このページではartな戯れ言を集めて掲載しています。
「イッセー尾形のとまらない生活2006in真冬の札幌」を観る(06.12.23) |
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タイトルが指し示すが如く、雪が降り続いたこの日の札幌。外の寒さとはうらはらに、大いなる笑いで会場かでる2・7は包まれた。イッセー尾形の作り出す世界観に、演じるキャラクターに、笑いがつきることはなかった。毎度毎度楽しませてもらっているので、今更書くことなんてありゃしない。笑いはつきないけれど、それを表現するぼくのボキャブラリーがつきてしまったのだ。とにもかくにも面白い。とにかく観てくれよとしか言いようがない。それは情報の発信者として失格なのかもしれないけれど、毎回同じこと書くわけにもいかないし。なんてことももう書いたかもしれないし。 観ているこっちが言葉につきているというのに、イッセーの世界は無尽に広がっていくし、キャラクターは増殖し続けている。すごいとしか言いようがない。こんなとこで許してください。 では、今回の演目をご紹介。タイトルはぼくが適当につけてます。 『スピッツ女』 カラオケボックス前に立つ、謎の女。女子高生には人気があるらしいが、ひたすら怪しい。可愛く作った声と鉄郎のものまね。彼女はいったいなにモノ?謎すぎて笑える一作。 『ベテラン守衛さん』 某議事堂の裏門の守衛さんの下に、新人シルバー人材が集まった。新人に威厳を見せるべく、四文字熟語を駆使して心得を語るベテラン守衛の奮闘記。その頼りなさげな仕草と寸足らずのズボンに注目。 『面接』 三軒茶屋のホテルで就職面接を受ける男子高生。面接会場での態度と控え室での態度の様変わりが、いかにも今どきの若者で。特に歩き方の変化。まさに今どきの男子高生そのもので、着眼の鋭さと表現力の豊かさに脱帽の傑作。 『お掃除オバちゃん』 ビルの清掃婦がゴミ出しをしているところに、優勝パレードと重要書類をなくした社員が同時にやって来たら・・・。オバちゃんのオバちゃんらしさ全開で、決して流されることのない意思に注目。 『This is Japanese ヘリコプター』 ヘリコプターが陸海空いろんなところへ救助に出動する・・・。それは引きこもりの一人遊びなのかもしれない、覗いてはいけない禁断の遊びなのかもしれない・・・。とてもシュールな笑いの一作。 『フクロウ眼鏡店』 とある町の眼鏡屋さんでの出来事。フクロウがたくさん飾られた眼鏡屋で、世にも恐ろしい出来事が・・・。サイコホラーならぬ、笑いホラーな一作。 『歯医者の待合室』 あの名シリーズ・大家族のAnother Story。大家族を第三者の視点で演じるだなんて・・・。もとネタがわからなくても大いに笑え、知っていたらさらにたまらなくなるような。イッセー・ワールドの新しい楽しみ方とでもいいましょうか。使ってるカツラが一緒なのが隠れたミソかな。 『哲学してますか?』 多くの芸人さんが悔しがるんだろうなぁ。イッセーが演じる芸人を観て、「そのネタくれよ」と思う人がたくさんいるに違いない。もっと発展させて継続させるから・・・と。でも、イッセーの演じるのは芸人の一瞬だけであり、どんなに面白くても発展性があっても、その後を見られるのはほんのわずか。今回のウクレレで哲学を語る芸人もすごく面白いし、彼のネタや彼の歌をもっと聞いていたいけど、それはかなわぬこと。実に惜しいけど、これがイッセーだもんね。 |
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いしいしんじ「プラネタリウムのふたご」を読む(06.12.12) |
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オトナのための童話作家とでも呼ぼうか。いしいしんじの書く物語に詰まってる秘めたる喜怒哀楽は、もどかしさもいっぱいながら、多くの清涼感をぼくに与えてくれる。とても優しい気持ちになれる。 もやが濃くて星空の見えない町のプラネタリウムで拾われたふたごが、星にまつわる神話に囲まれ、気のいい町のみんなに囲まれ成長し、一人は町に残り星の語り部に、一人は町を出て手品師に。その成長を優しい言葉で綴った物語なのだ。 安穏とした町の情景。そこで暮らす朗らかな毎日。そこには現代社会が忘れてしまった懐かしさと郷愁が漂っている。自然と星空に敬意を表する町の人々は滑稽にも見えるけど、ぼくらが手にすることのできない幸せをいっぱい持っているみたい。 対照的な都会の人々。でも、手品師の仕掛ける魔法により広がる笑顔。物語なんだけど、その世界がどこかに存在することを願わずにはいられなくなるような。 楽しいこともつらいことも星と共にあり続け、ささやかなトリックにより彩られる。誰もが星に見守られるかのように。 そんな優しい物語、夜の長いこの季節にいかがでしょうか。 |
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「虹の女神 Rainbow Song」を観る(06.11.12) |
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死を前提とした物語は好きでない。以前にも何度か書いたと思うけど。でも観てしまう。このところの映画(特に邦画)のトレンドだからか、それとも死とその後の喪失感がもたらす涙に魅かれるのか、日常では経験できない特別感がそこにあるからか。死を前にした愛情に純粋さが詰まっているからか。 『虹の女神 Rainbow Song』はそんなトレンドとは少し趣を変えた作品だ。死はあまりにも唐突であり、死を前提とした愛情は欠片もない。ただ、失ってから気付く愛情がそこには溢れている。 一番近くにいるのに気付かない関係。その愛が報われることはないのだけれど、一番楽しくて素敵な時間は失ってから気付くんだけど。なにげない一瞬一瞬がとても光っていた、そんな時間をいつでも心に映し出すことができたなら・・・。この映画にはそんな一瞬一瞬が収められていて、ぼくならその都度あおいを抱きしめるのに・・・って思ってしまう。でもそれはもう抱きしめることができない存在だからなんだよね。 フィルムの質感、アングルの巧さ、映像の美しさがあおいの輝きを何倍にも増幅させる。悔しいほどに。 上野樹里という女優の上手さと凄さと美しさが溢れる素敵な作品だ。長澤まさみ、沢尻エリカ、綾瀬はるか、石原さとみら若手女優の中では群を抜いてるね。 心の中で大事にしたい映画だった。 |
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永瀬隼介「ポリスマン」を読む(06.11.5) |
