生じる軋轢。手にとるようにわかるのです。
 音楽のことが軸で物語は展開するけれど、2人の関係性って音楽に限らず、いろんな場面でぼくたちの中にも存在したよね。それがまた懐かしくもあり、心の隅に後悔をもたらしたり。男子なんてそんなものなのです。だから、音楽にかかわらず、グサリとくるのです。
 好対照な男子2人で思い浮かぶのが松本大洋。ペコとスマイルが、シロとクロがRockしてるんたぜ。とか書きながらも、いい曲を作るために徹底して分析を行うレイジの姿に、若き日の島田紳助を思い描いたりして。ではワタルは…。
がんばれ男子!がんばれぼくら!ナイスな青春小説また頼むぜ、誉田哲也!


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「U-1グランプリCASE05【JOVI JOVA】」を観る(14.5.4)

 ジョビジョバ、懐かしいなぁ。12年ぶりの復活。裏で糸を引くのは鬼才・福田雄一。そうか、解散から12年も経つのか。首都圏、特に女性には大人気だったけど、地方では意外と知名度低かったりして。でも面白かったよね。ぼくは『ジョビジョバ大ピンチ』から入った後発組だったけど、大勢の女性たちに囲まれて観劇したっけ。ということで、復活公演観てきました。みんな相当に老けてました。
 メンバー6人のうち2人が芸能界から離れていた(住職、会社員)にもかかわらず、休暇等を取得して集まった6人。冒頭コントは復活に向け、メンバーに声をかけ回るリーダー・マギー。長谷川朝晴との会話がやたらしっくりきていたので、リアルかと思いきやフィクションです。
 そこからは流れ全体の基本となるコーラスコントを軸に、さまざまなネタが繰り広げられる。センスで攻めるネタ、身体(いや心?)を張ったネタ、不条理もの・・・。途中の「???」な部分には、マギーと福田雄一による解説が入ったり。基本はマギー、長谷川朝晴、坂田聡の現役3人で回してたけど、アクセントに石倉力が加わることで、脱力感が生まれてくる。六角慎司のされるがまま感もいいんです。でも、12年ぶり舞台なのに度肝を抜かれたのは現役住職・木下明水だった。もちろんパーマネントではないから可能な存在感だったこともあるけど。福田雄一のグダグダ感(あっ、海賊は反則です)もアクセントになってるね。
 笑ったなぁ。ここの舞台をそんなに観ていないし、各人活動が笑いに特化していないから一概には言えないけれど、やっぱり集まってコントやると面白いなぁ。首都圏Onlyで収まって欲しくなかったなぁ。
 福田雄一が勝手に「またやります」っていってたけど、スケジュールの都合(特に引退組)もあるだろうけど、都内にとどまらずやって欲しいかな。


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富樫倫太郎「信玄の軍配者(上)(下)」を読む(14.5.1)

 『早雲の軍配者(上)(下)』に続く『軍配者シリーズ』の第2弾は、『信玄の軍配者』。軍配者養成所ともいうべき足利学校と京都・建仁寺に学びながら、出自と容貌で道を絶たれて不遇な時期を過ごす四郎左こと山本勘助。故郷・駿府で幽閉状態にある中、甲斐から我が子に追放され駿府で隠居の身となる武田信虎出会うことで、武田家の軍師としての道が開ける?いやいや、かなり険しい困難の果てなんだけど。
 早雲の軍配者・風摩小太郎と違い、山本勘助は小説にも映画にもドラマにもされまくってるから、作者がどう料理するか楽しみだったけど、これまでと違った山本勘助が描かれていて、面白かった。なんといっても、小太郎、冬之助との友情が、おっさんの心をほっとさせてくれる。戦うために助ける。己の知力のすべてをぶつけ合いたいやつがいる。そのためには命を助け、金も与える。すごい話しだよね。レベルが違いすぎる。
 戦国時代の信濃をめぐる争いといえば、『合戦屋』シリーズの石堂一徹を思い出す。村上義清を元の主君とし、信玄を妻と娘の敵として迎え討つ稀代の軍師。こうなると、勘助と一徹のシリーズを越えた精神的攻防を読んでみたいと思うのはわがままなんだろうなぁ。でも、ホームズとルパンが、コナンとルパン3世がシリーズを越えて戦ったんだから、勘助と一徹もって思うのは、軍師好きの悲しい性なのかな。
 残るは謙信の軍配者。近々文庫化されるシリーズ第三弾で、いよいよ小太郎、勘助、冬之助の三者の激突が見られる。もう、楽しみで待てないよ。


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海堂尊「ナニワ・モンスター」を読む(14.4.19)

