artな戯れ言2017


このページではartな戯れ言を集めて掲載しています。


「探偵はBARにいる3」を観る(17.12.29)

「サッポロファクトリーで観て、夜のすすきのへ。正しい”探偵”の鑑賞法」
 ”北海道の星”大泉洋。彼が地元・札幌はすすきのを舞台に活躍する”探偵”シリーズの第3弾は、美しくも哀しい女が命を燃やす物語です。って、毎回そうなんだけど。そんで、探偵が振り回されるってお決まりのパターンなんだけど。その定型パッケージが病みつきになるのは、主人公を演じる大泉洋のキャラ、相棒・松田龍平とのギャップ、マドンナの魅力なんだよね。それと、愉快なサブキャラたち。
 ひとりの女子大生がいなくなった。探偵の助手・高田の紹介ではじめた暇つぶしの人探しが、やくざの抗争に巻き込まれ…。なぜ途中でやめなかった。やめる機会はあっただろうに。でも、思い出しちゃったんだよね、哀しい女の瞳を。ハードボイルドとしては、ほっとけないんだよね。
 大泉洋と松田龍平に関しては言わずもかな。松重豊も田口トモロヲもマギーも安藤玉恵も篠井英介も、その味たるや言わずもがな。で、やっぱり今回は北川景子なんだよね。そりゃ助けたくなるよ、どんだけ裏があるってわかってても、あんな瞳で言われたら。だから、探偵の映画というよりは、マドンナの映画かもしれない。
 よく知るすすきのの街角、そしていま映画を観てる場所が舞台となっていると思うだけで、ワクワク感が止まらない。おらが街のおらが映画。おらが街にべっぴんさんがやってきたって。
 エンドロール後まで観逃がせませんよ。
 目指せ、すすきの版『男はつらいよ!』。

よく行くこの階段を!


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桑田佳祐 LIVE TOUR 2017「がらくた」を観る(17.12.23)

「これがオトナのエンターテインメントショー。妖艶で煌びやか、The 桑田 Wold
 魅惑のボインは お父ちゃんのためにあるんやないんやで〜♪」

 待ちに待った桑田佳祐。新譜『がらくた』も聴きこんで、準備万端で出動なのだ。それにしても札幌ドームへ向かうシャトルバス、結構年齢層高くって。もちろんぼくもそのうちの一人なんだけどね。
 座席、スタンドだったけど10列目。ある意味アリーナ後方よりもいいかもしれない。ドリンクホルダーもついてるし。
 一発目、新譜からじゃないとは思ったけど、まさかあれで来るとは(まだ年越しライブが残っているのでぼかすけど)。ぼくの中では歌詞からして北海道を連想してしまう。クリスマスイブイブに札幌。きっとやるであろう(…いや、やったよ!)『白い恋人たち』のことを思うと、初日で最終日の札幌公演をすごく大切にしてくれてたんじゃないかって、ぼくは思うんだよね。まぁ、ソロでは比較的政治色の強い歌を歌う桑田さんだから、ここ数年の政治動向を踏まえてのチョイスってのが1番なんだろうけど。
 そこから始まる壮大なショー。『がらくた』中心の選曲だけど、つくづく桑田さんの楽曲の幅の広さに感服。そしてステージ上で繰り広げられるあれやこれやに見とれる。還暦を過ぎたオトナの余裕がなせる業なのか?そして、『がらくた』の中でぼくが大好きな『オアシスと果樹園』からの波状攻撃。やられる〜〜〜。
 アンコールはジャズ調からのスケベー祭り(って、言っちゃってるじゃん)。哀愁漂わせてからの大合唱で締め!素敵すぎる。
 エロもギャグもええカッコも(替え歌も)、桑田佳祐という男がこれまで取り込み、昇華してきたものすべてが散りばめられた、最高のライブでした。
 おっと、帰りに配られた三ツ矢サイダー、来年の暗示かい?


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「道新寄席 年忘れ 春風亭一之輔 独演会」を観る(17.12.17)

「10歳下のトップランナー、羨望のまなざしで見つめます」
 笑点には出ていないけど、NHKの常連で『トップランナー』にも出演した春風亭一之輔。だみがかった声でちょっと斜に構えた喋り口。決して素直ではないんだけど、どちらかといえばとっつきにくそうなんだけど、彼の落語を見る角度って他の噺家さんとは違うと思う。伝承芸である古典落語、どこかで本流みたいなものができがちだけど、彼はそれを汲みながらも、違う面白さを引き出そうとしてるようで。その新しい一面が聴きたくて通っちゃう。で、ぼくが聴いた一之輔、なぜか談春が札幌でかけた噺をやることが多くて。立川流と一之輔の聴きくらべみたいでより楽しめるんだよね。

『のめる』 春風亭きいち
 一之輔の弟子が開口一番で口癖をもとにしたネタを。ういういしい。
『寄合酒』 春風亭一之輔
 前座のネタなんだけど…って言いながら、ノリノリで味噌の味見。大笑いです。
『化物使い』 春風亭一之輔
 このネタ、『超入門!落語 THE MOVIE』でやってたよね、桃月庵白酒の噺で。ゆえにこれも聴きくらべ。なるほど…って、ここでは書けないけどね。
『露出さん』 柳家わさび
 白鳥・天どん兄弟会に続き、わさびくん道新寄席に登場。一之輔の大学落研の後輩なんだって。今日は古典飲みかと思ったら、まさかの新作。しかも百栄作のきわどくも面白いやつ。「道新ホールは今日が最後かも…」がホントにならないように。
『芝浜』 春風亭一之輔
 どちらをやるか、岐路に立ってます…と言ってから始めた大ネタ・芝浜。”年忘れ”と名の付く落語会では一番”らしい”ネタだよね。人情噺の代表作である芝浜をも、「酒をやめるという美談」とさらりと言いのける一之輔。さげもまたこれまで聴いた芝浜とはふた味違って…。古典の楽しみ方、満喫できます。


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「スター・ウォーズ/最後のジェダイ IMAX」を観る(17.12.16)

「I know がつなぐ絆 息子たちにも届くかな?」
 待望のSW8、公開2日目に観てきました。前作の衝撃的な展開を受け、どうなっちまうんだってやきもきしたけど、次なる展開はこれだったのか…。
 レイとルークの島籠り、レンとスノークの関係、リンクするレイとレン。ポー、フィン、ローズの活躍。SW5の設定を踏襲しながらも、新たな楽しみを付け加え、再構築したような進行にうるうる。
 ぼく的にはポーとフィンとローズのミッションが楽しかった。できればローズの姉・ペイジも一緒に活躍できればって思ってしまうんだけど、そうするとローズのモチベーションがね。
 あと、チューイの新相棒・ポーグがかわいくてね。チューイの父性が開花するというかなんというか。
 今回も2D、4DX3Dと3回見れればと思っているので、感想も小出しにしていこうかな…と。


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「円楽 サンドウィッチマンの会」を観る(17.12.14)

「カミナリが来たのは楽するため?いやいや、芸の幅がね」
 落語人気ってやっぱり笑点(日本テレビ系)が支えているみたい。三遊亭円楽とサンドウィッチマンの会、主催はテレビ東京系列のテレビ北海道なのに、笑点関連グッズがいっぱい売られていて。トークコーナーも日本テレビよりの話しだったり。
 落語ブームに浮沈があっても、毎週日曜の夕方に笑点が放映される。日本の元風景とでもいいましょうか。
 そんな笑点のリードオフマン円楽が、去年はラフなジーンズ姿で登場したのに、今回はあの紫の着流し。そこまで笑点を背負う必要はないと思うけど。むしろもっと自由なスタンスの楽さんが見たいんだけど。
 サンドウィッチマンがいつも通り自由なのと、カミナリの新鮮さに不倫自虐フルに使っても対抗してほしいのになぁ。腹黒プリンスとして。
『漫才〜ショートコント〜漫才』 サンドウィッチマン
 おっと、伊達がボケなの?血圧、体型を加味した、カロリー0ボケが炸裂。そうなんだ、カロリーってやつは気化するんだ(するわけないけど)。続いてショートコント。鉄板のトイレシリーズは何度見ても爆笑。そして手紙。型は決まってるのに手を変え品を変え。やっぱ上手いなぁ。
『漫才〜ものまね〜漫才』 カミナリ
 いま勢いのあるどつき漫才。漫才は10回クイズと5・7・5。テレビでも見るネタなんだけど、やっぱりナマはテレビ以上に面白い。そしてモノマネ。地元・茨城に密着した、日常をとらえたモノマネは、地元民じゃなくてもクスクス。
『読書の時間』 三遊亭円楽
 現代教育とおじさまの哀愁をミックスした新作。円楽らしいインテリ要素満載ながらも、しっかり下ネタを入れるあたり、腹グロの真骨頂とでもいうべきか。個人的にはインテリ要素が長いかな。それもまた円楽らしさなのかもしれないけど。


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細野晴臣アルバムリリース記念ツアーを観る(17.12.8)

「子供らを従えて、好々爺が愉しむ音楽道。ナナナナー、幸田信妊娠♪」
「細野晴臣ってYMOの人だよね」
 ぼくの友人らはたいていこう言う。そしてぼくも数年前までそう思っていた。でも、聴けば聴くほどその幅の広さに魅了されてしまう。さらに自然体であり続ける生き方に憧れてしまう。
 颯爽と登場した細野晴臣。右の写真とは異なる長髪で、一瞬「樹木希林?」って思っちゃった。それはさておき、細野晴臣が息子たちと呼ぶサポートメンバーを前に、アコギを手に奏でる。これがまたなんともかっこよくてさ。バリバリのソロパートは高田漣に譲るんだけど、渋さの増した演奏を聴かせてくれる。そして気持ちよさそうに歌ってる。
 ラテンに始まり、ロカビリーからブギウギまで。幅の広さと奥の深さを兼ね備えた演奏にうっとりしてしまう。こんな風に音楽を楽しめるオヤジになりたいなぁ。なににもとらわれずに、音に身を委ねられる。
 息子たちもつわもの。マルチ弦楽器プレイヤーの高田漣、SAKEROCK→グッドラックヘイワの野村卓史&伊藤大地、星野源やましまろのツアーメンバーでもある伊賀航。こんな優秀な息子たちを従えて歌えるんだもん、楽しいだろうなぁ。それもこれも細野晴臣のこれまでがあってからでこそなんだけどね。
 音を楽しむの原点を再確認した、素敵なLiveでした。


エスニック
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辻堂ゆめ「あなたのいない記憶」を読む(17.12.6)

「在りし日の己を愛するために、想い出は美しくあるのさ」
 ぼくの記憶、ぼくの想い出はどれだけ正確なのだろうか。思い返してみると、映像としてわりかし鮮明に覚えている4歳くらいの想い出は、写真が残っていたり、幼稚園で仮面ライダー1号と2号に改造されてV3になった想い出はまんまテレビのワンシーンだった。自分にとっては黒歴史として封印したい恥ずべき記憶も、周りはそう感じていなかったり、なにげない日常が周りによってすごく盛られたり。自分の情けなさに頭を抱えて過ごした若き日のぼくを覚えている人がいなかったりして、この歳にしてそんなもんかって気づく。
 同じ時間を共有していたハズなのに、記憶が大きく食い違う。大切な人の想い出が存在自体を否定されてしまう。本当のタケシってどんな人?正解は誰の記憶?2005年の高知と現在の東京を行き来しながら、真実を探すミステリー。
 誰にとっても楽しい記憶、美しい想い出だけが残れば、それほどうれしいことはない。悩みも戸惑いも、笑って振り返ることができれば。でも、前を向いて進むには、受け止めなければならない事実は確かにある。なんだか自分の持つもどかしさを突かれたような気分だけど、かなり心地よい。だって、面白かったから。
 カウンセラー・晴川あかりがシリーズ化しちゃうかも。


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日食なつこワンマンツアー 時差呆け矯正ツアーを観る(17.12.2)

「シンプル イズ ベスト って言葉の神髄をここに観た!」
 ステージ上にはグランドピアノとドラムセット。それ以上でもそれ以下でもなく、省いた上でのシンプルで研ぎ澄まされた音が攻め込み、染み入ってくる。太陽を隠す名を持つ彼女が彩る音の世界。このダイレクトさにやられてしまった。
 場所はぼくの地元、新さっぽろ・サンピアザ劇場。狭くて小さなホールだけど、だからこそ彼女の音と彼女の声がダイレクトに伝わってくる。そこにエッジの効いたドラムが加わり、反則だろ?ってくらい揺さぶってくる。
 なぜだか上から目線のMCも、Wロン毛のたわいないやり取りも、「心配ないさ〜♪」も、すべては音を聴かせるためにあるんじゃないかって深読みしちゃうくらい、世界観が出来上がっていて。
 そうそう、唯一のカバー曲、ぼくのウクレレの持ち歌じゃないか。もちろん仕上がりは雲泥の差なんだけどね。
 彼女の声と音は、病みつきになりそうで。


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タクフェス第5弾『ひみつ』を観る(17.12.1)

「期待の分だけ思うところもいろいろありまして」
 宅間孝行主宰のタクフェス、毎年秋の恒例行事になってまして。特に今年は札幌でお芝居観る機会が少なく(その分落語会がめちゃ増えて)、待望の観劇だったので。いつも大笑いしながらも泣かせてくれるタクフェスを。
 姉弟漫才の虹色渚ゴロー。渚の高齢妊娠〜結婚により明かされていく本橋家の秘密。そして別離。群馬の別荘で起こったことの顛末とは?
 今年のタクフェスも2日の札幌公演と大阪公演を残すのみらしいので書いてしまいます。今回の『ひみつ』は正直観ていてつらかった。あざといっていうかなんというか。前半の楽しさから核心に入ったところで芝居が180度変わって、これでもかって泣かせに入る。こんなにくどかったっけ。こんなに狙いにいってたっけ。
 まあ、必ずしもぼくの求めているものを観られるとは限らないんだよね。こんな時もあるよね。来年は『相合傘』という作品で映画上映と同時にタクフェス公演が同時にあるそうです。6月にはオムニバスも。次を楽しみ視します。


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舞台「スマートモテリーマン講座」を観る(17.11.18)

「日本全国のオタク・中二病、これを観て希望を持とう…ってか」
 ドラマに映画に引っ張りだこの福田雄一が、盟友・安田顕を主演にモテる男になるためのKnowHowを伝授する『スマートモテリーマン講座』。2次元にしか興味のないアニメオタクくんが、青い髪で初出勤した新入社員に一目惚れ。恋愛成就のために奮闘する模様をポイントごとに解説するお話。同僚のミリタリーオタク、ライバルのイケメン先輩、壁のような上司を巻き込んだドタバタコメディー。
 冒頭、安田顕が高らかに宣言する。「ここにいるのは人生で3度あると言われるモテキをまだ迎えていない、モテないサラリーマンのみなさま」と。多くが安田顕目当ての女性だとしても、そこには忖度しませんと。そして繰り広げられるエバ、999、うる星やつら、ガンダム…総登場の、40代男子の大はしゃぎ。もはや福田雄一の願望がそのまま舞台で繰り広げられているだけなのだ。もちろんぼくも大はしゃぎ。
 それを女子たちも一緒になって笑いはしゃげるようになったとは、時代も変わったんだなぁ。
 で、現実として綾波レイやメーテルやラムちゃんがいてくれたらなぁ、って中二病まるだし、中二病を恥ずかしいとか思わない堂々たる舞台。楽しかった。


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チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン ツアー2017-18“ニュー・ヴィンテージ・ショウ”を観る(17.11.12)

「北海道を愛す道産子姉妹(嘘)の陽気な歌絵巻、始まり始まり〜!」
 チャランポはやっぱりライブなんだよね。
 小春が言ってた、「最初は目の前にいる人だけに聴いてもらえたらって思ってたけど、CDにすることで多くの人に聴いてもらえることができて、北海道にも来ることができました」って言葉、まったくその通りなんだよね。チャランポを知ることができて、いつも聴くようになり、ライブに来たらぶったまげる。その機会を与えてくれて、ホントにありがとうって。
 もちろんCDでもめくるめくチャランポの世界は堪能できる。でも、ライブは違うんだ。ナマが楽しいのは当たり前なんだけど、音が、歌声が、CDでは聴こえてこないグルーヴが押し寄せてくるのだ。ももの感情が入った歌声は、グルーヴというより唸り。でもそれが小春の構築するチャランポの世界をより一層深めている。
「妹だからというのではなく、ももという歌い手に出会えて本当によかった」って小春の言葉、小春もももも、ぼくまでもがなんか涙出てきちゃって。
 今回はカンカンバルカンのメンバーを1公演一人紹介するコーナーがあるようで、この日は代役でソプラノサックスを吹いてるみどりちゃん。大物のツアーサポートをするみどりちゃんとチャランポで演奏した『君がいるだけで』のみどりちゃんのダンスは、忘れられそうにない…。
 チャランポの絶妙なコンビネーションにカンカンカーニバルのパワフルな演奏が相俟って、最高のライブがここに。
 やめられないよね、こんな楽しいライブ観るの。


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道新寄席 神田松之丞「講談漫遊記vol.1」を観る(17.11.6)