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一番強いのは誰か・・・。この問いこそが、多くの格闘かを生み、今の格闘ブームを支えているのだろう。ぼくもその流れに巻き込まれているうちの一人である。あくまで見る方の。 本書『ポリスマン』はプロレス界の番人と呼ばれる男の物語である。この男、とても強いのだ。強いからこそ番人が務まるわけだが、プロレス界では地味な黒子に徹しているのだ。そんな男が総合格闘技との闘いに出ることになり、その一方で過去の事件に再び巻き込まれていく・・・。 小説としては格闘技だけに留まることなく、マフィアや軍事にまで話の広がりを見せる大きな物語となっている。読み飛ばしたくなる箇所もあるのだが(軍事情勢のくだり・・・飛ばしても問題なし)、大きく広げた風呂敷をきっちり畳んだ快作と言ってもいいかな。 でも、違和感を感じてたまらない。主人公が闘う理由が『一番強いのは誰か』という疑問からではなく、ましてや『強くなりたい』と一心に思っているわけでもないからだ。確かにそんな時期もあり、その想いが崩れたところから物語は始まっているのだが、そこが欠けると白々しく思えちゃって。嘘でもいいからそう思いながら闘って欲しいじゃない。 なので、物語としては面白かったけど、格闘技を愛するものの気持ちとしてはしこりの残る作品だったかな。クールにハードボイルドを楽しみたい方には、斬新な小説のひとつだと思うよ。 |
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「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」を観る(06.10.30) |
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とてもとても続きが観たかった。『日本シリーズ』を観て、不死身のぶっさんに狂喜乱舞して。次こそぶっさんが死ぬときなんだと心ではわかっていながらも、それがどんなにつらいことかわかっていながらも、続きが観たかった。荒唐無稽な設定やSTORYに笑いたくもあり、キャッツの面々の友情に浸りたくもあり。 3年ぶりに帰ってきた彼らは、相変わらずありえない設定と信じられないテンションで突っ走ってくれた。面白くて、可笑しくて。そしてとびきり切なくて。 居心地のいい時間が長くは続かないこと、それぞれが前に進まなくちゃいけないこと。キャッツたちの止まった時間は振り返ることはできても、引き返すことは決してできないのだ。居心地のいい時間のフィナーレに向き合い、『ばいばい』と言うことがどれだけ大切なのか、キャッツたちが教えてくれた。 ぼくはその時代時代の仲間たちに『ばいばい』を言えただろうか。その時々のぼく自身に『ばいばい』を言ってきただろうか。四十を前にしてまだまだ子供のぼくがいる。キャッツたちに遠く及ばないぼくがいる。 TVに始まり映画2本に至った『死にそうで死なない物語』は、ぼくの心にものすごく響いた最高の作品となった。これはもうバイブルなのだ。当分は彼らの世界に浸っていたい気分なのだ。『ばいばい』と言う勇気を胸に秘めて。 ぼく、ミー子(平岩紙)ファンなんだけど・・・、うっちーどうなのよっ! |
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片山恭一「世界の中心で、愛をさけぶ」を読む(06.10.23) |
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そうか・・・。やっと文庫本となったので、『世界の中心で、愛をさけぶ』を読んだ。多くの人が映画公開時に「小説も読んだら」と薦めてくれてから早2年。映画を観たときほどの感動はなかったかな。やっぱり先入観というか、既知というか。アキは長澤まさみしか思い浮かばないし、朔ちゃんは森山未來くんだし。映画がいいとこどりしたからか、はたまたぼくに恋愛小説は向いていないのか。 朔ちゃんの痛みや喪失感がリアルタイムだけに、読んでいるこっちもとても痛々しく感じてしまって。読んでいてつらさが増すんだよね。ついつい、「もういいよ、わかったから」と言いたくなってしまう。結末を知っているだけに(誰でもわかるように書いてもいるけど)、なおさらイタいんだよね。 でも、じいちゃんや父さんのことは掘り下げて書かれていて、それが物語のアクセントにもなっていて、よかったかな。 もしかして、映画を観てから2年でぼくの心はますます汚れちまったのかな。 第五章はほんとすがすがしい風が行間から吹いてくるような、とてもよい心地で読めた。解説で行定勲監督も書いていたけど、この五章が彼に与えた影響と、その結果としての映画化がとてもよく理解できた。 小説と映画って、ベクトルが逆なんだよね。アキと朔太郎のエピソードに対する。 |
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ヨーロッパ企画「ブルーバーズ・ブリーダーズ」を観る(06.10.22) |
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昨年の『サマータイムマシン・ブルース』に続き、今年も札幌にヨーロッパ企画が来てくれました。感謝。 狭い舞台に劇団員がギッシリ詰り、右へ左への群像劇・・・いやいや、群騒劇。ハイスピード・ハイテンションでボケが連発し、上映予定70分があっという間に過ぎ去っていく。面白い。 広告代理店社員とエンジニアによる青い鳥捕獲大作戦。面白いんだけど、あまりの騒々しさに疲れてしまった。あんなに勝って気ままでまとまりのない社員ばかりだったら、ぼくはキレて暴れるだろう。そこはフィクションだから・・・と思うべきなんだろうけど、あまりにもの展開だったので。しかもそれだけで終わってしまったので、残念なのだ。面白かっただけに一本調子のままなのが、もったいなく思えた。ファンタジーの扉を開いて欲しかった。 関西系の劇団だけに、今回の公演は吉本新喜劇だったのかな。 でも、まとまりのない演技で劇団のまとまり、チームワークのよさが見られるというのも、なんとも面白い現象かな。 これもまたヨーロッパ企画の一面なんだろう。次はどんな一面を見せてくれるのか、来年もぜひ来道公演をお願いします。 |
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「X-MEN ファイナル ディシジョン」を観る(06.10.15) |
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『X-MEN』もこれで完結だそうで。かなり含みを持たせているけど、これだけド派手にやってしまったら、次は宇宙に出るしかないもんなぁ。 なんだか結論から書いてしまったような気もするけれど、正直ぼくはしっくりきていない。『X-MEN』シリーズに期待していたものが描ききれていなかったからだ。回を重ねるごとに大掛かりな戦闘に発展していき、人類vsミュータントとかミュータントvsミュータントとかが前面に出てしまい、X-MEN一人一人の描写がおろそかになってしまって。 そもそもローガンの自分探しの旅が最初だったはずでしょう?ぼくもローガンの過去を知りたかったし、それこそがシリーズの軸かと思ってたんだけど、結局何もわからずじまい。『個々の主張よりも世界の調和』といったプロフェッサーの教えが作風にまで行き渡ってしまったか?ローガンはすっかり飼い慣らされてしまったのか? ローガンの過去を、ジーンやストームの本当の活躍を知るためには、原作を読むしかないみたいだ。残念。 ハル・ベリー、いい女だよね。少なくともジーン役のファムケ・ヤンセンよりも。 |
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室積光「ドスコイ警備保障」を読む(06.10.13) |
