このページではartな戯れ言を集めて掲載しています。
SOUTHERN ALL STARS Live Tour 2005
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先に書いておきます。ネタバレだったらごめんなさい。 とにもかくにもすんばらしいLiveだったのだ。これがサザン、これぞサザン。みんなが好きです!みんなも好きです! メンバー全員が五十路手前とは思えない。テクニックでかわすのでなく、しっかりとパワーも伝わってきたのだ。「うす〜い話を長めに・・・」なんて言いながら、MCはいつもよりもはるかに少なかったような。そのぶん新旧の名曲の数々が、これでもかと演奏される。のっけから『Big Star Blues』〜『My Foreplay Music』。サザンのアルバムの中では3本の指に入る名盤『ステレオ太陽族』からコアなナンバーを続けるんだもん。「うぉぉぉぉぉ〜っ!」と雄叫び上げるしかないじゃん。時任三郎が走り出しちゃうってもんでしょ(『ふぞろいの林檎たち』より)。それに続けて『希望の轍』とくれば、場内が沸かないわけがない。OLDファンにも若いファンにも、たまらないラインナップってやつでしょう。 New Albumからの選曲も、TopにCMでお馴染みの『神の島遥か国』で始まり、コーナーの終わりはまたもお馴染みの『愛と欲望の日々』で締めるといった心づかい。しかも、新曲には歌詞が字幕で表れる。この頃思ってたんだけど、古い曲って歌詞が頭の中に入ってて、メロディが流れるだけですらすらと歌えるんだけど、最近の特に風刺やメッセージ色の強い歌って、すんなり覚えられなかったりするんだよね。だから、改めて言葉を噛み締めることができたり。 中盤も雄叫び上げまくり。『Bye Bye My Love』はぼくにとっては涙モノの一曲。『マチルダBaby』『Miss Brand-New Day』なんて、高校時代にLiveで熱狂した曲。サザンに、桑田佳祐にとても励まされた青春だったのだ、ぼくは。そんな桑田佳祐が自らを鼓舞する『Rock'n Roll Superman』が流れたら、もう涙(記載の曲順が違うけどさっ)。他にもやったよ、あれやこれや。 もう、感動としか言いようがないLive。演奏だけじゃなく、映像を巧みに使った舞台装置もすんばらしい。Liveに関わる人みんなが一体となって、よいステージを創り出しているってのがビシビシと伝わってくる。花火もドッカンドッカン。 難をひとつ上げるとしたら、途中で大量の風船が降ってきて、みんながそれを手に振りかざしながら後半以降Liveを楽しんだんだよね。でも、アリーナの中ほどにいたぼくはその風船が邪魔で、ステージが物凄く観づらくなり、終盤はモニターばかり観ることになったこと。お願いだから、もう風船の投下はやめてください。 客層もとても広く、ぼくの周りはなぜか四十代後半から五十代の人ばかり。なんか意図してこうなったのかなぁ。いやいや、老若男女みんなが楽しめるのがサザンオールスターズなのです。 みんなが好きです。 |
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鳥肌実時局講演会「靖国神社で逢いませう」を観る(05.12.17) |
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久しぶりに永遠の厄年(42歳)・鳥肌実の公演を聴きに行った。初めて観た時の衝撃こそなかったものの、相変わらず大笑いさせてもらった。決してテレビでは放送できない笑い。飼い慣らされたお笑い番組が多い中、ナマでしか観ることのできない面白さ、ナマならではの臨場感、そして共犯者にでもなったかのような一体感。危なすぎる鳥肌実の芸にはその場でしか味わえないあれやこれがいっぱい詰まっているのだ。 今回一番感じたのが、『芸人であること』を強調していたこと。本気で誤解する人が多かったのかな?『タナカヒロシのすべて』で結構メディアに露出したし、一応時局講演会も芸だと理解してもらいたかったのかも。 Dr.マシリトやマンモス西など、若いもんにはわからないキーワードで笑わせてもらったし、スポーツビデオで活躍する鳥肌の映像は抱腹絶倒。 そして、愛妻・夏江さんが戻ってきたんですね。おめでとう。 |
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あさのあつこ「The MANZAI」を読む(05.12.14) |
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あさのあつこは文壇の松本大洋だ。ぼくは勝手にそう思っている。好対照な2人の少年が織り成す物語。といっても、まだ「The MANZAI」と「バッテリー」しか読んでいないんだけど。 クラスの人気者に漫才コンビを組もうと誘われた内気な転校生。体格も正確も正反対な二人がぶつかりながらも友情を育んでいく物語。 正直、女性作家の書く少年像ってかなり美化してるよなって思う。男が女子校にかなりのイメージを湧かせるのと同じように。あさのあつこもやはり美しく書きすぎだと思う。少年特有の線の細さや芯の強さを、とても繊細な言葉で書き綴っている。いやいや、そんなに美しいものじゃないよと突っ込みたくもなるんだけど、これがある意味新鮮にも思えて、サクサク読めてしまうのだ。 今後が楽しみのこのコンビ。早く続きが読みたいです。 |
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「探偵事務所5〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜」を観る(05.12.11) |
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やっぱり面白かった。さっぽろ映画祭で林海象監督や出演者達の話を聞いて、映画版も期待していたんだけど、期待通り。確かに591役の成宮くんが主人公のようなんだけど、522の宮迫の味や、そのほかの探偵たちのバックアップとか、すっごく微笑ましいんだよね。V3がピンチの時には1号&2号のダブルライダーが登場するみたいな感じで。そして、彼ら一人一人がメインの事件を見たくなると強く感じる。 前半は591の初仕事物語で、探偵事務所5の会長の孫娘・瞳との淡い関係なんかも含めて、若き探偵の熱血成長物語となってます。その事件が中堅でクセのある探偵522が追い続けている事件に絡んできて、後半に突入する。 後半は林海象テイスト満載。『濱マイク』での盟友・永瀬正敏も登場して、『罠』にも通じる味わいとなっている。『濱茜』とか『小林少年』とか、遊び心も満載です。 ネットでのシリーズも映画版も、次への伏線が張ってあって、早く続きが観たい状態。探偵事務所5から目が離せないのだ。 |
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「イッセー尾形のとまらない生活2005in冬の札幌」を観る(05.12.10) |
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『冬の札幌』のネーミングに反して、雪のない札幌・・・と思いきや、昨夜から雪が降り始め、しっかり積もったじゃありませんか。雪の札幌、冬の札幌。でも、劇場の活気は夏なのよ。 オール新作の今回の公演、正直すべてが面白かった。毎回6〜7本のネタのうち1〜2本は違和感を感じるんだけど、今回はどれもがアタリなのだ。 今回の特徴としては、イッセー尾形としては珍しく、時間の経過のある作品があったこと。翌日・・・って感じの。1シチュエーション・リアルタイムって作風が多かっただけに、ちょっと驚いた。でも、時間を空けることにより人と笑いに深みが出てる。 そしてちょっとした(いや、かなりの)ハプニングが・・・。客席で上演中に急病人が出てしまった。慌てる劇場スタッフ。イッセーさんは着替えタイムを中断し、ざわめく客席とぐったりする患者さんに優しく声をかける。救急スタッフが到着して、無事搬送。その後、大事には至らなかったとの朗報も届き、イッセーさんを含め会場中が安堵したのだった。着替え中に対応したイッセーさん、髪はオールバックでYシャツ着てたので、上半身はダンディだったんだけど、足元はヒール履いてたんだよね。それで背筋がシャンとしてて、妙に艶っぽかったです。 では、いつものように上演作品を簡単に。 『占い師』 札束(2束)の入った封筒を拾い、警察に届けた占い師。でも、なぜか金額は190万円。半端な金額に対し占い師のとった行動は・・・。ぼくなら・・・やっぱり疑われていると思うの辛いもんなぁ。気持ちはよ〜くわかるのだ。 『ステーキハウス』 ステーキハウスでは閉店後のスタッフミーティングが行われ、マネージャー主催の反省が開かれている。シェフの吉田さん、ウェイトレスの伊藤さん。よりよいお店つくりのために、意見が交換されていく・・・って、マネージャーからばかりなんだけどね。これ、海外でも笑いいっぱいとれるかも。海外が認識してる日本人のイメージに近い気がする。 『若きイベンター』 タレントのドタキャンによりイベントがぽしゃってしまった若きイベンターが、芸能プロダクションの社長を問い詰める。彼、前回の公演で登場した『宅配ピザ屋』だよね。なんか、MAX松浦にも見えてきて。凄く笑える。「オレ、今どの辺かなぁ」 『閉店ライブ』 スタンドマイクの前で、デビューのきっかけを語る女性。世界を股にかけた話はどうも疑わしい。そして、キーマン・ファーマシー。でも、彼女のデビュー曲『アダムとイヴに親はいない』は必聴! 『取調べ』 亭主殺しで逮捕された奥様。死体遺棄場所を取調べされるけど、彼女の言葉には真実が見えてこないのだ。浮世離れしたお嬢様のまま歳をとってしまったおばさん、いるよね。 『大家族 出勤拒否編』 好評シリーズの最新作。父さんが3ヶ月も仕事をしていない。そんな窮状に子供達はたくましく父を見守り、内山さんも心配してかけつける。果たして父さんは仕事をするようになるんだろうか・・・。子供達の健気さに涙・・・笑い・・・感動。 『山田蜃気楼』 魚津でブレークしたストリートミュージシャン・山田蜃気楼。でも彼は魚津をほとんど知らなかった!魚津だから、魚津ならではのスター誕生物語。でも、まだ魚津では演じていないとか。どんな反応が返ってくるか、楽しみ。 |
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松樹剛史「スポーツドクター」を読む(05.12.7) |
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とにかく真っ直ぐな作品だ。登場人物も、STORYも。それぞれに悩みやトラウマなんかを抱えてはいるものの、真っ直ぐな姿勢を貫く人々で溢れている。物語として成り立っているのは、それぞれ真っ直ぐの方向が違うからであって、誰もがスポーツを心から愛している。そんな姿勢を見せられちゃ、眩しすぎてたまりませんよ。 松樹剛史作品は『ジョッキー』を読んだときも思ったんだけど、ほんと真っ直ぐにつきるんだよね。それゆえに作調も一本になりがちなんだけど、面白く読めます。 夏希と義陽の関係も真っ直ぐで一本調子なんだけど、そこが微笑ましかったりして。 この作家がどこで変化球を使うか、ある意味見ものかな。 |
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劇団四季「クレイジー・フォー・ユー」を観る(05.12.4) |
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いやいや、予備知識ナシで劇団四季の人気ミュージカルを観たのさ。イメージとしてはマドンナの『CRAZY FOR YOU』の方が強かったので、きっとラストはあの曲が歌われるんだろうなぁ・・・なんて思ってたりして。 ところがどうだい。マドンナのマの字もなくて、そこにはダンスをこよなく愛する男の奮戦記が展開されているではないか。しかも、良い方に期待はずれして面白いではないか。 これまでに観たミュージカルはどれもテーマが重いものが多く、感動はするんだけど心から楽しめるものはあまりなかったような。しかし、「クレイジー・フォー・ユー」は理屈抜きで楽しめる。歌もダンスも堪能できる。STORYがアメリカらしく、かなり楽観的なのは「あたた」ではあるが、それすら楽しみの一つになっている。 脳ミソ空っぽにして楽しむのがミュージカルの王道ってことなのかな。 |
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「第18回さっぽろ映画祭プレミアムサバイバル」に参加する(05.11.5) |
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ぼくが札幌を離れている間に、さっぽろにも映画祭ができていたようです。なかなか趣向を凝らした映画祭のようで、上映される作品も先日開催されていた東京国際映画祭とは一味もふた味も違うラインナップ。そんな中、ぼくの目をひいたのは林海象が贈る新たな探偵モノ『探偵事務所5』。かれこれ20年ほど前、今は亡きJABB70HALLで林海象監督の『夢見るように眠りたい』を観た感動、忘れられないんですよ。そして『濱マイク』シリーズも。だからめちゃくちゃ期待して行ったですよ。 プレミアムサバイバルという企画、なかなかすごい。朝10時から始まって、夜中の0時までで9本(+自主制作短編3本)を上映し続けるというのです。監督や出演者の舞台挨拶もあり、暗闇で延々というわけではないんだけど、全部観るには相当な体力が必要かも。なのに、上映する順番は一切秘密。ぶっちゃけぼくのお目当ては『探偵事務所5』だけといっても過言ではないのに、いつ上映されるかわからないからず〜っと観てた。 結構辛かったけど、なかなかの掘り出し物もあって楽しかったかな。『NextFrame』という学生達の作ったオムニバスや、自主制作作品の『手動販売機』など、とても面白かったし、主演映画の舞台挨拶で登場した森下千里は正直かわいかった。脚が細くてきれいなの。でも、インタビュアーだった札幌在住の漫画家・島本和彦(『炎の転校生』『逆境ナイン』)のオタ前回のツッコミに引き気味・・・というかキレ気味だったようで。そんな一面をナマで見れたのも収穫かな。 17時前、いよいよ待ちに待った『探偵事務所5』の上映です。現在1話30分のシリーズをネットで無料配信しているとか。その中から4話を一気に上映なのです。 シリーズを通しての主人公はいなく、探偵事務所5に勤務する5から始まる3桁の数字で呼ばれる探偵たち一人一人に各回スポットが当てられるのです。なんとカッコいい趣向でしょうか。 もう、ハマリまくりです。面白い。こんな物語を作りたかったとぼんやり考えていたことをやられたって感じです。できることなら1話くらい作らせてくれよと叫びたい。 舞台挨拶には林海象、佐野史郎、貫地谷しほり、鈴木リョウジ、大和田廣樹プロデューサーが登場。林海象監督はご機嫌の様子で、今後の展開や隠しエピソードなどを惜しげもなく語ってくれるので、プロデューサーは冷や冷やだったのでは? ネット配信で月2回、全26話を公開するほかに、映画版『探偵事務所5』も今月末から公開されるとか。もう、目が離せません。ちなみに貫地谷しほりのおかあさんが営む飲み屋さん、とても美味しいです。 『探偵事務所5』が終わったところでプレミアムサバイバルからはドロップアウトしてしまったけど、期待していた作品が期待以上の面白さだったことに大満足でした。 ホントは舞台挨拶の写真なんかも掲載したかったんだけど、撮影禁止だったんだよね。残念。 |
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「シン・シティ」を観る(05.10.29) |
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いやいや、面白かった。すっげーかっちょいい。モノクロ画面に灯る赤が、鮮烈。スタイリッシュな画面だけでなく、物語もかっこいい。主人公は街なのだ。『SIN