 砂漠の真ん中から浪速府へ。ラクダを媒体とするウィルスの飛来は、日本を揺るがすパンデミックは、とてつもない野望の第一歩となる。
 海堂尊の桜宮サーガは、東京、極北を経て、関西の雄・浪速にその舞台を移した。浪速の町医者で見つかったインフルエンザは、政府が警戒し、水際作戦を決行してまで日本上陸を阻止し続けていたインフルエンザ・キャメルだった。でも、まだ日本には上陸していないはずのインフルエンザ・キャメルがなぜ浪速に、しかも渡航歴のない小学生から。そこにはとてつもない陰謀が隠されていた。なんと・・・。
 今回は新たな舞台ということで、新登場人物がいっぱい。浪速の町医者親子、テレビの寵児となる公衆衛生学准教授、官僚失格の烙印を押されt検疫官とその部下、西に下った検察のエースとその部下たち、そして浪速の龍。そこに加わるのはスカラムージュ・彦根新吾。桜宮サーガの中で、一番世界を知る男の登場で、物語はミクロからマクロへと飛翔していく。医翼主義の名のもとに。
 これはあくまで小説だ。でも、医師でもある著者・海堂尊は桜宮サーガに明確な意思を持たせ、読み手にメッセージを送り続ける。国を挙げての陰謀に阻まれたり、陰謀を打ち破ったりしながら。でも、フィクションとわかっていても怖いよね。国が国民の権利や利害を無視してまでも、保身に走り国益を損なう暴走をするのって。そんなことまで書かなきゃ彼の主張は届かないほど、現実では逼迫した状況にあるのだろうか。当然サーガも巻を重ねれば、それだけ大きな仕掛けが必要となるのはわかるけど。
 サーガ史上最大のスケールを、西から感じてみてください。そのビジョンの行く末を、確かめずにはいられなくなります。


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「ゲキ×シネ ジパングパンク 五右衛門ロックV」を観る(14.4.12)

 アジア、ヨーロッパを海賊として渡り歩き、再び日本に舞い戻った我らが大盗賊・石川五右衛門。宿敵である天下人・豊臣秀吉が統べる世で巻き起こる新たな嵐に、正面から立ち向かうのであります。空海の残した財宝の謎を追いながら。
 劇団☆新感線の極上エンターテインメント、五右衛門ロックシリーズ。歌え、踊れ、笑え。楽しいことがいっぱい詰まっているのだ。
 それにしても古田新太はカッコいい。いまや舞台のみならず、テレビに映画に個性派俳優として引っ張りだこだけど、凛々しくカッコいい古田新太が観れるのは舞台だけ。舞台での彼を知らない人は、きっとぶっ飛ぶはずなのだ。
 舞台オンリーといえば、ゲストたちもまたここでしか観ることができない一面を存分に魅せてくれる。歌と踊りが上手いのは知ってたけど、笑いまで習得していた三浦春馬。おきゃんな姿がCute過ぎる恋多き女・蒼井優。ミュージカルの御大・村井國夫やアングラお芝居の雄・麿赤兒も、想像できない一面を魅せてくれる。そして脇を固める劇団員の皆様。舞台ならではの醍醐味だよね。
 石田光成つながりなのか、粟根まことの話し方が、小栗旬に似てるなぁ・・・なんて、小栗ファンが読んだら激怒してしまうようなこと、思いついちゃったりして。
 とにもかくにも、見どころいっぱいで楽しいゲキ×シネでした。蒼井優、共演者がメロメロになるの、わかる気がするよ。


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道新寄席「柳家喬太郎 独演会」を観る(14.4.6)