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この作者、前作『都立水商!』といい、今作といい、ありそでないよな、あったらよさそな設定をこさえてくるよなぁ。その着眼点がすごいよね。そのなかでありえないけどあったらいいなと思えるような、どこかで聞いたことのあるエピソードを詰め込んで、ほんわかとした作品を作り上げている。 ところどころ、ピンチもあったりするけれど、『胸に抱え込んだ迷いが、プラスの力に変わるように』、そんな前向きの物語である。予定調和と言っても過言ではないけど、それが心地良く感じられる物語に仕上がっている。一服の清涼飲料水のような、気持ちの落ち着く秀作。 思わずもらい泣きしそうになるので、お気をつけ下さい。 |
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恩田陸「夜のピクニック」を読む(06.9.29) |
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昨夜、2時に目が覚めた。なにの夢を観ていたかは定かではないが、唐突に「続きが読みたい」と思って。ぼくは自宅で小説を読まない主義なので、昨日は『なか卯』で読んだところで読書を中断していた。それがまさに音楽で言うなら大サビへの導入部ってとこ。でも、夜中から読み始めたら確実に寝不足で、今日の仕事に差し支えると思い寝たんだけど、それから7時までの間に4回起きてしまった。「続きが読みたい」と。結局寝不足さ。翌日が遠足なら眠れないのはまだわかるけど、本が読みたくて眠れないって、どうよ? 過去にそこまで続きが読みたいと思った小説は、そうそうなかったと思う。皆無ではないけれど、年に一冊あるかないか・・・いや、もっとレアだと思う。そのすごくレアな作品が『夜のピクニック』だった。本屋大賞を受賞し、単行本が本屋に平積されてた頃から、「早く文庫化しておくれ」と切に願った待望の一冊。でも、それだけじゃ夜も眠れなくはならないだろう。 とはいえ、眠れなくなるようなスリリングな展開がある作品でもない。高校生が夜通し歩くだけの、歩きながらあれこれ考えること、それぞれの想いを綴っただけの・・・。語り手の二人、貴子と融の秘められた関係、それぞれが信頼する友人達とのふれあい、ぼくにも昔あったような高校時代のあれやこれや。夜がそうさせるのか、それとも極限まで疲れた身体と頭がそうさせるのか、想いが、感情が鎧をまとうことなく素直にストレートに表現される瞬間。眩しいけれど目をそらすことができない。いつまでも見つめていたい。夜も眠れなくなるほどに。 とてもとても素敵な一冊だった。ぼくのバイブルになるくらいに。またすぐにでも読み直したいくらいに。でも、感動を再びはもうちょっと後にとっておこうかな。 えっ?明日から映画が公開だって? |
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あさのあつこ「The MANZAI3」を読む(06.9.21) |
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函館出張の列車乗車時間が長いおかげで、あさのあつこの『The MANZAI 3』があっという間に読めてしまった。行間が広く薄い文庫本というせいもあるけれど、それ以上に早く読みたくなるほど面白かった。 内気な歩と積極的な貴史が夏祭りで漫才をすべく奮闘する物語。歩むにとっては奮闘ではなく葛藤する日々なんだけど、その葛藤の中で歩が少しづつオトナになっていくのが今回のミソかな。 読んでいて眩しいんだよね。彼らの成長する姿が。今回は夏休みの短い期間について書かれているんだけど、その数日だけで彼らは着実に成長している。ぼくにそんな眩しい日々があっただろうか・・・。きっと彼らも眩しすぎるほど自分たちが成長していることには気付いていないんだろうなぁ。それがまた眩しいのか。 四十路へのカウントダウンが始まったぼくには、彼らが持つ無限の可能性と時間がとてもうらやましいのです。早く続きが読みたいよぉ。 |
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石田衣良「アキハバラ@DEEP」を読む(06.9.18) |
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ドラマ化され、映画も絶賛公開中だけど、先に小説読んじゃいました。なんと言っても石田衣良作品だし、石田作品で今夏ドラマ化された『下北サンデーズ』の例もあることだし。知らない作家の作品なら映画が先なんだけど、石田作品はさぁ。 この人の感覚はなんだろうか・・・。『アキハバラ@DEEP』の連載が別冊文藝春秋でスタートしたのが2002年。4年前にこの物語の核となるCPの構想を持っていたなんて・・・。速すぎる。そのアンテナはどこの電波を捉えているというのか? 当然ながら先取り感だけでないのがこの作品。今の時代を生きる若者たちを切り抜いて、重ね合わせて、想像もつかない高みを構築している。特別な誰かじゃなく、すぐそこにいる誰かが物語の主役なのだ。正確には『誰でもいい』って訳じゃないんだけど、「もしかしたらこのキャラは自分の鏡?」と自己投影できるような。つい親近感が湧いてくるような。 そんなヤツらがアキハバラという狭い街を舞台に繰り広げる冒険活劇。等身大であり続ける面々の闘う姿勢は、とても勇気を与えてくれる。 それにしても悪役・中込なんて今係争中のH江に似てるんだよなぁ。連載当初はまだたいして有名じゃなかったよね、あの人。 いや〜、小説がこれだけ面白かったら、映が観る気になれないなぁ。結局映画はオタクといえどもカッコいい男ばかりの世界だし。リアルじゃないんだよね。 |
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「爆笑オンエアバトル」公開録画を観る〜その1(06.9.16) |
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上京が決まり、舞台『蒲田行進曲』が観たいと思い、ネットオークションを眺めていた。残念ながら希望の公演の出品がなかったのであきらめたんだけど、『お笑い』で検索をかけたところ、NHKの人気番組『爆笑オンエアバトル』の公開録画観覧券なるものが出品されていた。9/16の昼の部と夜の部をまとめて。これは『買い』なのでは・・・と入札してみたら、あっさりGETできちゃって。熱心に観ているわけじゃないけど、お笑い好きにはたまらない機会じゃない。ぼくが若手芸人のオンエアを決めるボールを投げ込む審査員になれるとは。しっかりと才能を見極めなくては。 場所は渋谷にあるNHKのふれあいセンター。ふれあいセンターの前の通りでは数組の路上ライブが開かれていたんだけど、その中で見覚えのある3人がネタ合わせをしていた。 「あれって『東京03』じゃないかなぁ・・・」 「今日のオンバトに出るの?」 残念ながら本日の出演者は知らされていなかったため、あの3人が本当に東京03だったかどうかはわからずじまい。開場時間も迫っていたので、受付を済ませて会場へ。 会場に入って驚いた。ぼくが案内されたのは流しソーメン台のようなボールシューターのある審査員席の前なのだ。どうやら公開録画観覧と審査員は別モノだったようだ。審査したかったなぁ。 残念ながらただの観覧となってしまったけど、それでも若手のネタを、しかも半分は放送すらされないネタをナマで観られたんだから、ヨシとしましょう。 では、出場者とぼくの印象を。 @流れ星 漫才でプロポーズのネタを。