CITY』という、嘘と腐敗に満ちた街。そこで暮らす人々の正義。そして愛。ハードボイルドな世界炸裂。とにもかくにもかっちょいい。 構成的には『パルプ・フィクション』的。監督ロバート・ロドリゲスとタランティーノ、仲がいいから真似たわけでもないんだろうけど、それがしっくりハマっている。大きく3つの物語が、時系列をシャッフルして入り組んで語られている。少しづつ各話がオーバーラップしながら。当然単品でも面白いんだけど、ザップ感覚が街に深みを与えている。 驚きなのがミッキー・ローク。タランティーノがトラボルタを再生したが如く、ロバート・ロドリゲスは猫パンチのミッキー・ロークを再生したね。ハッキリ言って、マーヴ役がミッキー・ロークだなんてまるで気が付かなかった。かっちょいいのよ、その生き方が。 個人的にはジェシカ・アルバが好き。スチールのような止まった彼女に対してはさほど思わないんだけど、動いてる彼女はすっごくセクシー。『ダーク・エンジェル』の時も同じこと考えていた。 あとは殺人兵器・ミホでしょう。原作(アメコミ)にも登場するらしいんだけど、ハリウッドでは『修羅雪姫』ブームなのかと思っちゃった。これもまたかっちょいい。 多分に好き嫌いの激しい作品化とは思うけど、ぼく的にはとってもおすすめ。『キル・ビル』よりはとっつきやすいことだし。話もまとまってるし。続編の製作が決まっているらしいので、今から楽しみだ。 |
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夢枕獏「鮎師」を読む(05.10.25) |
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20代の頃、獏さんの作品をむさぼるようにがっついて読んでいた。獏さんの筆の持つリズムにあおられるが如く。30代になって読む頻度は大幅に落ちたけど、ぼくにとって獏さんはここぞというときに読みたくなる作家だ。 んで、『鮎師』なのである。獏さん=闘いのイメージが強いんだけど、そのウラに好敵手とか友情とか。思い起こせば書かれている文面はすごくダーティできれいごとなど微塵もないくせに、構造そのものは青春小説そのものなのだ。んで、今回は人と人、人と鮎の友情というかライバルというか。どれもが一定の距離を保ちながら、時に熱く接近し、時に冷めて遠ざかり。オヤジの青春小説といっても過言ではないのだ。 それがオヤジと呼ばれる年齢に近づいた(もうなっている?)ぼくには心地よい。獏さんの川の流れを感じさせるような筆のリズムもまた心地よい。清流であったり、濁流であったり、よどみであったり、強烈な引きであったりするリズムが。 釣りのことはよくわからないけど、大人の青春物語にそんな知識は必要ありません。獏さんの筆のリズムに漂ってみませんか? |
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「ミリオンダラー・ベイビー」を観る(05.10.15) |
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ぼくの周囲ではとても評価が高かったんだけど、残念ながら公開時に観ることができなかったアカデミー賞受賞作品。札幌の2番館・蠍座で800円で観られるということで、観てきたのだ。クリント・イーストウッド監督作品は『ミステリック・リバー』がぼくの中でハズレだっただけに不安もあったんだけど、この作品は違った。心にズドンときた。愛する者のためになにができるか。自分らしい生き方とは。同じ主題なのに、同じ監督なのに、こうも違うものを観せられるとは。 モーガン・フリーマンの淡々としたナレーションで始まり、中盤は気持ちがいいまでのKO劇の連続。シンデレラストーリーなの?と思っていたら、ドーンと突き落とされた。チキンのぼくにはスクリーンを凝視できない描写を含め、心の深いところ突かれる問題提起。自分なら何ができるだろうか。きっと逃げ出してしまうのではないか。でも、この作品はきちんとケリをつけている。なにが大切なのかという、クリント・イーストウッド監督の答えで。 とても強い映画だ。自分の弱さを思い知らされた映画だ。観てよかった。 |
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「ルパン」を観る(05.10.10) |
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『怪盗ルパン』シリーズを読んだことはない。『ホームズvsルパン』なら読んだけど。ルパンといえば『ルパン三世』が真っ先に思い浮かばれる。ルパン三世のおじいちゃんの若かりし頃が映画になる。紹介文を読むと、”カリオストロ”とか”クラリス”といった知ってる名前が出てくるではないか。ルパン三世の(カリオストロの城の)原点がこの映画にあるのではないか?そう思って映画を観に行った。 いやいや、ルパンがルパン三世に似てるんだよね。それだけでなんか嬉しくなっちゃうんだけど、映画としてはかなりまったりしたものだった。話としては悪くないんだけど、フランス映画の気質なのか、Softで柔和な作りが味をすっかり薄めてしまったとでも言いましょうか。ハリウッドが撮影したら・・・、宮崎駿&大塚康夫がアニメ化したら、さぞ面白い作品になっただろうに。もったいないなぁ。 んで、本作の”カリオストロ”や”クラリス”が『ルパン三世カリオストロの城』に通じることはなかったんだけど、これは原作に登場した人物の名前を宮崎駿を引用したってことなのかな。 いやいや、ホント筋はよかったんだけど、撮り方がね。フランス映画はベッソン登場で変わったかと思ったんだけど、なかなかどうして。 |
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戸梶圭太「未確認家族」を読む(05.10.10) |
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この頃の戸梶圭太の筆はちょっと荒れていると思う。さすがに本作など新潮社から刊行される作品はまだ良い方だが、他の版元だと・・・。現代の若者言葉(果たして彼の文章のような言葉がが本当に若者の間で使われているかどうかは疑問だが)で綴られる文章は、読んでいて頭が痛くなる。どうしちゃったの?と首を傾げたくなる。 もうひとつ。物語を過激化することが面白い方向性と信じて突っ走りすぎではないか。物語を読んで浮かぶ光景はまるで地獄絵図のよう。意味もなく人が死に、血が吹き出て首が飛ぶ。なんだかなぁ。 見せかけだけの家族への疑問というテーマが面白かっただけに、読み進めるのは楽しかったけど、後味は非常に悪かった。 何処へ向っちゃうんだろうか。パルプフィクション化する作家でないことは確かなんだけどね。 |
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「チャーリーとチョコレート工場」を観る(05.10.9) |
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鬼才ティム・バートンが『ビッグフィッシュ』に続いて大人のお伽話を作ってくれました。謎のチョコレート工場に招待された5人の子供たちと工場主・ウォンカの物語。そのチョコレート工場は不思議ワールド満載なんだけど、現代っ子には悪ふざけにしか見えなくて・・・。 大人が子供に夢を与えようとする物語かと思いきや、なかなかどうして。夢を否定する子供へのアンチテーゼというか、毒がたっぷり。その辺がとてもティム・バートンらしくて笑える。そして、本当に夢を与えられるのはチャーリーではなくてウォンカってところが、大人のお伽話たるゆえん。とてもほっとする物語なのだ。 ストーリーもさることながら、ティム・バートンWorldが今回も冴えまくり。ナッツを割るリスなんて、本物だって言うんだから、笑いながらも感動。調教に3ヶ月かかったらしいとか。撮影が終わったら、どうするんだろうか・・・。リス鍋? そして、主役・ウォンカを完全に食っていたのが、工場の従業員ウンパ・ルンパ。『オースティン・パワーズ』のミニ・ミーを髣髴させるんだけど、そこは統式美のティム・バートン。一人じゃないんです。いっぱいいるんだけど、みんな揃ってるんです。アクション&ダンス&ミュージックが。これは見ものです。 ほんと、素敵な大人のお伽話。ちょっと忙しい日々を送っている大人の皆さん、癒されますぞ。 |
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「アート オブ スター・ウォーズ展−エピソード3を中心に−」を観る(05.10.8) |
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エピソード3の感動も覚めやらぬまま、北海道にスター・ウォーズ展がやってきた。昨年東京で開催されたものに、ダース・ベイダーが誕生した手術台などのエピソード3の展示品が加わり、内容盛りだくさん。展示品の2/3は一〜二度観たものなんだけど、その精巧さと独創性には毎回驚かされる。『スター・ウォーズ・サーガ』の世界観やストーリーだけでも感動ものだというのに、細部まで浸透している世界観。映画では何気なく見落としていたりするんだけど、「そこまで凝っていたのか」というか、「そこまでやるのか」・・・とただただ感動。これはひとつの遺跡発掘です。 アートを冠にしているだけに、イラストや設定画が多く展示されていて、一枚家に欲しいと思うばかり。精巧なもの、味のあるもの、いろんなテイストが終結している。どれでもいいから一枚欲しい。 今回の展示でグリーバス将軍がますます好きになってしまった。エピソード3のDVDは11月発売というので、グリーバス将軍重点的に見直さなくては。 ちなみに目玉だったダース・ベイダーの手術台より、パドメの診療台の小ささに驚いたぼくなのでした。ナタリー・ポートマン、ちっちゃいんだぁ・・・って。 |
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石田衣良「電子の星 池袋ウェストゲートパークW」を読む(05.9.29) |
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「ブクロさいこーっ!」 長瀬くん演じるマコトがドラマ『池袋ウェストゲートパーク』最終回で叫んだシーンが脳裏から離れない。あれから数作、石田衣良の描くマコトを読み続けているが、マコトの一挙手一投足を読むたびに、長瀬くんの動きが思い浮かばれる。タカシは窪塚くんだし、サルは妻夫木くんのままだ。 石田衣良の文章には脚本家・宮藤官九郎が肉付けした『面白味』はあまりない。マコトの心が池袋発でストレートに伝わってくる。そこがまた小気味良く、原作最大の魅力となる。 今回は元Gボーイズのツインタワーが経営するラーメン店にまつわる事件『東口ラーメンライン』、池袋で命を失った上野のリーダーの事件『ワルツ・フォー・ベビー』、ビルマから来た少年を通じてグローバルな池袋を感じることができる『黒いフードの夜』、負け犬になるための勇気と覚悟を描いた『電子の星』の4本立て。マコトの魅力が満載。個人的には『電子の星』の一部でぼく的には読み進めることができずに飛ばしてしまった箇所もあったのだが、今作もとても楽しくかつ、心に刻みながら読めたのだった。 |
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「サマータイムマシーン・ブルース」を観る(05.9.19) |
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映画版、観てきました。ヨーロッパ企画の舞台版から8日。間髪入れずって感じでしょうか。 なにがあれだって、先週観た舞台とSTORYはほとんど同じなんだけど、まるで飽きることなく存分に楽しむことができた。これってやっぱり、本がしっかりしていて面白いってことなんだろう。原作者・上田誠に脱帽。 映画ならではの「サマータイムマシーン・ブルース」だった。舞台版のワンシチュエーションと異なり、SF研の部室を飛び出して物語が進む。とはいえ、特別なエピソードが用意されているわけではなく、部室内で語られたエピソードが映像化されたというもの。語るだけと違い、ひとつひとつのエピソードに深みが持たされて、なんともわかりやすく、かつ面白い。また、カット割りやアップといった見せ方ができることによる面白さも堪能できる。特に昨日と今日の対比のところなんか、ニンマリできちゃう。 舞台版で「?」と感じたところもわかりやすく創られていて、観るものに優しい作品となってます。 でも、タイムマシーンを手に入れた面々のテンションは舞台版のほうが強く感じられることができ、臨場感というか引き込まれる感じはやっぱりナマかな。あと、チープな感じが。 舞台版と映画版の両方に出演したのは曽我くん役と未来人・田村くん役。うん、あの二人の代わりをやれる役者はどこにもいないもんね。 |
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ヨーロッパ企画「サマータイムマシーン・ブルース2005」を観る(05.9.11) |
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本広克行監督が映画化する舞台が札幌で上演されるというので、早速観に行った。札幌の観劇事情をまだつかみきれていないのだが、小劇場を主戦場とする本州の劇団が来道公演をするなんて、珍しいんじゃないかな。 率直に面白い。とある大学のSF研究会部室で繰り広げられるタイムトラベラー・シチュエーション・コメディ。エアコンのリモコンをめぐり、昨日と今日を行ったり来たり。舞台は部室のみの1シチュエーションなんだけど、時間が入り乱れることにより、すごく奥行きのある空間に思えてしまう。そんな巧さに加え、学生特有のヒマが故のハイテンションが舞台に充満していて、もう笑わずにはいられない。 過去を変えてしまうと未来が変わってしまうということで奮闘(奔走)する部員たち。その大きそうで小さく、かといって小さそうで大きいスケール感は、学生時代の夏の思い出といった感じがすごくして、楽しくってしょうがない。とっても上質な舞台になっているのだ。 映画化がきっかけで観た舞台だけど、ぼくの中で彼らへの注目がどんどん増してくる。次の作品でもまた来道して欲しいと切に思ったのだ。 そうそう、終演後表に出たら、さっきまで演じていた役者さんが舞台衣装のまま涼んでいた。一見街に溶け込んでいそうなんだけど、さすがに広島カープの帽子は目立つ(浮いてた)なぁ。 映画のほうも期待大です。 |
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笹生陽子「楽園のつくりかた」を読む(05.9.7) |
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エリート中学生が父の実家であるド田舎に引っ越してきた。クラスメートはたったの3人。いずれもくせものぞろい。彼にとってそこは楽園になるのだろうか。 『人生の楽園』という番組がある。中高年夫婦が田舎でセカンドライフを送っているのを紹介する番組。これが結構面白い。そんな生活もありかなと思う。でもそれは主に人生の折り返し地点をターンした世代が思っているのに違いない。都会育ちの中学生にしてみれば、そこは文化のない未開の地にしか思えないんだろうなぁ。そんな主人公・優の心情が面白くも切実に描かれており、読みやすい作品になっている。 都会育ちだけでなく、田舎には田舎の事情があることもきちんと描かれており、田舎=純朴といった『北の国から』的世界からの変化も読み取ることができる。でも、田舎って暖かいんだよね。楽園になりうるんだよね。 現実の田舎はよくわからないけれど、そんなこと感じられる作品だった。 |