 ついに道新寄席に喬太郎登場。今年は談春が上がらないので、人気者に白羽の矢?なんて意地悪なこと考えながらも、好きな噺家の高座が聞けるなら大歓迎なのです。本人も「道新さんは市馬、一之輔、談春」と揶揄したりなんかして。
 喬太郎の魅力って、対応力だなって思う。場に応じた笑いを散りばめる対応力、古典も新作も自在に話す対応力。今日も存分に・・・と言いたいところだったけど、今回は新作は封印。そういえば、飛び入りで高座に上がった新作の雄・三遊亭円丈の弟子・天どんも、得意の新作ではなく、古典を大胆にアレンジした噺だったなぁ。道新寄席は古典のみなんて決まりがあるのだろうか?
・柳家さん坊『転失気』
 さん坊って別海町出身なんだってね。さん喬一門はころっとした子を好むのかな?『転失気』は昨年の『三つ巴落語会in岩見沢』の前座で春風亭昇洋もやってたっけ。お寺の小僧が住職に抱く思いと、落語家の弟子が師匠に抱く思いが一致するのかな?いつか師匠にも仕返ししてやる・・・なんてね。
・三遊亭天どん『タラチネ』
 新作落語家が古典を演じたら、こんなアレンジになります。筋も下げも最初に解説、京都出身の嫁はアメリカとのハーフに。円丈譲りだね。それにしても、ふらりと現れていきなり高座に上げられて、場を湧かして帰る。さすがのひと言。こんな形で円丈の芸を引き継ぐものの噺が聞けて、うれしかった。
・柳家喬太郎『錦の袈裟』
 さすが喬太郎。上記の通り、抜群の対応力。それ以前に、登場人物の使い分けが抜群なんだよね。だから、登場人物が多い噺は「上手く聞かせるなぁ」って。個人的には寝起きの与太のスマートぶりがツボです。
・柳家喬太郎『うどんや』
 まだまだ寒い春の札幌にあわせて、温かいうどんのお噺。『三つ巴落語会in岩見沢』でもやったネタです。聞き比べなどできるわけもなく、普通に初見のごとく楽しみました。でも、喬太郎の落語を聞く機会が早々あるわけでもないので、できれば違うネタを聞きたかったという思いもあったりして。やっぱ新作を。


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海堂尊「輝天炎上」を読む(14.4.2)

 桜宮サーガの、東城大学の宿願であるAiセンター。その設立の顛末を綴った『ケルベロスの肖像』のアナザーストーリー。それがこの『輝天炎上』だ。『ケルベロスの肖像』が東城大学・田口先生の視点で描かれているのに対し、こちらは桜宮サーガで東城大学の反対側に位置する碧翠院サイドの視点で。光あるところに影があり、影はやがて闇に至るのです。
 碧翠院サイドは『螺鈿迷宮』以来なりを潜めていた天馬大吉、碧翠院の生き残り桜宮小百合、そして・・・。それにしても天馬くん、モテモテすぎるのにはちょっと嫉妬です。しかも、しかも・・・。
 天馬くんの逡巡いや決断。小百合の怨み。碧翠院に関わった者たち、桜宮巌雄に教えを受けた者たちの、方向は違えど深い思いが描かれている。『ケルベロスの肖像』がパレードなら、『輝天炎上』は葬送行進。まさに生を司る東城大学と、死を司る碧翠院の関係性そのままのイメージ。同じ事象も角度が違えば、思いが違えばこれほどにも印象が変わるのかと。
 個人的には、あの人には田口先生を想い続けていて欲しかったなぁ。あと、ぼくの中では桜宮サーガのレジェンド・天城雪彦の意志が違った方向で桜宮に降り立ったこと、またしてもスリジエは咲かなかったことが、実に悲しい。なんとかスリジエを桜宮岬に咲かせて欲しいのだ。
 それにしても、Aiを推進する作者が、組織的犯罪まで書き綴ってしまうほど、実際のところAiに対する警察の抵抗と干渉はは激しいのかな。勧善懲悪小説ならば、犯罪にまで平気で加担する警察は解体されてしかるべしだもんね。


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「ウォルト・ディズニーの約束」を観る(14.3.26)

 初めて『メリー・ポピンズ』を観たのって、小学校低学年の頃だけど、未だにぼくの心の映画5本の指に入り続けている。幼き日に感じた高揚感はそのままゆえ、今でも凹むことがあれば観直してるくらい。その『メリー・ポピンズ』製作には知られざるエピソードがあっただなんて…。
 ウォルト・ディズニーが映画化のために20年も交渉を続けていたこと、トラヴァース夫人の作品に込めた想い、スタッフたちの献身。どれもが初めて耳にすることばかり。正直、『メリー・ポピンズ』をダシにディズニーの創始者礼賛映画だったらタダじゃおかないってくらいに身構え、最初は「ホラ見ろ、娘にいい顔したいだけじゃん」って思ってた。でも、トラヴァース夫人のかたくなさをほぐそうとするスタッフたちの奮闘と、そこから生まれるアイデア=『メリー・ポピンズ』のシーンを観ると、富や名誉や自己満足ではない本気さが伝わってくる。ごめんなさい、ディズニー。
 過去と現在が交互に描かれ、トラヴァース夫人の想いが明らかになる。そして、ウォルト・ディズニーの想いも。出来上がりはよく知ってるけど、こんなウラがあっただなんて。
 でも、口説き落とすのに20年かかったのって、ある意味正解だよね。1960年代の技術があったからできた表現や効果がいっぱいあるし、スタッフたちの奮闘により生まれた楽曲やシナリオがないってことだもん。だからといって、リメイクは絶対して欲しくない。技術の進歩はある意味での味わいを消したけど、『メリー・ポピンズ』はその味わいがいっぱい詰まった映画だから。
 あの子憎たらしいウォルト・ディズニーをトム・ハンクスが演じてたこと、エンドロールまで気づかなかった。
 さてと、『メリー・ポピンズ』もう一度観ようかな。でも我が家のはレーザーディスクだから、消費税が上がる前にブルーレイ買うか。