「またひとつ、趣味の幅が広がってしまう…」
 落語好きで高座に言ってたら、いつしか講談も聴くようになって。9月にも聞いた、男性講談師最年少の神田松之丞の独演会に行ってきまして。
 なんだか耳に残るんですよ、あのダミっぽく聞かせる声が。拍子木とハリ扇が生み出すリズムが。気づいたら真似しちゃいたくなるんですよ。結構かわいい顔した男の創る世界が。
 講談って長いのかと思ったら、意外とコンパクトな噺もあるようで、いい感じに飽きさせない。落語を話すこともあるのか…と、聴き比べるのもよいですしね。
 とにかく毎回新しい発見がそこここにあって、演芸って奥が深いんだって改めて感じる。その奥の深さを伝統で包むのではなく、いまに咀嚼して見せるかが、古典と言われる演芸のこれからなんだろう。それを体現する神田松之丞。これからも目が離せません。
『寛政力士伝 谷風情け相撲』
 最強の横綱・谷風がその生涯で一度だけ見せた八百長試合。それを実に軽快に実況します。
『真景累ヶ淵 宗悦殺し』
 三遊亭圓朝の怪談噺。落語中興の祖と言われ、多くの名作噺を残した理由をまくらに、落語の名作を講談で聴かせてくれる。過去に柳家喬太郎でも聴いたことあるんだけど、味わいの違いを噛みしめてみます。
『赤穂義士銘々伝 神崎の詫び証文』
 泣けた。ごろつきのウシの悪態に腹が立ち、神崎の悔しさという一面だけがストレートに入ってきたんだけど、その裏にある神崎の大義を思うと…。そしてそれに気づくウシの心にも。「忠臣蔵」は別れの物語。いろんな意味での別れが四十七士にはあり、それが日本人の心を打ち続けてるんだよね。


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「大札幌落語会2017 其の二 六代文枝・枝光兄弟会」を観る(17.11.1)

「枝光がいい方向でいつもと違ったのは、兄弟子のせい?記念が重なったせい?」
 噺家生活50周年・枝光襲名20周年記念公演…さっき写メ見て初めて気づいた。それで文枝と兄弟会だったのか。なにより今回、枝光の気合がネタ選びの段階からビシビシと伝わっており、講座も明らかにいつもと違ってた。動きを存分に見せたり、噺の抑揚で聞かせたり。
 対する文枝は落ち着いたもので、ゆったりとした喋りから、老年の機微を新作で聞かせてくれる。対象的なのがまた面白い。
 しかし、毎回文枝の不倫をネタにする枝光も、本人を前にしてはさすがに言えないみたいで。そのかわり、文珍ネタでくすぐってたりして。
 今回は文枝の弟子2人も新作を披露してくれました。
『青い目をした会長さん』 桂三語
 世の中、グローバル化が進むと、外国語が日常に多く入り込み、身近にも外国から来られた人が増えていくんだよね。そんな暮らしがネタとなってます。
『お忘れ物承り所』 桂三段
 忘れ物に対する様々な情が込められた一席。灰色がかった真っ黒になんとも悲哀を感じるのだ。とてもスマートな新作です。
『紙屑屋』 桂枝光
 とにかく動く枝光。この後が人情噺だっただけに、一気に笑いをとる手できたか。とても陽気な一席。こんなアクティブなネタもやるんだ。。
『優しい言葉』 桂文枝
 長年夫婦で喫茶店を営業してきたマスターの、一世一代の労いを心して聞け。じわじわと温かみの伝わる噺。素直になれないお父さんたち、思い切って言ってみては?
『なにわの芝浜』 桂枝光
 関西弁の芝浜ってどうなるのかと思ったら、あくまでタイトルだけで大阪の浜なのね。佃の由来も勉強になって。おっと、そこじゃないか。正直、枝光がこんなに抑えて間の効かせた噺ができるとは思わなかった。なんか見る目が変わったような。
『ロンググッドバイ〜言葉は虹の彼方に〜』 桂文枝
 別名:忘れてたまるかなんだとか。アルツハイマーと同居問題を面白おかしくいじってます。前半の嫁の毒舌、後半の義父の快活。何気ない日常に仕掛けがいっぱいで面白かった。


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EGO-WRAPPIN' live tour "ニューロマンサー 黄金色の夢奏家たち 2"を観る(17.10.16)

「マイクスタンドに赤が灯るとき、オトナのショウが始まる」
 2年ぶりの道新ホール公演は、いつものTHE GOSSIP OF JAXXとではなく、道新ホールでおなじみ、選りすぐりミュージシャンたち・ニューロマンサーと。
 とにかく今回のEGO-WRAPPIN' はオトナ渋いのだ。秋の夜長の過ごし方を、これでもかって見せつけてくれる。派手に煽るのではなく、聴かせるのだ。聴き惚れてるうちに身体が動く。いつの間にか乗せられる。
 今回演奏された曲は普段あまりやらない曲、ジャジーな曲、新曲が多くって。正直よくわからない曲もあったけど、予備知識なくても身体が動く。これが音楽の醍醐味なんだよね。だからライブを観ることはやめられないんだよね。
 なんだろうか、どちらかというとおとなしめの選曲だというのに、良恵ちゃんがいつも以上にパワフルで、ダンサブルで、セクシーで。相反するようなたとえだけど、しっくりくるんだよね、なんか。そして渋さの森WRAPPIN'。あとね、やっぱりASA-CHANGがね。
 最近、ぼくの周りにもEGO-WRAPPIN' 好きが増えたというか、知らなかったのを知ったというか。この愉しさをわかってくれる人が増えることはとてもうれしくて。
 次はアルバム出してってことだから、アルバムを含め楽しみでしょうがない。
 オトナの音楽と秋の夜長に…。


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「沢田研二 50周年記念LIVE 2017 2018」を観る(17.10.9)

「ありがとう、サンキュー、ありがとうね(×50)」
 夜のすすきので、「口だけイケメン」とか「心のイケメン」と言われることが多々あって。容姿はイケてないんだけど、やたら気障な言葉を吐いているらしい。今にして思うと、それはジュリーの影響によるもの…に間違いないと思う。7歳で『時の過ぎゆくままに』を聴いた時はまだよくわかってなかったけど、10歳で聴いた『勝手にしやがれ』でオトナの色気を目の当たりにし、その振る舞いを真似ることでイイ男になったつもりで。残念ながら、ぼくにその路線が通用するわけもなく、早々に断念することになるんだけど。ちなみにこの後『勝手にシンドバット』を聴いて自分の路線を定めて突き進むんだけど、もちろん桑田佳祐になれるわけもなく今に至ってる。まぁとにかく沢田研二はぼくが最初に理想としたオトナの男なのだ。
 そんな沢田研二も御歳69、今年でデビュー50周年なんだそうで。タイガースで’67年2月にデビューって、ぼくの誕生と一緒じゃん。一度ナマで聴きたかったんだよね。ナマであの立ち振る舞いと艶っぽい歌声を聴きたかったんだよね。
 50周年記念LIVEということで、最初から飛ばす飛ばす。年齢も体型もあの頃とは違うけど、ほんのちょっと高音が出づらくはなっていたけど、歌はあの日のままじゃないか。しかもMCなしで立て続けに歌いまくる。50周年だけに延べ50曲。さすがに時間の都合もあって、すべてがワンコーラスのみだったけど、とりあえずタイガースからソロまであれやこれや想い出の曲をいっぱい聴けた。
 アンコールの幕間には現在の容姿を明るく笑い飛ばす映像を見せ、アンコールではデビュー前から現在までの心境を語ってくれる。そのすべてが飾らなくて自然体。それこそがカッコよいという境地に至ってるカッコよさ。あと、大御所歌いしないんだよね、ジュリーは。妙に一拍空けた歌いまわしなどせず、原曲のまま歌い上げる。オリジナルのカッコよさをちゃんと理解して、聴衆が望むものをちゃんと理解して歌う姿勢。やっぱり敵わない。
 正直、フルコーラス聴いて余韻に浸りたい曲はいっぱいある。でも、毎年コンサートを続けてくれる、来年は古希記念で来てくれるという。ぼくの聴きたい曲を歌ってくれるかはわからないけど、オトナの色気を教えてもらいたい。
 とりあえず次にカラオケ行くときはジュリーのオンパレードで。


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「パターソン」を観る(17.10.7)

「日常の中のささやかな幸せに小さな喜びを」
 ジム・ジャームッシュ監督作品を観るの、久しぶり。ジム・ジャームッシュは小さな映画館が合うんだよね。
 この映画は時間が静かに流れます。パターソン市に住むバスの運転手・パターソン(秋田市に住む秋田さんと同じ)の一週間を、ゆっくりと描きます。その日常に大事件などないけれど、ちょっとしたアクセントがささやかな幸せであり、いくぶんの不安であり。詩を愛し、詩を綴る彼にとって、そんな毎日こそが詩作の糧であり、感受性の源なのだ。
 そんな毎日が淡々と描かれる。でも、その毎日は決してつまらない毎日なんかじゃない。平穏な日々を楽しむパターソンがいとおしく思えてくる。
 なにはともあれ、一番はあの彼女だよね。すごく奔放で、パターソンは振り回されてる?って見えるところもあるけど、ちゃんとパターソンのこと見ていて。パターソンの彼女を温かく見つめる感じが一番の幸せってことで。
 喜びも怒りも糧にして、パターソンはどんな詩を書くのだろうか。マーヴィンはワンジャックされちゃうのか。静かな日常がとても待ち遠しい日常に。そんなゆったりした素敵な映画でした。


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阿川大樹「終電の神様」を読む(17.10.5)

「終電が、電車が止まることで動く物語たち」
 満員の客を乗せた終電が止まる。車両事故?人身事故?どちらにせよたまったものじゃない。残業帰りに酔っ払いの近くで留められるのはたまらない。でも酔っ払いだってタクシー代を節約するために飲むのを切り上げ、早く寝たいし気持ち悪くなるし。誰しもなんらかの事情を抱え、生きているのだ。そんな居心地の悪い空間でも、苦痛な時間でも、どこかに、なにかにつながっている。そんな話を集めた短編集。
 少しの間のおかげで落ち着くことができたり、状況が変わったり、時間の妙ってあるよね。大抵の場合はなにも変わらないのかもしれないけど。でも、大勢の客がスシ詰めの最終電車なら、そのブレイクがちょっと不快でも、大切な時間になる人も確かにいるハズ。不謹慎かもしれないけど、止めてくれた人を神様のように感謝してたり。どこでなにがあるかわからんから。
 作品によっては不快な終電から抜け出したり、電車を止めてみたり。
 そんな日常の中の非日常を切り取った、ちょっぴりハートウォーミングな作品で、少し心が洗われたのです。


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「オン・ザ・ミルキー・ロード」を観る(17.10.1)

「この純愛は遠い国の現実なのか、はかない夢なのか。」
 いまだ戦争が続く東欧の国。弾丸飛び交う村で、相棒のロバ&隼とともにミルクを運ぶコスタ。コスタにぞっこんの牧場主の娘が、兄の花嫁として買ってきた女は、曰く付きのイタリア人だった。花嫁に恋に落ちるコスタ。戦争が終わり、結婚式が行われるその日、村を襲ったのは傭兵部隊だった。傭兵に追われるコスタと花嫁。その純愛は報われるのだろうか。
 笑えたり、目を覆いたくなったり、はらはらだったり、下世話だったり。とにかくめまぐるしくいろんなことが起こる。それが一方向に続くならジェットコースター映画になるんだろうけど、これだけ散漫するとパンチのあるやすらぎ映画に思えてくるから不思議。緊迫の中にも笑いがあり、情熱があらぬ方向に飛んでったり。悲しみの中にもパーティー開けるんじゃないの?って不謹慎なこと思いついたり。
 なに書いてるかわからないでしょ。そんな映画です。なにを感じるかは人それぞれ。観る人に結論が委ねられる映画です。
 『マレーナ』ではモニカ・ベルッチの美しさに魅了されっぱなしだったけど、あれから15年以上、妖艶な熟女になったなぁ。これなら男はみんなやられちゃうって。


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「道新寄席 三遊亭白鳥・三遊亭天どん兄弟会」を観る(17.9.22)

「落語に関しては頭の固い道民に、新作の風穴が開いたことを願って」
 古典しか演じさせない(とぼくが勝手に思ってる)道新寄席。そんな道新寄席がまさか新作落語のパイオニア・三遊亭圓丈の弟子・白鳥と天どんの兄弟会を開くだなんて。とてもうれしかった。これで北海道で新作落語を聴く機会が一段と増える…ハズ。
 とにかく今日の白鳥は飛ばしに飛ばした。天どんがトリということもあり、思う存分伸び伸びと。禁断の『隅田川母娘』を繰り出し、『アジアンそば』でダメを押す。弟弟子をあきれさせる大活躍。ぼく、最前列の中央上手寄りだったんだけど、白鳥がぼくに語っているのではないかってくらい目が合う。最高。
 一方、天どん。今回の会は3年前の喬太郎独演会で飛び入りしたことが縁で企画されたそうで、いわば天どんがメイン。そう思うと、喬太郎が去年の道新寄席独演会で白鳥作の新作をやったのは、今日の布石だったのか?トリを古典にしたのは道新寄席の伝統に屈したのかなって勘ぐったりして。天どんの新作は面白い。でも、古典でもさらりと笑わせることができる。あの独特のぼやき節がたまらない。だから、妙な伝統にも屈することはないんだけどね。勝手に考えてるだけだけど。
 残念ながら客の入りはよくなかったようで。でも、客の喜びよう、大爆笑の数はいつも以上。新作落語の持てる力ってやつなのさ。古典落語の味わいの他にも、今を語る新作の魅力をわかってもらえたんじゃないかな。そんな最高な兄弟会だった。
 だから道新寄席、もっと新作にも目を向けて。
『釜泥』 柳家わさび
 若手二つ目の有望株・わさびくん。映画『落語物語』の新弟子役からはや6年、すっかり大きくなって…いやいや、相変わらず細くって。飄飄とした釜泥、面白かったよ。
『タラチネ』 三遊亭天どん
 3年半前、飛び入りでやったの想い出の噺。奥様を外国人ハーフに置き換えた、古典落語と新作落語の架け橋のような一席。ドンチュウ?
『隅田川母娘』 三遊亭白鳥
 まさかこの禁断の噺を北海道で聴けるとは。圓丈・白鳥親子会での衝撃がふたたび。うれしくて堪らない。あの、高貴な母娘の大冒険。大爆笑。
『アジアンそば』 三遊亭白鳥
 インド人が営むそば屋の噺。グローバルながらも、東京のそば事情を網羅した庶民派の一席。古典しか聴かないなんて輩はとっとと帰っちまえ!
『品川心中』 三遊亭天どん
 数々の噺家が上がった道新寄席に高座で、一度もやられたことのない古典だそうで。その訳はあまり面白くないから。なので、やる場合も最後までやらずに途中で切っちゃうんだとか。それを今回はフルサイズで。いやいや、とても面白いじゃない。天どんらしさがつまってました。


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「ブランカとギター弾き」を観る(17.9.19)

「しあわせのかたち、そうそう選べはしないけど、育むことはできるのかな」
 日本人の長谷井宏紀監督がベネチア国際映画祭の出資で全編フィリピンロケで製作した『ブランカとギター弾き』。母を金で買おうとする孤児のブランカと、盲目のギター弾きピーターの、かなりせつないロードムービー。
 窃盗、スリで貯めたお金で母を買おうと考えるブランカ。ピーターとともに生まれた町を追われるように出て、たどり着いた町で生きていく姿が描かれる。ブランカの美声、妬み嫉み、罠…。ブランカの居場所、ブランカが欲する家族とは。
 表面上豊かで平和な国に住むぼくらにとって、スラム街があり、孤児たちが生きるために犯罪をしたり、そんな子供たちで稼ごうとする大人がいたりする世界は遠く感じるんだけど、それが現実ということは知っているし、それを利用する日本人がいることはわかっている。だからストーリー性だけでいうと展開が見えてしまうんだけど、それでも見入ってしまうなにかがスクリーンに映し出されていた。見えなくとも伝わるブランカとピーターの絆。
 映画とは直接関係ないけど、このような出来事がフィリピンという国や、フィリピン以外でも、貧困にあえぐ国の実態とすんなり受け入れられる現実って悲しいよね。終戦後の「ギブミーチョコレート」な日本も列強国から見たら同じ状態だったんだろうけど。だから、貧困にあえぐ国も早く「そんなことは昔の話。今はないよ」って言える世界になったらいいのにって考えてしまった。
 ブランカとピーターが育むしあわせが、ふたりにとってかけがえのないものであり続けて欲しいって願うのは、平和ボケした日本人のエゴかもしれない。でも、そう願わずにはいられない映画だった。
 長谷井宏紀監督、きっと世界名作劇場のファンだったに違いない。


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「Tvh落語 立川志らく独演会」を観る(17.9.17)

「談志が認めた11番弟子の受け継いだ芸を堪能」
 ワイドショーの辛口コメンテーターでブレイクの立川志らく。結構札幌に来てるんだけど、ぼくは今回が初見。談春の公演を観た時に何度も書いてるけど、談春・志らくが組んでいた立川ボーイズ、面白かったんだよね。
 偶然なんだけど、高田文夫スペシャルトークショーで高田文夫から称賛を受け、金曜日放送の『ダウンタウンなう』で兄弟子との関係や私生活をぶっちゃけて、なんかこっちも準備万端って感じで。
 9番弟子・志の輔、10番弟子・談春と比べ、やっぱり談志の影響が濃いのは11番弟子・志らくだった。まず、息づかい。そして口調と毒舌。談志の趣味嗜好を徹底的に勉強した(志らく談)だけあって、いかに師匠に近づくかを考えたのかな。
 談志の遺伝子がどう進化するのかを見続けるのは面白いんだろうなぁ。3人ともぼくより年上だけど。
『金明竹』 立川志ら鈴
 開口一番は志らくの弟子で、札幌市西区出身の志ら鈴。以前、NHKで特集されてた、異色の経歴を持つ女流落語家。ちょいとすかしたリピート噺。前半の旦那と与太郎はちょっと辛いところもあったけど(特に与太郎、無理してあほらしくしてるところが)、後半のおかみさんのくだりはしっくりくる。「女性だから」は失礼な言い方かもしれないけど。ならばいっそ改作すればいいのに…と思うけど、前座の身では厳しいのかな。そういやマクラなかったな。
『青菜』 立川志らく
 時事ネタふんだん、北朝鮮には豊田議員に「この刈り上げーっ!違うだろっ!襟裳沖じゃなく、グアムだろっ!」で場内大爆笑。蛭子さんでもうひと笑いとった後、弟子に呼応するようにリピート噺。旦那の家でおかみさんとの間に交わされる隠語を真似る植木屋・与太郎の噺。与太郎もさることながら、その女房もいい味出ている。単純に笑える滑稽噺で場内うけてたなぁ。
『浜野矩随』 立川志らく
 木久扇、木久蔵親子をマクラに、偉大な父を持つ子の悲哀の人情噺。やっぱり人情噺は腕の見せ所なんだよね、噺家にとって。兄弟子に負けてないってところを見せつけるべく。映画通の志らくだけに、端端に情景を織り込んでくるなと。兄弟子たちとは違う聴かせ方。これもまた談志の遺伝子が多種にわたり進化してるってことなんだろう・・・と生意気にも書いてみた。