しゃべくり漫才の中にボケの奇妙な動きが入る。その動きに頼りすぎの懸念もあるけど、面白かった。 A火災報知器 福島?から上京した青年が部屋を借りるコント。ボケの田舎っぺぶりが面白かったが、センスはちょっと古いかな。 Bハイキングウォーキング コント・適当ラーメン。いかにも不潔そうな挑発のオヤジがまさに適当にラーメンを作る工程がおもしろい。しかし、オチはきびしいなぁ。 Cやまもとまさみ 一人コント『アルバイト大募集』。くねくねしたオカマキャラで異質感を出しまくり。でも、キャラ先行でネタは・・・。偶然にもこの日の深夜番組にも出演していたんだけど、そのネタはすごく面白かった。でも道路地図に卑猥な言葉を投げかけるそのネタは、NHKでは絶対無理だもんなぁ。 Dランチランチ 席の譲り方から始まる漫才。ツッコミのテンションの高さが心地良く面白い。その分ボケの抑揚がもっとハッキリすればなお面白くなるのかな。 EEE男 スパイダーマンを邦訳するという漫才。スパイダーマンなのに登場人物はなぜか日本の国民的アニメで・・・。面白かった。でも、アニメに頼りすぎ。 F弾丸ジャッキー 最大の収穫といっても過言ではない、体操ショートコント。体操選手と自衛隊のコンビだとか。アクロバットの華麗さと、ネタの馬鹿馬鹿しさの融合がたまらない。衣装のTシャツ欲しいなぁ。 Gイシバシハザマ お父さんが息子とコミュニケーションをとるために奮闘するコント。残念ながらあまり印象に残っていない。弾丸ジャンキーの余波が残っていたか。 Hだいなお デートシミュレーション漫才。なんか若そう。まっ、これからがんばって! INONSTYLE いきりキャラ・井上のドラマ出演シミュレーション漫才。ジャケットの下はタンクトップのいきりの世界観が、きも面白い。相方のセンスもかなりきついんだけどね。すごく面白かったけど、オチがあまい。 出場者のネタだけでなく、塚原愛アナとのトークや前座の若手・柳原かなこのいまどきの女子大生バイトコントも面白かった。塚原アナはテレビで観るよりスマートで、民放アナにはない素朴さが好感持てたなぁ。 個人的には弾丸ジャッキーとNONSTYLEが好きなんだけど、どの5組がオンエアされたかは放送日をお待ちください。11月だそうです。 その2へつづく。 |
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「爆笑オンエアバトル」公開録画を観る〜その2(06.9.16) |
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続きまして、夜の部です。入場前に貼り出された出演者表には『東京03』の名前が・・・。昼間ネタ合わせをしていたのはやっぱり彼らか・・・。写真撮っておけばよかった。 正直夜の部のレベルはすこぶる高かった。昼の部に出てたらオンエアー確実と思われるのがいっぱい。早速ご紹介。 @東京03 取引先で『本当は?』と本音を語るコント。もう貫禄です。安定した面白さとでも言いましょうか。 Aノンスモーキン じゃんけん王子のコント。今回が初挑戦だとか。じゃんけん王子のアホアホ感に笑かされた。今後に期待大。 B桜前線 ロックバンドを組んでみたら・・・漫才。昭和の香りが漂うボケを生かしてって形態で、前回出場した模様はTVで観たんだけど、今回はインパクトが・・・。 Cどきどきキャンプ ぼくの原付に怖いお兄さんが・・・コント。いかにも弱そうなデブキャラの、ほとんど一人コントのような感じなんだけど、デブキャラの焦りやいきがりが手に取るようで面白い。でんぐり返しは見ものです。そうか、あのデブキャラはR-1グランプリでいじめられ先生をやっていた・・・。 DU字工事 田舎に泊りたい、漫才。栃木出身、衣装からはやすきよの匂いが出てるような、正統派しゃべくり漫才。これがまた面白かった。こんなところに逸材がいたのか・・・。 Eキャン×キャン 結婚生活シミュレーション漫才。以前は沖縄出身で売っていたと思ったけど、今日のネタに沖縄臭はなく、洗練されてきたのかな。面白かった。 Fオキシジェン 番長ものコント。昭和の香り、本宮ひろ志や国松さまを髣髴させるような設定はそれだけで楽しく、随所に見られるプロレス技は小気味よいアクセントになっていた。面白かった。 G狩野英孝 イケ面社会科教師。ホスト系のネタなんだけど、最初に客いじりやったんだよね。それがぼくにはマイナスだったかな。 Hジャンクション 不動産屋が実は知り合いだった?コント。発想はとても面白いんだけど、展開がちょっと読めたかな。演劇もできそうな感じがするので、脚本力に期待かな。 Iのろし 変質者対処法漫才。ルックスの割りに王道の漫才をするんだなぁ。これからがんばれ。 いや、ほんとレベルが高かった。個人的にはU字工事、東京03、ノンスモーキン、オキシジェン、どきどきキャンプ、キャン×キャン・・・。 レベルの高い大会だと、思わぬ点差がつくようで。採点方法が『あり』か『なし』か、0か1かだからなんだろう。10点満点の採点方法だったら、数字的にはもっと接戦になったに違いない。すごくいいものを観たって感じたのだ。 どの5組がオンエアされたかは放送日をお待ちください。11月だそうです。 |
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「太陽」を観る(06.9.15) |
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ぼくはあまり皇室に興味を持っていない。皇室典範の改正にも興味がないし、先日メディアを独占した悠仁さまご生誕ニュースにはうんざりしていたくらいだ。確かに大きなニュースだけれど、他にも報道しなければならないこともあるだろうに・・・と。 では何故『太陽』を観たのか・・・。それは日本は海外でどのように見られているかを知りたかったから。アジアで孤立の様相を呈しているこの頃、その原因となる太平洋戦争に対する現首相の考え方と、海外の見方の差とはどこにあるのか?ロシア人監督はどのように捉えたのか・・・。 正直淡々と流れる時間に何度かおちてしまった。皇居の中では時間が・・・いや、世界がまるで違っていたかのように。戦争の惨劇や悲惨さは伺えない。時折インサートされるCGの東京はそれを強調しているかのようで。でも、イッセー尾形演じる昭和天皇陛下は淡々とした言動からは、戦争に対する否定と後悔の念がひしひしと伝わり、天皇も人であり、親であり、亭主であることが強く描かれている。 天皇を神格化していた時代を持つ日本ではタブーとされていた皇室を描くのは、やはり外国人でしかないのか。 平日の昼間でも、銀座の映画館は幅広い年齢層の客でいっぱいだった。この映画の感想は観た人それぞれで大きく違うことだろう。この映画が皇室典範改正論に大きな影響を与えるとは思えないけど、皇室を少し身近に感じることには大きく寄与した映画には十分なるんじゃないかな。 あっ、そう。 |
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北森鴻「親不孝通りディテクティブ」を読む(06.9.13) |