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「小田和正 Tour 2005" 大好きな君に"」を観る(05.9.4) |
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もう、出し惜しみナシなのだ。2曲目に早くも『ラブストーリーは突然に』を炸裂させると、ソロ時代はもちろん、オフコース時代のヒット曲も続々。『さよなら』『YES・NO』『YES-YES-YES』などなど、どんどん歌っちゃう。アンコールを含め、およそ3時間。小田和正の世界が堪能できたのだ。 正直オフコース時代は毛嫌いしていた。「女々しい」などと勝手に評していたもんだ。ぼくが小田和正を強く意識したのは、鈴木雅之のソロ第一弾『別れの街』を聴いたとき。これが小田和正作品?と耳を疑った。だから、オフコース時代の曲に想い出が甦ることはなかったんだけど、会場は涙・涙だったようで。ぼくは逆に過去に抱いていた偏見を拭い去り、新鮮な気持ちで聴くことができた。やっぱりいい歌だ。 そして『言葉にできない』。これもオフコース時代の曲なんだけど、やはり別格。彼の選ぶ言葉と音にただただ聴き入るだけだった。まさに『言葉にできない』。 アンコールには楽屋を訪れていた松山千春が顔を見せるというハプニング付き。時期が時期だけに宗男の応援演説始めるかと思ったけど、さすがにそれはなかったね。 小田和正というミュージシャンの功績と生き様を見せてもらったような、素敵なライブだった。 |
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「容疑者 室井慎次」を観る(05.9.3) |
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室井慎次は多くを語らない。それがために利用されもするが、彼の持つ信念と勇気を慕うものもたくさんいる。室井慎次という男を再確認する映画だった。 語らないことの重みがこの映画に緊張をもたらし、室井慎次を率直に表現する。 室井慎次は意外と何もできない男でもある。彼を慕う者たちがきっちりフォローしてくれる。彼は組織を変える可能性を持つ男であると同時に、いい御輿にもなるのかもしれない。 この映画は『踊る〜』シリーズの根っこだと思う。些細な行き違いや捜査の見落としが、人の私利私欲や面子云々を絡めることにより、国をも巻き込んだ混乱をきたすまでに至る。結果として踊らされてしまう。その滑稽さに笑いながらも、知らぬうちにぼくらも巻き込まれ踊らされている状況が多々あるんだろうなぁと思ってしまう。 張り詰めた面白さを十分堪能できた。でも、『容疑者 真下正義』で保留となった謎は本作では触れられなかった。何かつながりがあるかと思ったんだけど・・・。まさか地下鉄ジャック事件の真犯人が灰島弁護士なんてチープなオチもないだろうし。 そうそう、本作をより十分理解するためにも、警察庁と警視庁の違いは予習しておいた方がいいですよ。 さぁ、次はいよいよ彼の出番かな? |
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「coba tour 2005〜ディア モデストマン〜」を観る(05.8.27) |
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日本一ボーダーシャツの似合う男、アコーディオン奏者・cobaのライブを観た。アルバムを聴いたこともなく、知っている曲といえばTV番組のテーマ曲になっているものくらいなんだけど、彼の奏でるアコーディオンの美しさと迫力に、ただ圧倒されるばかり。「すげぇ」の一言に尽きるのだ。 しかし・・・。いつもこうなんだろうか、MCがやたらと長い。2曲終わると演奏時間より長いMC。ほぼこの繰り返しでライブが続く。それも、内容のつまらないMCだもんだから、演奏の興奮と余韻が一気に醒めてしまう。「早く演奏してくれよ」と叫びたくなるくらい。結局、総演奏時間よりMCの方が長かったと思う。アコーディオンは重いので、かなり体力を消耗するからなのかなぁ。レコード会社移籍により、演奏できる曲が制限されてたり・・・そりゃないか。 会場には年長者が多かったせいもあり、かなりおとなしめのノリで、cobaもちょっと不満っぽかったんだけど、あの構成じゃノれないよ。逆に、客層を判断してMCを長くしたのか・・・。某演歌歌手をコケにしたり。北海道の高齢者に人気の日高悟郎の芸風に見習って・・・。 とにかく不完全燃焼のライブだった。もっと演奏を聴かせろ!下手なしゃべり聞きに来たんじゃねぇ!単発的になってしまったけど、演奏が素晴らしかっただけに、非常に残念なライブだった。 今度来道したとき行くかどうか・・・非常に迷うよなぁ。 |
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「皇帝ペンギン」を観る(05.8.22) |
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すごいなぁ、神木隆之介くん。この夏の出演映画は『妖怪大戦争』だけじゃなかったんだ。 それよりもペンギン。ただかわいいじゃ済まされないような命の尊さを観ることができた。彼らはあくまで習性で同じことを繰り返しているのだろう。それを神秘的に扱うのは人間の都合なんだ。わかってはいるが、そのひたむきさに心打たれるし、懸命に応援したりする。それが自然の素晴らしさなんだろうか。 雌から雄への卵の受け渡しの際は「もっと早く、もっと上手に足の上に乗せろよ」と熱くなり、卵を抱えて歩く雄には「落とすなよ」と励ましの声をかける。ほとんど自分に置き換えている。皇帝ペンギンは雌の方が個体数が多いので、雄の奪い合いが起こるとか。ペンギンも悪くないかな。 と、ペンギンに肩入れするその一方で、地球温暖化は彼らの聖地に大きな影響を与えてる。もしかしたら人間は、自然界の習性とかを神秘化することで、自分たちの行っている自然破壊を正当化しようとしているのかもしれない。業の深い生命体だから。 |
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野島尚「龍時03-04」を読む(05.8.20) |
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ほぼ1日で読み終えてしまった。リュウジが駆ける姿を追い続けてしまった。 ベティスへ完全移籍をし、ジョーカーとしての役割を存分に発揮したリュウジの次なるステップはアテネオリンピック。日本を離れるきっかけとなった青いユニフォームに再び袖をとおす。サポーターが彼に期待するプレーは・・・。監督が彼に求めているプレーは・・・。 アテネオリンピック前に書かれた作品だけに、実際には出場しなかったスペインやブラジルがカギとなる。日本五輪代表も出場しなかった選手(鈴木啓太、根本、田中誠、明神)が登場するけど、そこはあくまで小説なんで。でも、リアリティは十分。どの試合もきついものばかりだけど、着実にステップアップする彼らは、あたかも予選敗退してしまった本当の日本五輪代表の仇を取ってくれているかのよう。山瀬と今野が登場しないのはさびしいんだけど。 ぼくらが望む日本代表の姿ってどんなもんだろうか。2002年W杯で最後まであきらめずに攻め続けた韓国の姿は、ライバル国ながらとてもうらやましく思えた。きっと作者も同じ気持ちだったと思う。だから、作中の日本五輪代表にその想いを託したんだと思う。 リュウジにとって、アテネオリンピックは大きな転機となったはず。日本を捨てようとしたリュウジが日本のためにできること。『04-05』ではW杯アジア予選には徴集されるのだろうか?『05-06』はいよいよドイツW杯だ。北京五輪やW杯南ア大会ではバリバリの中心メンバーで。リーガ・エスパニョーラでもロナウジーニョとの対決や同世代のライバル、パク、ヴィクトル・ロペスとの勝負が待っている。ベティスでの同僚・ホアキンのお茶目な話だって・・・。 でも、『龍時04-05』を読むことはできない。リュウジの駆ける姿を読むことはできない。なんで死んじまったんだかな、野沢尚。ぼくらはいつまでも五輪代表で駆け回るリュウジを思い描くしかないんだぞ。日本サッカーに欠けているものを探す旅が途切れてしまったんだぞ。 日本サッカー界にリュウジが現れることを、日本代表がいつだってあきらめないサッカーをすることを強く祈る。 |
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野島尚「龍時02-03」を読む(05.8.19) |
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ぼくの中で、小説を読むためのルールがいくつかある。そのうちの2つを破ってしまった。 ひとつは小説は外出先でしか読まないというもの。通勤などの移動時間や待合せ等の空き時間で読むようにしている。読書時間を制限しておかないと、のめり込んだら徹夜とかしちゃうから。 本書の前では『読書』という誘惑に勝つことができなかった。前作「龍時01-02」を読んでいるときはなんとか誘惑を跳ね返す精神力が残っていた。でも、昨日から少し遅い夏休みに突入し、早起きして出勤しなくてもいい状態になってしまうと、右サイドを駆け上がるリュウジの勇姿を読みたくて仕方がなくなってしまった。 スペインでの2シーズン目、リュウジはレンタル移籍でベティスに所属していた。ぼくの好きなホアキンがいるベティスだ。ブラジル代表のデニウソンも実名で登場する。あくまでフィクションなんだけど、彼らのプレーはもちろん、ピッチ外の出来事も目に浮かぶように描かれており、サッカーファンにはヨダレもの。その中でもちろんリュウジもひとつひとつステップを登っていく。その成長がひしひしと伝わってくる。 サッカーだけでなく、恋の話もある。まぁ、どちらかといえば付け足しみたいだけど。そして、ライバルチームに所属する韓国人MFパクとの友情。国とは何か、アイデンテティとは・・・。こちらは読み応えある部分になっている。 とにかく面白いんだ。一気に読みきってしまったんだ。リュウジの次のステップはもちろん青い代表ユニフォーム。この物語の冒頭でリュウジが・・・いや、リュウジに背を向けた日本代表のサッカーにいよいよ挑戦していく。早く続きが読みたい。 そして、2つ目のルール違反。文庫本しか読まないはずなのに、『龍時03-04』の単行本を買ってしまった。文庫化までおそらくあと1年、どうしても待てなかった。リュウジの活躍を早く確かめたかった。この夏休みは読書漬けかな? |
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「Mr.BOO!」を観る(05.8.19) |
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懐かしの香港映画「Mr.BOO!」がDVDで発売されることを記念して開かれた試写会に行ってきた。上映作品はシリーズ第一作。吹き替えは広川太一郎とツービート。「涙ものだぁ」と思いながら観たんだけど、違った意味で涙ものだった。 中学生の頃はすごく笑っていたと思う。でも、観直してみたら大部分があまり笑えなかった。広川太一郎の早口がこの映画を大きく支えている。今や世界の北野武の吹き替えは「なんじゃこりゃ」もの。ビートたけしだから許されるといったところ。きよしに至っては・・・。かといって終始沈黙していたわけではなく、笑どころも確かにあった。冒頭のドブ(?)にはまるシーンやプールに落ちるシーンなんかはとても笑えた。 不滅のコメディとはどんなもんだろうか。チャップリン、キートン、マルクス兄弟・・・。言葉を最大の武器にしない笑いはそのひとつだろう。そして、時代に関係ない感情を突いた笑い。その意味では、25年の月日が「Mr.BOO!」の笑いを風化させてしまったのは、致し方ないのかもしれない。 「Mr.BOO!」よりも広川太一郎の素晴らしさを再認識したひとときだった。 |
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野島尚「龍時01-02」を読む(05.8.17) |
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昨日に続き、今日も読書感想。けっして1日で読み終えたわけではない。でも、圧倒的なスピードで読み終えたのは確かだ。 学生の頃、夢枕獏の『餓狼伝』を読んだとき、闘いの描写にド肝を抜かれた。なんたるスピード、なんたる躍動感。それと同じような感覚を本書のサッカーシーンにも感じた。リュウジが右サイドをドリブルで切り裂いたり、中央にカットインする姿はもちろん、ピッチ全体が俯瞰して見えるような描写。作者のサッカーに対する想いが伝わってくるようだ。 それにしても面白い。主人公・リュウジは今の日本代表があまり好まないドリブラーの攻撃的MF。U-16日本選抜で海外との実力差を知り、ピンボールのようなパスつなぎの日本サッカーに決別し、一人スペインの地へ。そこでの彼の奮闘が綴られている。彼のサッカー漬の日々が描かれている。彼の練習風景も余すところなく映像として目の前に迫ってくるようだ。 とにかくサッカー好きにはおすすめの作品。リュウジの日本サッカーに対する疑問はぼくらがジーコジャパンに抱いてる不安そのもの。そしてリュウジという存在はぼくらが待ち望んでいる選手そのものなんだから。きっと日本代表だってパサーを好んでいるように見えるけど、ほんとはリュウジの出現を待っているのだ。優秀なパサーたちを従えることのできる存在を。 ぼくは早速2作目『龍時02-03』を読み始めている。 |
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乃南アサ「ボクの町」を読む(05.8.16) |
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実は読み終えたのは結構前。で、次の本も明日あたりには読み終える。んで、あわてて更新するのであります。 正直、読むのに時間がかかった小説。確かに量は十分なんだけど、それ以上に主人公に共感できず、途中で何度ギブアップしようと思ったことか。 いまどきの若者が失恋を機に警察官になり、実習として町の交番にやってきた。そこで町の人たちとふれあいながら、少しづつ警察官としての自覚を覚えていく・・・。ありていに言うとそんな物語なんだけど、主人公の何事に対しても斜に見る所や、信念もないのに生意気しか言わないところにひどく嫌な思いがして、なかなか読む気になれなかったのだ。言い訳ばかりを並べて自分を正当化して。就職した頃のぼくはひどく生意気で、よく上の人たちとぶつかっていたけど、自分の中に揺るぎない正義があって、それだけは裏切らなかったという自身があった。その正義が一般的に正しいかどうかは不明だけど、信じるものがあった上でやんちゃしていた。 でもこの主人公は違う。楽と見栄えだけを優先している。それがひどく嫌だった。それがいまどきかと思うとぞっとした。自然と読む気がそがれていった。 でも途中で気付いた。確かに若い頃のぼくには正義があった。でも、今の自分は?この主人公はまさに今のぼくみたいなものだった。気付いたときにひどく恥ずかしくなった。とっぽいようにみえて、年齢と立場がぼくの正義を曇らせていたんだろうか。 主人公は彼らしいカタチでやる気を見つける。そして、警察官としてのスタートを切る。ぼくも気持ちを一度リセットして、新しい正義を見つけて再スタートを切らねばならないのかもしれない。 そんなことを考えさせられた一冊だった。 |
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「姑獲鳥の夏」を観る(05.8.15) |