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「星野源の復活アアアアア!」を観る(14.3.25)

 昨年7月の武道館ライブ、チケット持ってたのに中止の無念を晴らさんばかりに、ツアーの札幌公演に参戦。右も左も女子、女子、女子。完全に場違いEnglishman in NewYork。
 星野源の歌に強烈な主張はない。プロパガンダでも啓発でもYellでもない。どちらかというと淡々に、自分の気持ちを歌い綴る。それが日常の生活にすとんとはまり、心にしっかりと根付いてしまう。すると、病みつきになるのが星野源マジックなのよね。ぼくは心に乙女を飼っているわけじゃないけど、大半を占める女性客は同じこと考えているのではと思うのです。
 大病から復活を果した星野源。彼のスタイルがド派手なダンスや絶叫シャウトではないので、ハラハラすることはないんだけれど、歌う姿を見るたびに感慨深くなってくる。と同時に、CDでは伝わらない彼の醸しだす雰囲気と音の融合が、緩やかに身体と心を動かされるのね。
 メンバー紹介をフリに使った、まるでコントライブ仕立ての映像使いなんて、ミュージシャンと役者(しかも大人計画)の二刀流ならでは。しかも、くやしいことに大爆笑。緩急ではなく緩緩を使い分けたテクニシャンぶりを見せつけられました。
 アンコールは昭和の名曲を大胆にカヴァー(注:アレンジではなく…)。やや急で攻めたてます。これもまた計算されてて客は掌の上状態なんだよね。
 まったく憎らしいけど、心地よく踊らされた素敵なライブでした。どんぐりのちくわパンが恋しいです。


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「愛の渦」を観る(14.3.21)

 男たるもの、何歳になってもエロくなければならない。エロを失う=男じゃない。というのがぼくの持論。たとえ身体が衰えても、精神だけでもそうあり続けたいと思っている。でも、いついかなる時でもというわけにはいかないのも現実で。
 六本木のマンションに集う男女8人。彼らの目的は『乱交パーティー』。男20,000円、女1,000円。見ず知らずの8人の間に漂う微妙な空気。見栄、気まずさ、羞恥、欲望。その先に待っている快楽。人はなにを捨て、なにを得ようとするのか。
 全編裸、SEX、あえぎ声。でも官能映画とは違う、むき出しの人の本性がそこに描かれている。自分ならどうする?エロを素直に主張できるか?圧倒的な気まずさの前に取り繕うのではないか?あそこはギンギンのくせに。男女8人がそんなこと考えながらかけ引きを繰り広げ、ときにはCoolに、ときには激しく感情をぶつけあい、身体をぶつけあう。なんともリアルな物語。
 原作は三浦大輔率いる劇団ポツドールの岸田國士戯曲賞受賞作品。『恋の渦』では男女間の駆け引きをテーマに、リアルな感情を描いたけど、今作は本来隠すべき(?)性を露にした意欲作。いつでもエロく、いつでも素直にいることって難しいんだなと。でも、打ち破らない限り向こう側って見えないのね。


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「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」を観る(14.3.17)

 待ちに待った『キック・アス』の続編。なんたって『キック・アス』は秀作ぞろいの2011年で、ぼくにとってぶっちぎりのNo.1映画なんだもん。
 キック・アスが登場し、ビッグ・ダディ、ヒット・ガールとともに犯罪組織を壊滅してから4年。キック・アスは平凡な生活に戻り、ヒット・ガールは亡くなったビッグ・ダディの同僚の養女となり、これ見よがしな学園生活を強いられていた。街にはキック・アスに触発された自称ヒーローに溢れ、誰もがキック・アスの復活を待ち望んでいた。そしてキック・アスの復活を待ち望む男がもう一人。キック・アスにより父親を殺され、復讐に燃えるかつてのヒーロー、レッド・ミスト。やがてその復讐劇はスターズ・アンド・ストライプス大佐率いるヒーロー軍ジャスティス・フォーエバーと、レッド・ミスト改めマザー・ファッカー率いるスーパー悪党軍団の抗争へと発展し・・・。
 やっぱ最高。期待を裏切らないです。相変わらずの痛快感と爽快感。汚い言葉だって自然に聞こえるからたまらない。前作はダメ高校生デイブの成長がひとつの主軸だったけど、今回はミンディの青春に対するもどかしさが、とても愛おしく描かれている。さらにヒーローたちの集会がグループセラピー化してるのには笑い転げてしまった。繊細なヒーローたちと豪快な大佐。正義のためなら何でも許される超ド級勧善懲悪主義。それらが絶妙なフリとなって。
 でもって、ぼくが思うに今作はヒット・ガールのための映画だよね。彼女ナシではなにも始まらないもん。他にもいっぱい言いたいことあるけど、ありすぎて書けないし、ネタバレになっちゃいそう。とにもかくにも、第三弾にも大いに期待しております。