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高校の同級生コンビ・テッキとキュータが博多を舞台に活躍する『親不孝通りディテクティブ』。軽快さと重みを兼ね備えた、読むのが楽しくなる作品だった。 テッキとキュータの主観が入れ替わる構成といい、オフクロ・歌姫・悪徳刑事といった脇役の使い方といい、この作者の持つ美学が端端にあふれていて、それが共感できるだけに面白い。一番共感できるのは『皆まで言わない』ところ。物語の核心を書き上げると、顛末までを詳しく書かず、読者に預けるところがカッコいいのだ。先は当然見えているんだけど、それを文章にしてしまったときの空々しさをあえて伏せて読者に委ね、気付いたらいつもどおりの朝が始まるなんてとこ、洒落てるのよ。 ただ、この物語は今と過去を消費するだけのものとして書いている。テッキとキュータの中に入ってこれるのはオフクロ・歌姫・悪徳刑事だけであり、過去が未来に繋がることはない。群れないカッコよさは時には虚しいこともある。逝ってしまった者は心に留まり、去った者は忘れられる。カッコいいけどさびしいよね。 とは言え、テッキとキュータは名コンビであり、テッキの屋台に笑顔が絶えない日が来ることを・・・そうなったら物語は終わってしまうが・・・願わずにはいられないのだ。 思わず九州の友人を思い出してしまった、楽しくカッコよくも、ちょっと憂いも含んでいる作品だった。 |
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白川道「海は涸いていた」を読む(06.9.5) |
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ハードボイルドなのです。暗い過去を持ち、過去と決別しようとしている男が、過去を守るために動き出す。かっこよかです。 新潮社文庫で550ページもあるんだから、読み応えたっぷり。なかなか始まらない展開にちょっとやきもきはしたんだけど、物語が流れ出したらそれまでの伏線がボディブローのように効いてくる。これもハードボイルドのなせる技なんだろうなぁ。 主人公のすべてを悟りきったかのようなふるまいが、ハードボイルドを助長させているんだろうけど、ラス前のバイク便のくだりには人としてのつながりを捨てきれない甘さも見られ、ある意味ほっとしたかな。 ハードボイルドは展開が読めるけど、やっぱり面白い。押し通すだけの力があるんだろうなぁ。 なんだかわからない感想になってしまいました。身勝手かもしれないけど、ニヒルの生きる男を読みたい方はどうぞ。 |
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「UDON」を観る(06.9.2) |
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本広監督の最新作『UDON』は本広祭りとでも言うべき作品だった。起承転結が明確でわかりやすい予定調和。でもそれが心地良い。脚本に大きな仕掛けがあるわけでもなく、とてもシンプルな人間ドラマなのです。ともすれば地味で終わってしまいそうなんだけど、前作『サマータイムマシーン・ブルース』の面々がそのままの役柄で登場したり、『交渉人・真下正義』の出演者で劇中劇『キャプテン・UDON』が演じられていたりと、観るものを飽きさせない作りにしている。それはまるで24時間テレビの1時間アニメ(今ではやっていないけど、開始当初は2日目の午前中に放送していた)で手塚キャラがそう出演するが如く。 今回もフジテレビ全面バックアップの下、大々的なPRキャンペーンが行われていたけど、映画の中の”起”がほとんどだったので、承転結の展開はちょっと驚きだった。でも、うどんがスローフードであるかのように、ゆったりと流れる時間が物語に安心感を与えていて。本広作品には珍しい、真正面からぶつかった人間ドラマになっていた。 祭りのあとに流れる『バンザイ〜好きでよかった』はやっぱり名曲だね。 北海道民としては、主人公コースケの友人役で登場した森崎博之の頭のデカさに大笑い。 |
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「GUNDAM GENERATING FUTURES」を観る(06.8.22) |
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『ガンダム展』が札幌で開催されている。『機動戦士ガンダム』、いわゆる1stガンダムが放映されたのはぼくが小6の頃。そりゃもうハマったよ。のめり込んでた。ガンプラも買ったけど、手先が器用じゃなかったので、出来栄えは今ひとつだったよな。好きなキャラはスレッガーとセイラとドズル・ザビ。好きなメカはシャア専ズゴックとビグザム。でも、それ以降のガンダムはまるで知らない。そんなぼくだもん、観に行くでしょう。 ガンダムはアニメなので、『スター・ウォーズ展』みたいに実際に使用した模型や衣装などは展示できないけど、絵コンテやセル画を見せたりするのか?でも、1/1スケール・コアファイターや巨大セイラ・マスがあるなんてCMやってたっけ。 今回の展覧会は1stガンダムのイメージをモチーフに、各界の方々がArtを持ち寄って構成されている。書道画、戦争画、石膏像、写真etc。どの作品にもガンダムが息づいていて、ガンダムの中に見る世界観とイメージを共有している感覚が伝わってくる。いささかイタいものもあるけど。展覧解説の音声ガイドをアムロの声優・古谷徹とキュレーターの東谷隆司がやっているんだけど、これがちょっと難解な各人のイメージを共有するのにとてもよいアシストをしてくれる。500円の価値はあるので、行かれる方にはぜひおすすめ。 ニュータイプテクノロジーラボなるニュータイプ診断があったんだけど、本格的な2次検査をやる前の1次検査・タロット当てで見事にふるい落とされてしまった・・・。たまに聞こえる高周波音はニュータイプの証だと思ってたんだけど、どうやらただの耳鳴りのようで。 個人的には書道家・横山豊蘭氏が千字文で描いたア・バオア・クーと画家・会田誠氏のザクがよかったかな。西尾康之氏の巨大なセイラさんは、セイラさんの持つある意味高圧的とも取られるりんとしたところを表現しているとか。意味深です。 ニュータイプになれず、原寸大コアファイターにも狭くて乗れそうもないという哀しいこともあったけど、ガンダムの世界観がまたひとつ広がって見えた展覧会だった。 外国人の方も数名来てたよ。ガンダムってワールドワイドなのね。 |
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「パイレーツ・オブ・カリビアン〜デッドマンズ・チェスト」を観る(06.8.21) |
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きっとネタバレになると思うので、読まれる際はご注意願います。 3年ぶりにスクリーンの中のぼくに会ってきた。とにかくぼくの理想像なのです、CAPジャック・スパロウは。あんな男になりたいと思って39年生きてきたのです。おどけていながらも、飄々としていながらも、やるときはビシッと決めて、誰からも愛情を込めて憎まれている男。 今回もそんなジャックが所狭しとおどけまくるのだ。もう、羨ましいったらありゃしない。しかも、エリザベスとは・・・。 ぼくも早くCAPジャック・スパロウになりたいんだ。大海原を駆け回るのは無理だとしても、狭い日本を笑い飛ばしながら奔放に駆けてみたいんだ。 でもね。残念だったのよね。 3作目が製作されることは知っている。ジャックの父親役でストーンズのキースが出演するというのも新聞で読んだ。だからってさ。あまりにも中途半端な終わり方じゃないの。3部作にしてもいいよ。でもさ、1作ごとに独立した作品にしようって気はなかったのかな。そりゃ、『つづく』ってのはありだと思うよ。でもあまりにも中途半端すぎだよ。ハナから3部作にするつもりもなかったんでしょ?この尻切れトンボのまま何年ぼくらを待たせようというの? 大好きなキャラクターだけに、彼の活躍を観れればかなり満足ではあるのだけれど、その前に一映画ファンとしてはとても不満に残る作品となってしまった。 このマイナスを取り戻すには、めちゃくちゃ面白い続編を、速やかに公開するってのが肝心なのですからね。 |