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「この世の中に不思議なことなんて何もないんだよ、関口くん」 いやいや、あんたの存在自体が不思議なんだよ、京極堂。 不思議を不思議と思わず、受け入れることが京極堂の概念なのかもしれないけれど、陰陽師を信じろと言われてもつらいよね。 でも、映画としては面白かった。ミステリーというよりは大人の青春物語として。主人公は京極堂じゃない。内気で頼りない関口くん。それを優秀で頼りがいのある京極堂と榎木津が見守り、木場修が笑いを添えてくれる。『ちびまる子ちゃん』の山根くんを大野くん&杉山くんが励まし、ブー太郎が笑わすみたいな。 ミステリーの方はなんとなく先が読めたので、ある意味安心して観れた感もある。でも、ひとつだけわからないことが。どうして関口くんは久遠寺涼子に恋文を持っていったことを記憶から消去しようとしたんだろうか。鬱病になってまで。思わず一目惚れした相手に他人の恋文を渡したことを後悔した?涼子の誘いに驚いて、清楚なイメージだけを残そうとしたから?原作を読んでみればわかるかな。 そんな細かなことよりも、学生時代や戦時中の仲良し4人組のエピソードの方が楽しみで読んでみたいんだけど。 それにしても、永瀬正敏演じる関口を観るたびに、「しっかりせんかい、大江千里!」と心で叫んだのは、ぼくだけではないはず。 |
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「リンダ リンダ リンダ」を観る(05.8.14) |
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ドブねずみみたいに 美しくなりたい。。。 このフレーズをはじめて聞いたのは20歳のとき。『サンプラザ中野のオールナイトニッポン』でこのフレーズが流れたとき、眠気が一気に吹っ飛んで、続くハイテンポのビートに撃たれまくった気分だった。なんだ・・・こいつら・・・。 あれから18年。『リンダ リンダ』をはじめ、THE BLUE HEARTSはいつも心の中で響いていた。そんな中年がぼくのほかにもたくさんいることだろう。 映画『リンダ リンダ リンダ』は女子高生が学園祭で『リンダ リンダ』を演奏するという、単刀直入で明快な物語だ。『リンダ リンダ』が発売された頃に生まれた彼女達が、『リンダ リンダ』からどんなメッセージを受け取るのか。少し心配しながら観たけれど、そこに描かれていたのはあの頃のぼくらと大して変わらない若者だった。ヴォーカルを担当することになった韓国からの留学生・ソンちゃんが『リンダ リンダ』を聴いて涙するシーンがある。それは初めてアルバム『THE BLUE HEARTS』を聴いたぼくみたいに。 最後の学園祭がもたらす高揚。若者にしかない時間。それらがあふれんばかりのスクリーンは、ぼくにはかなり眩すぎたけど、THE BLUE HEARTSを愛する気持ちは強く感じたのだ。 甲本雅裕がイイ役で出てたのも、製作サイドのリスペクトなのかな。 |
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ケツメイシ「女将さん!!もうこんなに入ってますけど、よろしいんでしょうかFES 平成17年」を観る(05.8.9) |
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何千球のシャドウピッチングをこなしたんだろうか。何千台の車を誘導したんだろうか。何千回の馬場チョップをお見舞いしたんだろうか。ぼくの右腕はぴくぴくと力なく震えている。掌は腫れ、足元もいささかおぼつかない。全身から湧き出した汗で、体重も減っていることだろう。それでも心は晴れやかで、未だに耳に残るメロディで身体が揺れている。 楽しかった。3人のMCと1人のDJが繰り出すメロディと言葉に心も身体も弾みっぱなしだった。下ネタ満載のMCも、ぐだぐだの寸劇でさえも、真夏の夜に吹き抜ける一陣の涼風かのよう。その心地良さたるや、格別なのだ。 『ケツノポリス4』の楽曲に加え、ヒット曲超満載。場内ヒートアップするばかり。明らかにオーディエンス平均年齢を上回るぼくも、『三十路ボンバイエ』に励まされながら、狂喜乱舞なのでした。 身体の揺れがまだ止まらない。RYOさん、ついて行きたいです。これこそ本当の『夏の思い出』。しかも最高の。 |
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「姫が愛したダニ小僧」を観る(05.8.7) |
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大王・後藤ひろひと作品にハズレなし。今回が4作目なんだけど、どれもとても楽しい作品だった。 「姫が愛したダニ小僧」は大王が所属するPeiperの旗揚げ公演作の再演だとか。いやぁ、面白かった。出演者全員・・・もとい、ユースケ以外がみんなのっけっからハイテンション全開。豪華な役者陣がこの暑さにもかかわらず。 物語はいたってハートウォーム。自分が姫だと名乗るすみれ婆さんと知り合った夫婦が、彼女のおとぎ話に付き合って恋人探しをするんだけれど、次々と現実化する夢のような話に、妻は乱舞するものの亭主はついていけず・・・。でも、次第に心が開いてきてってお話。大人のピーターパンとでも言おうか。 そんな温もりを感じながらも、要所は笑いでいっぱい。謎の剣士がアキバ系サラリーマンの高橋ゆうじ君だったり、カギを握る島ジジイが・・・。流れの中での笑い、流れを断ち切るような腹筋善之助の一人芝居。どこをとっても面白い。 大王の前作「Shuffle-シャッフル-」を仙台で観た時、アンケート用紙に「北海道にも来て下さい」と書いたのよ。今回のチケット発売日はその一週間後だったので、決してぼくの願いを聞き入れてくれた訳じゃないだろうけど、なんかとてもうれしい。これを機に、もっといろんなお芝居を札幌で上演して欲しいもんだ。北海道の演劇レベル向上のためにも。 |
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「スター・ウォーズ クローン大戦」を観る(05.8.1) |
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いやいや、「スター・ウォーズ エピソード3」の興奮が醒めないのだ。「まだ観たい」「もっと観たい」という感情がふつふつと沸いてくる。エピソード2の後、エピソード3の直前までを描いたアニメがあると知っては、いてもたってもいられなくなった。CD屋あちこち駆け回って、アニメ『クローン大戦』探したよ。どこも売り切れで、ヤマダ電機で見つけたときは涙。 東京ではエピソード3公開直前に日本テレビで深夜放映したらしいんだけど、北海道はローカルなのでテレビ放映されなかったんだよね。 で、早速観たさ。ジャパニメーション育ちにはちょっとつらい絵だったけど、スピード感は映画に匹敵。絵の精度を上げてあのスピード感を出そうとしたら、とてつもない金がかかるに違いない。アメリカアニメの文化として受け入れれば、さほど気にならないかな。 映画では触れられなかったジェダイマスター一人一人がクローズアップされていて面白かった。マスター・ウィンドゥがかっこよすぎ。 ところが・・・。DVD化されているのはVol.1だけ。Vol.2は未発売。つまり、STORYも途中で『つづく』。 Vo.2のラストはパルパティーン最高議長誘拐らしいんだけど、またもお預けだ。せっかくエピソード3を観終えて爽快感に浸っていたのに・・・。 SWシリーズの最大の楽しみは「待たされる」ことなのかもしれない。 ↑ 仲間に送ったメールを転用。 |
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「スター・ウォーズ エピソード3」を観る(05.7.28) |
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ついにダース・ベイダーが誕生した。愛・憎悪・嫉妬渦巻く中、あの低音が鳴り響いた。待ちに待ってはいたんだけど、「来るべき時が来てしまった・・・」。物語のすべてがつながったという爽快感と、「これが最後」という喪失感で胸が一杯だ。 ネタバレもくそもない。アナキンがダークサイドに堕ちて、パドメはアナキンとの双子(ルークとレイア)を産み落とすのだ。わかってはいるが、その過程にぐいぐいと引き込まれてしまう。若者の心の葛藤に、壮大で迫力のあふれる映像に。 ハッピーエンドではないのに、これから銀河系は闇に包まれるというのに安心して観ていられたのは、『新たなる希望』がもたらされることを知っているからなんだろうなぁ。W⇒X⇒Y⇒T⇒Uの順での製作・公開がここで功を奏したという感じ。 些細な「?」はあるかもしれないけど、ここまでやってくれたら言うことはないのです。ハン=ソロの伏線がなかったのがさびしかったけれど、チューバッカとの出会いは小説になっているようだから、それを読むことにいたします。 エンドロールが流れたときには、スタンディング・オベーションしたいくらいの気分だったけど、さすがに人目もあることなので自重した。でも、気付いたのよ。アナキン最大の嫉妬に。これはアナキンの転落物語なのに、ファーストクレジット(つまり主役)がオビ=ワン(ユアン・マクレガー)なんだよね。アナキン(ヘイデン・クリステンセン)はパドメ(ナタリー・ポートマン)に次いで3番目。「見せ場はぼくの方が多いのに、若いという理由だけで・・・」というアナキンの叫びが聞こえてきそうだぞ。ルーカスはそこまで計算していたのかな。 このままWXYをぶっ通しで観たい気分なんだけど、サラリーマンなので明日の仕事を考えるとできないよなぁ。 |
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「フライ,ダディ,フライ」を観る(05.7.16) |
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文句なしで面白かった。大切なものがなんなのか。大切な想いがなんなのか。大切な人が誰なのか。金石一紀の初脚本作品は『大切』が一杯詰まった作品だった。 喧嘩の師匠・舜臣も属するゾンビーズが主役の金石一紀の『レヴォリューションNo.3』を読んでいただけに、舜臣のイメージを勝手に想像していたんだけど、岡田准一はそれにまるで当てはまらない。この映画、大丈夫?なんて勝手に思っていたんだけど、岡田准一よかったのよ。ぼくの中で剛のイメージが先行していた舜臣に華が加わったって感じ。鷹の舞なんて麗しすぎるってーの。 おじさん世代の鈴木さんが若者とひとつになってがんばる姿が、同年代くらいのぼくには眩しすぎてうらやましいのだ。あんなドキドキする毎日はもう訪れないから。きっと帰りのバスの乗客(なんとも通な役者陣)もぼくと同じ気持ちで変わっていく鈴木さんを見ていたんだろうなぁ。気持ちがわかりすぎて、バスとの競争シーンは鈴木さんよりも乗客&運転手に感情移入していたよ。 花マル印でおすすめの作品です。すべてのプライドや纏ってきたイメージをかなぐり捨てたくなる感じ。そしてぼくらも飛び立ちたくなる。「羽を開いて 光の射す方へ」。 |
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「タナカヒロシのすべて」を観る(05.7.10) |
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鳥肌実。テレビでは見せられないネタを繰り出す芸人。たまに映画に出演しても、かなりイっちゃってる役どころが多いので、今回の「タナカヒロシ」もかなり危ない人なのかと想像していたのだが・・・、さにあらず。決して普通じゃないけれど、鳥肌実にしかできない「タナカヒロシ」像があふれる映画だった。 32歳独身。親元で暮らし人付き合いが苦手なサラリーマン。股引を愛用し、巨乳が好き。女性と話すなんてとんでもない・・・ってタイプなのに、なぜか女性の気を惹く男。彼は短期間でいろんなものを失っていくんだけど、それによって得るものもあって、人として強さを増していくさまが描かれている。 彼にとって幸せを感じさせてくれたものが、実は彼の世界観を狭めていたのかもしれない。そう思うと、ぼくももう一皮でもふた皮でも剥ける努力をせにゃならんかなと。 それにしても、鳥肌実よかったぞ。ついつい「いつキレるの」とか「そこで脱ぐか?」などと考えながら観てしまったけど、個性派俳優の称号をしっかりものにしたかな。でも、そうなると彼の本職である演説会もまた観たくなる・・・。 |
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姫野カオルコ「終業式」を読む(05.7.8) |
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これ、数年前にSAYUKI(くや探メンバー)からもらった本。姫野カオルコは前に『整形美人』を読んで、男の心理を実に深くとらえてる女流作家だと感心していた人。 で、今回の『終業式』はというと、いきなりびっくり。物語が交換日記や手紙、FAXで構成されているのだ。舞台『ラブレター』みたいに2人だけのやり取りというのではなく、いろんな人が入り混じっての文書交換。情景や行動の描写はもちろんないだけでなく、タイムリーな会話もない。読み手は手紙の間に起こっているだろう出来事を推測し、補完しながら読まねばならないのだ。想像力が必要ってこと。 ついていけるかどうかかなり不安だったけど、意外と楽しく読めたのだ。無理に考えようとせず、流れに任せればすんなり入ってくる。ただ、たまにしか登場しない名前が出てくると、「誰だっけ?」と首をかしげるところもあったけど。 これって、読み手によって感じ方が大きく変わる本かもしれない。特に、「映画化すると配役は?」なんて話をしたら、面白いかも。なんたって、登場人物の描写も手紙やらFAXで読み取るしかないんだから。 ぼくが一番つぼにはまったのが、宏くんの行動。「あっ、この女とはきついな」とぼくが思う手紙の内容の直後に、その女と別れるんだよね。なんか気持ちわかるのよ。 やっぱり姫野カオルコは男の気持ちを熟知した作家なんだなぁ・・・って、完全に把握されてるのはぼくの心だけなのかもしれないけど。 |
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浅暮三文「ラストホープ」を読む(05.6.30) |
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これ、かなり前に読み終えていたんだけど、忙しくて更新する余裕がなかったので、とりあえず一段落した今日更新します。 元宝石強盗、現釣具屋経営の二人が時効間近の1億円強奪事件に知らぬ間に絡み、一攫千金を狙うというクライム・コメディ。偶然の連続から始まる話なんだけど、話が進むにつれ騙し騙されのコンゲームの要素が強く現れ、その攻防に魅惑されてしまう。 惜しむらくは要所に出てくる夢の話。漠然としたイメージで物語の先を暗示するんだけど、これが難しい。とりあえず読み飛ばしてしまいそう。おそらくはぼくという読み手の能力(想像力)不足なんだけど、物語の勢いがそがれてしまうような気がして、もったいなく感じちゃう。 とはいえ、これは面白かった。駆け引きの妙が堪能できます。 時間が経っているせいか、淡白な感想でした。 |
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「イッセー尾形のとまらない生活2005in春の札幌」を観る(05.6.19) |