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「土竜(もぐら)の唄 潜入捜査官REIJI」を観る(14.3.15)

 クドカン脚本×三池監督のタッグは『ゼブラーマンシリーズ』で終わりかと思ったけど、まさかのジャニーズを交えて1本作るとは。しかも、超豪華な俳優陣をキャストに揃えて。
 不良警官で童貞のの菊川玲二が暴力団壊滅を目的に潜入捜査官として組織に潜り込む。いつバレるかという緊張感の中、根性決めた玲二は、兄弟分パピヨンに感銘を受けながらのし上がっていく。
 『ゼブラーマン』では三池色が強かったけど、今回はクドカンテイストに満ち溢れていた。その象徴が説明カット。『あまちゃん』では鉄拳のパラパラマンガだったのが、今回はデフォルメ静止画コマ撮り。これがかわいい。2頭身の登場人物たちのおかげで掴みはバッチリ。
 玲二役の生田斗真の熱演もさることながら、堤真一が最後はさらって行ったよなぁ。皆川猿時の怪演も、仲里依紗の色気も飛んじゃった。ワンピースもそうだけど、兄貴の持つ破壊力ってすごいんだぞ。
 もう、終始大爆笑。三池監督新境地って感じ。疲れ気味の脳みそリフレッシュには最高です。


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「エレ片コントライブ コントの人8」を観る(14.3.1)

 エレキコミックと片桐仁でエレ片。もう何年もラジオやってるんだってね。まるで知らなかった。そんなコントユニットの北海道初上陸。楽しみにしてました。
 本はエレキコミックのやついいちろうが書いてるんだね。毒と下ネタ、ライブでしかできないネタが大半なのは、狙いなんだろう。その特別感が観るものをくすぐるんだ。前説から下ネタ全開だもん。ポスターやタイトルバックのバビル2世、オープニングの永井真理子なんて、40オーバーのストライクゾーン。ただ、しゃべり方によっては毒や下ネタが不快に聞こえるところもあったかも。コアなエレ片好きではないので、楽しみ方を心得ていないためか。
 コントの合間には映像ネタが。こちらはラジオの延長でリスナーの気持ちをくすぐるシロモノだったけど、ラジオを知らぬぼくでも大笑いした。正直、コントより笑ったかも・・・。特に大車輪と千手観音が。
 初めてのエレキコミック。ラーメンズとは異なる片桐仁。エレキコミックの単独はまた違うテイストになるのかな?
 楽しく笑わせてもらいました。


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越谷オサム「いとみち」を読む(14.2.16)

 青森市のメイド喫茶でバイトすることとなった女子高生いと。志望動機は祖母ゆずりの津軽弁のため、引っ込み思案な自分を変えたくて。かわいいじゃないですか。健気じゃないですか。おじさま心がつかまれます。越谷オサムのドヤ顔が目に浮かぶ・・・といっても越谷オサムの顔を知らないので、イメージだけだけど。
 津軽メイド珈琲店でのいとといえば、ドジっ子全開でこれまたおじさま心を鷲掴み。先輩メイドたちにいじられかわいがられるも(もちろん愛のある)、肥満体系のオーナーやオタク系の常連たちから高い支持を集めるって、まさに読者と同じ目線。あざといなぁ。
 そんな手錬はさておいて、いとが自ら作ってしまったいくつかの壁を乗り越える努力をする様は、これぞ青春って感じです。5年前の北乃きいが演じたらたぶんぴったり。その道のりは決して平坦じゃないけれど、明日を夢見る女子高生は前を向くのです。
 ということで、王道のガールズストーリーでした。おやじ心は弄ばれたけど。


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「光にふれる」を観る(14.2.15)