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「初仕事納め」を観る(06.8.15) |
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寝坊して2時間遅刻で初出勤したのに、会社が倒産するという、ありそうでありえないシチュエーションコメディ。コーヒーサーバーロボット・クロコップを製作する黒須商事が、多額の負債を抱えて倒産するという。何故?希望を胸に出社した仲畑の今後は?倒産に関わっているという営業マン・田島とは? シチュエーション・コメディの王道を行くような、ゆったりとした、それでいて確実にツボを押さえた笑いがいっぱい。決してキレのある笑いというわけではないのだが、ほんわかとした面白さが溢れていたのだ。 なかでも池内博之演じる田島の筋肉ネタと、田島vs石油王の3本勝負は笑えます。あとは芸達者・西村雅彦の作り出す”間”。初舞台の金子貴俊をしっかり後方支援してます。 最後は日本の技術力が物を言う秀作。コメディは予想されていようとハッピーエンドで終わらなくっちゃね。その過程に書き手・作り手の技術が光るってもんだから。 |
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あさのあつこ「バッテリー X」を読む(06.7.24) |
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ぼくも歳をとり、せっかちになったのかなぁ。 岡山の田舎の中学校野球部のバッテリーを描いたシリーズの第5弾。この物語はYで完結するので、ラス前の一番盛り上がるところなのね。そう思って読みすすめた。確かに盛り上がってきた。でもそれは物語の展開というよりは、登場人物それぞれの感情がである。各人の感情が高揚し、大きなうねりに、大きな波になろうとしている。『バッテリー』シリーズは単に野球小説としての面白さを描いたのではなく、野球は少年たちの心を媒介する手段でしかないのである。そこがミソなんだけど、わかってはいるんだけど、早く試合の結果を知りたいのだ。そして、その先の・・・。 少年たちの感情を読むのにもどかしさを感じているからなのかもしれない。かつては自分も感じたであろう感情のひとつひとつが、今になると照れや痛みを伴っているかのように。その反面、作者の描く少年像を『美化』とも思っていたりする。そんなに難しく考えてなんかいないよ、ガキんちょは・・・といった具合に。 そんな裏腹な気持ちを抱えながら、物語が流れていかないことにいらついているのかもしれない・・・ぼくは。早く続きが読みたいんだと。なら、単行本を買えばいいと突っ込まれてしまいそうだが、やっぱり読むなら文庫本じゃなくっちゃ。手が疲れるから。 自分でも情けないほど整理できていない文章だけど、少年たちの感情の起伏にぼくの心も触発されたのかなぁ。早く試合結果が知りたいし、その試合を通して成長するであろう少年たちに、高まった感情の行き着く先を早く読みたい。 なんだかんだ言って、作者の術中にはまっているのか。そう考えると素晴らしいラス前なんだろうね。 |
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夢枕獏「獅子の門〜雲竜編」を読む(06.7.3) |
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この小説を語る言葉が残念ながら見つからない。特にこの雲竜編には言葉が必要ないくらいなのだ。 物語(シリーズ)の概要はこちらに書いている。そのシリーズが今回はとにもかくにも闘いに主眼を置き、闘いばかりが書かれている。ばかりというと大げさだけど、とにかく闘うのだ。その描写が素晴らしい。漢字一文字の羅列。でも、それが闘いのすべてを表している。「蹴。打。掌。肘。・・・」打撃の合い間に「痛。熱。」なんて感触が加わり、「憎。快。」なんて感情が入り混じり、それらの一文字が闘いの壮絶さ、速さ、凄さを語っているのだ。読んでいるだけで映像が浮かんでくるような。闘っている者の気持ちが伝わるような。 総合格闘技がすごいブームになってしまった今日この頃、誰もがメディアを通して気軽に格闘技を目にする今日この頃、メディアの伝えるどんな闘いよりも、濃くて尊い闘いがこの物語には詰まっている。 本当に強くなりたい、ただそれだけを追求する孤高の男達を、この物語を通して感じて欲しい。 |
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「ダ・ヴィンチ・コード」を観る(06.7.2) |
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賛否両論あるらしいけど、面白いじゃん。トム・ハンクス主演の『ダ・ヴィンチ・コード』、ぼくにとっては観応えのある面白い映画だった。 ルーブル美術館から始まる、2000年を超える壮大な歴史ミステリー。なんでダ・ヴィンチなの?ってところからがぼくの疑問だったけど、すぐに納得。そして、大いなる謎にのめりこむ。小説を読まずに映画を観たんだけど、十分話にはついていけた・・・と思う。小説の場合、ペース配分を自分で決められるだろうから、ひとつひとつの謎に立ち止まって自分なりの推理を展開することができるかもしれない。でも、英単語あまり知らないし、ダ・ヴィンチの基礎知識もなく、キリスト教についても・・・。どうせ考えてもわからないんだから、映画の速度に流されるのも悪くはない。細部はさておき、全体に流れる構図の謎解きは頭の中でできるのだから。 映画はやっぱり映像の伝えるイメージのすごさに秀でている。どんなに言葉で書きつくしても共有できない風景や動きが、瞬時に表現できる。物語のカギとなる造形だって、百文(聞)は一見にしかずなんだもん。 ぼくの前の列の男は「もう終わり?これだけ?」と終映直後につぶやいた。なにひとつ理解できなかったらしい。ぼくもすべてを瞬時に理解できたわけではなく、家に帰りまずインターネットで検索をした。ルーブル美術館や南北子午線について。自分が理解したと思ったことの確認のために。西欧文化が浸透していないとわからないこともある物語だから。おそらく小説では解説しているであろう事柄も、映画でははしょっているだろうから。 今日感じた面白さをさらに深めるには、小説を読むのが一番なんだろうなぁ。ぼくが苦手な外国人の名前も、役者の顔をイメージとして読めるだろうし。それを嫌う人もいるけど、ジャン・レノは作者がアテ書きしたというくらいだし。風景や絵画のイメージもすぐつかめるだろうしね。 当面読む本が3冊決まってるんだけど、この夏のうちに、イメージが風化しないうちに読むつもり。 そうそう、アテ書きしたくらいなら、もうちょっとジャン・レノに活躍の場を与えてくれてもいんじゃないかな?映像になっていないだけかな? |