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札幌に転勤になって、お芝居を観る回数も減るんだろうなぁ・・・と思っていたけど、イッセー尾形は年2回キッチリ札幌に来てくれるという。クエストホールのようなアットホーム感は少ないし、桃井かおりとの二人芝居のようなイレギュラー公演は観れないだろうけど、年2回はイッセー尾形が観れるということで、ほっとする今日この頃。 今回は新作を引っさげての公演とか。そういえば前回のクエスト公演、ベルリンの凱旋公演だったから。新作を観る楽しさといえば、イッセー尾形の視点に唸らされる点かな。「そこか、そうくるか」って驚きと笑いがいっぱいなんだもんね。当然今回も。 では、今回のネタを簡単に。 『元労働組合委員長』 これは凱旋公演でもやったネタ。やっぱり新作だったんだ。元委員長の戸惑いとギャップに磨きがかかってます。 『ひとみちゃん』 これは新作じゃないんだけど・・・。何度観ても笑えるけれど(おそらくナマで4回は観ている)、なんで今回これをまた・・・。 『ひとみちゃん・家政婦編』 ↑は伏線だったのか、ひとみちゃんの華麗なる転身の。でも、なにをやってもひとみちゃんはひとみちゃんなんだよね。家政婦ひとみの今後の活躍、楽しみだぞ。 『詩人になりたかった男の詩』 いろいろあるけど、これが純粋な日本男児の愛の言葉なんです。ぼくら笑っちゃってますが、真剣なんです。それが男なんです。 『宅配ピザ屋』 なんとも憎たらしいピザ屋のバイトなんです。ああ言えばこう言う。近くにいたら蹴り飛ばしてやりたくなるような。でも・・・。見事な切り返しなんです。どんなに生意気なヤツだろうとも、あそこまで見事に切り返しを見せてくれるなら、多少のことは目をつむりたいくらいです。 『説明会』 なんの説明会なんだ・・・。一体なんの映画が始まるというのだ?担当者のキャラもとんでもないけど、設定からすべてがとんでもない。とんでもないワールド爆発なのだ。 『クッキーパーティ』 これは確かNHK-BSの楽器を題材に作ったネタだよね。老いてもまだ現役。日本人には数少ないスペイン人の情熱をもつ老人が、愛しの鈴木さんを求めて。打倒・JAL横倉!チェロが奏でる『遠き山に陽は落ちて』が胸に染みます。 |
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「YOSAKOIソーラン祭り2005」を観る=その1=
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6月11日16:40 6月11日土曜日。コンサドーレ札幌vs徳島ヴォルティス戦の帰り道、『YOSAKOIソーラン祭り』の新さっぽろ会場によってみた。きっと熱いステージが繰り広げられているのではないかと。しかし残念ながらこの日のプログラムは既に終了しており、スタッフが片付けをしているところだった。 「明日、大通公園へ観に行くので、今日のところはあきらめるか・・・」 と、家路につこうとした瞬間、札幌市青少年科学館の前を少女達が歓声を上げながら突進してくるではないか・・・。しかも、みんな『あずみ』みたいな格好で。 「列が乱れてるじゃねぇかっ!おまえら、本番は明日なんだぞっ!やる気あんのかっ!」 声の主は壇の上に立ち、少女達を見渡しながら指示を出す。「アルフィーの桜井がバンカラになったよ」と見間違えてしまいそうな容姿・風貌。その様子を取材のテレビカメラが撮影している。お揃いのジャンバーを着たスタッフ達が周りを囲む。背中には『関西京都今村組』。 練習風景を取材がくるぐらいなんだから、かなり有名なチームかもしれない。それにしてもちょっと刺激的なコスチュームだこと。内心ニヤついていることを悟られないように眺めていたら、スタッフの一人が近づいてきた。危ない人に間違えられたか・・・?まさか、撮影した写真を没収されるのか・・・?エロい写真は一枚も撮っていないぞっ! 「関西京都今村組ですが、明日の夜9時からスピカで『札幌大感謝ライブ』やるので、ぜひ観に来てください」 もらったチラシを読んでみると、『「今村組」を札幌に呼ぼう会』なるものがあるらしい。そんなすごいチームだったのか。 帰宅して『YOSAKOIソーラン祭り』のスケジュールを確認してみる。すると、関西京都今村組の大通でのステージ及びパレードが、明日のいい時間にあるではないか。 注;『YOSAKOIソーラン祭り』はステージでの演舞と、パレードの2種類あります。 これも何かの縁だから、関西京都今村組の追っかけをやってみようか。けっして衣装目当てじゃなくってさ。 6月12日9:00 大通8丁目のステージ。特別観覧席(有料)のチケットを購入し、10時過ぎからの関西京都今村組の登場を待つ。朝早かったので無料ゾーンにも空きはあったんだけど、せっかくだからベストポジションで観たいじゃない。それにしても『YOSAKOIソーラン祭り』は面白い。いろんなチームがそれぞれに工夫を凝らした踊りを観せてくれる。他チームの話は別の機会に書くとして。 いよいよ登場、関西京都今村組。2枚の団旗がはためいて、勇壮な感じを漂わせる。 動きになびく、風にはためく。袖が、裾が、旗が、団旗が。その様が静で見せた勇壮感を一層に引き立てる。そのはためきが揃ったダンスの中でイレギュラーな感じを加えて、シンメトリーとか予定調和でない美しさや楽しさを出しているように思えた。とか書いたけど、その一見イレギュラーに見えるはためきすらも特訓で作り上げたものなんだろうけどね。 6月12日12:30 ところ変わって大通り6丁目北パレード会場。昨年優勝の新琴似天舞龍神が見事なまでに桜で統一されたパレードを行った余韻覚めやらぬ中、登場しました、われらが関西京都今村組。 パレードの場合、地方車と呼ばれる音響関係を搭載したトラックが全体を先導し、その上に指揮者が乗るのが普通なんだけど、関西京都今村組は最後尾に神輿太鼓が陣取り、アルフィーの桜井似の組長がその上から声を上げる。なんか絵になってる。
残念ながら関西京都今村組はファイナル進出を逃し、今年は前出の新琴似天舞龍神が連破を飾って祭りの幕は下ろされた。新琴似天舞龍神はさすがにすごかった。でも、関西京都今村組だって少なくともファイナルに残るには十分の踊りだったと思う。審査の基準はよくわからないけれど、これにめげることなく来年もまた踊りに来て欲しい。そう強く感じた。修正点はキッチリなおして。 さてさて、関西京都今村組のぼくの一押し。それは組長でも団旗持ちでも大勢いるおねえちゃんでもなく、この彼で決定なのだ。けっしてそっちの趣味があるわけじゃなく、いい感じ出してるんだな、彼。 |
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「イン・ザ・プール」を観る(05.6.5) |
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いやいや、怪優・松尾スズキワールド全開っす。彼の魅力イコールこの映画の面白さといっても過言ではないだろう。 “プール依存症”“継続性勃起症”“強迫神経症”・・・心の病を抱える3人の人々の症例(日常?)を描きながら、その3人に絡んでくる精神科医が松尾スズキの役どころ。とんでもなくPOPで弾けている医師なんだけど、どこか憎むことができなくて、患者も心を開いていく。 3人の患者、とくにオダギリジョーの馬鹿馬鹿しいほどの熱演も見所だけど、やっぱり松尾スズキにはかなわない。冗談と本音、素と演技、その見境のなさ加減にやられちゃいます。真面目に付き合いたくないタイプの人間かもしれないけど、半日なら一緒にいてすごく楽しめる人間。彼の台詞・行動を第三者として見るのはすんごく面白いのだ。 訴える主張はほとんどない。でも、とても笑えるし、観終わった後で暖かい気持ちになれる。この映画を観ること自体が心の病に効くのではないか・・・なんて思わせる楽しい映画だった。 日常に疲れている人は是非っ! |
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東京スカパラダイスオーケストラ
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いい汗かいた。すっげー気持ちいい汗。アドレナリンがきっと異常分泌。さすがにトランス状態には陥らないけど、気持ちいいとしか言いようのない心地良さ。スカパラはやっぱり最高のライブ・バンドだ。 今回のツアーからなのかな。昨年は観ていないので詳しくは言えないけれど、妖しいスカパラが帰ってきたって感じ。イケイケGO!だけでない大人の妖しさが匂いたつようなステージ。ここ数年のライブがバリライト点滅させまくって、とにかく突っ走れだったのに対して、今回のライブは紫とピンスポットのいかがわしささえ漂うような演出と選曲。疾走感を求める最近の客には驚きかもしれない。疾走感の合い間に漂う妖艶さ。古いファンにはたまらない、大人のステージがそこには展開されている。かっこいい。汗かきまくって酔わされて、最高としか表現できない。道産子・GAMOUが光ってたもんなぁ。あと、沖さん。あの二人が妖しさの核なんだよね。 あとは遊び心。在りし日の姿が必ずしもBESTというわけではないけれど、もう一度観たいんだよなぁ・・・あのセンスのよい遊び心を。そしたら川上さんがもっと輝くに違いない。そして、『MONSTER ROCK』はあんまり淡白にしないで・・・。 それにしても、ライブ後の札幌の夜風の気持ちいいことと、ビールが美味かったことはこの上なし。次の来道はRISING SUNだとか。行きたいなぁ・・・民生も来るし・・・。ともかく、次のワンマンライブはなんとしても行ってやる。 |
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荻原浩「神様からひと言」を読む(05.5.27) |
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読み終えたのは先週なんだけど、このところ忙しくて更新できなかったので、遅ればせながらの感想掲載なのだ。 本屋に平積みになっていて、本屋の推薦文に『サラリーマン必読!社長に読ませたい物語』なんて書いてあったから、中途採用社員が会社を立て直すような物語かと期待して読んだんだけど・・・さにあらず。いや、会社立て直しには一役も二役も買っている。爽快感は抜群かもしれない。「よくやった!」と主人公を大きな声で賛美してあげたい・・・? この物語は多かれ少なかれ、企業で働く人なら誰もが持っている気持ちを具現化している。アウトローな主人公の設定や彼を取り巻く社員達の度を越したキャラ付けが、フィクションであることを強く意識させすぎて、小説で読むよりもマンガの原作向けかなと思ってしまった。 主人公の行動があまりにもぼくらが居酒屋で愚痴ってることの延長なだけに、「小説なんだからもっと前向きなことやってくれよ・・・」とさびしく感じてしまったのだ。これくらいの物語ならみんな居酒屋で愚痴りながら紡いでいるよ・・・。 |
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「Shuffle−シャッフル−」を観る(05.5.14) |
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出張先で大王・後藤ひろひとのお芝居が観れるなんて、ラッキー!津軽海峡は演劇界にとって大きな障害のようで、北海道にはなかなかいいお芝居が来ないんだよね。舞台美術や装置の運搬費だけでかなり足が出ちゃいそうだから・・・。 さて、今回のお芝居は伊原剛志演じる手柄は立てるが女にだらしない刑事・シャッフルと、奥菜恵演じる一見ダサくてブサイクな元警備員がコンビを組んで宝石強盗団・CHIPSを追うという物語。しかし、美人に目がないシャッフルがCHIPSの女首領・Miss.ハーツに入れ込んじゃったものだから、捜査に失敗してシャッフルは大怪我を・・・。その後遺症でシャッフルは知人の顔と名前が一致しなくなり、捜査は困難を極めていく。果たして二人はCHIPSを捕まえることができるのだろうか・・・。 いやぁ、面白かった。シャッフルの前では役者さんが入れ替わる。いかつい男が看護婦になったり、フェロモン女優がおっさんになったり。その様を見るだけで笑が止まらないのだが、話もしっかり作りこまれていて、見ごたえ充分。リスペクトとして登場する石野真子も効いている。 それよりなにより奥菜恵。あのブスかわいさにはかなりやられてしまいました。一見ダメダメなんだけど眼鏡をはずして髪形を整えるとすっごい可愛い子、あこがれちゃうよなぁ。これだけメディアが発達した現代では、そんな子どこにもいないもん。 スカパラが渋いスーツしか着なくなった今の日本で、色鮮やかな黄色のスーツが似合うのは伊原剛志だけです。ダンディ坂野じゃ着こなせませんから。 |
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「交渉人 真下正義」を観る(05.5.9) |
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『踊るシリーズ』ファンとしてはハズせないでしょう、この映画も。シリーズの名脇役である真下正義が主役の映画。警視庁初の交渉人となった真下が姿なき挑戦者と暴走する地下鉄に立ち向かうパニックムービーだ。 名脇役=名主役になれるか・・・に焦点が集まりがちだけど、この映画は間違いなく脇役たちの映画だった。今回から登場した寺島進演じる叩き上げの現場派刑事、国村隼演じる地下鉄指令局長、アリキリの石井演じる地下鉄広報、松重豊演じる爆発物処理班リーダー、そして和久さんを髣髴させるような金田龍之介演じる線引き屋が存在感といい味を出している。『踊る』メンバーも高杉亘演じるSATの隊長や小泉孝太郎演じる真下の部下などが、いつもよりもクローズアップされ、光っている。そしてワンポイントのように姿を見せるいいメンツたち。タイトル上は真下正義を主人公に据えた映画だけど、真下正義を筆頭に脇役に光を当てた群像映画と言ったほうがいいのかな。 穴はいくつも見られる。どうして地下鉄なの?に始まり、いろいろと。交渉人と掲げながらも、交渉にそれほど醍醐味はなかった。謎かけも凝りすぎて普通の人が推理できるものでもなく、駆け引きも手に汗握るような箇所は少ない。コン・ゲームを期待していたのでかなり肩透かしを食ったけど、パニック映画としては合格か。 しかし、謎がすべて解決されたわけではない。夏に公開される『容疑者 室井慎二』に引き継がれるのだろう。その後もきっと何か展開があるとは思うのだが、謎はどこかできちんと区切りをつけて欲しい。できれば次で。それが『踊る』の面白さだとぼくは思う。決して『ケイゾク』みたいにならないように。いや、ちょっと似てるんだよなぁ。謎のかけ方がさ。 |
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TEAM−NACS 全国公演
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今日は辛口です。それもこれも彼らに期待しているからということ、ご理解願います。 TEAM-NACSが昨年の東京公演の実績を引っさげ、いよいよ全国ツアーを敢行するという。全国に先駆け、その待望の新作『COMPOSER』の北海道公演を観た。昨年の『LOOSER』の東京公演を観て、北海道からこんな面白い劇団が出たのか・・・と素直に喜んだぼくとしては、大いなる期待を胸に会場となる道新ホールに出向いたのだが・・・。 こんなんで本当に全国を回ろうというの?っていうのと、北海道の客は優しすぎる・・・というのが率直な感想だった。 前作では荒削りながらも「伝えたい」って気持ちがストレートに表現されていたのに、今回は魅せたいってアピールが見えるような感じ。『観せたい』でなく『魅せたい』。いつからそんな大御所になったの? 北海道の客はなにを観に来たんだろうか・・・。タレントとしてのTEAM−NACS?それともお芝居?苦肉の策のようなおちゃらかしに大爆笑が起こる。「なんで?」って気持ちでいっぱいのぼく。カーテンコールではスタンディングオベーションまで。これが立って賞賛するほどの芝居か?当然好みの差はあるだろうけど、全員が立ち上がるほどの作品じゃないだろうが。とかいってぼくも前が見えなくなってしまったので立ったけど。北海道の客は確実に劇団をダメにするね。 これを持って全国を回る・・・ハッキリ言ってこのままじゃ通じないと思う。決してすべてが悪いわけじゃないんだけど、今のままじゃ彼らよりもいい芝居を観せる劇団は全国にいっぱいいるだろう。昨年の公演では北海道公演の後で東京公演のために大幅改訂がなされたらしい。今年はそんな時間的余裕はないかもしれないけど、全国に持っていく前に、そして全国で公演しながらでも必死になって作品を育てて欲しい。演劇を観る目の肥えた人たちの意見をいっぱい受け止めてきて欲しい。このままじゃ人気者がやってるお茶濁しのお芝居と受け取られても仕方ないもん。 そして、成長した『COMPOSER』を北海道でもう一度やって欲しい。そうしないと北海道の客は一生経っても育たない。そして、毎回幼稚な客で景気づけして全国公演をやったところで、TEAM-NACSも育ちやしない。 北海道の演劇環境が悪いというのは覆しようのない事実だと思う。関東から移転してきたばかりでも強く感じる。だからこそ演じ手も観客も優しさと厳しさを併せ持って成長しなければならないのではないかと強く感じた。 音尾くんと安田さん、完全に死んでたよなぁ・・・。 |