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「高田文夫スペシャルトーク 〜私のTOKYO大衆芸能史」を観る(17.9.12)

「ぼくが憧れた笑いの世界の生き字引が、あの頃を語る」
 「あのころのオチケン」の名で柳家喬太郎の独演会や若手の落語会を主宰する高校教師・佐々木さんが、構想30年満を持して打ち出した企画が、お笑い界の生き字引でありフィクサー・高田文夫のスペシャルトーク。佐々木さん52歳、ぼく50歳。ぼくらの年代は高田文夫で笑いを覚えたといっても過言ではないのだ。「たけしの横でゲラゲラ笑ってた目玉のおじさん」は実はすごい人なのです。
 まずは開口一番・立川志ららの『壺算』から。高田文夫との関係、談志のこと、談志一門のことなどをマクラに談志が聴いてくれた想い出の噺を。元気な落語はなんかホッとするね。
 そして高田文夫スペシャルトークショー。聞き手は会の主催者・佐々木さん。初めてナマで観た高田文夫。5年前の心拍停止を乗り越え、足元がだいぶ弱くなってたけど、頭の回転と口の滑らかさは相変わらず。佐々木さんとのなれそめから、お笑い界のあれやこれやを語りつくします。
 なにせテレビじゃ言えないことばかりなので、ここに書くのも控えさせていただこうかと。名前が出た芸能人をあげると、斉藤由貴(ピーッ!)、景山民夫(ピーッ!)…。いやいや、そこはあえてネタ枠で。ビートたけし、島田洋七、松山千春、由利徹、立川談志、立川志の輔、立川志らく、柳家喬太郎、春風亭昇太、宮藤官九郎、長瀬智也、岡田准一、西田敏行、星野源、濱田岳、荒川良々、桂雀々、明石家さんま、桑田佳祐、ジミー大西、萩本欽一、青島幸男、永六輔、中村八大…。こんな方たちの裏話が聴けるのよ。もう、うれしいったらありゃしない。
 大好きなドラマ『タイガー&ドラゴン』の裏話なんて涙もの。あと、サザンオールスターズのデビュー(テレビ初登場の『夜のヒットスタジオ』)に立ち会ってた話とか、ぼくにはたまらないのです。高田文夫が全国区となった『ビートたけしのオールナイトニッポン』。その前に木曜第一部を担当してたのって、桑田佳祐なんだよね。そういや志ららの出囃子、「勝手にシンドバッド」だったな。
 なんか、ぼくの青春をたどるような最高の時間だった。ありがとう、高田文夫。ありがとう、佐々木さん。



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「ELLE エル」を観る(17.9.9)

「イザベル・ユペールの熱演は確かにすごかったけど…」
 あぁ…。またなんとも難しい映画を観てしまったことか。この場合の難しいは、ぼくの中で消化しきれないってことなんだけど。
 白昼、自宅で覆面の男にレイプされたゲーム会社の女社長。過去の経緯から警察を嫌う彼女は、通報することなく自らの手で犯人に復讐を…って感じのサスペンスと思ってた。元夫、恋人、隣人、部下…たくさんいる容疑者から犯人をあぶり出す過程を描くみたいな。確かに大筋は間違っていないのかもしれない。でも、ぼくが予想していた物語とは大きく異なっていた。
 でも、予想が外れたことを難しいと言っているのではない。そんな煽りをする物語ではないし、彼女の想いがぼくには伝わらないし。それは彼女の過去がもたらすものなのか、彼女の欲望がそうさせるのか。フランスというお国柄が関係するものもあるのかなぁ…。
 そんなこんなで、観た目エロいシーンがあったとしても、ムラムラもなく、物語に感情移入することもなく、ドキドキもワクワクもないまま終わってしまった。
 イザベル・ユペールの体当たりの熱演はすごいと思ったけどね。


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落語芸術協会二ツ目競演「成金」奈井江町公演を観る(17.9.3)

「落語ブーム次世代の担い手として落語芸術協会が推す二つ目たち」
 現在の落語ブームが未来永劫続くことはないのかもしれないけど、かつての冬の時代が再び訪れないようにするためにも、若手の力は不可欠。きっと一番危機感を持っているのが、冬の時代に落語の門を叩いた今の二つ目たちなのかもしれない。落語芸術協会の若手(二つ目)たちが金曜日に始めた自主興行「成金」が、奈井江町であるなんて。なんで奈井江?
 若手らしさあふれる落語会だった。みんな今のMAXを出し切ろうって感じが観てとれて。この感じが東京で人気の所以なのかな。
「ちりとてちん」 春風亭昇々
 師匠・昇太のマクラで登場する回数の多いイケメン弟子・昇々。トップバッターの役割である場を温めるために、小噺連発。客の頭と緊張をほぐす大役を見事果たしておりました。そこからの「ちりとてちん」。声のうら返りを多投するのってあまり聴いたことがないから、新鮮で面白かった。
「片棒」 桂宮治
 『噺家が闇夜にコソコソ』を見る限り、宮治ってエロ路線かと思ってたんだけど、キレ芸だっただなんて。早朝に青森を発ち、鉄路と車で奈井江入りする予定が、JR北海道の車両事故により大幅に遅れ、対応に苛立つ様を、キレキレに語ります。「片棒」もメリハリの効いたハイテンションなキレ芸で沸かしてくれまして。
「山田真龍軒」 神田松之丞
 講談師です。女性の方が多い講談界の中で、男性最年少の講談師なんだそうです。そんな講談界の悲喜こもごも、伝説の浪曲師・国本武春の逸話(浪曲でも「紺屋高尾」やるんだね)をマクラに、若き日の宮本武蔵の物語を。講談ナマで聴くの初めてなんだけど、めっちゃ引き込まれた。独特のリズム感とつぶしたような声。これが妙にクセになる。宮本武蔵の武勇伝も台本に忠実にみせる(風?)で荒唐無稽を笑いに変えて。11月の独演会、行きます。
「佐々木政談」 柳亭小痴楽
 前日伊達で行われたこども寄席での奔放な子供たちをマクラに、子供が大活躍する一席を。マクラの途中、鼻水をこらえている感じだったけど、子供に鼻をすすらせる場を作って難を逃れる。これってもとからあったのか、それともアドリブ?若いのに芸歴が長い小痴楽の、若手らしからぬ落ち着きに感服。


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住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』を読む(17.8.23)

「それは思い込みなのかもしれないけど、誰もが実践してるんだよね」
 また住野よるを読んでしまった。今回は学園モノ、タイトルからして色恋沙汰は絡んでいそう。不遇で妄想だらけの青春を過ごしたぼくにとっては、気恥ずかしくなるのはわかってる。そのうえ住野よるにまた内面をえぐられるのかと思っただけで、心が拒否反応を示す。危険だ!読むな…って。
 でも、読みたいって気持ちもすごいあったのを、見透かされていたのだろうか、先日池袋で会った小山隊長が、さも当たり前のように「まだ読んでないでしょ」って渡してくれた。
 住野よるが面白いのはわかってるし、毎度共感しまくってるのも事実。だから身構えて読み始めるんだけど、やっぱり今回もまた術中にはまってしまった。仲良し5人組それぞれが持つ能力と気持ち。ときにわかりあえたり、ときに反目したりするかくしごと。甘く切ない時期の心の葛藤。きっと誰にでもあったはず。もちろんぼくにも。
 ぼくは残念ながら特殊な能力を持ちあわせていない。でも、周りの人がどう考えるか、気持ちをおもんばかることは毎日ある。思慮が浅く墓穴を掘ったり、深読みし過ぎて見えなくなることもしばしば。登場する高校生たちはそれを能力として可視化しようとする(している)。でも、読み違えて思い悩んだりする。それこそが青春であり、人生なんだけどね。万能に見えるものがそうではなく、すべてお見通しなんてあるわけがない。ぼくも同じだったもん…いや、今でも同じだもん。
 なぜこの物語にひどく共感してしまうのか考えてみた。で気付いたんだけど、この物語にスマホや携帯電話は出てこない。だからメールやラインも出てこない。もし現代の便利ツールがあったなら、かんたんに気持ちを確かめようとする子も出てきちゃうだろう。家に帰ったら次ぎに合う日まで悶々としてるしかない時代の物語なんだ。なので、もしかしたらいまどきの子たちの方が戸惑うかもしれないよね。音楽配信だってないんだから、CDショップでCD買ってみんなで回すし…あっ、ぼくの時代はレコードか。
 自分に自信が持てずにいた高校生のぼくは、京くんと同じように自分で壁を作っていた。だからいつも好きな子を遠巻きで見ていた(今でもなんだけど…)。ぼくにとってのミッキーみたいな存在はいたのかなぁ。答えが怖すぎて、あの頃に戻りたいとは思えないんだけど。
 そうそう、物語は5人それぞれの主観で語り手となる5編+αで構成されているんだけど、語り手以外のメンバーがその時どう見えていたのかを考えながら読み返すと2倍…いや、5倍楽しめます。


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西加奈子「ふる」を読む(17.8.15)

「日々の中で見落としている真実の言葉」
 西加奈子の小説を読むと、主人公はみな西加奈子に思えてくる。年齢も性別も生い立ちも違う主人公たちが、個性だって全然違う主人公たちが、なぜか西加奈子に思えちゃうんだよね。それだけ西加奈子に確固たる世界観があるというか、なんというか。それでいて多様性が保たれているからものすごく、西加奈子の人間力にやられているのだ、ぼくは。 今回は「いのち」の物語。池井戸花しすの現在と過去をいったりきたりしながら、彼女の想いを紡いでいく。花しすが録りだめた言葉たちは、花しすになにを与えてくれたのか。
 花しすにしか見えない白いもやもやと、花しすの集めた言葉。花しすの日々にもれなくついてくるそれらと、新田人生。日々の暮らしの積み重ねがいのちを費やすってことなんだ。
 花しすが恐れているものとぼくが恐れているものはもしかしたら似ているのかもしれない。ってことは、もしかしたら西加奈子とも共通点があるのかもしれない。それは才能ではないことだけは確かなんだけど。
 なんかふわっとした感想になっちゃった。なにを書いても核心に直結するような気がして。普通の中に流れる特別、それが日々のとっておきなのかもしれない。ぼくのとっておきはなんだろうか。50にしてまだ闇の中。ぼくにはどんな言葉が降ってくるのかな?


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ハイバイ『ハイバイ、もよおす』を観る(17.8.12)

「豪華3本立てに見る演劇の、サブカルチャーの縮図」
 前から一度観たいと思ってたハイバイ。作家の別の作品を観たわけでも、役者を知ってるわけでもない。だからまっさらな状態での観劇。名の知れた劇団だから大冒険ってほどではないんだけど、ちょっとはドキドキ。トイレで大ヒットドラマを生み、お芝居の映画化を数多く作った監督と並んだとき、ちょっとほっとしたのはご愛嬌。
 今回は3本立て。「RPG演劇のニセモノ」「大衆演劇のニセモノ」お正月に上演した「ゴッチン娘」と、合間に作・演出の岩井秀人の語りを。どれもデフォルメの仕方がハンパなくて面白かった。
 まずはRPGの世界をハイバイなりに仕立てたRPG演劇『エンド・オブ・ワールド』。もう、いちいち70〜80年代少年アニメ口調で、大げさこのうえなし。RPGとは懐かしの少年アニメなのね、ハイバイ解釈では。なんだかその屈託のなさがツボなんだよね。
 続いて大衆演劇をハイバイなりに仕立てた大衆演劇のオマージュ『天魔十文字伝』。作家が大衆演劇を2回観て、大衆演劇のすべてをつかんで仕上げた作品。もうね、なにを観たらそうなるのか、芸術家の脳ミソはわかりません。写真OKのハイテンション芝居。裏ハイバイとしてシリーズ化されるかも。


 小学生の纏う憂いを描いた『ゴッチン娘』。筋骨隆々な小学生女子ゴッチンに向けられる目。小学生の無邪気さやオトナの気遣い、悪気はどこから生まれるのだろうか。なんともせつない物語。
 合間の話しは岩井秀人の日常や創作の素が垣間見れて、楽しかったかな。
 次は普通の公演も観に行きたいと思いました。


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瀧川鯉昇・柳家喬太郎二人会“古典こもり”(其の十二) を観る(17.8.11)

「落語家にとって8月11日は山の日じゃなく圓朝忌なんだね」
 古典落語を堪能すべく、瀧川鯉昇・柳家喬太郎の二人会を観に行った。喬太郎に関してはいっぱい聴いてるけど、鯉昇をナマで聴くのは今回が初めて。楽しみにしてたのよ。
 もう12回目ということで、二人が並び立つことはなかったけど、たがいにマクラで通じ合う…こう書くとなんだかただならぬ関係に聞こえるけど、決してそうじゃなく、マクラで掛け合いしてるんだよね。それが観ていて心地よくって。認め合う二人って感じが伝わってくる。
 とにかく二人ともタイプが違えどマクラから噺まで面白くて、聴きごたえたっぷり。最高の二人会だった。
『やかん』 瀧川あまぐ鯉
 初々しさが残る所作で、知ったかぶりの先生が繰り出すモノの名前の由来を演じます。
『義眼』 柳家喬太郎
 先月聴いたばかりなのに、またもや爆笑させられた。池袋の猥雑さからの入り、胡散くさい医者が登場。もうニンマリしちゃった。あの義眼を裏返す仕草が好きなんだよね。
『武助馬』 瀧川鯉昇
 喬太郎のマクラを受け、仲入り時の楽屋あるあるで笑いをとる。うまいなぁ。そんでもって怒涛のラストを迎える噺をぶつけてくる。うまの後ろ脚役者の奮闘を堪能です。
『蛇含草』 瀧川鯉昇
 食い意地の張った男の顛末記。餅を食う仕草がたまらなくおかしくて。風貌を利用しているというと失礼かもしれないけど、見事です。
『牡丹灯籠〜お札はがし』 柳家喬太郎
 マクラは一言(これが絶妙)。そこから淡々と語りだした牡丹灯籠。劇場型落語の喬太郎もいいけど、怪談噺の冷たさもいいんだよね。怪談噺だけに爆笑をとることはないんだけど、ピグモンなんて円谷プロ好きネタも入れて、とことん聴かせる牡丹灯籠。めっちゃよかった。そして最後に「今日は円朝忌なので」。かっこいい。山の日なんてもうどうだっていいよ。
 


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bananaman live 2017『Super heart head market』を観る(17.8.10)

「設楽と日村のほのぼの感、ナマで観るとたまらないんだよ」
 3年ぶりのバナナマン。年に一度の貴重なライブ、毎年チケットの抽選に申し込んでいるものの当たらず、悔しい思いをしていただけに、感慨もひとしおなんだよね。ライブ会場で見るバナナマンって、星野源のライブでのコメント映像が続いていたし。それはそれで面白いんだけどね。
 開場10分前に着いたのに、長蛇の列。中に入ったときにはグッズの多くが売り切れ。ゆっくりかき氷食べてる場合じゃなかったか。
 「voice from the heart」「AIR head」「different container」「何でだ!」「赤えんぴつ」「Incident in the mountain」の6編のコントとその合間をつなぐ映像で構成されたライブ。面白いんだけどせつないんだよね。日村の表情がせつない心の声や、中年男のシモ事情…いやいや、みんながそうじゃないんだぜ。もはや日村の真骨頂のオネエ・ヒム子と純な女性(今回は寅子)。二人はT-STYLEもいいけどやっぱり赤えんぴつ。で、地味にツボだったのは、なぜだか踊っちゃうホリプロの先輩・井森美幸ダンスかな。
 こう書くとインパクト強いのは見た目も含めやっぱり日村なんだけど、ツッコミがここまで目立つコンビってすごいよね。でも、日村のキャラクターを掌で転がす設楽のうまさがたまらないんだよね。あの才能がうらやましい。映像のドS全開は、『ノンストップ』じゃ絶対見られない醍醐味です。
 映像も面白すぎなんだけど、文字と絵で臨場感満載の『ワニワニパニパニゲーム』は新しい可能性が見えたような。
 初日だけに2人も緊張してたようだけど、その緊張も含め楽しい楽しいコントライブだった。やっぱ毎年観たいなぁ。札幌にも来てほしいなぁ。





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木皿泉「昨夜のカレー、明日のパン」を読む(17.8.6)

「銀杏の木が変わらずにある。それだけで支えられる気持ちがある」
 なんか優しい物語を読みたかったんだよね。心が荒んでたわけじゃないんだけど。
 銀杏が見守る家に暮らすテツ子とギフ。テツ子の夫・一樹亡き後も、銀杏を見守り、銀杏に見守られ暮らす二人と、二人を取り巻く人たちの物語。
 みんな心のどこかに埋められない穴があって、それを避けたり見ないようにしたりするけど、結局囚われて生きてたりして。でも、穴は一時大きな喪失感を生むけど、必ずしも悪ではないわけで、必ずしも埋める必要はないけど、次に進むためにはどこかでつけなきゃいけない踏ん切りもあるわけで。
 何度も書いてるけど、死があっての物語がぼくは苦手で。そういい続けながらも、最近ぶち当たってしまうことが多くて。でも、しかたなく読んだらそれはそれで心に響くものがいっぱいあって。これはなぜかって考えたら、ぼくは死がもたらす喪失感や穴を持ちあわせてはなく、それに直面するのを怖がっているんじゃないかと。結構勝手なこと書いておきながら。
 すごい事件があるわけでも、超人もエスパーもお化けも登場しないけど、日常がゆっくり流れる物語なんだけど、心に沁みるのよね。それが木皿泉のなせる業なんだよね。