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KOKAMI@netowork vol.8
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どこまで壊れることができるか・・・。鴻上尚史はカーテンコールの舞台挨拶で、主演の牧瀬里穂に求めはしていないと言った。彼女が自発的に演じたと。でも、牧瀬里穂のぶっちゃけた演技がなくては、この舞台は成立しなかったと思う。 では、大股を広げ、『SEX!』を連呼する彼女の演技に迷いはなかったか?納得はしていただろうけど、そこには迷いが存在していたと思う。恥じらいがあったと思う。始まってすぐ、「迷ってるんじゃね〜よ、恥らってるんじゃね〜よ」と思った。でも、観終わったときはその迷いや恥じらいがとても意味のあることだとわかった。あの迷いや恥じらいは計算だったのだろうか・・・。鴻上マジック?牧瀬ミラクル? 人気お笑いコンビ・アンジャッシュの渡部、双子の弟・斉藤慶太が初舞台、大和田獏&岡江久美子の娘・大和田美帆と、話題の出演陣に混じって、安原義人のイブシ銀の演技が舞台を引き締める。この配役の妙も鴻上マジック? 劇中劇中劇。脚本家とTVプロデューサーと脚本家の夫と強盗カップル。交錯する嘘とホントと嘘の嘘。入り乱れる感情と人間模様。見応えある物語だった。 ひゅ〜ひゅ〜だよっ! |
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KKP#5「TAKE OFF〜ライト三兄弟〜」を観る(06.6.25) |
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いやいや、すごかった。とても面白かった。でもそれ以上に、熱狂的支持者の存在に圧倒される舞台だった。 小林賢太郎脚本・演出。お笑いコンビ『ラーメンズ』と、WOWOWで放映していた彼のプロデュース公演は知っていた。でも、彼がどのくらいの支持を集めているかまでは知らなかった。劇場前で若い女性の長蛇の列を見たときも、主演の村上淳がお目当てだと思っていた。でも、配布されたパンフには村上淳の名前はなく、病気で降板したとのこと。「えっ?」。 幕が上がる。これがホント面白い。ひょんなことから知り合った3人の男が、ライト兄弟の幻の飛行機設計図面を見つけ、自分達で作り飛ばそうとする物語。大人の青春ストーリーとでも言いましょうか、それぞれの過去や反発、裏切りなんかも取り揃えて物語りは進む。正直、キャラメルボックス的なのです。ストーリーの要約版を読んでも、きっとさして面白いとは思わないんじゃないかな。それがすごい面白く作られている。本筋じゃなく、シーンごとにたんまりと肉付けされている会話、ボケとツッコミやアドリブの応酬が、とても面白い。劇中のシチュエーションでコントをやっているかのよう。シチュエーションごとにとても濃いコントが繰り広げられる。物語から逸脱しすぎて、戻ってこれるのかと心配になったりもするんだけど、そこは舞台巧者、きっちりやってくれている。もう、笑いっぱなし。すげ〜よ。 ただね。熱狂的支持者(?)があまりにもゆるいのが気になった。冷静に考えても爆笑はないだろうという場面でもドッカンドッカン、キャーキャー。なんでもかんでもきっちり拾い、ボケのたびに拍手が巻き起こる。らっきょが転がっただけでも笑うんじゃないかってくらい。通にしかわからないようなネタが出てくると、「知っている」ことを誇示するかのような・・・。さすがに引いた。北海道を意識して繰り出された大泉洋ネタだって、サービス返しのように笑って応えるほど面白くなかったし。えっ?おっさんにはついて来れないんだよ?そうかもしれないけどね。 ぜひまた観たいと思った。熱狂的支持者の集いで終わる面白さじゃないので、もっと大きなハコでチャレンジしてもらいたいかな。だって、東京では本多劇場でやってるんでしょ。その時は大勢誘って観に行くから。 |
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中村航「リレキショ」を読む(06.6.20) |
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『都会の青春ファンタジー』というキャッチフレーズに惹かれたんだろうか。思わず買ったその本は、ゆるゆるのリハビリをしている引きこもり少年の物語のように思えた。決してそういう物語ではないんだけど、ぼくにはそう思えてしょうがない。 弟として拾われ、半沢良と名付けられた主人公が、姉(他人)と過ごし、ガソリンスタンドでバイトし、そこで謎の美少女(?)ウルシバラと出会い・・・。でも、主体性がないんだよなぁ。徐々に意思が見えてくるんだけど、その過程がゆるゆるのリハビリみたいで。 情緒を読めばよかったのかな。でも、ぼくには到底真似できない、絵空事のような(小説なんで絵空事か)優しい時間だった。優しすぎる・・・。 |
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「小松政夫+イッセー尾形のびーめん生活2006in初夏の札幌」を観る(06.6.18) |
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2002年と2004年に桃井かおりとイッセー尾形の二人芝居を観たけれど、小松政夫とイッセー尾形の二人芝居は今回が初めて。小松政夫というと、伊東四朗や由利徹とのコンビ芸、浅草発の芸人の真髄なんて連想してしまう。イッセーとどんなコラボを観せてくれるのか・・・。 いや〜、すごかった。なんだろう。観客の期待と不安をそのまま笑いにして返してきたのだ。そして、会場内を笑いで掌握してしまうのだ。 その模様、簡単ながらお伝えしましょう。タイトルはぼくが勝手につけてます。 『山内建設懇親旅行会』 旅行会で相部屋となってしまった見ず知らずの二人。そこはイッセーのホーム、小松政夫の完全アウェイ。気を遣う小松政夫と我が物顔のイッセー尾形。このネタで入ってくるとは。うまいなぁ〜。 『トシちゃんとワタル』 ベテラン芸人コンビが出番前後に舞台袖で見せる表情。これが滑稽で、でもちょっぴり物哀しくて。二人にはまだまだ先のことなんだろうけど、迫真の笑いになっている。出番の本職芸はサイレントで。これがまた笑えるんだな。 『劇団・二毛作の案山子』 小松政夫の女性役、笑えるなぁ。ロシア演劇を上演する劇団の練習風景。演出家(イッセー)のこだわりが強いためか、退団者が続出し・・・。二人の掛け合いは楽しすぎ。合言葉は「寒がすね」。 『社長・部長』 最後は小松政夫の場をイッセーが盛り上げる。社長とは言いながらも、企業ヤクザ。一昔前は「小松の親分さん」なのだ。小松の親分さんが得意のアクションを交えて、イッセーをリードする。ここで普通のお笑いなら「がっくし」から始まる一連の「小松の親分さん」に走るに違いない。でも、この二人芝居ではそんな安易な道には走らないのだ。それで存在感を出しまくって、場内を笑かせまくるのだ。 最高の二人、最高の二人芝居。参ったの一言です。 |
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「イッセー尾形のとまらない生活2006新ネタin札幌」を観る(06.6.16) |