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「Shall we Dance?」を観る(05.5.2) |
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本編のクレジットを見ると「Shall we Dance?」の"?"がないんだよね。製作者が意図的に取ったのかな。周防版と区別するために。そんなことまで気になってしまう、邦画の名作のハリウッドリメイク版。周防版も面白かったが、こちらもそのテイストはキッチリ受け継いで面白かった。 観る前に一番気になったのがリチャード・ギアとジェニファー・ロペスという配役。リチャード・ギアはカッコよすぎるし、ジェニファー・ロペスはセクシーすぎる。役所広司がかもし出した、夕方には靴下が臭そうな疲れた中年の風情が出せるのか。草刈民代のスレンダーさゆえに成立するプラトニックな淡い恋心が上手く描けるか。そこはハリウッド、きっちりアメリカ色に演出している。 リチャード・ギアは幸せな生活の中で家族が成長したことによりできた隙間を満たそうとダンスを始め、家族の絆をより強くすることを望む。その部分を周防版よりも強調することにより、役所広司が演じた人間味を出さなくとも物語を成立させて見せた。ジェニファー・ロペスは髪を後ろにきつく結ぶことで能面的な顔を作り出し、感情を消すことでセクシーを先走らせなかった。やるな。 とはいえやはり原案の面白さにつきるから、たとえハリウッドがリメイクしようがしまいが、周防監督の勝ちといったところだろうか・・・いやいや、競っているわけではないだろうけど。 毎夏『ウォーターボーイズ』を観て涙するぼくとしては、中年のおじさんが若者と一緒にステップができたことを素直に喜んだり、大会へ向け必死に練習する姿はうるうるものだった。素敵だよね、ああいうの。 5月6日には民放TVで周防版が放映されるので、じっくり見比べようかな。 |
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今野敏「アキハバラ」を読む(05.5.2) |
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アキハバラ(あえて架空の都市だそうで、秋葉原ではない)を舞台としたノンストップ・パニック小説。おたく、マニア、外国人がひしめき集う電気街の特色が存分に生かされたスリリングな物語となっている。架空とはいえアキハバラ(秋葉原)といえば行ったことのある人は街並みから店舗事情まで手に取るようにわかるだろうし、行ったことのない人でさえもその街の持つ猥雑さを感じ取ることができるだろう。戸梶圭太が『溺れる魚』で新宿を、恩田陸が『ドミノ』で東京駅周辺をノンストップ・パニック小説の舞台にしたように、誰もがその街並みを想像できるところが舞台でなければ、ノンストップ・パニック小説は成立しないようである。街並みや情景に言葉を多く使ってしまっては、物語のスピード感がそがれてしまうからなぁ。 で、本作は国際色が色濃く出た物語となっている。外国では当然の危機管理と平和ボケした日本。日本の中でも都会と田舎。それと、時代の対比。ヤミ市〜昭和のヤクザ〜電脳社会。地理的な相違と時間的な相違によるすれ違いが、この物語の軸であり数々の事件の根底となっている。ノンストップ・パニック小説が広く出回ってきた中、どのような差別化をしていくかという意味で、アキハバラに目をつけたのはうまいとこついたって感じ。楽しく読むことができた。 惜しむらくは登場人物をもう少し詳しく書いて欲しかった。なんか通り一遍といった感じがして。どのキャラも今ひとつ感情移入できないのだ。著者が俯瞰的に彼らを見つめているということなんだろうけど、後一歩踏み込めていればもっと手に汗を握ることもできただろう。一時的には失速するように見えるだろうけど、最終的にはただ速いだけではなく重みを持った速さ、速球じゃなく豪球になったんじゃないかなぁ。 ノンストップ・パニック小説特有のスピード感は人として目まぐるしくあわただしく感じられるかもしれないけど、同時多発的に進行する物語がひとつにつながったときの楽しさはたまらないので、読んだことのない人はぜひ試して欲しいジャンル。入門として『アキハバラ』はよいかと思うのだ。 |
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「ディープ・ブルー」を観る(05.4.30) |
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「子供と動物の映画はヒットする」と言われている。自然な表情を見せるかららしい。でも、それはあくまで大人の演出や決められたSTORYの範囲内でのこと。ではありのままの自然はどうなのか。これが凄まじかった。ドキュメント映画ではかなりのヒットだったらしい。残念ながら『子猫物語』や『キタキツネ物語』には遥かに及ばないものの。 圧倒的な迫力と脅威。海での弱肉強食、生態ピラミッド。ぼくらの知らなかった世界がフィルムに詰まっていた。人間が制御できない世界。大人の演出もSTORYも関係ないありのままの世界。それでいて観る者を飽きさせないような編集もされており、勉強になるとともに楽しむことができた。なによりシャチの背びれが迫りくる映像と音楽は絶品。 それにしてもあの映像はどのようにして撮影されたんだろうか。当然やらせじゃできないだろうし。ワンシーンを複数のカメラが捕らえているんだよなぁ。撮影班の執念にも感動。 ただ、ラストが不満。あれはWHOだの捕鯨禁止だののメッセージなんだろうなぁ。せっかく人間の思惑を超越した世界観を映し出しているのに、ラストに偏った主張をされると、かなり興ざめしてしまった。あのラストさえなければ最高なのに。 DVD買って字幕を消して英語音声で観ようかな。英語わからないから環境映像として楽しめるかな。 |
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三浦しをん「格闘する者に○」を読む(05.4.22) |
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就職活動にいそしむ女子大生が主人公なのに、「格闘する者に○」とは・・・。女子プロに入団するの?それとも就職活動自体が格闘技というのか? バブルの絶頂期に就職したぼくにとって、今の若者の就職に関する苦労はまるでわからない。でも、主人公・可南子の潔さはとてもよくわかる。自分のやりたいこと、自分の考えをきちんと持ち、頑ななまでにそれに従おうとするその姿は、素直に応援したくなる部分もある。その一方で、「なんだかんだ言っても可南子は食うに困って身を落としていくことはないんだよなぁ」という醒めた部分もぼくにはあって、素直にのめり込めはしなかった。砂子にせよ、二木くんにせよ、心底日銭を稼がなきゃなどと思ってはいないだろう点が、「やっぱりさぁ」などと思えてしまう。若者文化、若者文学とぼくの一番の溝はそこなんだよなぁ。 面白く読みはできたんだけど、特別な人間の就職活動とそれにまつわる物語にしか思えなかったのが、ぼくには一番物足りなかったところかな。 タイトルの由縁は笑えたよ。 |
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「阿修羅城の瞳」を観る(05.4.20) |
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いのうえ歌舞伎の名作「阿修羅城の瞳」が映画化された。舞台という限られた空間を無限の広がりのように観せるあのダイナミックな芝居が映画に。なんとも楽しみな話ではないか。 舞台に続き主役・出雲を演じたお染、すごくよかった!ヒロイン・つばきを演じた宮沢りえもすごくよかった!あの鎖骨と肩甲骨に惚れちゃったよ。演技のパターンは毎度同じながらも、渡部篤郎もハマってたし、小日向さんもうまかった。 本も面白い。そりゃそうだ。中島かずきが書いた劇団☆新感線の舞台が原作なんだから。面白くないわけがない。 これだけいい素材が揃っていたのに・・・。なんともったいないことか、監督の映像センスがそれらにまるで追い付いていない。ひどくがっかり。 映像のすべてがクリアすぎて、VFXはがっちゃいくらいに浮いてるし、江戸の町並みは誰が見たってプラモデルだし。もっとフィルムの重みとかかすれとか暗さをうまく使うべき。 その上舞台を意識したのか知らないけれど、画面に登場する人の数が極端に少ないものだから、密度が薄すぎてスカスカな映像のオンパレード。芝居を映画化した「笑の大学」はシチュエーションコメディだから、映画化したときもそれで通用するけれど、スケールの大きい芝居を映画化するのに、役者の数を舞台と同じ程度にしてどうするってーの? 極めつけは阿修羅。なんだ?あの映像は・・・。「西遊記」の菩薩様か?(若い人にはわからないだろうが・・・)あんな映像、役者は納得しているのだろうか・・・。無惨としか言いようがない。 最高の素材を揃えながら、とんでもない映画にしてくれたその才能は、「愛のエプロン」のインリン並みかもしれない。 でも、物語と役者はすごいよかったので、映像を気にしなければ観る価値はあるかな・・・。 |
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「真夜中の弥次さん喜多さん」を観る(05.4.7) |
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満を持しての宮藤官九郎初監督映画、「真夜中の弥次さん喜多さん」を観た。あらゆる面において宮藤官九郎らしさがいっぱいといいましょうか。笑どころ、たたみかけどころ、泣かせどころ、ダレどころ・・・。手放しで賞賛できる作品とはなっていないが、宮藤官九郎らしさ、テイスト満載の映画だった。 正直、映画ではつらいかな。連作コントの感が強い作品だけに、まとめて観せられると整合性とかが気になってしまう。コントならば前回死んだ人間が次の回で普通に登場したって笑えるし、毎回殺されるキャラも自然だ。けど、映画となると「なして?」と感じてしまう。この映画、10分枠のコントの方が断然面白かったのでは・・・と感じてしまう。 役者の使い方(あてがき)は絶品。個人的には麻生久美子の美しさと対極をなすヒゲ花魁(松尾スズキ)がツボ。それと荒川良々。あの発想がうらやましい。 ということで、映画ですが観る方で区切りをつけながら観ればすごく面白い作品です。映画としてはつらいけどね。 |
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松樹剛史「ジョッキー」を読む(05.4.6) |
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栄光に向かって疾走する、若き騎手の青春。女子アナとの淡い恋、横暴な馬主との確執、馬への愛情様々な思いを抱え、心優しき騎手は天皇賞の大舞台に挑む。魅力的な登場人馬を描く第14回小説すばる新人賞受賞作。(Amazonに記載されている出版社のレビューより) パチスロの次は競馬かい・・・と突っ込まれそうだけど、こちらにはギャンブル性は皆無で、一人のジョッキーの成長するさまが描かれている。主人公・八弥は2世騎手でも天才と呼ばれる騎手でもなく、リーディングに顔を出すことはおろか、週の乗り鞍や日々の生活にすら窮する騎手なのだ。そんな彼が馬を通して得ていく知識や経験が 馬のことを考えるばかりに衝突する調教師と厩務員、馬を溺愛するばかりに大切なことを見失う者、馬を自分の思うがままに操ろうとする馬主・・・。馬と関わる人たちを八弥が冷静に見ているが如く文章は続く。あたかも神の目・正義の意見かのように。でも、それはただ見解の差に過ぎず、主人公が変わればまた違う視点が正義になってしまう。この小説の面白いところは、八弥が気付くところで、葛藤する辺りが青春(というには大人すぎるが)小説として上手くできている。 2年余りもの時間が描かれているのだが、情景の描写よりもレース名によって季節を感じさせるところはかなりずるいんだけど、早くレースの結果を知りたい、八弥の成長した姿を読みたい・・・と先を急いでしまう面白い作品だった。 |
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「クライシス・オブ・アメリカ」を観る(05.4.5) |
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重厚な面白さ。久々に面白いサスペンス映画を観た。派手な娯楽映画ばかり観ていたから、この厚みに充実感がみなぎるといった感じか。 かつての軍隊の部下が副大統領候補となるが、彼の功績を認めながらも違和感を感じるベン少佐が、失われた記憶と真実を求めて、巨大な陰謀に立ち向かう。 マインドコントロール。もし自分の脳が誰かに操作されているとしたら、これほど口惜しいことはない。ぼくの信じるものも、ぼくの好きなものも、誰かの手に委ねられていると考えたら、これほど腹立たしいことはない。そんな想いが、デンゼル・ワシントンの寡黙な演技からひしひしと伝わってくる。 敵についてはすぐわかるものの、そこへ辿り着き攻略するまでの過程が実に面白く、名優の演技とよい脚本が噛み合った作品だと実感させられる。おすすめです。 孤独な戦いを続けるベン少佐に感情移入しまくりのいい映画でした。 |
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「イッセー尾形のとまらない生活2005年のベルリン版」を観る(05.3.27) |
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春恒例のイッセー尾形クエスト公演。今年は先日行われたベルリン公演の作品を演ってくれました。ベルリン用の作品ということで、これまでに演じたものの中から海外で通じそうだとイッセー尾形が感じた珠玉の作品を観ることができたのです。 懐かしいながらも大笑い。何度観ても褪せることなく新鮮なのは、イッセー尾形が登場人物を過去のものとすることなく、絶えず今の世で実在できるように育てているからだと強く感じるのです。 ということで、今回演じた作品をご紹介。 『津山ひろしラストショー』 のっけから津山ひろしできましたか。登場するだけで、自己紹介するだけで笑いの渦です。脂ぎった色気がムンムンです。笑うしかありません。サイコー。 『元労働組合委員長』 これは新作かなぁ。どこかの工場かなんかの労働組合の集会で、壇上に立つ元委員長。しかし、いまどきの若い組合員達とのギャップに戸惑いながら・・・。組合に情熱を傾けた方の熱意が伝わりまくりです。そして笑えます。 『ひとみちゃん』 これは何回観たかなぁ。それでも新鮮。老ホステスのひとみちゃんが観せる二面性に笑が止まりません。そして、端端に見せる仕草がたまらない。観るたびにグレードアップしています。 『ゴースケ』 いまどきの息子・ゴースケを戒めようとクラブで待ち合す父。しかし想いは通じずゴースケの意のままになってしまう哀しい父。誰もが「育て方が間違ってるんだよ」とつっこみたくなってしまうんだけど、こんな父親は何処にでもいるんだよね。オチの後のエンディングがまた秀逸です。 『ミッドナイトムービング』 夜中の引越しには訳がある。人には言えない訳がある。知られちゃいけないものを運ぶ、それがミッドナイトムービング。イッセー尾形の半分くらいの年齢のバイトくんを演じているというのに、違和感がまるでない。そして面白い。やられた。 『駐車場』 とんでもない世界。自分が誰か、何をしてるかなんてそうそうありえない話なんだけど、日常的な設定にありえない世界が繰り広げられると、笑うしかない。イッセー尾形にしてはひどく強引な作品なんだけど、根こそぎもってく力があります。 『チェロを弾く女2』 昨年上演した『チェロを弾く女』をベルリン用に大幅改定しています。保育園で音についてチェロを使って教えるお姉さんが、少しづつ暴走していきます。前回は源義経だったのがアンデルセンやグリムに代わってたりと、ベルリンを強く意識した作りに見事変貌しています。 どの作品にも笑わされっぱなしで、やられっぱなしの至福の時間でした。転勤に伴い、クエストでイッセー尾形を観るのは当分ないだろうからと、一緒に写真を撮ってもらいました。サインはDVD購入の特典・サキちゃん(ベランダライブ)の鏡にしてもらいました。この鏡は岡本家に三種の神器にしようかしら。 |