 全聾の音楽家が世間を騒がしている今日この頃、全盲のピアニストの映画を観に行く。なお、この映画には詐欺も偽証ももちろんありません。
 ピアノコンクールで優秀な成績を収めた全盲の学生・ユィシアンが、大学の音楽科に入学するため、初めて故郷を離れ学生寮に入寮する。新しいことに挑戦しようとするユィシアンの前に立ちはだかる、全盲がゆえのコンプレックスや同級生たちの偏見。
 ダンサーを夢見るも、バイトに追われるシャオジエ。浪費家の母、酒飲みの父、浮気する大学生の彼。なかなか踏み出すことのできない毎日。
 二人の話が並行する。いつ交わるか、やきもきさせられる。そして、交わったときから物語が大きく流れ出す。お互いを大きく飛翔させる物語が。
 これは実話だそうだ。主演しているピアニストの。人との出会い、色眼鏡のない付き合いが相手だけでなく自分も成長させる。優しいお話し。
 シャオジエだけでない。寮の同部屋の彼、どうにも変人だけど、彼が作ったスーパーミュージック部(略してSM部)の存在も大きい。型にはまらない音楽が、型にはまらない付き合いが、ユィシアンの心をとき解いたと思うんだよね。スターウォーズやメーテルのTシャツには笑わせてもらったけど。
 ほっこりとした優しい映画だった。心温まる。
 そして今一度問おう。「お姉さんはお兄ちゃんの彼女なの?」。


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「WORLD ORDER TOUR 2014」を観る(14.2.14)

 変幻自在のトリックスター。格闘技ファンなら誰もが知っている、須藤元気の異名である。その名が示すとおり、須藤元気の動きは対戦相手を惑わせ、観るものを興奮させた。そして入場時のかっこいいパフォーマンス。それらすべてをひとつのエンターテイメントとして提供できる稀有な存在だった。
 そんな彼の格闘家引退後の活躍は多彩のひと言。でも、「須藤元気だから」って素直にうなずけることもまた事実。そんな彼のライフワークとも言えるパフォーマンスがWORLD ORDER。YOU TUBEで見まくりです。
 イレギュラーなモーションのアンサンブルが作り出すハーモニー。それらしい横文字を並べてみた。違和感の中の調和というかなんというか。サラリーマン風のスーツの男7人組の、一見ゆったりとした動き。その中に織り込まれるトメとキレがアクセントになって、思わず見とれてしまうのだ。そして複数の動きと音と映像がひとつになり、摩訶不思議な世界が構築される。文章にするとやっぱりよくわからないけど、みれば面白さが一発で伝わるんだよね。
 ナマで見るパフォーマンスはやっぱりすごかった。等身大の動き、奥行き、汗、息遣い。ぼくでもできる?なんていうかすかな想いは木っ端微塵。とてつもないシロモノだった。やっぱ須藤元気はすごいんだなって、改めて思い知らされた。
 ヤクザ映画を観た後、映画館を出る男が風を切るように、WORLD ORDERを観終えて会場を後にしたぼくは、肘を90°に曲げて彼らの歩きを真似てみたけど、やっぱり無理ってものでした。


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椎名雅史「チームビリーブの冤罪講義」を読む(14.1.26)

 東京の郊外にある大学法学部の人気のない安西ゼミに集められた落ちこぼれ男子学生2人と優秀すぎて弾かれた女子学生1人。彼らに課せられた課題は冤罪事件の解明だった。「冤罪110番」に寄せられた案件を学生ならではの視点で再捜査し、事件の真相に迫る。
 実に読みやすい作品だった。率直な感想は楽しく読むことができたが、それだけだった。結果を急ぎすぎたのかなんなのか。とにかく作者にとって都合の良すぎる作品なのだ。
 都合の良い登場人物とつながり。東京の大学でたまたま選ばれた3人なんだよね。弁護士、警察、探偵、友人、すべてが都合よく配置されている。東京であるはずなのに、まるで狭い社会の出来事かのように。ここはムーミン谷?って錯覚すら覚えちゃう。
 そしてリアリティ。仮に第三者が冤罪の申し立てをし、それが本当に冤罪だという可能性はどのくらいあるのだろうか?次に学生の再捜査で明らかになる程度の冤罪がそうそうゴロゴロしているのだろうか?真実が身近なところばかりにあるのだろうか?
 チームビリーブの面々がこれから社会で活躍するにとって一番必要なのは、挫折だと思うのよね。都合の良い真実よりも。
 ということで、今回は辛口の感想でした。


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「ジャッジ!」を観る(14.1.18)