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SAPPORO CITY JAZZ「DIRTY DOZEN BRASS BAND」を観る(17.7.23)

「やっぱホーンセクションの生み出すグルーヴ、好きなんだよね」
 予備知識0。SCJのHPでの紹介を見て、リンクされた動画を見て、「これ好きだわ」って思っちゃって。これでも中学の頃、なんちゃって吹奏楽部員だからさ。ホーンセクション好きなんだよね。
 ベースがエレキでもコントラバスでもなくて、スーザフォンなんだぜ。観てるだけで楽しいし、吐息の温かみと限界を感じながらのノリって、とても人間っぽいじゃない。ブラスバンドって最近は踊ったりするらしいけど、ぼくの中ではなんか「真面目っ!」ってイメージがあって。だから、ジャズやファンク、ソウルにスカと、こんな多彩な演奏を聴かされたら、たまらんじゃないか。憧れちゃうじゃないか。
 見た感じきっとアメリカでは普通のおじさんたちなんだろうなぁ。でも、ひとたび楽器を手にしてステージに上がると、とてもカッコよいおじさんに変身するのだ。そして、観客をブラスグルーヴで沸かせるのだ。当然ただ者じゃないおじさんたちなのだ。
 アンコール、バリトンサックスとコルネットのみでの演奏は、本編とはまた違うお洒落さで、これまたグッとくる感じ。たまらないのです。
 もうとにかく聴いてみてよって感じ。ぼくの陳腐な言葉では言い表せない。来年も来てくれることを切に祈るのだ。


あと、トロンボーンが一人おります


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「ザ・ニュースペーパーin北海道2017」を観る(17.7.23)

「政府与党をこれだけ揶揄して、みんなで集まって笑って…共謀罪適用?」
 なんてタイミングなんだ。ザ・ニュースペーパーはいつか観たいと思ってて、確か3月にチケット入手してたんだけど、まさか森友に続き加計問題が勃発し、「THIS is 敗因」で閉会中審査開催前日の公演になるだなんて。ネタあり過ぎじゃん。
 って思ったらたっぱり。別荘で佇み明日国会へ行きたくないとすねる安倍首相からスタート。そこに登場する菅官房長官やら稲田防衛相やら。お馴染みのフレーズてんこ盛り、「このはげー」も松居さんも森友さんも登場して・・・大爆笑。国会学園ドラマシーズン2加計編がシーズン1森友編より面白くないのは、ヒロイン・明恵がいないからって、確かに。
 返す刀の都民ファースト祝勝会で小池百合子を小泉純一郎がバッサリ斬り、民進党祝勝…もとい縮小会で蓮舫をバッサリ。トランプ、金正恩、朝まで生テレビで世相をぶった斬り。一番の笑いは手話だったけど。
 ほかにもパンダの赤ちゃん、ヒアリ、将棋の世界(ひふみんと藤井くん)など、日本を沸かせた話題も入れて、これぞまさしく新聞紙(ニュースペーパー)。おっと、忘れちゃいけない、さるご高貴な一家も・・・。
 安倍さん、結構大人げないから、怒ったりしないだろうか・・・。こうしてみんなで集まって、権力者で笑いあってたら、共謀罪で捕まっちゃうんじゃないの?まぁ、与野党平等だから、許してもらえるか。


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SAPPORO CITY JAZZ「野宮真貴」を観る(17.7.21)

「1曲目は撮影フリー。渋谷のディーヴァは流行も使うのです」
 昨年に引き続き、SAPPORO CITY JAZZ に渋谷のディーヴァ・野宮真貴降臨。今年はいろいろあってなかなか参戦できなかったけど、野宮真貴は観ないとさ。野宮真貴、渋谷系を歌う。渋谷のディーヴァも実は道産子なんだし。
 入場し、サッポロClassic を飲んでたら、「1曲目は撮影自由です。SNSなどに#野宮真貴をつけて投稿してください」とのアナウンス。時代が変わったんだね。で、待望の1曲目はピチカート・ファイヴの『ロックン・ロール』。いいよね、あの静かな疾走感。『ボサ・ノヴァ2001』が示したキャッチ―なグルーヴの1発目。シングルカットされてなく、有名なヒット曲ではないけど、ぼくにとっては渋谷系の代表曲なのだ。これがロック?という衝撃もそのままに。
 その後も、大瀧詠一あり、松本隆&細野晴臣(森高千里)あり、松本隆&松任谷由実(松田聖子)あり、山下達郎(竹内まりや)あり、フリッパーズギター(渡辺満里奈)あり。それは渋谷系のくくりに収まるものではなく、日本のポップスの王道なのだ。それを野宮真貴の透明感ある歌声で聴く。素敵すぎるのね。
 CMソングコーナーでは過去に自分が歌ったCMソングのセルフコピーや、北海道ご当地CMコーナーも。ホーマックのCMソング、柴田のオヤジ(飲み友達)が聴いたら泣いちゃうかも。
 その後もゆったりと至極の時間が続き、エンディング。アンコールはピチカートメドレーもあって、J-POPの源流をたどる時間って感じで楽しかった。もっともっと、聴きたかったなぁ。
 東京オリンピックの開会式で歌う目標、ぜひぜひ叶えて欲しいのだ。野宮真貴のナマ歌での『東京は夜の七時』を。


FBには特別なやつあります


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窪美澄「よるのふくらみ」を読む(17.7.20)

「想いを伝え、想いを受け止める。単純なサイクルなのにいつも難しい」
 窪美澄の『ふがいな僕は空を見た』を我孫子駅前の書店で買い、読み始めた時の不謹慎に近い高揚感と、読後の打ちひしがれ感をいまだに覚えている。そのギャップが、決して嫌いではないんだけど、かなりのダメージで、なかなか次に手を出せずにいた。
 『よるのふくらみ』は帯のコピーに目が奪われた。「いまイチバン読んでほしい大人の恋愛小説!」とは、ぼくから一番離れた場所にある物語ではないかと。
 登場人物がそれぞれ自らについて語る連作短編の形、最初に衝撃的な物語をぶつけてくる感じ。どちらも『ふがいない〜』と同じなんだけど、ただ高ぶるばかりではなく、なんか見てはいけないものを見てしまったような、知ろうとせず目をそらしてきたことを知ってしまったような、気まずい感じになった。とかくこの世は男社会で、男の欲望も羞恥も言葉や形となり、具現化され、産業にまでなっている。でも女性のはというと・・・。女子会やガールズトークが絶えず開かれるわけがわかった気がする。もちろんそれだけの物語ではなく、それは根幹に近くはあるが、枝葉に過ぎないんだけど。
 それぞれの想いが交錯するさま、その歯がゆさだったりせつなさだったり。視点が3つに絞られることでより明確に浮き上ってきて。そのやるせなさが身につまされもする。確かに大人の恋愛小説だ。ここまで混み入った状況はなかなかないとは思うけど。
 ぼくにまた身を焦がすような恋愛が訪れるとは思えないけど、幸せが逃げてしまわぬよう、小さなことでもなんでも言葉にして伝えないとね。
 尾崎世界観の解説、特に例え話しが秀逸だ。フェスだとなおさらそうなるよね。


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平成開進亭「喬太郎・枝光二人会」を観る(17.7.12)

「妻の本音がむなしく突き刺さる…やるせないよ、現実って」
 平成開進亭、人気落語家を連れて来るんだよなぁ。安い木戸銭で。先日よく行く飲み屋さんのカウンターで偶然隣になった平成開進亭の関係者の方が言ってたっけ。
「みなさん足代だけで来てくださる。枝光師匠の人徳ですよ」
 なんともありがたい話しなのだ。
 今回は柳家喬太郎。昨今の落語ブームのど真ん中にいる噺家だ。先月開催された『道新寄席・柳家喬太郎独演会』はSoldOut。ぼくは出張で行けなかったんだけど。そんな売れっ子も来ちゃうのだ。
 今日の喬太郎、声がかなりやられてた。本人の言う通り、それはそれで聞いてるうちに慣れてはきたけど、お得意の艶っぽい女性をやるには厳しかったのか。今回は男たちが弾ける噺です。
 かたやホストの枝光、相変わらずのハイテンションで、ギャグと動きで笑わせにかかる。ざこば、文珍、文枝ら兄弟子をいじり、ギャグ不発は客の理解不足。古典の持つ味や深みがうわべだけになっちゃうんだよな。最初はそれでも面白いけど、やっぱり枝光の噺を1日に3つ聞くのは・・・。
 喬太郎の二席目が終わると、枝光のトリを待たずに退出する客続出。もちろん21時を過ぎて帰りの足がなくなる方もいただろ言うけど、ぼくと同じ気持ちの方も多かったのでは?
 そのトリも前の二席以上にハイテンションの怒鳴り合いで、滅入ってしまった。来月は月亭方正との二人会だそうで。同じタイプの二人で五席。つらそう・・・。ちょっと辛口ですが。
 ということで、本日の噺について一言づつ。
『天狗さし』 枝光
 新規開店の店の目玉に天狗料理を出すと息まいた男のお話。いきってます。
『猫久』 喬太郎
 猫がおとなしくいい人って概念を覆す久六さんと、できてるんだかできていないんだかわからない奥さんのエピソードが転々とするんだけど、久六さんはいったいなにに怒ってたんだろうか。
『はてなの茶碗』 枝光
 鉄板ネタの安心感。油売り、いきってます。
『義眼』 喬太郎
 水を飲むくだり、笑いすぎて唾液が気管に入り、死にそうになった。うるさくしちゃダメなのに、咳が止まらない。
『堪忍袋』 枝光
 いきり度MAX。妻の愚痴「客に途中で帰られないようになれよ」は実感こもってたんです。



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星野源 Live Tour 2017『Continues』を観る(17.7.9)

「恋ダンスだけじゃない、星野源のライブは楽しいのです。ニセ明も絶好調!」
 2度の先行抽選にハズレ、もうあきらめてたんだよね。やっぱファンクラブに入らないと買えないのかな?でも、50過ぎてファンクラブもなんだかな…。と思ってたら、前日に追加席発売のお知らせが。ダメもとでチャレンジしたら、買えちゃった。一部スクリーン等が見切れること前提の追加席。同じ空間にいることが何より大事だから、気にしないんだけどね。
 そんな追加席、ステージ後方に一列に並ぶバンドメンバーの延長上にあたる位置のため、ステージで歌う星野源を正面から観ることはないんだけど、とにかく近い。そして結構こっちを見てくれる。なにより近いってことは音ズレがほとんどない。だから、星野源と同じ時間をいつも以上に、より濃密に感じている気になってしまう。過去2回('14'16)のLiveよりももっともっと濃密に。
 星野源、明るい曲めちゃくちゃ増えたよね。前半は落ち着いて、後半はダンスダンスダンスだなんて、3年前は考えられなかった構成だもん。それがどちらも楽しいんだから、星野源の才能たるや凄まじい。しっとりと聴かせて、弾けるくらい躍らせる。心地よすぎるのだ。『恋』に至っては、会場大爆発だぜ。ぼくもなんちゃってで踊っちゃったもん。
 でも、そんな音楽も過去のあらゆる作品の延長上にある。今回のテーマ「Continues」に込められた想い。軽快なダンスミュージックとなった『恋』も、『くせのうた』や『湯気』があってこそ。歌謡曲やJ-POPがあってこそ。音楽に対する真摯な姿勢が伝わるのです。細野晴臣やNUMBER GIRLのカバーもあり、聴きごたえ十分。
 2011年の震災の時、星野源は札幌にいたんだって。いろんな思いがあっただろうけど、札幌を、ちくわパンを好きでいてくれることに感謝なのです。
 やばい、ウクレレ弾きたくなってきたので、この辺で。

みんな並んで記念撮影してました

グッズいろいろ。ピンクのタオル、質が前回より格段に上がりました

ニセ明の世界紀行


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「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊 IMAX 3D」を観る(17.7.7)

「シリーズ最大のモヤモヤ、ここに解消…?」
 ぼくが憧れているオトナのひとり、ジャック・スパロウが帰ってきた。第1作を見た時、これがぼくの目指す道だって強く感じたんだもん。もちろんジャック・スパロウになれるわけはなく、中途半端なオトナに仕上がっちゃったんだけどね。
 今回はウィルの息子・ターナーと海の呪いを解くために旅をする。若き日の因縁や宿敵バルボッサ&猿との絡みもあり、まさに集大成。そして、シリーズ最大のモヤモヤ解消に向け、荒波に出るのです。
 第1作から設定上は何年が経過しているのだろうか。ジャック・スパロウったら基本線は変わらないものの、立ち位置が変わったよね。おれがおれがから見守る感じに。それが頼もしいような、寂しいような。すべてにおいてギラついていて欲しいんだけど、やっぱり分相応ってものもあるのかな。自分に置き換えて、いつまでもがっついてちゃいけないんだって身につまされたりなんかして。
 それにしても、相変わらずのハラハラドキドキ。最後はセオリー通りってわかっちゃいるんだけど、やっぱり面白い。そして、やっぱりジャック・スパロウはかっこいい。やっぱり憧れのオトナだぜ。
 そうそう、ジャックの父がキース・リチャーズで、叔父がポール・マッカートニーだなんて、贅沢すぎるぜ。


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ORIGINAL LOVE「ETERNAL RETURN TOUR」を観る(17.7.2)

「ORIGINAL LOVE は“接吻“だけじゃないんだぜ by 田島貴男」
 昨年は25周年ということで、ヒット曲満載のツアーだったけど(北海道はSAPPORO CITY JAZZ)、今年はめったに演らない裏ベストツアー。売れなかった曲にも光を当てる。ORIGINAL LOVE は“接吻“だけじゃないんだぜ。そう宣言しただけあって、なかなか聴けない曲、ぼくも知らない曲が続いた滑り出し。それでもコンパクトでエッジの効いたバンドに田島貴男の声が乗ると、SOUL POWER がびんびんと伝わってくる。田島貴男のラップが聴けたのも、このコンセプトのおかげです。
 正直ぼくも中抜けしている時期があるので、知らない曲も聴けて、それで楽しく乗れて、田島貴男に酔える遺伝子が、ぼくの根っこにあるのかな。
 そして裏切らない男・田島貴男。あんな前フリをしておきながら、きっちり“接吻“はやってくれる。そして夜が明けたり、夜をぶっ飛ばしたり。
 田島貴男もさることながら、会場のノリをリードする真城めぐみのキュートなダンスと、アンコールで弾ける小暮晋也も見ものです。
 同い年の盟主の一人と初夏の札幌でいい汗かいた。ウクレレ弾かなくっちゃ。


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知念実希人「屋上のテロリスト」を読む(17.6.18)

「セーラー服と核弾頭、いつだっておかしいほど誰もが誰か騙し騙されて生きるのさ。」
 テロ等準備罪が可決した。深酒で世の中の動きを把握せず、起きてテレビをつけたら国会中継やってて、朝早くから国会やってんだって思ったら。
 確信犯なんだけど、こんな時期だったのでこの小説を読んでみた。
 1945年8月、日本は太平洋戦争で降伏を受け入れず、東と西に分断された。国境には壁が築かれ、東は社会主義、西は民主主義国家として互いを牽制。ソ連とベルリンの壁の崩壊を経て緊張が緩和してきた2017年、東の佐渡島侵攻により、再び両国は−触即発状態に。その裏でセーラー服の少女が暗躍していた。彼女が起こそうとするテロとは?
 物語りは複数の視点から描かれている。セーラー服のテロリストの同級生、西の大統領、デモ活動に励む青年とその花火師の祖父。派略のなさそうな視点が繋がった時、少女のテロはどうなっているのか?
 正直あまり期待してなかった。テロ等準備罪にかけたネタくらいに思ってて…ゴメンナサイ。ところが、すごい面白かった。疾走感のある文章と、綿密の築かれたコンゲーム。もろぼく好みの作品なのだ。やられた〜。
 隣国もこんな緊張感の中で日々を過ごしているのかな?
 いつだっておかしいほど誰もが誰か騙し騙されて生きるのさ。それだけがただぼくらを悩めるときにも未来の世界へ連れてく。


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浅草演芸ホール6月中席昼の部を観る(17.6.16)