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ハセベバクシンオー「ビッグボーナス」を読む(05.3.25) |
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『このミステリーがすごい!』の受賞作品にハズレは少ないなぁ。それがわかっているからついつい買ってしまうんだけど。今回読んだ「ビッグボーナス」もぼくにとっては大当たりの小説だった。 物語の舞台は東京・渋谷界隈で、パチスロの攻略法を売っている主人公・東俊哉が巻き込まれる事件のお話。パチスロの攻略法を売っていると書けば聞こえはいいが、大方の人が思っている通り確固たる攻略法などあるわけがなく、言ってしまえば詐欺師の物語。そんな胡散臭いところだもん、当然あぶない人々もいるわけで、パチスロの攻略法をめぐって騒動が起こるのだ。 物語のカギとなるパチスロについてパチスロを知らない読者が混乱せぬように、巻頭に用語の注釈がついている。作家&出版社の配慮か。ぼくもパチスロをまるで知らない読者なので、まずは用語解説で予備知識を得ようと読むのだが、やっぱりさっぱりわからない。が、ハッキリ言ってパチスロの知識がまるでなくても、この小説を読むにはなんら支障がないのである。そりゃ確かに知識はあった方がいい。主人公が売り捌く攻略法のクダリを理解できれば面白さに深みが出ることだろう。でも、それはこの小説の面白さのあくまで一部分に過ぎない。そこが少し欠けてたって十二分に面白いのだ。 一番の面白味は主人公の性格かな。世間に対して斜に構えているようで、金しか信じていないようで、ビジネスライクに生きているようで、ただの嫌なヤツのようでいて、実はそうでなかったり。ちょっと笑える性癖なんかが人間味を一層豊かにしてたりして。 アンダーグラウンドをマニアの楽しみに閉じ込めるのではなく、広く巧みに読ませる快作。作者と同年代のぼくとしては、『バクシンオー』の名前だけでニヤリものだもんね。次作にも期待。 |
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「ナショナル・トレジャー」を観る(05.3.24) |
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楽しめた。トレジャー・ハンターものはとにかく面白くなくっちゃ。主人公がニコラス・ケイジだったのがよかったのかな。トレジャー・ハンターってよく言えば少年の心を持ち続けた男、わかりやすく言うとガキじゃない。たとえ頭の回転が速くて行動力に長けていたとしても。それをデカプリオとかブラピがやってたら、嫌味に見えちゃうんだよね。でも、ニコラス・ケイジなら駄々っ子の雰囲気ありありだし、いい歳してデコが広くなっても甘えん坊だもん。 アメリカではすごいヒットだったそうな。確かに。これまでのトレジャーものは歴史の浅いアメリカを離れ、歴史の長い辺境で活躍するパターンが多かったけど、「ナショナル・トレジャー」はアメリカを舞台に物語が進んでいく。歴史の浅さをも逆手にとって、アメリカ人に『身近な冒険』を楽しませている。もしかしたらうちの近所にも・・・って思わせるような。 突っ込みどころも満載だけど、楽しめることは確か。でも、これまでのトレジャーものと比べると・・・。やっぱり「インディ・ジョーンズ」や「ロマンシング・ストーン」の域には届かないか。とはいえ、Pixerとの提携が切れたディズニーにとっては「パイレーツオブカリビアン」とともにシリーズ化して屋台骨を背負ってもらわねばならない作品だけに、第2弾で更なる面白さに到達してもらわなきゃね。 邦画でトレジャーものはと考えてみた。とくに都会を舞台にものといえば・・・「彼女が水着に着替えたら」かな。特に一番大切なもののくだりは「ナショナル・トレジャー」に似てる。個人的には「彼女が水着に着替えたら」の方が好きだけど。 |
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山崎マキコ「マリモ−酒漬けOL物語−」を読む(05.3.19) |
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正直、腹立たしく思いながら読んでいた。主人公・マリモがぼくのまわりにいたら、苦々しく思うに違いない。ネガティブすぎる考え方にヘキヘキしてしまいそうだ。当然、本に綴られている彼女の本心を彼女の口から耳にすることはないだろう。でも、酒飲みとして、楽しく酒を飲めない人はとても苦手なのだ。 そんな思いとは裏腹に、なぜかとても速いスピードで読みきってしまった。マリモの心の動きがとても気になった。ぼくは坂上君のように彼女の愚痴や愚行に付き合うことはしないだろう。でも、ぼくの知らない思考がそこにはあって、本を読むことによって彼女の内面を覗き見することには興味がわいた。なんともいやらしい話なのだが。 考え方は人それぞれで、つらい記憶を引きずる人もいれば、封印して前を見続ける人もいるわけで、どれを選ぶかはそれぞれの勝手なのだ。しかし、どんな生き方をしようと、どんなに孤独を求めようと、良い記憶も悪い記憶も人が関わってできているものなんだから、人との関わりを絶って生きていくことはできないわけで、マリモが前を向いていくのに必要なのも人との関わりであって。とても後ろ向きで、やることなすことぼくにとっては『あたた・・・』なマリモが、人との関わりを通して先生に向き合う気持ちを持っていく様子は、素直に応援したくなった。読むスピードが一段と速まった。 マリモがこの後、楽しい酒漬になっていることを祈るばかりなのだ。 |
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「夢チカLIVE in Zepp Sapporo」を観る(05.3.12) |
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サンボマスターのHPでLive情報を見ていたら、ぼくが部屋探しのため帰省する期間に札幌のライブイベントに出演するという。『夢チカ18』というTV番組のライブ企画に。サンボマスター、スクービードゥー、Bivattchee、OLD、TRIPLANEの5バンドが出演して2500円。安い。サンボマスター以外は知らないバンドだけど、これは観に行かなくては。 開演直前に会場に入り、若者を避けるように後ろに陣取る。偶然なんだけど、ステージ全体がバッチリ見える上に、後ろにだけモニターもあって、UP映像も楽しめる。後ろとはいえ、お得ではないか。 番組のMCをしているTEAM-NACSの安田顕が登場すると、会場は一気にヒートアップ。Liveの幕が切って落とされたのだ。 1.OLD 札幌のBANDだそうで。まるで知らない。前半3曲はアコギが響く。曲調・歌詞ともに若者には珍しく、いい意味で枯れた味がある。そこがOLDの由縁?まだ自己陶酔の域を抜けていない部分も目立つかな。トップバッターにしては勢いで売るバンドでない分、苦戦したかな。 2.Bivattchee いかにもライブイベントがよく似合う、いけいけのパンクロックバンド。ファンも多いみたいで、1曲目から場内のテンションがあがっており、前の方では縦ノリ集団の上を人が回っているではないか。でもすぐ納得。面白いバンドだ。曲もMCも。一本調子になることなく、ウラ打ちなんかもうまく使って曲にバリエーションをつけている。いいじゃん。やるじゃん。 3.TRIPLANE 1曲目『スピードスター』、聴いたことあるよ。あのサビは覚えやすくて耳に残る。しかし、Vocalの声とか歌い方がミスチル桜井にそっくりなんだよなぁ。そう思ってしまうと、曲自体もミスチルとかトライセラトップスに聴こえてしまう。そこを脱皮して! 4.スクービードゥー Funky4を自称するだけあって、めっちゃFunkyなバンドだった。キモいと紙一重なのかもしれないけれど、かっこいい。客の煽り方がとても上手く、曲が心地よく躍らせてくれる。これはかなりのめっけモノだった。 5.サンボマスター なにも言うことはありません。全肯定です。すごい・・・。CDで聴いてるだけじゃダメなのです。彼らの声は、彼らの歌はナマで聴いてこそ。曲の合間の弾き語りMC。客の歓声や手拍子も場を乱せば叱責し、楽しみ方をも享受する。全曲一緒に叫んでしまった。最高によかった。 と、音楽のタイプはバラバラながらも、ギター・ベース・ドラムの編成の5バンドを一気に楽しめたこのイベント。バンドの入れ替えにひどく時間がかかって、その都度かなりヒートダウンしたんだけど、各々のバンドがすぐに暖め直してくれて、補っていた。あそこをもっとスムーズにできれば、さらに素晴らしいイベントになったこと間違いなし。 スクービードゥーとサンボマスターがしきりに揶揄した、しらけきった本日の2階席、HTBのお偉いさんやスポンサーが陣取っていたらしい。そして大泉洋も。このイベントの模様は今月中に放送されるらしいけど、その部分はカットかな。カットせずに、しかも2階席をUPで映したりしていたら、「夢見るチカラ」というこの番組の精神が示されて、多くの共感を呼ぶこと間違いないだろう。 最近若者音楽にすっかり疎くなっていたぼくにとって、ものすごく楽しい時間が過ごせたのだ。そういう意味では番組に感謝。 |
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「スウィングガールズ」を観る(05.3.11) |
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夏に見逃して悔しい思いをしていた「スウィングガールズ」が札幌の2番館・蠍座で上映してるっていうんで観てきたづ〜。ハッキリ言って、女の子がめんこかったづ〜。大枠は矢口史靖監督の前作「ウォーターボーイズ」を踏襲しているんだども、前作の無駄だったところを上手く省いて、いい塩梅に面白く仕上がってるべ。 いや、やっぱり彼女たちの可愛さと、いまどきの若者と同じくなげやりに見せかけて、芯はしっかりしているところがこの映画のすべてだづ〜。中途半端な気持ちではじめた楽器演奏が一時取り上げられたときの、さばさばしてるように見せかけといて裏で泣いているあたりなんか、おじさんには健気に思えて「よしよし」って言って頭撫でてあげたかったもん。 今ではあまり観られなくなったスタンダードな学園コメディを2作続けてスマッシュヒットさせた矢口監督、次こそが本当の意味での腕の見せ所だ〜ね。とっても期待です。 今回の戯言は作品の舞台にちなんで、全編山形弁をフューチャーしてお届けしました。 |
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戸梶圭太「アウトリミット」を読む(05.3.9) |
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『激安人間』。目先の欲望に執着して行動する人間のことを戸梶圭太はそう呼ぶ。そして、彼らの行動こそが戸梶圭太の小説の源でありアクセントとなっている。 今回の主人公は警察官でありながらも目先の金に目がくらんで、おバカなことを次々としでかす『激安人間』だ。そんな主人公にたかるかのように『激安人間』が多数交わって、事件があらぬ方向へ暴走していく。その暴走のスピード感とナンセンスさが、読み手の気分を高揚させ、笑わせてくれる。 本作「アウトリミット」は戸梶圭太作品の中でも極に位置する作品だと思う。『激安人間』をひたすら突き詰めている。彼らの行動に計算はそれなりにあっても緻密さは欠片も見当たらない。それがゆえに、物語自体も大雑把に『激安人間』を笑い飛ばすのみと感じる節が多々見られ、律儀な読者には苛立ちすら与えかねない。脳ミソ空にして笑える作品なのだが、それが故の物足りなさも多々感じられる。 戸梶圭太の文章、特に口語は話しての思考を伝えるには実にわかりやすく、気持ちがストレートに伝わってくる。しかし、初老のおじさんがそんな言葉使いするか?そんな言葉知ってるか?と突っ込みたくなる箇所が多々ある。心の中のニュアンスは実によく読み取れるのに・・・。もったいない。 『激安人間』は何処にでもいる。決して他人事ではなく、程度の差こそあれ局面局面においては、誰もが『激安人間』となる。その節度を見極めて行動しないと、戸梶圭太の小説のネタにされてしまうよなぁ・・・と思った。 |
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「Ray〜レイ」を観る(05.3.3) |
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いやいや、レディスデイだからじゃなかった『Ray』人気。今日もチケット完売とまではいかなかったけど、劇場は8割方埋まってた。 決して津波のように感動が押し寄せてくる映画ではないんだけど、心打たれる映画だった。言わずと知れた大御所レイ・チャールズの自伝映画。彼の残したメロディがあまりにも大きいだけに、その栄光に引きづられる賛美映画になるのかと当初思っていたんだけど、きっちりとさらけ出した映画だった。 彼の人生を全肯定することはできない。だからといって、彼の暗部を完全否定することも誰にもできやしない。過去に間違いがあったとしても、それと立ち向かい、克服した彼の強さを、ぼくらは学ばなければならないのだ。 彼のメロディが全編に流れ、彼の幼少期が、これでもかとばかりに強い色調で映し出される。その強さが、彼の心に残っている数少ない情景を、ぼくらの心にも強く刷り込んでくる。決して津波のような感動はないけれど、心に彼と同じ情景を共有することで、淡々とした中にも心揺さぶられる場面が溢れてくる。巧い作りだ。 オスカーを受賞したジェイミー・フォックスの演技の上手さについては、ぼくの眼力(批評力)では語ることができないけれど、静の部分で人を引きつけることができるのは素晴らしいことだよなぁ。 |
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「四輪車Live」を観る(05.2.21) |