 正直そんなに期待してなかったんだけど、すんごく面白い映画だった。だって、このキャストだったらベタな恋愛映画とか撮るでしょ、普通。それがバリバリのコメディだもんね。
 なかなか芽の出ないCMクリエーターが、上司の代役としてCMフェスティバルの審査員を務めることに。しかし、審査とは名ばかりで、自分の作品に賞を獲らせるための駆け引きが横行する魑魅魍魎の世界だった。純粋に素晴らしい作品を選びたいという想いとのギャップに悩む彼に、会社から誰が見ても駄作のCMに賞を獲らせるというきわめて困難な指令が・・・。この事態を片言の英語と非協力的なパートナー、大量のちくわでどう凌ぐ?
 まず思ったのが、この妻夫木くんはグリコ・アーモンドチョコのCMの彼?ってこと。あまりにもタイミングが良いというかなんというか。繋がりがどこかで出てくるかな?ってわくわくしちゃった。
 にしても、面白い。リリー・フランキーが仕込むあれやこれやが形になっていくさまや、北川景子の揺れと奮闘振りが微笑ましいんだよね。そして輪が広がっていく様子が目に見えて楽しいんだよね。
 心残りは「トヨタ万歳」。かなりの製作費がトヨタから支払われているのはわかるけど、「トヨタ、トヨタ」の連呼と賞賛には観ていてげんなり。フィクションなんだから、架空のメーカーにするとかできなかったのかなぁ。妻夫木くんはトヨタのCMでのび太だけど、鈴木京香と豊川悦史はダイハツのCMに出ているんだし。
 とはいえ、素直な気持ちが悪しき習慣を打ち破る痛快さは、観ていてスカッとします。嫌味のないさわやかなコメディ、お奨めです。


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海堂尊「ケルベロスの肖像」を読む(14.1.18)

 これが桜宮サーガの本丸、田口-白鳥コンビの最後の作品だと思うと、読む前から感慨深くなっちゃって。心して読まなくっちゃと背筋が伸びる思いです。そして物語はいつものように、院長室から始まって。
 そこにはサーガのすべてが詰まっていた。どの物語にもふてぶてしく立ちはだかり、誰よりも強いオーラを放ち続けた高階医院長の邂逅には、涙もこぼれ落ちそうになる。そう考えると、物語年代で2013年以前は高階医院長の物語だったのではと思えてくる。病院経営という医療が抱える大きな問題に立ち向い、誤ちを犯しながらも進んできた男の。田口-白鳥コンビは介添え人であるかのように。そして、高階医院長の物語のフィナーレを色どるように、オールキャストが勢揃い。
 いよいよ本格始動するAiセンターだけど、まだまだ問題は山積み。既得権を守ろうとする者を含めた設立委員会も波乱含み。そんな中、高階医院長に東城大学附属医院に対する脅迫状が届く。「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」の意味するものは?姫宮(白鳥)の田口への依頼は、あの桜宮の亡霊の調査だった。
 西園寺さやかの存在を、ぼくらサーガの読み手は既に知ってるけど、田口センセは知らなかったんだよね。そう考えると、桜宮の亡霊は彼にとってとんでもない爆弾だったろうに。いやはや、お疲れ様です。
 そして、満を持して登場の天馬大吉。いつか再登場し、物語に大きく絡んでくるとは思ってたけど、ここできたか。
 それにしても桜宮サーガは東城大学が数多くの可能性を手にしながら、ことごとくすべてを手放す物語なんだな。高階医院長が時には捨てる側、時には守る側に立って。それって、医療の現状に物語をそろえるための破壊作業なんだろうな。サーガ的にも現実にも、夢見る医療の可能性は形になっていないけど、サーガで破壊されるほど現実の医療の問題点が浮き彫りになるんだなぁ。
 にしても、今回の警察はちょっと行き過ぎ。あわや大量殺戮の片棒を担いでいるんだもん。情報操作まではなんとかだけど・・・。ちょっとだけ興醒めかな。
 あとは『輝天炎上』と『ナニワモンスター』か。早く文庫化してちょうだい。
 そうそう、世良先生ファンとしては失恋で落ち込むジェネラル・ルージュをニンマリと眺めていたいとこなんだけど、ちょっと優しすぎない?