「落語ブーム、確実に来てました。うれしいんだけど、ちょっと複雑な気分」
 浅草演芸ホール6月中席昼の部の番組表を見てぶったまげた。なんだこのすごいラインナップは。
 昼の部主任はかつてぼくが弟子入りを考えた三遊亭圓丈。トップは圓丈の弟子で二つ目のめぐろと彩大、仲入り後は同じく弟子で新作の新星・天どん。落語家初の人間国宝の息子・柳家小さん、笑点の黄色の息子・林家木久蔵と、昭和の爆笑王の息子・林家正蔵(ぼくはこぶ平の方がなじみが深いが)、江戸屋小猫の2世枠。春風亭一之輔、古今亭菊之丞の乗ってる二人。そしてぼくが好きな柳家喬太郎の師匠・柳家さん喬。もちろん他の方もぼくが知らないだけで芸達者ばかり。
 それにしても、落語ってブームなんだね。今日の浅草演芸ホールは2階席まで満席。出演者たちも寄席が賑わってるって言ってたもん。ぼくの隣の席もおひとりさまの若い女性。時代が変わったなぁ。
 寄席は一人の持ち時間が10〜15分。できればじっくり聞きたいところだけど、贅沢言っちゃいけないよね。ということで、簡単に今日の出演者と演目を。
○前座(名前がわからなかった) 「真田小僧」(古典)
 前半だけでした。
○三遊亭めぐろ 「三つの袋」(新作)
 題材はベタなんだけど、今風に作られてて面白かった。新作の担い手として今後が楽しみ。
○三遊亭彩大 「浮世床」(古典)
 今回は『太閤記』を音読するくだりでした。
○ペペ桜井 ギター漫談
 ヨナ抜き、琉球民謡などを弾き分けながら、巧みに笑わせます。
○三遊亭歌実 「湯屋番」(古典)
 鹿児島実業出身だから歌実(カジツ)。二ツ目昇進おめでとうございます。
○林家木久蔵 「つる」(古典)
 笑点メンバー必須の木久扇いじりも、息子がやると実感が違います。
○江戸屋小猫 ものまね
 彼の祖父と父が猫八・小猫を名乗っていたころのイメージが強くって、息子がいたの知らなかった。ほっこりしながら笑える伝統芸でした。
○柳亭燕路 「小言念仏」(古典)
 ドリフの全員集合のエンディングか、はたまた落語版ラップか。笑えます。
○柳家小はん 「能狂言」(古典)
 一膳めし屋の婆さんとのやり取りを。その煮物の正体は?
○ホームラン 漫才
 神父さんネタ、1回見たことあるんだけどすごく笑えた。鉄板の凄みです。
○春風亭一之輔 「唖の釣り」(古典)
 きっとテレビでは見られないネタだよね。とにかく一之輔のジェスチャーに見入っちゃう。
○柳家さん喬 「長短」(古典)
 あの気長な間を作る技術、さすが以外の言葉が浮かばない。面白かった。
○ストレート松浦 ジャグリング
 喋りながら、しかも笑わせながらジャグリングするんだから、すごいよなぁ。
○古今亭菊之丞 「親子酒」(古典)
 酔っ払いの仕草が滑稽でうまい。『昭和元禄落語心中』の八雲師匠っぽいんだよね。
○柳家小さん 「子ほめ」(古典)
 鉄板ネタをさらりとやってみせるのがかっこいいんだろう。
○三遊亭天どん 「テレビショッピング」(新作)
 かなり短くまとめました。マクラのウルトラマンエース、ぼくはついていきますよ。
○ホンキートンク 漫才
 ジキソウソウからの・・・これはカラオケでつかえるか?
○林家正蔵 「味噌豆」(古典)
 あの舌っ足らずの喋り方が、定吉に合うんだよね。木久扇との二人会の話、面白かった。
○入船亭扇遊 「たらちね」(古典)
 落語協会における入船亭の立ち位置に笑っていいのかな…。めっちゃ聞きやすいきれいな落語をされます。
○三遊亭小円歌 三味線漫談
 若き日の小円歌に「私を好きにしていいよ」と言われたら、ぼくも必死にダイエットするかも。
○三遊亭圓丈 「シンデレラ伝説」(新作)
 今日は白鳥作の新作でした。10日間トリを続けるから、毎日ネタも変えてるんだろうけど、台本を持ち込んでの高座はちょっと心配。痴呆の一歩手前なんだそうだけど。笑いはいっぱいとってたから、心配いらないかな。世紀末頃の寄席の惨状と今の隆盛の比較も。それにしても、先代圓楽に対する嫌悪は消えることはないんだね。


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湊かなえ「リバース」を読む(17.6.11)

「ぼくは友のことをどれだけ知っているのか、友にどれだけ知られているのか」
 TBS系列で放映されている金曜ドラマ『リバース』を観逃がしてしまい、悔しくって小説を読んだ。ドラマのキャストは藤原竜也と戸田恵梨香しか知らなかったので、読後に公式HPで確認したら・・・キャスト多くない?
 ということで、これから書くのは小説の感想です。ドラマはまるで見ていないので、あらかじめご了承ください。
 友達付き合いのほとんどない事務用品販売の会社員・深瀬に初めてできた彼女が勤務先で受け取った手紙。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた。深瀬が彼女に語ったのは、大学で同じゼミだった5人で行った斑尾高原の話、人生で唯一の親友が事故死した話だった。手紙の差出人は誰?残った4人は本当に人殺し?死んだ親友・広沢はどんな男だった?深瀬が見つけた真実とは。
 湊かなえ作品を読むのが久しぶりだったためか、読んでるうちに湊かなえだって忘れちゃいそうで、「あっ、湊かなえも作風が変わったか」なんて思ったのに、最後の最後でどっぷり湊かなえだった。湊かなえ過ぎてどんよりしちゃうほどに。でも、これを求めて湊かなえを読んでいるんだから、そこは受け止めないとね。でもね、今回のどんよりはもちろん過程と結果に対するものでもあるんだけど、それ以上にこれから先を思いどんよりするんだよね。自分ならどうする?って。難しいよなぁ・・・なにを求めていくのかって。でも、どうするかを書いちゃうとネタバレにもつながるので、ここでは書かないけど。
 いつものことなんだけど、自分ってどのタイプか、登場人物に当てはめてみる。同じゼミだった5人。裕福な家庭じゃなかったので村井は真っ先に除外。谷原ほど自己中でもないだろう。もちろん広沢ほどの広い心も持っていない。根本は深瀬で、都合のよい倫理観の末に背負う罪悪感という意味では一部浅見なのかな。もちろん自分で思うのと、他人の認識は異なるんだろうけど。
 最後にまたドラマに戻って。まるで見てないからぼくが小説を読んで想像していたイメージとドラマのキャストに大きなずれがあるんだよね。もちろんドラマのキャスティングはお金やスケジュールの都合があるから、製作者も必ずしもベストを集めたとは思わないけど。でもやっぱり違和感。なので、あえてドラマのキャストの中からぼくが最適化するとしたらというのを書いてみます。どうかな?
 役 名 ドラマキャスト 岡本チョイス 備  考
 深瀬和久  藤原竜也  小池徹平  「あまちゃん」のストーブさん的な
 広沢由樹  小池徹平  三浦貴大  鈴木亮平が一番しっくりくるかな
 浅見康介  玉森裕太  藤原竜也  ホントは三浦も藤原に広沢はないので
 谷原康生  市原隼人  市原隼人  これはこの人でしょう
 村井隆明  三浦貴大  玉森裕太  ジャニーズにこの役はあてがわないか



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さっぽろ落語全集(第一巻)を観る(17.6.10)

「若手というカテゴリーのアラ50噺家の競演、落語好きが増えますように」
 常設の寄席がない札幌。このところの落語ブームで高座を観る機会が増え、いろんな噺家さんを知ることができるようになった。それでもまだまだ、好みの噺家を見つけたいという欲求は抑えがたく、そんな道民の要望に応えるべく始まったイベントが「ヒッピーズ寄席スペシャルさっぽろ落語全集」なのです。会場は我が地元・新札幌サンピアザ劇場で。
 栄えある第一回目の出演は、新作を得意とする春風亭百栄と、円楽一派のホープ・三遊亭兼好。どちらも初めて聞くので楽しみ。そうそう、兼好は『超入門!落語 THE MOVIE』に出演してたんで、テレビで聞いたことはあったっけ。
 この企画、すごくいい。顔見せ程度に並べるのではなく、じっくり二席づつ聞くことができるから、噺家の個性をより多く知ることができる。常設寄席作るより、いいかも。
『寿司屋水滸伝』 百栄
 百栄の新作、どんなのやるかと思ったら、まさかの喬太郎作できたか。これは「喬太郎北伝説」と主催者が同じことを忖度したのか?まぁ、そんなことないだろうけど。百栄の語りが特徴的で。本家・喬太郎の寿司屋水滸伝の演じ分けとはまた違う、強弱で違いを作る感じ。こんな感じもこの噺にはいいね。
『締め込み』 兼好
 長屋に空き巣に入った泥棒、帰宅した夫婦におびえて隠れるも、姿を現し・・・。兼好の話し方のはきはきしてること。落語家には珍しい、メリハリのついたきれいな話し方。これが聞きやすく、耳になじむ。あと、ふとした仕草の擬音が上手い。細かいとこでも手を抜かず、音を発している。これがなんとなくツボ。これからの落語なのかもしれない。
『熊の皮』 兼好
 尻に敷かれた旦那。古典落語の格好の主人公だよね。嫁に言わされ、とちって笑いに。この典型的なパターンが兼好のお得意なのかな?もちろん大笑いです。
『疝気の虫』 百栄
 古典なんだけど、百栄の手にかかるとポップな新作みたいに聞こえてくる。キャラが立ってるんだよね。男性の腰回りの謎の病気・疝気。ひょんなことから疝気の弱点を知った医者が、疝気撃退にとった策は?


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立川談春 映画「忍びの国」噺+らくごを観る(17.6.6)

「映画の成功と落語の普及、どちらも叶えたい談春なのです」
 2週続けて談春です。でも今回は独演会ではありません…いやいや、一人でやるんだから独演会?でも、今回は映画『忍びの国』のPRが主体だから、純粋な落語会ではないんだよね。
 談春も出演し、嵐の大野くんが主演する映画をPRし、落語を一席やることで、大野くんファンを落語に、落語ファンを映画に向けさせる意図があるのだとか。それは双方にとっていいことだよね。盛り上げるためならなにを使っても大丈夫。
 『忍びの国』、実は小説を読んでいて。でも、正直ストーリーをほとんど覚えていない。なんでだろうと思ったら、震災の時に読んでたんだよね。きっと今なら当時とは違う感情が芽生えるのかな?
 ということで感想を。
『「忍びの国」噺』
 ジャニーズ事務所の好意の上で成立した企画ゆえ、いろいろと内容を書くわけにはいかないんだけど、写真を見ながらの登場人物の解説あり、裏話あり、主人公からのメッセージあり。円楽とタニでベリーグッド。確かに観に行きたくなってきた。
『紺屋高尾』
 実は1月に立川志の輔で聞いたのよ。まさか5ヶ月後に弟弟子で聞くことができるなんて。ほんわかした志の輔とちょっとトゲのある談春。同じ立川流でも味が違うんだね。惜しむらくは意気込み過ぎたのか、談春とちり過ぎ。ぼくの隣のご婦人は噺に詰まるたびに「がんばれ」って。忙しすぎなのかな。それとも大野くんファンの前で緊張した?


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恵比寿★マスカッツ喜怒愛楽ツアー「全国イク行く〜??」を観る(17.6.4)

「少年よ、中学生はオ○ニー…by三上悠亜」
 会社の部下たち(30代×1、20代×2)とともに、セクシーなお姉さまたちが集まった恵比寿★マスカッツのLive。4年前に初代恵比寿マスカッツの解散Liveを観に行って、楽しかったのさ。おっさん一人じゃ照れくさいけど、若いのと一緒ならと思ったら、「上司の威厳保てるの?」と周りから心配される始末。まぁ、一緒に”男の子”として盛り上がるのも、操縦術のひとつということで。
 整理番号はよかったのに、所用で出遅れオールスタンディングの後方での鑑賞。それでもいいかと思い、登場した彼女たちを観たら、前の人の頭で全然見えない。やっと見えたと思っても、鎖骨より上。小さい子は…見えない。ウエストが露わで太ももバッチリの衣装だったそうなんだけど、全然恩恵に与かれない。今日の会場は狭いうえにステージが低いんだな。ぼくの隣に小さめの女子3人組がいたけど、見えたのかな…。
 それでも11人の選抜メンバーの7曲連続での熱唱から始まり、初代の曲も歌ったり。全然知らない曲ばかりだけど、楽しくなっちゃう。会場のほとんどを占める野郎どもたちの熱狂ぶりにも後押しされ、会場もぼくもどんどんヒートアップ。位置的にセンターの子は見えないけど、ローテーションしてくれるので、ひと通りぼくの視界に入ってくれる。やっぱみんなかわいいね。
 アンコールでは彼女たちのTV番組『マスカットナイト・フィーバー!!!』から生まれた「バカなナポレオン」のコーナーで笑いを取り、ぎっくり腰で欠席のリーダーのぶつ切れラップをいじり、怒涛のラストへ。楽しかったぞ。
 Live終了後は4人居酒屋で、本日出演の11人から自分たち選抜ドラフト会議を開催。すっかり中2男子になったのだ。さて、DMM.comのサンプル動画でも見るか。


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「山里亮太の140」〜北海道への贈り物〜を観る(17.6.3)

「とんでもない贈り物がいっぱい…でも魔法にかかっちゃて覚えてないの」
 ぼくは南海キャンディーズ・山里とオードリー・若林とバカリズムにシンパシーを感じている。あの心に秘めた闇、ぼくにもあるから。共感どころいっぱいだから。きっとぼくも「どぶ人(どぶんちゅ)」の一人なんだろう。ただ、ぼくとは才能が決定的に違うのだ。当たり前のことなんだけど。なので、山ちゃんがトークライブで札幌に来ると知った時、胸躍る気持ちだった。あの機転と頭の回転の速さをナマで間近で見ることができるのだ。
 タイトルにある140という数字。これは一回のツイートの制限文字数なんだそうで。山ちゃんが過去にツイートした数々の投稿から、何重にも包まれたオブラートを剥いで、そこに隠された本音を紹介しちゃうというガチなライブ。それゆえに始まりでぼくらは魔法にかけられるのです。ホールの扉を出ると、ホールの中であった出来事を忘れてしまうと。だから覚えていないのです…表面上は。それができるのです、ぼくらは。だって、ぼくらには闇を溜めこむことができる心があるのだから。
 一人でのトークだから90分が限度かなって思ったら、休憩なし、給水なしで160分。あれやこれやどれやそれや、もちろんすべてじゃないんだろうけど、山ちゃんの本音を、山ちゃんの闇の一部を除くことができた渾身のライブ。終始共感で笑いっぱなし。最高なのだ。
 そこでふと思う。では、ぼくの心の闇を吐いたらどうなるのか。きっとみんな嫌な思いをするに違いない。それを共感と笑いに変える山ちゃんの才能は、やっぱりすごい。
 来年もぜひぜひ観たいトークライブでした。


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「道新寄席 立川談春 独演会」を観る(17.5.30)

「ドラマに映画に大忙しの落語家・談春の本分がここに」
 え?2週続けて談春札幌?まっ、知ってたけどさ。でも、前回はおおよそ1年前でしょ?それまでは年に数回来てたのに。まぁ、いろいろあったんだよね、この1年。
 なんか談春、雰囲気が穏やかになった?ドラマでアップの顔を見るたびに、プリッと張ったつやある頬が、なんか緩んだというか、やつれたというか。でも、それが与太噺にはもってこいで。おどけて顔を振るたびに肉が揺れるのが、いかにもおどけていて、なんかホンワカ。そういえば鈴木亮平の役により体重を増減させることに感心していたから、談春のやつれ感も役作り?
 1月から始めた『居残り佐平次』を引っ提げた全国独演会ツアーも札幌が40回目の最終日。5ヶ月向き合ってきた『居残り佐平次』の集大成が聞けるかと思うと、ワクワクが止まらない。
 ということで、廓屋づくしのツアー千秋楽の模様を以下に。
『錦の袈裟』
 吉原での余興に、11人揃いで錦のふんどしを締めて踊ったら?でも一人だけ締めていたのは錦の袈裟だった。もう、与太ぶりがものすごい。この天然を演じるがための役作りなんだよね、きっと。
『居残り佐平次 上・下』
 大作です。廓屋に意図的に居残った男の顛末噺。ただでさえ長い噺を時間をかけてじっくりやします。なぜかというと、今ではあまり通じない落語の暗黙のお約束がいっぱいあるから。なんとなくわからないところを聞き流して50%の理解と笑いを得るよりも、理解を高めて笑ってほしいという談春の気持ち。今の落語ブームと古典の火を絶やさないためにも必要だよね。
 で、佐平次。こちらは与太を使いこなす悪いやつ。まさに談春の得意技みたいなもんだよね。ほんとハマってた。そして下げはオリジナルと異なる談志流。オリジナルは『昭和元禄落語心中』でも聞いていたので、「あっ、かわってる」って。それを最後にきちんと解説してくれる。落語の伝道師になる?
 登場人物の演じ分けがうまい談春の、思いっ切り振り切れる二面性は必見です。


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東京スカパラダイスオーケストラ2017全国ホールツアー「TOKYO SKA Has No Border」を観る(17.5.28)

「懐かしい仲間と、あの頃のままのあのノリで」
 いい汗かいた。いい声出せた。脱水症状が出て、声もガラガラだ。掌は腫れ気味で、右手を上げるのがちとつらい。腰も痛いし足はパンパン。でも、とてつもなく充実している。ぱらつく雨が火照った身体をクールダウンしてくれる。最高だ。
 スカパラの生ライブは12年ぶり。あの頃はまだ、札幌市民会館だったんだよね。歳をとったためか、ライブハウスがつらくなっちゃって。たまには足休めしたいし、自分の場所が確保されてないと、落ち着かないし。たまのホールライブも都合が合わなかったりで。だから、今回は待ちに待ったスカパラなので。
 一番驚いたのは、客巻き込み型の和気藹々ライブになってたこと。「ついて来いよ」じゃなく、「一緒に行こうぜ」。歩調が合えばあとは弾けるだけ。
 楽曲はもちろん、寸劇的コーナーもあり、あっと驚くカバーまで。90年代のスカパラがパワーアップして帰ってきた。あの洒落っ気満点のスカパラが。あっ、ちょっとバラエティー感が増したかもしれないな。沖祐一の活躍は涙目。ホーンセクションばかりに目が行きがちのスカパラの中にあっても、やっぱ彼の演奏いいよね。川上つよしのベースとともに、スカパラの芯だよね。
 客の年齢層がだいぶ上がったなぁ。速さとカッコよさを突き詰めてた時は若い女性ばかりだったのに。彼女たちの年齢が上がったのか(10年以上経つし)、ぼくみたいな昔からのファンが帰ってきたのか。どちらにせよSoldOut。最高のメンバーの最高のパフォーマンスを待ち望んでいる人がいっぱいいるんだね。
 同年代の男たちが、色褪せることなく輝きを放ち続けている。紆余曲折あったけど、それを乗り越え第一線で輝いている。そんなやつらの音がぼくを楽しませてくれる。やつらの姿がぼくの励みにもなる。
 久々の会った仲間たちと、昔の気持ちのままで、めっちゃ楽しい夜を過ごした夜でした。


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朝井リョウ「スペードの3」を読む(17.5.27)