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いきなり四輪車と言われても・・・と思う人が多いはず。ぼくの好きなブルースハープ奏者・八木のぶおさんのユニットなのです。八木のぶおについてはWebで調べてみてください。すごい人です。ドラムを叩くのは新井田耕造。RCサクセションのドラマーです。往年のRCファンとしては「マジかよ!」って感じです。そんな彼らが我が家から徒歩数分の店でライブをやったのです。うれしい。 とにかく大人なのです。メンバーの年齢もさることながら、音がとにかく大人なのです。ひとつひとつに重みがあって。そんな音が奏でるブルースが、至近距離から直に伝わってくるのです。至極の喜びとはこのことでしょうか。 一番すごいと思ったのが、フェードイン・フェードアウト。ミキサーにもエンジニアにも頼ることのない、息づかい・腕づかいによる絶妙技は、唖然・感動の一言なのです。 ゲストヴォーカルのスージーキムの歌声も素敵だったのですが、やはり八木のぶおさんのブルースハープは絶品でした。彼の口技で、ブルースハープが様々な楽器に聴こえてしまうのです。ささやいたりshoutしたり、すっかり彼のペースで乗せられていく。気持ちいい。 ベース・石澤さんの朴訥としたMCの中に織り交ぜられた「曲書いてみました」の言葉。何気に素敵なブルースを作り上げちゃう彼らの凄さにひたすら感服なのです。 大人の時間が過ごせた、とてもいいライブでした。 |
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「パッチギ!」を観る(05.2.15) |
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いい映画だ。素直に。井筒監督渾身の一作。 今回はネタバレになるかもしれないので、読まれる方はご注意下さい。 ぼくは札幌の新興住宅地に生まれ育ったためか、朝鮮の方々に対する差別とか部落問題など知らずに生きていた。だから大学生のときに『朝まで生テレビ』でその問題がテーマとなって、喧々諤々の議論がなされているのを、ひどく驚いて見ていたものだ。そして「ぼくには差別意識はないから」などと思っていた。 でも、この映画を観て「意識しない」というのと「知らない」というのはまるで違うことだと気が付いた。決して知っていたら差別をしていたというわけではなく、なにも知らないくせに自分を美化している自分がひどく恥ずかしく思えた。 映画の舞台は1968年の京都。ぼくが生まれた翌年の設定だ。ひどく古い話かもしれない。いや、つい最近まで続いていた話なのかもしれない。なにも知らずに育ったぼくにはどちらかなんてわからないけど、この物語に本当に感情移入なんてできないのかもしれないけれど、対立の中に芽生えた小さな友情や淡い恋が、とても心に染み入ってきた。そして、お通夜でのおじさんの言葉がストレートに胸に突き刺さってきた。「なにも知らずに、見ようともせずにこのまま生きていく人の代表がぼくなんだ」と。 笑わされ、泣かされ、自分の世界観の小ささを認識させられた。井筒監督にガツンとやられた感じだ。 リアリティにうるさい井筒監督作品だからこそぼくが感じた違和感を2つ。ひとつめはこのHPで何度も書いていることなのだが、誰かが死ななければ前に進めないという物語はどうもせつな過ぎる。リアルかもしれない。ぼくがガツンとやられたお通夜のシーンも死があってこそのシーンなのかもしれないが、やはりせつない。ふたつめはその後の弔い合戦。あんなに重いものを背負った闘いなのに、その結末が「引き分けで解散しました」って・・・。そんで産婦人科にみんなで走ってきましたって・・・。そのリアリティのなさはガクンときた。確かにこれからクライマックス、大円団に向かうにあたり、喧嘩の結果なんて些細なことなのかもしれないけれど、そこだけはちょっとね。 なにはともあれ、いい映画を撮ったもんだ。興行成績が振るわないと監督は気にしているみたいだけど、大勢が観ても観る者のほとんどに気持ちが伝わらない映画が多い中で、観る者のほとんどにメッセージが伝わる映画を作ったんだから、胸を張って欲しいです。 |
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「オペラ座の怪人」を観る(05.2.11) |
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映画の方を観てきたのだ。残念ながら舞台(ミュージカル)の『オペラ座の怪人』はまだ観ていないので、比較とかはできないんだけど、迫力のある作品だった。 なにがって、やっぱり音が。ミュージカルなんで歌が歌われることやその素敵さはもちろんだが、映像を煽りまくる音響は客席をも奮い立たせるような。それがサラウンドで響き渡るんだから、音を堪能するだけで満足してしまう。舞台の生ウタ・生演奏と違った映画独特の面白みがここにあるんではないかな、きっと。舞台を観ていないんで断定はできないけれど。あとはマルチなアングルとシーン数の多さなんだろうなぁ。察するに。 そんな音に加え、臨場感あふれる映像と、見所はいっぱい。ファントム・フリークにはいろいろとご意見があるのだろうけど、初心者としては素直に楽しめたかな。 冷静に考えると『オペラ座の怪人』って、強烈なストーカーの物語なんだよね。でも、多くの人にあんなにも受け入れられているってことは・・・。ミュージカルとしての魅力がいっぱいってことでしょう。 サッカー好きとしては、クリスティーヌの恋人の名前が『ラウル』なだけに、クリスティーヌもMissダーエでなく、アリ・ダエイに聞こえてしまったのだ。イラン代表の・・・。 |
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柳原慧「パーフェクト・プラン」を読む(05.2.6) |
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今年読んだ2冊目の小説、柳原慧「パーフェクト・プラン」をご紹介。第2回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品なので、ハズレはないと踏んで読み出したんだけど、圧倒的な面白さだった。すごく早く読めるというか、早く次を読みたくて仕方がなくなる。ぼくは外出の際の片時にしか小説を読まないので、電車が目的地について読み終えなければならないときなんかは、「このまま乗り過ごしてしまおうか」と思うほど。 子供を誘拐して身代金は要求せずに5億円を稼ごうというとてつもないお話。その過程が面白く、成り行きにハラハラしてしまう。ストーリーもさることながら、登場人物の描き方、特にチームというか仲間関係の描き方がとても生き生きしていて、ぼくを楽しませてくれた。誘拐犯グループEnigmaの家族的な雰囲気、投資アドバイザー・インフィニティの絆、警視庁特殊班のつながり。仲間がいることの強さと大切さが、人とのつながりがこの小説の根幹を成している。 作者・柳原慧さんの感覚の新しさ、嗅覚の速さにも脱帽。今を形成しているサブカルチャーが展開に密接に関わってくる。これを読んで勉強になること数多し。柳原慧さんって女性なんだよね。だからか、登場する女性の意思が強く感じられるような気がする・・・かな。 第1回『このミステリーがすごい!』大賞の「四日間の奇蹟」がぼくにとってはちょっとファンタジー過ぎて歯がゆい部分もあったので、「パーフェクト・プラン」のキレの良さはとても心地よかったのだ。 読み終えたら、「自分のコンピュータは大丈夫か?」とちょっと不安になるけれど、とてもお奨めの一冊です。 ちなみに1冊目に読んだのはあさのあつこ「バッテリーV」。とても面白かったけど、はあちこちで絶賛されているので、この場では省略ということで。 |
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NODA-MAP「走れメルス」を観る(05.1.29) |
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野田秀樹が20歳の時に書いた作品で、初期劇団夢の遊眠社の代表作『走れメルス』が19年ぶりに再々々々々々々演された。何故いま?野田秀樹の言葉をパンフレットから引用する。 どうも近頃の新しい「若い」芝居を面白いと思えないからだ。〜〜そんなわけで、この「走れメルス」は、古い「若い」表現者からの、今の「若い」表現者への挑発であり、挑戦である。〜〜だが、私には「若い」人の稚拙な企みを受けて立つほどの分別はない。そんなもの待ってはいられない。悪いけど、先へ行く。 痛烈である。痛快である。表現者として次々代を担う若者を煽りまくっている。早く上って来いと。早く同じ土俵に上がってみろと。でもそれは本当に若い世代だけに向けられたメッセージではない。中堅の世代の座長クラスを脇(役)に何人も据えている。あたかも「盗んでみろ」と言わんばかりに。「早くおれへの挑戦権を勝ち取ってみろ」と言わんばかりに。そして観に来た客全員に「もっとがんばれよ」と言わんばかりに。この公演はそれがすべてなんだと、舞台を観てパンフレットを読んで思った。 すごかった。圧倒されっぱなし。ぼくは劇団夢の遊民社の舞台を観たことがない。でも、この芝居が30年近く前に上演されていたと思ったら、鳥肌が立った。今でこそ野田秀樹の台詞回しや意味なさげで重要かつ効果的な動きは広く浸透しているが、30年前に目撃した人の驚きはないだろう。話の中身もまるで古くなく、普遍的。観劇直後は「?」がいっぱいだけど、とにもかくにも引き込まれ、時間がたつにつれ「おぉ」「あぁ」と気付いてくる。この文章を書いている今、持ち帰った「?」の多くが、時限起動のコンピュータウィルスのように感動に変わっていく。確かに今回のはとても魅力のある上手い役者をふんだんに集め、舞台装置や舞台効果も最新でとても高い金を使っている。でも、先陣を切る者として「ここまでくればこんなこともできるんだぞ」と見せ付けているみたいだ。 書きたいことがいっぱいある。大好きな深津絵里のことも古田新太や河原雅彦のことも。想像をいい意味で大きく裏切ってくれた小西真奈美の演技のことも、ランニングシャツがめちゃくちゃ似合う中村勘太郎のことも・・・。舞台装置のこと、音のこと、映像とのシンクロのこと、演出全般のこと・・・。 でも、今回のNODA-MAPは野田秀樹の想いが一番なんだと強く感じた。 なんて評論家みたいなこと書いてしまったけど、野田秀樹本人は「勝手なこと吹いてるよ」と一笑するんだろうなぁ。あっ、読みもしないか、こんな文章。 |
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「バッドサンタ」を観る(05.1.19) |
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ダサかっこいい。ダサいんだけどかっこいい。アル中・ケダモノ・ろくでなし。史上最悪のサンタさん。人前で小便漏らしたりもするんだけど、かっこいい・・・いや、それだけの時はまるでダメなんだけど、人を思いやる気持ちに気付いたあとはかっこいい。最後まで酒が好きで女が好きで、全然シャンとしていないんだけど、それがかっこよく思えてくる。どんなダメな人間でも、どんなにダサくても、かっこいい一面があるということか。絶えず力んでいない、緩いところを見せられるとこが、ダサかっこよさの秘訣なんだろうか。 そんな男を演じるビリー・ボブ・ソーントン。シャンとしていればいい男なんで、かっこよさの多くはその辺によるのかもしれないけれど、あんな男についあこがれてしまう。いやいや、アル中になるとか人前で小便漏らすという意味じゃなくてさ。 物語はダメダメ偽サンタがいじめられっこと出会い、少しづつかわっていくという人情モノ。展開的には途中ワンシーン抜けていたんじゃないの?と思われるところがあり(分け前交渉〜サンタ泥酔で休業〜車庫でのエピソードのあたり)、肝心なところが早足過ぎと思ったけど、心温まる出来ではないか。ものすごくアメリカ的で、日本では成立しない物語だけどね。 とにかくダサかっこいさが際立った映画でした。 |
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「なにわバタフライ」を観る(05.1.16) |
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巧いっ! 脚本が巧いっ!演出が巧いっ!演じ手が巧いっ!演奏が巧いっ!小道具が巧いっ!照明が巧いっ!なにもかもが巧いっ! それしか言いようがないほど巧みに創られたすごい舞台だった。 三谷幸喜初の一人芝居書き下ろし。ミヤコ蝶々の生涯を、三谷作品にはなくてはならない存在となったコメディアンヌ・戸田恵子が演じる。きっと、全幅の信頼を置く戸田恵子だから書き下ろすことができたような、三谷幸喜にしか書けない作品。 演じるのは当然戸田恵子ただ一人。役柄はミヤコ蝶々。でも、そこには彼女以外に5人の登場人物が確かに存在している。彼らは決して喋らないし、戸田恵子が彼らの言葉を代弁するわけでもない。戸田恵子の芝居が、照明が、音が5人の存在を教えてくれるのだ。そして会話が成立している。巧いっ!ミヤコ蝶々が芸人として大きくなるにつれ、どんどん小さく表現されていくお父ちゃんが、目玉のオヤジの姿として舞台上に見えるのだ。くだらない謎かけすら、「そのこころ」が聞こえなくともくだらなさが伝わり、笑いに変わってしまう。この部分に至っては、一人芝居だからこそできる高等芸になっている。 当然三谷作品だもん、一筋縄にはいかない展開も織り込まれている。『緊張と緩和』という笑いのベーシックをも開けっぴろげて笑をつかむ。ミヤコ蝶々という喜劇人の半生に、戸田恵子の演技にどんどん引き込まれていく。 セットの上部にマリンバと多くのパーカッションが設置され、それを奏でる女性が二人。劇中の音のすべてがナマで演奏されている。テープとは違う、その音の厚みが戸田恵子を、彼女の演技を前に押し出す強さにも思える。その使い方も巧いなぁ。 今年一発目から凄いものを観せてもらった。いや、ほんと。2時間ちょっとものほぼノンストップの濃厚な時間を作り出した三谷幸喜・戸田恵子をはじめ、スタッフ・関係者に心から拍手を送りたいであります。 戸田恵子ってアンパンマンの印象が強いけど、ぼくなんかにとってはマチルダさんなんだよなぁ・・・ガンダムの。マチルダさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! |
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「カンフーハッスル」を観る(05.1.4) |
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まったく、ありえねーよ。「んなわけねーだろ」と突っ込みどころ満載なだけど、それすら笑い飛ばせる面白さ。チャウ・シンチーはなんとツボのわかった男なんだろうか。『少林サッカー』に続き、またもハマってしまう傑作だぞ。 STORYはとくだん書くこともない。破天荒の一言。それがどうした文句があるか〜♪とハナ歌すら聞こえてきそうなのだ。面白い。かっこいい。 面白さとかっこよさは何処からくるのかと考えてみた。それはギャップと止め画かな。カンフーマスターと呼ばれるものが7人登場する。その7人の中で見た目かっこいいと言えるのは主役くらいか。他はというと「ありえねー」くらいにダサダサ。それは放送禁止でしょとでも言いたいくらいに。でも、闘う彼らの姿は実にかっこいい。蹴りを放った瞬間や拳が当たる瞬間の止め画に至っては、美しいとしか言いようがないのだ。でも、平素の彼らは見た目同様にダサダサ。そのギャップがとてもおかしい。反対にいい男も出演してはいるのだが、いざという時の彼らはとてもチョロく、そっちのギャップもまた笑える。主役チャウ・シンチーですら最初はボロクソ。 イケ面しかかっこよく観せられない日本では絶対に辿り着けない面白さなのだ。きっと竹中直人や我修院達也がせいいっぱいなんだろうなぁ。まぁ、邦画でこれをやると観客動員がまるで見込めないんだろうけど・・・。せっかくのお笑いブームでもあるんだから、おぎやはぎやカンニング竹山、ワッキーにアンガールズや林家ペー・パー子師匠を使って誰か作ってくれないか。こんな映画を。そうそう、南海キャンディーズも忘れずに。 話がかなりそれてしまったけど、ギャップと止め画を堪能して下さい。 |
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