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「麦子さんと」を観る(14.1.13)

 ぶっちゃけて書きますけどね、堀北真希がかわいすぎるんですよ。旅館の主人じゃないけれど、特に喪服の堀北真希が。黒ストッキングの堀北真希が。もう、彼女から目が離せない。彼女に夢中の映画です。
 これまでに挫折続きながら、声優を目指す麦子と、パチンコ店店員の兄が二人で暮らすマンションに、生き別れた母が訪れる。「一緒に暮らしたい」と。幼い頃の両親の離婚から一度も顔を見ていない麦子は、母の顔を覚えておらず、突然同居しだした母に戸惑い、反発する。兄は早々に家を出てしまうし。
 そんなある日、激しい口論をした後、母が急逝。納骨のため母の故郷を訪れた麦子は、母のファンだったという町の人々に出会う。若い頃は麦子と瓜二つだった母は故郷のアイドルだった。
 アイドルを目指していた母・・・『あまちゃん』の春子さん?聖子ちゃんを歌う共通点はあるものの、捉え方は別物で、こちらはほんわか。町の人々が母と麦子を重ねて自分たちの青春を懐かしむところがいいんだよね。観てるぼくらにも、麦子にも。
 いやいや、ホントに堀北真希につきる。「おれってこんなに堀北真希のこと好きだったっけ?」ってびっくりするくらいいいのだ。母役の余貴美子とホント親子じゃないの?って思えてきたりして。あと、麻生祐未もよかったなぁ。


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富樫倫太郎「早雲の軍配者(上)(下)」を読む(14.1.13)

 待望の文庫かなのです。軍師好きのぼく。富樫倫太郎の『軍配者シリーズ』は単行本を手にとっては買うかどうか悩み続け、文庫化されるのをまだかまだかと待ち続けた、思い入れのある本なのです。
 それにしても、作者の目の付け所が素晴らしい。北条家と武田家と上杉家の軍師が、若き日に同じ学校で学んだ友人だったという設定。そんでもって戦乱の世の戦いを軍師目線で描くだなんて。わくわくモノです。
 最初は北条早雲に見出された軍配者・小太郎が主役。不遇な幼少期を過ごすも、その学の才を認められ、ゆくゆくは早雲の孫の軍師にと早雲の寵愛を受け、軍師の養成で名高い足利学校に入学する。そこでであった勘助と冬之介。知恵で戦乱の世を乗り切る男たちの青春友情も加えた物語。
 このシリーズ、『信玄の軍配者』『謙信の軍配者』と続くので、3人が采配を奮っての実際の戦いはまだまだ序章に過ぎず。でも、シリーズが年内に次々と文庫化されていくというので、これからの展開、とくに壮絶な知恵較べがこれから始まると思うと、楽しみでしょうがない。
 ということで、とりあえず序章を読んだので、次なる刊行を楽しみに待つとするかな。


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「きっと、うまくいく」を観る(14.1.5)

 この映画の札幌での公開は昨年。映画を観終えた千代ちゃん(実母)が「あんた好みの映画だったから、ぜひ観たほうがいいよ」ってメールをくれた。残念ながら、昨年観ることはできなかったけど、先日から札幌の二番館・蠍座で上映してるというので、期待いっぱいで観てきたのだ。
 さすがご母堂、ぼくのことわかってらっしゃる。こいつはどストライク。ぼくが観たのは2014年だけど、昨年の公開時に観てたら確実に2013年のNo.1だぞ。
 ボリウッド映画といえば、勧善懲悪と大恋愛というイメージが強かったんっだけど、こんな最高の青春映画があっただなんて。もう、最高すぎて言葉が出てこない。
 エンジニアを目指し、工大に入学して出会った3人組。裕福な家庭に育ち才能あふれるも我が道を行くがゆえ敵が多いランチョー、中流家庭に育ち父親の期待を一身に受けるも写真家に憧れるファルハーン、貧困家庭に育ち気が弱く神頼みばかりのラージュー。この3人のキャンパスライフと10年後を描いた物語。
 これほんとに面白い。ランチョーに会うためにファルハーンとラージュー+1名が旅をしながら昔を思い出すロードムービー風なんだけど、ファンハールとラージューのランチョー愛がすごくって。それが学生時代のエピソードに詰まっていて。そのエピソードも面白いだけじゃなく伏線がいっぱいで・・・。
 ボリウッド映画だから長い。本国上映では途中休憩が挟める構成に。たいがいのボリウッド映画ではここで物語が大きく動くんだけど、『きっと、うまくいく』ももちろん、あっとおどろく展開が・・・。そして、そして・・・。いやもう、書き切れないしそれはもう観てのお楽しみ。
 最後のオチは早い段階でわかるんだけど、そこに辿り着く過程や伏線の拾い方の秀逸さ、そのすべてがお見事としか言いようがなく、ぼくの胸に深く突き刺さる。
 スピルバーグが絶賛し、各国でリメイクされるというけど、170分という尺がないと消化不良が起こりそうだなぁ。
 2013年最高というよりも、ぼくの人生で観た映画の中でも指折りの作品です。
 昨日、、2013年のart総括を更新したんだけど、特別にこれを入れなくちゃ。


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