「現実に潜む大富豪ゲーム、笑ってプレイできるかな?」
 なんと言葉にしようか、この読後感を。トランプゲームの大富豪をモチーフ?に、ミュージカル女優・香北つかさをきっかけとして綴られた連作小説だ。
 「スペードの3」では香北つかさの私的ファンクラブ"ファミリア"における人間関係がかつての同級生が加入したことにより変化する様を、「ハートの2」は間接的だけど香北つかさをきっかけに自分を変えようとする様を、「ダイヤのエース」では香北つかさ自身の過去から現在に至るきっかけを描いている。大富豪とは言えて妙で、誰が大富豪(勝者)で誰が大貧民(敗者)かは読み手次第なんだけど、タイトルのカードはそれぞれの結果に大きく関与しているようで。
 過去の自分と今の自分。昔を知る者が現在築き上げた今の自分がいる場所に現われたら、過去を美化できるほど自信家でなく、かつての自分を反面教師としているぼくは本当につらい。かつての自分をなぞっているなら平気なのかもしれないけど、昔のいたらない自分は厳重に蓋をして、記憶の奥の奧に仕舞っておきたいもん。だから読んでてサイコホラーかと思っちゃった。
 変わる(変える)きっかけとその意志はそれぞれだと思う。だから起点となるカードも勝敗だってそれぞれ。大富豪が現実だったら凄いシビアで残酷な世界と思ってたけど、実社会もなかなかどうしてなんだろうなあ。ぼくのカードはなんだろう…。
 勝者なき社会に生きるぼくらにとっての勝ち名乗りは、どんだけ胸を張っていられるか...かもしれない。


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「『Life works』上映&利重剛監督トーク」を観る(17.5.19)

「小粋な物語を紡ぐリジュウ・ゴウ、リ・ジュウゴウだと思ってた。」
 横浜を舞台とした連作ショートフィルム『Life works』。これまで製作された18本から選りすぐりを上映し、脚本・監督の利重剛を招いたトークショー。札幌のミニシアター、シアターキノの25周年記念イベントは豪華です。
 横浜の映画館で無償おまけ上映されているという連作。海外ではおまけ作品を有名な監督が撮影してたりするんだって。で、それが本作よりおもしろかったりするんだとか。確かに、『トムとジェリー』でも真ん中に放送される短編が面白かったりするよね。ぼくは「森の小さな靴屋さん」が大好きだった。
 なんだろうか、見たことあるんだけどなにに出てたかわからない役者さんやまったく知らない方が、横浜を生きている。横浜があまりに横浜で、ぼくが行ったことのある天ぷら屋『登良屋』なんて、従業員がそのまま出演していたり。そういう意味で、読めない部分もあったり。必ずしもすごい展開があるわけじゃなく、穏やかに時間が流れるんだけど、ショートフィルムの利点で飽きることがない。
 悔しいんだけど、さりげなく吐く男の本音と、かわされるせつなさが胸にキュンキュン刺さるのよ。もちろん女性の感情もなんだけど、やっぱ男だからそっちに目が向いて。ちなみに今回のラインナップは…。
 ・お前と俺  ・なぐさめるということ  ・雨上がり  ・お刺身  ・花の名前  ・泣き女
 ・ロカビリーさん  ・聞き屋
 こんなの観ちゃうと、自分じゃできないかなって思っちゃうんだよね、無理を承知で。
 ぼくの中での利重剛って『父母の誤算』の”たばこご飯”のイメージがまだまだ強いんだけど、いいもの作って提供してくれて、うらやましい存在だなぁ。全作観たくなっちゃった。


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「道新寄席 春風亭昇太 独演会」を観る(17.5.17)

「どんな人でも幸せの総量は一定のハズ…独り身を支える魔法の言葉」
 「しゃべりたいことがいっぱいある」
 独演会冒頭から突っ走る春風亭昇太。『笑点』の新司会者になり、仕事の幅もどんどん広がり、いろんな体験をしたのです。
 紅白歌合戦の審査員、ドラマ出演などなど、落語以外の活動で得た話しに、定番の笑点メンバーいじりを交えて、まくらは大爆笑の連発。できる男は違うなぁ。でも、大衆に迎合するだけでなく、独身男性の矜持を保ち正当化するあたり、年季の入ったプロの独身なのです。
 そんな昇太の独演会の演目をさらりとご紹介。
『馬のす』 春風亭昇羊
 昇太の弟子にも関わらず、師匠より先に結婚を決めた昇羊。初見かと思ったら、「三つ巴落語会 in 岩見沢」で観てたのね。マレーシア人っぽい様相にもかかわらず、ぼくの記憶にないとはこれ如何に。昇太の独身いじりからのねた入りで。とにかく枝豆が印象的で。一回くらいすかしも入れればいいのになんて思っちゃった。
『猿後家』 春風亭昇太
 猿顔を気にするがあまり、猿という言葉に敏感な後家さん。そのせいで仲の良かった人と仲違いしたりして。なんとかご機嫌をとろうと乗り込んだ源公、出だし好調も徐々に雲行きが怪しくなって。昇太の女役って、いかにもな感じなんだよね。すごくベタでこれぞ落語って感じ。吉本新喜劇だと桑原和男みたいな。でも、その安定感がある意味昇太の強みであり、面白さなんだと思う。
『曲芸』 鏡味正二郎
 ぼくのなかで曲芸と言えばお染ブラザーズなんだけど、これはほんとすごかった。いや、お染ブラザーズもテレビでしか見たことないので、危ないことはしなかっただけなのかもしれないけど。「お手玉」でつかみはOK。「五階茶碗」でバランスのすごさと美しさを見せる。「四回し出刃包丁」で危険に身をさらすも見事な回転技を披露し、安心の傘芸で締める。芸の華麗さもさることながら、立ち姿が美しかった。
『花筏』 春風亭昇太
 身体を壊した江戸相撲の花形大関・花筏の代役として銚子巡業に同行した提灯屋の七兵衛。見物してればいいはずが、千秋楽で地元の腕自慢、負け知らずの千鳥ヶ浜と対戦することに。あせる七兵衛。でも、焦っていたのは七兵衛だけではなかった。どうなる千秋楽。昇太の『花筏』は小心者感がめちゃくちゃ伝わってくる。これを昇太の人柄と言っては失礼かもしれないが、これもまた昇太の持ち味なんだよね。すっげー笑えた。
 また来てください。じっくり噺を聞かせてください。テレビじゃ観ること、聞くことのできない昇太を堪能したいのです。


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原田マハ「楽園のカンヴァス」を読む(17.5.9)

「またひとつ趣味の扉が開きそうな…いい物語なのです。」
 アンリ・ルソーの未発表作品をめぐるミステリー。本屋で物色してたとき、新刊でないのになぜだか目にとまって。もちろん絵画に詳しいわけもなく、ルソーもほとんど知らないんだけど、妙に惹かれるものがあったのさ。
 スイス・バーゼルの邸宅に招かれた近代美術(主にルソー)の研究者2人。世に出ていないルソー作品の真贋を、7編からなる物語を読んで講評し競うことに。目の前のルソー『夢を見た』は真作か?1日1編読み進める物語はなにを教えてくれるのか。
 2000年の倉敷・大原美術館から始まり、未婚の母・織江がニューヨークの美術界を舞台に活躍する話しかと思いきや、一転17年前にさかのぼり、しかも目線まで転換する。そして畳みかけるように作中作に突入。めまぐるしいっちゃめまぐるしいんだけど、戸惑うことなく読めたのはストーリーの面白さを含めた作者の力量なんだろうなぁ。
 ルソーの純真を前にそれぞれの思惑が交錯し、絵画の真贋を超えた争いが繰り広げられる。はらはらドキドキがいっぱいの物語だった。
 絵画にさほど知識も興味もないぼくでさえ、今北海道で開催されている『大原美術館展U』に行きたくなってきた。狙ってたわけでなく、ホント偶然開催してるんだけど。


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「TKOとサンドウィッチマンのコント大好き」を観る(17.5.5)

「コント師たちの性が堪能できたイベントです」
 芸歴20年のサンドウィッチマンと、25年のTKO。コント師2組のジョイントライブは2年ぶり2回目。今回は昼の部がコントで夜の部はトークだとか。ウラ話も聞けそうなトークも魅力だが、やっぱ彼らが身を削り作り込んだコントが観たいと昼の部に参戦。
 コントと言いつつももちろんトークもあり、開演から巻きが入るのは彼らのサービス精神のあらわれか。たとえそれが物販につながろうと、面白ければ観客にとって喜ばしい限りで。
 コントはサンドウィッチマンを先攻に交互に3本づつ。ちなみにサンドウィッチマンは『真夜中のラジオ』『占い』『タクシー』、TKOは『葬式』『マッサージ』『SNS』。タイトルはぼくが勝手に付けてます。
 どれも大いに笑ったけど、心情的にはサンドウィッチマンの方が好きかな。特に『真夜中のミッドナイト』がツボ過ぎて。TKO木本のライザップ仕込みの腹筋は見事だったけど。
 2部はネットで応募した一般人のコントのオチを2組が演じるという企画。ツッコミだって笑いが欲しい感情大爆発で、マジのダメ出しはあるわ、笑い過ぎて進まないわでグダグダ。でも、テレビじゃ見ることのない芸人の性が知れて、面白ければよしと。
 来年か再来年かはわからないけど、またやってください。


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「ブルーハーツが聴こえる」を観る(17.5.4)

「いろんな顔を持つ、THE BLUE HEARTS を楽しんでみて。」
 室蘭にいた大学生の頃、サンプラザ中野のオールナイトニッポンで、民放初オンエアって紹介で流れた『リンダ・リンダ』にド肝を抜かれた。酔って帰った時だったけど、「ドブネズミみたいに〜」から始まる歌詞に耳を奪われ、頭ん中はリンダの無限ループ。そのまま寝入ったけど、翌朝もループは続いてた。
 出会いは違えどぼくと同じようにブルーハーツに心を奪われた輩はいっぱいいたから、いつかこんな映画が作られるのではと思ってた。彼らの楽曲をモチーフにした映画が。『リンダ・リンダ・リンダ』よりもっと楽曲に寄った映画が。
 本作はブルーハーツの楽曲を主題とした6編の短編からなるオムニバス映画だ。クラウド・ファンドでお金を集めたことでも有名になった。コメディ、SF、学園モノ、純粋な気持ち、熱情、社会派と、いろんな切り口で描かれてる。必ずしもモチーフにしている曲がそれぞれの要素に当てはまっているわけではないけど、ブルーハーツ自体がそれらの要素を兼ね備えたバンドだったって、しみじみ思う。どれがいいとかどれが悪いとかでなく、どれもがブルーハーツなんだなって。
 ぼくならなにをモチーフにして話しを紡ぐだろうか。『青空』はメインテーマだったから、『終わらない歌』かな。ちょっと問題あるかもしれないけど。
 軽くぼくの感想を。
『ハンマー(48億のブルース)』
 きたっ!『イロドリヒムラ』第2話「Thunderbird」が大好きなので、キターって感じのコメディです。
『人にやさしく』
 こうきたか。いきなりのSFにびっくりも、結構ストレートなメッセージです。
『ラブレター』
 これまたベタな直球で。もう一度やり直せたら、なにができるだろうか。
『少年の詩』
 子供だっていろんなこと考えて生きてるんだよ。走り出した少年のかっこよさは必見かな。
『ジョウネツノバラ』
 淡々と、ただただ淡々と、永遠の愛が映し出される。気持ち伝わる。水原希子、美しすぎる。
『1001のバイオリン』
 これをぼくが語るのは難しいし、語る資格は持っていない。そのメッセージをうまく誰かに伝えられない。安定の豊川悦司よりも三浦貴大の方が味があったかな。『幸せの黄色いハンカチ』の武田鉄矢みたいに。


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「矢野顕子×上原ひろみ TOUR 2017 ラーメンな女たち」を観る(17.4.30)

「スペシャルな4本の手が奏でる、空前絶後の〜ぉ…すごいやつです。」
 上原ひろみ、去年から観たくてたまらなかったのよ。昭和女子大学人見記念講堂のLiveチケット獲れなくて、募る思いがなお一層。それが矢野顕子とともに札幌に来てくれるなんて。夢のような話じゃないか。
 タイトルを裏切ることなく『ラーメンたべたい』から始まるLive。のっけからすっげーの。鍵盤が休むことなく叩かれ、弦を弾いて圧倒的な音となり、凄まじい密度でぼくの耳に届き、胸躍らせる。そこに矢野顕子のほわんとした歌声が乗って、やわらかい風が吹くような。ピアノ2台がスペシャルな4本の手によって特別な生き物に変わっていく。こんなもん聴かされて何かを書くなんて耳も文才もないし、野暮でもない。ただただ聴き惚れるだけ。でも、それが音楽なんだよね、きっと。
 『エイント・ノー・サンシャイン』と合体した『真っ赤な太陽』。でもぼくには『エイント・ノー・サンシャイン』が『与作』に聴こえて、上原ひろみがいつ「ヘイヘイホー」と合の手を入れるかが気になったりして。これもまた音楽の楽しみ方のひとつなのかな。
 札幌公演は今回のライブツアーのラストだったとか。「またやるよ、また来るよ」って言ってくれたけど、札幌に来てくれるかな…。ラーメンなら豊富なんだけど。


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津村記久子「ミュージック・ブレス・ユー!!」を読む(17.4.17)

「無駄に女子力が増しているような気がする、ぼく。」
 きっと女の子がバンドやって恋して悩んでなんて物語だと思って買った。作中にもたびたび出てくるジャケ買いみたいな心境で。最初からバンドは解散へ。ほらほら、きたきた。
 へっ?もう弾かないの?っつーか、主人公がベース弾く場面って1回でもあったっけ?でも、音楽小説なのだ。
 集中力がないと言われる高3女子の日常を描いた小説。志望校も将来のヴィジョンも見つけられず、日々の大半をヘッドフォンをつけ洋楽を聴いて過ごす。ぼく自身はヘッドフォンをつけ洋楽を聴くことはなかったけど、志望校も将来のヴィジョンも見つけられず日々を過ごしていたので、なんか気持ちはわからないでもない。でも、のめり込めるものがたいしてなかったからなぁ。ちょっとうらやましいかも。
 『NO MUSIC,NO LIFE』って真顔で言っちゃうのってすごいよな、なんか歯が浮いちゃう言葉だなと思ってたけど、音楽を生活に息づくもののひとつと考えたら、しっくりくるかもしれないね。


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住野よる「よるのばけもの」を読む(17.4.9)

「住野よるを読むのには勇気が必要で。大切なことがたくさんあり過ぎて」
 住野よる、夢中になって読んじゃうんだよ。どれも10代が主人公なんだけど、その頃の自分を今の自分で振り返ってみたりして、すごく心に応える。それはダメージとなることもあるんだけど、自分の気持ちに向き合うことができるというか、なんというか。50にしてオトナになるための作業をしているような。
 夜になるとばけものに変身するあっちーは、ばけものの姿で宿題を取りに夜の学校へ行ったら、そこにはクラスのいじめられっ子・矢野さんが夜やすみを謳歌しているところだった。昼はマジョリティーであることを望み、積極的ではないにせよ矢野さんを無視していじめに加担するような行動をとるあっちー。でも夜は、ばけものの姿のあっちーは矢野さんとともに時間を過ごしていく。そして景色が少しづつ…。
 昔のことを思い出すと恥ずかしくなる。無意識にやってきたひどいことが、今になって思い出されてきて。どれだけ自分が無知で無自覚なお子様だったかが、思い知らされる。ぼくが言葉にできなかった気持ちが露わになってくる。だから住野よるは…。
 本当の気持ちを伝える。住野よるは一貫してこれを伝え続けていると思う。それがいつの時代もどんな感情でもできていないから、ぼくは住野よるにいつもひれ伏すしかなくなる。
 『よるのばけもの』はとても重く、後ろめたくなる気持ちが描かれている。ぼくが中学生の頃に読んでも、きっと素直になれなかったと思う。ハンパなオトナになったから刺さる部分がたくさんある。オトナになって気づいたところで、あの頃をやり直せたり取り戻せることはないんだけど。それでもこれからも生きていかねばならないから。気持ちをきちんと伝えながら。
 ありがとう。


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大橋トリオ「ohashiTrio HALL TOUR 2017」を観る(17.4.8)

「たゆたう感覚、ゆれる心地。いいよね、大橋トリオ」
 昨年のサッポロシティジャズで、「確かにジャズじゃないよな」と思いながらも、その心地よさにはまってしまった大橋トリオ。正直CDを聴いたこともなく、いつも初耳状態ではあるけど、それがまた心地よいというか。席に座って落ち着いて楽しめる素敵なLive。速さに頼らない、オトナなオンガクです。
 大きな帽子にダボダボの衣装。大橋トリオはらしさ満載。サポートメンバーたちはシャツにベストでピシッとしてて。このギャップもまたLiveを構成していて。会場にも大きな帽子がちらほらと。くしくもぼくはシャツにベストだったんだけど。
 会場を埋める大多数は女性。なぜだかぼくが行くLiveは女性人気がすごいんだよね。でも、ぼくの周りにはあまり聴いている人がいないという矛盾。もっと情宣すべきなのかな…。でも、今回のLiveも早い時間にSoldOutだったらしいからなぁ。
 このたゆたう感覚、声張らないで作り出さねばならないから、曲作りとしては大変だよね。でも抑えた抑揚が映画音楽に多用されたりする要因なのかな。抑揚を抑えた大ヒット曲って『ルビーの指輪』くらいだし。
 大橋トリオの曲作りのち密さと声、メロディとリズムに揺れるって感覚はジャズなのかもしれないね。


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井上夢人「魔法使いの弟子たち」を読む(17.4.4)

「ジェットコースター・ミステリーとでも言いましょうか、映像が目に浮かぶ」
 なんだこの展開は?ルポライター登場からパンデミックパニック小説かと思ったら、X-メンだと?もう、展開が目まぐるしくて。それもジャンルごと変わってしまうような。それがハラハラドキドキで、まるでジェットコースターに乗っているような気分。1作で何度おいしいのだろうか。
 山梨県で後に“竜脳炎”と呼ばれるウィルス感染による病気が発生。事態がわからず現地へ向かったライターの京屋だが、自ら感染してしまう。数多くの犠牲者を出した中、生き残った4人のうち、京屋を含めた3人にはそれぞれ特殊能力が備わっていた。なぜ竜脳炎が流行したのか、3人の持つ特殊能力の意味はなにか、その先にあるものは?
 これ、映像化したい人いっぱいいるのでは?なにせ、読んでいてあらゆるシーンが頭に浮かんでくる。透視能力を使う際の感覚、急上昇するときの重力感などなど。凡人のぼくですらイメージが浮かぶんだもん、ぼくのを超えるもっとすごいイメージを持つ人がいっぱいいるのでは?それをぜひ、最先端ってやつをぜひ観てみたくなる小説なのだ。
 それにしても、いろんな要素が満載で、語っていいのか悪いのか。この感覚、読んでみて体感してください。


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「はらはらのなか。」を観る(17.4.1)

「これはチャランポ・ミュージカルです。反抗期の女の子の気持ちはわからないけど」
 中学生になった子役のナノカ。女優を目指すも、オーデションにはなかなか通らず。父と都会を離れ、新たな町で見つけたのは、亡き母がかつて出演した舞台の子役オーデションだった。父の反対を押し切ってオーデションを受け合格。家を出て居ついたのは、母と舞台で共演した元女優・リナが営む喫茶店だった。新たな環境での出会い、戸惑い、揺れ動く心。ナノカは母が立った舞台に立つことはできるのか?
 正直、女の子の考えることはわかりません。でも、それに戸惑うお父さんの気持ちはちょっとわかる気がします…子供いないけど。特にお父さんの名前が直人なもんだから。ということで、ナノカを取り巻くオトナたちを観るのがぼく的楽しみ方かな。中学校の生徒会長・凜がすごくオトナに見えて、こちら側の親近感を持ってりして。
 それ以上によかったのが、チャラン・ポ・ランタン小春のメロディーに乗せたミュージカル仕立て。もも、小春にカンカンバルカンのメンバーが劇団員として出演し、歌い踊ってます。もうこれが楽しくって。ゴシップを語るももの下世話感、合間合間に入る小春の毒。彼女たちの魅力が詰まってます。出演シーンはそんなに多くないけど。チャラン・ポ・ランタンと松井玲奈って相性いいのかな。
 ということで、ナノカ以外にもお楽しみ満載の『はらはらのなか。』でした。


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「『亀、もしくは…。』〜男亀と女亀〜」を観る(17.3.20)

「不条理劇の活用法、そう来たかと唸ってしまった」
 出演者のお一人と飲み屋でお会いし、勧められたのがきっかけで、札幌の演劇人たちが創るお芝居を観た。予習もなにもなし。もらったフライヤーによると海外の戯曲だという。これまでぼくの観劇は商用演劇ばかりだったので、たまには地元の小劇場も観ようかと。
 ここから先はネタバレを含むけど、もう公演は終わっているのでお許しを。また、読んでる途中で「なにさま?」と思われるかもしれませんが、最後までお読みいただければ幸いです。

 とある精神療養サナトリウムで繰り広げられる、女性4人(セクシーな精神科医、アブノーマルな看護師、世間知らず(?)の医学生、ミステリアスな患者)+αの心理劇?ちなみに男バージョンもあるのですが、前述の出演者が女性だったものですから。
 うわっ。なんだこの昭和の小劇場的なセリフ回しは…。「演劇がんばってます」的雰囲気は。さも意味ありげな会話の応酬は。 17年前に新潟の劇団を観た時ですら唖然としたのに、まさか札幌でもこんな不条理劇が未だに主流と言うのか?上演時間はおよそ1時間。耐えられるだろうか…。
 ここだけ読むとすごいディスリなんだけど、それが伏線になっているとは(でいいんだよね)。劇中劇をいかに演出するか。あからさまにド下手に演じる演出はよく観るよね。それを昭和の不条理劇風演出で押したということだよね。演劇をよく知らない人に演じろと言ったら、真っ先に思い描くのが昭和の不条理劇だろうってことで。恥ずかしながら、その意図に気づくのに、ちょっと時間がかかってしまった。気付きさえすれば、あとはリラックスして楽しむだけ。演者たちの入れるアドリブや小ネタにも素直に笑えるようになった。どこまでが脚本で、どこからがアドリブなのかの境界がどこなのか、わからなかったんだけどね。あっ、でもヘアバンドはわからない。
 この戯曲がこれまでどのような演出をされてきたのかは知らないけど、2017年における演出がこれということなのね。時が経てば、さらに若い世代が演出するときは、効果音入りまくりの劇団☆新感線風演出になってたりするかもしれないのかな。
 なんてこと考えながら、観劇後の余韻に浸りホッピーを飲むのでした。
 それにしてもやはり女性の一番人気は高橋一生なのか。男バージョンだと誰だったのかな?


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田島貴男 「弾き語りツアー 2017」を観る(17.3.19)

「代々歌い継がれてきた音楽の系譜、これからもずっとこの先も」
 年に3回、田島貴男(ORIGINAL LOVE)を観るのが定着しそう。バンド、ひとりソウルShow、そして弾き語り。今回はギター1本の弾き語りなのです。
 CD音源とは異なるアレンジ(当然か)、聴くことのない声。去年と同じ曲でもまた違う味を聴かせてくれる。
 そして弾き語りのお楽しみと言えばカヴァー。今回は急逝された偉大な大先輩の名曲を。一人目はロックの祖とも言われるチャック・ベリー。えっ?亡くなったばかりだぜ。それなのに急遽リストに入れるだなんて。日頃練習してるんだろうなぁ。
 もう一人はかまやつひろし。GSからフォーク、ロックまで、日本のミュージックシーンを牽引してきたミュージシャンのひとり。その柔軟さがゆえに批判されることもあったけど、彼の持つ多様性こそがJ-POPの源だよね。
 ロック、ソウルと呼び名はいろいろあるけれど、気持ちの良い音楽を聴くことができる楽しさ。それに勝るものはないよね。弾き語りの田島貴男は明らかにブルースだし。
 次は夏にバンドスタイルだ。これもまた楽しみで。さて、『接吻』と『やつらの足音のバラード』練習するかな。


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「ラ・ラ・ランド / La La Land」を観る(17.3.15)

「アカデミー作品賞は逃したけど、楽しいなら1番だったんじゃないかな、きっと」
 学生時代、ミュージカルを毛嫌いしてたところがあって。タモリのミュージカル嫌いを真似てたのかな。今はすっかりミュージカル好き。思えば一番最初に好きになった映画は『メリー・ポピンズ』なんだから、なるべくしてなったということか。
 アメリカの古き良き時代のミュージカルをもう一度…というデイミアン・チャゼル監督の熱い想いから創られた『ラ・ラ・ランド / La La Land』。ビッグバンドの演奏、長回しなど、なるほどがいっぱい。原色の衣装が目に鮮やかで、総天然色を謳ってた時代を思い浮かばれ、楽しいなるほどで溢れてる。
 女優を目指しオーデションを受け続けるミアと、自分のジャズバーを持つことを夢見るジャズマンのセブ。ハリウッドで最悪の出会いをしたにもかかわらず、魅かれあう二人。でも、夢と現実のギャップが二人の前に…。
 大渋滞の高速道路での見応えあるダンスから始まり、歌と踊りが二人を彩り続ける。楽しい時、つらい時、二人の間に響く音たちが、アメリカンドリームが、ぼくらに夢を観せてくれる。
 物語もまたぼく好みでさ。夢も技術も持ちあわせていないクセに、自分に置き換えてホロホロして、男の哀愁に酔ってみたりして。表情の豊かな女性に魅かれるのも共感したりして。
 それにしても、『セッション』でジャズの鬼教師を演じたJ・K・シモンズに、今作ではジャズ嫌いを演じさせるなんて。デイミアン・チャゼル監督のおちゃめさにもうるうるきちゃうよね。
 楽しくて素敵なミュージカル映画。一緒に踊りたくなります。踊れないけど。


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越谷オサム「いとみち 三の糸」を読む(17.3.11)

「それぞれの決意、それぞれの旅立ち」
 えっ?三部作完結だって?聞いてないよ。
 青森の内気な女子高生・いとが津軽メイド珈琲店でアルバイト。どじっ娘が得意の三味線を武器に奮闘する物語。少しづつだけど、確実に成長するいとを読んでいるぼくは、きっとお父さん気分なんだろうなぁ。
 高校3年生になったいと。進路、友情、愛情、家族。本州最北端のメイドカフェが舞台であることが、いとの、そして周りの人たちの決意につながっていく。それはそこそこの都会に生まれ育ったぼくにはわからない想いなんだけど、それが原動力になる強さに素直に感心してしまう。ぼくが18の時にはなかった感情であり、決断だから。
 内気ないとだけど、いとが確実に周りを動かしていて、みんなが前向きになっているのがなんとも頼もしい。なにより三味線の師匠でもあるおばあちゃんが…。
 ホントに終わっちゃうの?大学編とか続かないの?まぁ、だらだら続けてクオリティが落ちてく海外ドラマみたいな例もあることだし、スパッと終わるのもキレイな形だけど、もはやお父さん気分だからさ。
 遠い昔の己の未熟さに恥じながら、本の中の女の子に希望を託すこの感じ。いとに、津軽メイド珈琲店に、おばあちゃんに、楽しい毎日が訪れていますように。


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「お嬢さん」を観る(17.3.5)

「和洋韓折衷のカオスとエロスをまとったミステリー、最高です」
 日本が韓国を統治していた時代。日本の貴族の地位を買った上月と、莫大な遺産相続権を持つ血の繋がりのない姪・秀子が暮らす豪邸に、秀子付きの女中としてスッキが仕える。藤原伯爵を名乗る詐欺師に遺産乗っ取りの片棒を担ぐように命じられ送り込まれたスッキ。上月により読み聞かせを仕込まれ、世間知らずに育てられた秀子に巧みに取り入り、秀子と藤原伯爵の仲を取り持つが…。
 ストーリー、展開の面白さとエロが絶妙の混じり合い。西洋に傾倒する日本にかぶれた韓国という、文化芸術のごった煮状態が生み出す滑稽さが、物語になんとも言えぬ深みを与える。これが絶妙なマッチングで、片言のような日本語が病みつきになりそう。
 静かな中にある物語のうねり。もちろん一筋縄でいかない展開に釘づけになる。サラ・ウォーターズの『荊の城』をベースとしているそうで、伏線いっぱいの何ひとつ見逃せない構成。とにかく面白い。それなのに…、いやそれに加え…。
 とにかくエロい。絡みは美しいんだけど、違うところで傑出していて。それこそがこの混沌の極みなんだろうけど、地上波では放送できないだろうなぁ。
 もう、秀子お嬢さんにくびったけになっちまう。目の前にいたら、瞬殺されちゃいそうなキュートさ。そんな女性に言わせるか…ある意味男の妄想の極みです。
 そんなよこしまな横においてでも、ぜひ観て欲しい映画です。エロいけど、面白いですから。


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森見登美彦「夜行」を読む(17.2.7)

「その夜がぼくを悩ませる…。あの日、あの時、あの場所で…。」
 その夜に終わりはあるのだろうか?
 鞍馬はそのはじまりなのか、終わりなのか。
 森見登美彦の『夜行』、いよいよ京都を飛び出して、全国各地の夜を駆け巡る。それは文字通りの夜であったり、人の持つ闇であったり。
 すべては鞍馬の夜から。行方不明になった長谷川さん、10年振りに集まった仲間5人、『夜行』というタイトルの連作銅版画。謎めいた作家が京都にいながらにして、尾道、奥飛騨、津軽…を舞台に描いた夜。仲間5人それぞれが、『夜行』について語りだす。
 夜に魅入られる人がいて、立ち止まれる人もいて。その答えは読み手それぞれの解釈なんだろうなぁ。ぼくには物理的に、精神的に手の届かない場所へ行ってしまった大切な人を想い続けることの象徴が、『夜行』という銅版画に込められているような気がして。だから、ぼくが現実として受け止めていることも、ファンタジーに置き換えられるのかも。現実に留まることも大事なんだけどね。
 『夜行』は森見登美彦にとっての百物語なんだろう、きっと。
 森見登美彦、これで京都を脱出か?と思いきや、脱出できたのかいないのか。銅版画作家こそが森見登美彦なんじゃないかって思ったりして。


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柳家喬太郎独演会「喬太郎北伝説5」を観る(17.2.5)

「古典も新作もスタッフイジリも。喬太郎の手作り独演会は愛と笑いがあふれてる」
 あれ?劇場前に貼ってあったポスターの写真(右写真)、村上ショージじゃないか?いやいや、喬太郎ですよ。新さっぽろで恒例の『北伝説』ですよ。
 5回目となると、新さっぽろイジり
も円熟味を増していて。イジり方がマニアックになっていく。最初の頃はざっくり「札幌じゃない」って感じだったのに、今回は喫煙所を求めてDUO2までの探検記に。それはまるで初めてのお使いのような。地元民じゃなきゃわからないネタなんだ。馬鹿にされながらもうれしいという、このツンデレ感。
 それ以上にイジられたのがスタッフ。パンフの「ご挨拶」で”安倍首相”を”阿部首相”と誤植して、アナウンスで謝罪。それを枕で、ネタで、イジられっぱなし。それもスタッフへの愛なんだよね。
 そんな愛情いっぱいの独演会。これがまた笑いもいっぱい。喬太郎曰く、「新さっぽろのお客さんは優しいから」って、そうなのかな?
 では、本日の噺をちょっとづつ紹介。
『こちら用務員室』 二松亭ちゃん平
 茨城で高校の先生をされているちゃん平。毎回来てくれてありがとうございます。今回は学園生活の盲点を突いた新作落語。昼休みに用務員室に訪れる訪れる生徒たちと用務員。彼らが用務員に貰いに来るものとは?そして、陰でその会話を聞く校長先生。教員ならではのネタの作りにニンマリ。果たして校長先生が用務員室にきた目的とは?
『館林』 喬太郎
 剣術にはまった町人、腕試しをしたくてうずうず。絶好の機会もなかなか思うようにいかず…。今ではあまり演る人がいないという噺。なぜかって?それはあまり…。喬太郎がかつて談志と話したときに談志は「あれは途中がつまらないんだ」と言ったとか。新さっぽろの優しさに包まれて、喬太郎シュールなオチをいかにさばくか。
『白日の約束』 喬太郎
 喬太郎の新作。節分に恵方巻を食べる習慣はいつから?なにか見えざる力に流されてはいないか?バレンタインと言い…って、ひとりコントありの長いマクラから、本編へ。「デキる女」の登場。喬太郎演じる「デキる女」って、すごく「いるいる」って思っちゃう。いやいや、ホントはそんな女滅多にいないんだけど、デキる女を具現化したらこうなるだろうなってのをピンポイントにおさえてるんだよね。で、バレンタインデーのお返しに何をする?3・14ってホワイトデーだけじゃないんだ。目から鱗の噺です。
『夢の酒』 喬太郎
 こちらは古典の名作です。若旦那の夢に出てきたご新造さんに嫉妬した女房が、大旦那に夢でそのご新造さんにお小言を言ってほしいと無茶なお願い。とりあえず寝入った大旦那が見た夢とは?喬太郎の演じる女性はホント艶があるというかなんというか。楽しくてたまらんです。




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万城目学「悟浄出立」を読む(17.1.30)

「万城目の愛がひしひしと伝わる短編集です。」
 万城目学に対するぼくの印象は…軽快なテンポで面白いを紡ぎだす作家。でも、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』を読んでから、ぼくの中での万城目学のイメージが変わってきていて。こんな愛情に満ちた物語もかけるんだって。
 そして今回の『悟浄出立』。万城目学が夢中になった物語の登場人物、それもどちらかといえば端役や、登場しない人の目線で描かれる物語。本来の話を逸脱することはなく、深みを与える。なにより、ホントにそれぞれの元ネタを愛してるんだなってのがビシバシ伝わってきて。どのキャラもすごくカッコよく、立ちまくっている。
 『西遊記』の沙悟浄から見た猪八戒では、三枚目が定着している八戒の知られざるハードな一面が描かれ、『三国志』の趙雲の気持ちを張飛と孔明との比較で描いたり。男しかいないイメージの『史記』の一説・項羽と劉邦。日本では司馬遼太郎の『項羽と劉邦』が知られているけど(ぼくもそのくち)、項羽最期の時とその哀愁をを虞姫目線で描き、こちらも『史記』に出てくる荊軻の志を、同じ読み名を持つ官吏に語らせる。極めつけは司馬遷。おそらくすべての物語の礎となった男が、屈辱を味わったのちに『史記』を残すまでを、娘の目線で描く。書くことをやめてはいけない…まるで自分に言い聞かせるような愛情が込められている。
 こんなのも書けるじゃない…すごいよ万城目は。
 ちょっと脱線。ぼくならどの物語の誰を切り取るかな…。そういえば数年前、花形満目線の『巨人の星』があったけど。
・マンモスの愛 〜『あしたのジョー』より〜
 マンモス西と紀子のお話。ぼくが一番好きなジョーと紀子の公演のシーン。「矢吹君は寂しくないの?」から始まる物語なんてどうでしょう?
・ジムシーとうまそうと3匹の子豚 〜『未来少年コナン』より〜
 ラナにしか目がいかないコナンがいないとき、ジムシーはうまそうを育てるのに夢中なのです。
・琉球の風、錠 〜『必殺仕置人』〜
 棺桶の錠は琉球から来たそうな。彼の渡航記を。
 あとは『探偵物語』の服部刑事やかほり、『俺たちは天使だ』のナビなんかいんじゃない?すみません、テレビっ子で。


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「人魚姫」を観る(17.1.28)

「くだらない…が涙に変わる。若い命が 真赤に燃えて〜♪」
 なぜか観てしまうチャウ・シンチー監督作品。中国を卑下するかのような笑いから入るのはいつものパターン。途中お決まりのリバースを挟んで、最後はなぜか胸を打たれているんだよね。ホント、チャウ・シンチーの術中にきれいにハマっているんだけど、それが心地よいんだよね。今回もまた、ハマっちまいましたって素直に頭を垂れることができる。
 成り上がりの若き実業家・リウが手にしたリゾート開発の権利。あくどい手法でイルカの住めない環境にした海は、人魚族の住処でもあった。事態を憂いた人魚族は、リウを暗殺すべく人魚・シャンシャンを送り込むのだが…。
 ホントにおバカ。今流行りのミュージカル仕立てとか、チャウ・シンチー色に染められてて笑うしかない。敵対する二人が魅かれあうようになる様は恋愛映画をおちょくってるとしか思えない。でも、それがつしかしっくりきている。まさにチャウ・シンチーマジックなのだ。 そして気がついたら泣けてるのもチャウ・シンチーの…。
 それにしても驚いたのが、冒頭近くのリウの屋敷のシーン。人間ロケット(みたいな装置)で退室しようとした男のシーンに聴き覚えのある音楽が。あれ?イントロで終わったけど、これって続きは「若い命が真っ赤に燃えて?」。あれ…これなんの歌だっけ…アニメの主題歌だよね…。そればかりが気になって、映画館を出たら真っ先にググらなきゃって思ってたら、中国語と英語のエンドロールにきちんとカタカナ表示されていた。『ゲッター・ロボ』って。まさかゲッター・ロボのテーマがチャウ・シンチーの好みだったなんて。日本のアニメが好きなのは知ってたけど、永井豪アニメまで。なんとなくうれしい。
 面白かったというのに、札幌での上映はわずか1週間。いい作品なんだけどね、もったいない。みんな急げっ!


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平成開進亭「枝光・白鳥二人会」を観る(17.1.24)

「新作の怪鳥が北の漁場を蹴散らして。」
 三遊亭白鳥の落語が2,000円で聞ける。こんなおいしい話はない。札幌在住の上方落語家・桂枝光が毎月ゲストを招いて開くさっぽろ市民寄席平成開進亭。これまでも素晴らしい落語家を読んでいて、白鳥も来てると思うんだけど、ぼくが観に行くのはこれが初めて。平日開催だからなかなか都合が合わなくって。なんで、白鳥の噺は何度も聞いてるけど、枝光は初めて。上方落語もあまり聞いたことなかったし。
 なんだろう、白鳥ほど危なっかしい落語家はいないってこれまで思ってたけど、今日の白鳥は貫録たっぷり。会場は古典好きっぽい高齢の方が大半だったのに、おそらく新作、中でもとりわけとんがってる白鳥の噺なんて、アウェイ中のアウェイだと思ってたのに、うけてたなぁ。
 かたや枝光さん。上方落語の古典にギャグを散りばめながら笑いを誘う。終始ハイテンションなのが芸風なんだろう。でも笑いを強制するのは辛かった。ギャグに気づかず笑わないのではなく、気づいてるけど笑えないんだよ。白鳥にいじられてたけど。あと、身内ネタ(三枝、文珍、枝雀など)が多かったけど…。そこはぼくにまだ慣れが足りないのかな?
 ということで、本日の噺について一言づつ。
『看板の一』 枝光
 時うどん(江戸でいう時そば)と同じ構造の噺。賭場で見た鮮やかな手練れの真似をしたらとんでもないことに。
『山奥寿司』 白鳥
 道なき道を進んでやっとたどり着いた山奥寿司。そこでは山で採れる食材をすしネタに見立てて提供するという。山の鯨がイノシシ、木のクラゲが木耳のように。さて、そこで提供されるすしネタとは?
『雁風呂』 枝光
 光圀公が立ち寄った掛川の宿で、肥溜め隠しに使われた屏風に描かれた松の枝に雁の絵。その由来を町人に聞いたことが縁となる噺。
『座席なき戦い』 白鳥
 5番アイアン、マグロの頭、山手線。白鳥がアメ横で買い物をして帰宅した時のエピソードから作り上げた噺。1本1,500円、おひとりさま3本までの5番アイアンに使い道はあるのか?そんな素朴な疑問を自己完結。神田から新宿まで山手線で寝て帰ろうと乗り込んだサラリーマンの悲喜劇。上野から乗ったおばさん二人との壮絶な陣取り合戦が繰り広げられる。もちろん実際のエピソードとはまるで異なるものになってます。
『崇徳院』 枝光
 ひと目あったその日から、恋の花咲くこともある…。枝光が若い頃に出演していた『プロポーズ大作戦』を地で行くような噺。茶屋で会った女性が忘れられず、恋煩いを患った若旦那のために、熊五郎が奔走する噺。1日に3本かける姿勢はすごいけど、最後は飽きちゃった…。



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住野よる「また、同じ夢を見ていた」を読む(17.1.16)

「しあわせはあるいてこない・・・わかっちゃいるけどすすめない・・・」
 年末に上京で一緒に飲んだ小山隊長が興奮気味にこの本を差し出してくれた。
「2冊続けてすごいって思える作家はそうそういないよ。しかも全然違うテーマの作品で。住野よる、すごいよ」
 昨年はあまり本を読めなかった。でも、小山隊長に薦められた『君の脾臓をたべたい』ではぼくの心に決して枯れることのない想いが芽生いた。 それだけに、小山隊長が絶賛する2作目が読みたくて、読みたくて。
 小山隊長とぼくは波長が合うのだ。やっぱり2作目も心に響きまくった。幸せってなんだろうか。ぼくは同じ夢を見ることはあるだろうか。
 読書が好きで賢くて、学校やクラスメイトを煩わしく思ってる女の子。休み時間は図書室で過し、毎日一人で下校する。帰宅しても両親は共働きのため、母と食べる夕食までの時間は小さい悪女と一緒に年上のお友達のところを回る。お友達は面倒くさそうだったり、やさしかったり、温かかったり、まちまちではあるけれど彼女の話しを聞いてくれる。ひとみ先生から出された宿題を一緒に考えてくれ、ヒントを与えてくれる。でも、お友達は・・・。
 きっとぼくは彼女に煩わしく思われる馬鹿な男子だろう。あとさき考えず、目先の笑い欲しさに他人を傷つけるような。40年が過ぎて、猛烈に後悔している。自分の思慮のなさに。だから、当時の自分を知る人には会いたくないと思っている。もしぼくにお友達がいたら、ぼくは少しは変われたのかな?胸を張って歩ける大人になっていたのかな?
 この作品の読み方、解釈って、読者によってかなり異なると思う。もしかしたら、読み手を選ぶ作品なのかもしれない。でも、異なった解釈のすべてが、読者それぞれの歩んだ道を反映しているんじゃないかなって思う。
 小山隊長とこの作品について早く語り合おう。この作品を読んだ方たちと語り合いたい。読書好きで学校に友達がいない(いなかった)女の子にこの作品を紹介してあげたい。しあわせはあるいてこない、だからあるいてゆくんだよって、自分から進まなきゃダメなんだって教えてあげたい。50目前でもうじうじしているぼくにも・・・。


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ロマンポルノ・リブート・プロジェクト「ジムノペディに乱れる」を観る(17.1.14)

「月曜日は撮影揉めて、火曜日に映画がポシャる、シュラシュラシュラ修羅場♪」
 日活ロマンポルノが再起動。懐かしい響き。ぼくら世代はみなロマンポルノを観に映画館へ行くことで、オトナの階段上った気になってたんだよね。ちなみにぼくは浪人時代の『ラブレター』。相米慎二監督が好きで、彼がロマンポルノを撮ったっていうから…というのは口実のひとつにすぎないんだけど。
 今回のプロジェクト、5人の監督がメガホンをとってるんだけど、今回は『GO』『世界の中心で愛を叫ぶ』の行定勲監督作品。
 映画を撮れなくなった映画監督の自堕落な生活。負うものはいろいろあれど、ものすごいクズな監督のもとに、なぜか女が集まってくる。彼となんとかしたくて、彼をなんとかしたくて。その様はうらやましいの一言に尽きるんだけど、そこまでのクズにぼくはなれない。クズだから女が寄ってくるわけじゃないのはわかってるんだけど、才能に魅せられているんだろうけど。
 アダルトビデオがそれほど普及してなかった時代のエロの象徴。でも、ただエロいだけでない叙情や哀愁が漂ってるんだよね。地上波では女性の乳首を出すことすらNGになってしまった昨今、性のある物語の表現の幅が狭くなってるなぁ…って。10時跨ぎのチャンネル引き留め策だったとしても、火サスや土曜ワイドのペロリが懐かしく思えるこの頃、またロマンポルノが観られるのはうれしい限り。AVは抜くためにある商品だから。性の物語がないことが、現代の特異な性犯罪の増加にもつながっていると思うんだよ…なんてね。
 板尾創路の怪演、ケータイ大喜利が見られなくなっちまうぜ。


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「この世界の片隅に」を観る(17.1.9)

「日常の中のいとおしさを大切にしたい。そんな素朴な映画です。」
 72年前の太平洋戦争、語り継がなきゃいけないことだとわかっているし、平和への祈りはもちろん持っている。でも、どうも避けてしまうんだよね、太平洋戦争を含めた戦争を題材とした作品から。今では朝の連ドラで通り過ぎるだけ。でも、なぜかこの作品は観ておかねばって思った。のんが声優をしてるから?いやいや、戦時下でも特別じゃなく、普通を描いた作品だって聞いたから。
 広島に生まれたちょっとぼーっとした女の子・すずが、呉に嫁ぎ戦争を迎える。戦争はすずから日常とたくさんの大切なものを奪うけど、それでも時は流れ、日常は続いていく。もちろんその日常はぼくらの日常とはかけ離れている。でも、時代に翻弄され、巻き込まれていく日常こそ、ぼくの両親を含め多くの人の体験なのだろうから。
 ぼーっとした女の子がたどった数年。淡々と進む日常と、迫りくる非日常。楽しいこと、苦しいこと、つらいこと。ぼーっとしてはいられないあれやこれや。いま自分が生きている時代への感謝。平和への誓い。
 仰々しい戦闘や愛国精神がなくても、国と平和を想う気持ちを伝えることはできる。すずの日常はまだ恵まれている方なのかもしれないけど、より貧しい、より悲惨を伝えることが美徳じゃないんだし。
 連休最終日のためもあって、映画館は満席。前日に席確保しておいてよかった。番宣ほとんどなし、主役は干されてると言われる”のん”。いまとなってはすずはのん以外考えられないけど。それでもこの反響。キネ旬2016では1位に輝いたとか。朝から晩まででんぱジャックしてる映画出演者たちはどう思うのかな…。
 観ていない人はぜひ。


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「志の輔らくご in NIPPON」を観る(17.1.7)

「人気の理由は明確でした。作って話して、最高です。」
 一度ナマで聞きたかったんだよね、志の輔の落語。毎年札幌には来てくれてるけど、なかなか都合が合わなくて。もちろんチケットもなかなか取れなくて。正月恒例のPARCO劇場公演が建て替えとなったため、全国行脚に変わったとのことで、正月一発目の落語は志の輔さんから。
 札幌市民ホールが満席。チケットももちろん即日完売。札幌でそこまで動員できる落語家って、立川志の輔ぐらいだよね。いかにも落語ツウのおっさんから、若い女性まで。志の輔新参者ですが、よろしくお願いします。
 すごく巧みなお芝居型落語。とにかく登場人物の演じ分けが素晴らしい。情景は浮かぶし、志の輔のおっさん顔も売れっ子花魁に見えてくる。なにより古典と新作のどちらとも聞かせるその才に惚れてしまいそうになる。新作落語が舞台化、映画化されるくらいだもんなぁ。憧れちゃう。
 簡単に本日の演目をおさらい。
『質屋暦』(新作)
 舞台は明治5年。暦が太陰・太陽暦から太陽暦に変わる前日のお噺。時代設定のためか、これが新作には思えない趣で、すごかった。古典的な繰返しで構成されているんだけど、登場人物の表情の変化(あくまで想像する)が面白さを生み出すんだよね。
『モモリン』(新作)
 ゆるキャラを題材にした噺。ゆるキャラが市町村のイメージを決めるほど重要になった時代になじめない市長の奮闘記。阿呆の噺なんだけど、阿呆が阿呆を認識せずまじめに取り組むけど、にじみ出る阿呆が面白いんだよね。とにかく動きがある(まさにそのままだけど)アグレッシブな噺。モモリンフラッシュは必見です(もちろん想像で)。
『紺屋高尾』(古典)
 志の輔の師・談志も高座にかけていた名作。初めての吉原で見た花魁道中の高尾に一目惚れした職人が、3年かけて金を貯め、会いに行く噺。これってモテない男子が憧れるサクセスストーリーでもあるよね。おろおろ感を自分に投影して。いつか自分にも高尾太夫が…って。すすきのに行こうかな。


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「土竜の唄 香港狂騒曲」を観る(17.1.6)

「バイクに乗る際は必ずヘルメットをかぶりましょう」
 まさかの続編。前作同様、モラルも常識もお構いなしの暴走爆笑Movieだ。クドカンの脚本、三池監督、面白いのはわかってるけど、これほどまでに自由奔放で突き抜けてる作品ってそうそうないじゃない。しかもお金もたっぷりかけて。そして豪華俳優陣。正直こんなおバカ映画に出ていいのかよって思っちゃうくらいの顔揃え。これが面白くないわけがない。
 前作で潜入捜査員(モグラ)の身でありながらもやくざと杯を交わし、全国指名手配犯となったレイジ。パピヨン、イヌケンとともに関西から戻ってきたら、大出世。大親分のボディーガードに。そこで大親分の娘に翻弄され、香港で大暴れ。
 男の子としては、あのリコーダーがまるでギルの笛のようで、そりゃ身体の一部が硬直するってもんだ。我慢できないよね。とくに本田翼の太ももや、チーリンちゃんの身を引くあたり。いやいや、新年早々ただのエロオヤジだわ。
 個人的にうれしかったのは、堤真一と古田新太のがっぷり四つのぶつかり合い。同年代の個性派俳優同志。舞台でもがっつり共演している二人が、CGを駆使してアホなガチンコをくり広げる。観てるだけで楽しくてしょうがない。生田斗真の変顔をもはるかに凌ぐ面白さ。クドカン脚本だからできた演出だよね。
 きっとお子様にはあまり見せられない映画なんだろうけど、正月気分がまだ抜けないおっさんには最高の映画でした。


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「湯を沸かすほどの熱い愛」を観る(17.1.3)

「正面に向き合ってぶつかること、それが全てです。」
 新年1本目がこの映画だという、偶然を必然にしたいって心から思える映画だった。ぼくは親になったことも、余命を言い渡されたこともないけど、自分ならってすごく考えて、双葉にはなれなくて、おろおろしている。でも、彼女の心の強さは余命ありきじゃなく、もっと前から実践されてきたものであり、その懐の深さにただただ感服するばかりで。
 失踪した亭主、イジメにあう娘、明らかに押しつけられた感の少女。すべてを大きな愛で、正面から受けとめ、受け入れる。これほど大きく熱い愛はないのでは?
 ホントにやられた。ミニシアターの一番前ど真ん中で、溢れくる涙を止めることも拭うこともできなかった。とにもかくにもすごいのだ。物語のすべてが、些細に思えることすべてが繋がっていく。そのすべてに愛情が詰まっている。すごいのだ。この脚本、その演出、その演技。どれをとってもすごいとしか言いようがない。
 先立たれるのはイヤだけど、こんな女性に出会ってみたい。こんな女性に愛されてみたい。すごくそう感じた。性別こそ違えど、こんな人間に自分もなりたいと思った。三つ子の魂百まで…っていうから、もう無理なんだけど。
 新年早々、心揺さぶられまくりなのだ。ぜひ多くの人に観てもらいたい映画だ。


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石田衣良「憎悪のパレード 池袋ウエストゲートパーク11」を読む(17.1.1)

「しばらく会わないやつは、相手が少々悪者でも懐かしくなるものだ…確かに」
 久しぶりのIWGP。マコトが、タカシが池袋に帰ってきた。正確には彼らはずっと池袋にいたわけなので、ぼくら読み手が池袋に帰ってきたというべきか。
 文化も犯罪も日々更新されていく池袋に、それまでと変わらないスタンスであり続けるマコト。マコトという不動点があるからこそ、ぼくらは池袋を通して現代を知ることができ、自分のスタンスを保つことができる。流行や思想に踊らされることなく。
 今回のキーワードは脱法ハーブ、ギャンブルドランカー、ノマドワーカーと因縁の対決、そしてヘイトスピーチ。もちろんどれもが一筋縄にはいかないけどね。
 とにかく、あの軽快な文章を読むことができるがうれしくて。キング誕生の秘話を読んだ後のキングの印象がより深くなったこと、戸籍上の妹・クーの再登場、うれしいことづくしかも。できることなら、サルの活躍をもっと見たかったんだけど。それは次作のお楽しみにとっておきましょうか。あと、マコトとタカシにできたはずの彼女たちとの物語も…。
 イギリスがEUから脱退し、トランプ氏がアメリカ大統領になる。世界の各地で国粋主義の考えが幅を利かしだし、日本でもその動きが確実に出てきている。そのくせ、ジョン・レノンや忌野清志郎、甲本ヒロト、真島昌利を批判する声はあまり聞かない。叩きやすいことだけ、叩きやすい人だけを叩くのが、本当の正義なのかと考えてしまう。生まれたところや皮膚や目の色で、いったいこのぼくのなにが解るというのだろう…。
 IWGPシリーズをずっと読み続けていたい。でも、新たな犯罪や争いはもう出てきて欲しくない。相反する要求なのかもしれない。いつの日か、IWGPがサザエさん化してしまうのも観たくないしなぁ…1冊くらいならありなのかも。


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