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年2回イッセー尾形を観ることが、習慣となってはや7年。毎回登場する新ネタ・新キャラに大笑いしたり、共感したり、時には引きまくったりして。数年ぶりに再演されるネタにはその変化に目を見張り、再び笑い転げる。イッセー尾形の持つ人間観察力と想像力・創造力に、ただただひれ伏すばかりなのだ。この上ない幸せ。 そして今回も・・・。実は明日からは小松政夫との二人芝居があるというのに、今日はきっちり一人芝居を決めて見せる。かっこいい。 では、手短に今回のネタをご紹介。タイトルはぼくが勝ってにつけてます。 『産婆さん』 出産のために出向いた家で、おじいさんの死に立ち会う産婆さん。暇をもてあまし、縁側でご近所話に花を咲かせるんだけど、そのお相手は・・・。「左手は最後の武器だ!」 『ハイキング・サラリーマン』 登山道で携帯電話をかけるスーツ姿のサラリーマン。そのミスマッチには、会社で生きるための深い理由があるのです。サラリーマンが鍋をするには深い理由があるのです。 『日記』 明日から静岡で焼畑をやる。理由は日記に書いてある。なのにどうして君は日記を読んでくれないの?世間の常識を覆す、笑撃の作品。 『月明かりの温室で』 難しい・・・。引きこもり?うつ?ただ素直に笑っていられない、問題提起するかのような1作。彼はドンキホーテになれたのだろうか・・・。 『肉屋』 ジード師の修行を受けて帰国し、肉屋を始めた男。これがぼくにはイタリア人に見える。ヒゲの化粧のためなんだろうけど。イタリア系肉屋といえば『ロッキー』。あっ、いや、『ロッキー』はこのネタにはまるで関係ありません。肉屋の語る抱腹絶倒の肉屋になるまで。最高! 『ドイツの和食レストラン』 W杯を意識したのだろうか、ドイツです。なぜか『とんでん』のような和食レストランです。ウェイトレスの投げやりだけど憎めない接客と妄想。 『修学旅行熱』 京都に修学旅行に来た広島の中学生の物語。修学旅行熱(知恵熱のようなもの?)で舞い上がった男子生徒のガキな振る舞いは笑い転げること必至。 『早朝コンサート』 歳よりは朝が早い。だから朝から公園でライブやっちゃおう。お達者クラブだ。ようは歌モノ。でも、これまでの歌詞で笑わす歌モノとは一味違う。カズーを加えたイッセーの、新しいおもちゃをもらった子供のような笑顔に注目。 『山村の副会長』 集団お見合いを前に挨拶する副会長。前に観たときよりもCUTEにパワーアップしてるぞ。きっと草葉の陰でロバートも喜んでいるに違いない。 |
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「GOAL!」を観る(06.6.15) |
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W杯開幕に合わせて公開された映画『GOAL!』。FIFAが公認する初めての映画だそうで、惜しみない協力をしているのだとか。残念ながら札幌では来週金曜で公開が終了してしまうので、慌てて観に行ったさ。 なんだろう、この感覚。がっくり感。映画はそこそこに面白かったけど、これがFIFA公認を売り文句にした映画なわけ?よくあるサクセスストーリーをサッカーに焼き直しただけじゃない。主人公がラップやってたら『8Mile』だよ。 確かにサッカーシーンはなかなかのもので、もう観ることのできないシアラーの勇姿や、今をときめくジェラードの勇姿を観ることはできたけど、ただ単にダイジェストじゃない。ベッカム、ジダン、ラウールなんて・・・。FIFA公認なら最後の試合くらい、フォーメーションや戦術のわかる描き方や、監督の采配、選手の動きが伝わるような撮り方して欲しかった。サッカーの面白さはただ蹴りあうだけじゃないってことを、伝えて欲しかった。 この映画はサッカー後進国(アジアやアメリカ)への普及を意識して作ったらしいんだけど、サッカーの面白さが本当に伝わる出来じゃない。『金儲けなら、成り上がるならサッカーはどうだい?』って映っちゃう。かなりうがった意見かもしれないけど。 あえてサッカーにこだわって書くと上記の通り。でも、主人公・サンティアゴのこれからには興味ありかな。2作目ではレアルに入るんだとか。ってことは、ニューカッスルの実働は2試合?いくらなんでもそれは・・・。そんなことも含めて、2作目も観に行きましょうかね。 |
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野島尚「ステイ・ゴールド」を読む(06.6.14) |
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野沢版『スタンドバイミー』だそうです。小6の女の子3人の忘れられない冒険物語。冒険といっても、言葉を話すライオンが出てきたり、魔法使いが出てきたりするわけではなく、彼女たちが抱える不安と好奇心という相反する二つを見つめる冒険です。 12歳の少女の揺らぎが、彼女たちの持つ感性が、物語の大部分を形成しているのかな。語り手(麗子)が冒頭から書いている。『良家のお嬢様』のイメージと現実について。読んでいて『良家のお嬢様』のイメージは大してないんだけど、12歳の少女の輝きとか清々しさとかが、川のせせらぎやみずみずしさとあいまって、特別なものになっているのは否定できない。というか、それこそがこの物語の根幹であり、それを抜きにしたらちょっと厳しいかな。教師のエピソードは・・・不要。 野沢尚にも甘いところがあったということですね。でも、その甘さ、初々しさがあったから、12歳の少女の物語が書けたとも考えられるってことで。 |
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YOSAKOIソーラン祭りを観る(06.6.11) |
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今年も観てきたでよ。昨日までは雨が続いたので、お祭り気分に水が挿されっぱなしだったけど、今日は絶好の晴天で、踊り子さんたちも気持ちが良かったのでは? 過去2回(’03年、’05年)、少ないボキャブラリーを駆使して祭りの模様を、演舞の模様を伝えようと努力してるけど、やはり一見にしかずなんだよなぁ。なので、今年は実にあっさりと・・・けっして早くW杯モードに切り替えたいから出なく、レポートしていくのだ。 そうそう、去年は『関西京都今村組追跡レポ』以外にも、優勝した新琴似天舞龍神ほかの写真も掲載しようと思ってたんだけど、すっかり忘れてたや。 今年はW杯による寝不足もあり、早起きできずに午後からの観覧。去年追っかけた関西京都今村組のステージ演舞と昨年優勝の新琴似天舞龍神のパレード演舞の観覧席のチケットを抑えて、あとは気ままに観て歩いたのだ。 まずはパレード会場で目を引いたチームをいくつかご紹介。 コンサドーレ札幌サポーターとして気になったのが、『コンサフリーク〜北海道武蔵女子短期大学』。最初は紫と水色の衣装で踊っていたので、「どこがコンサ?」と思ったんだけど、中盤に衣装の早替えを行ったら、そこにはコンサのチアガールが。チアダンス、ラインダンスをふんだんに盛り込んだPOPな演舞だった。 後ろに武蔵女子短大のOGが彼氏と来ていて、いろいろと解説しているのが聞けちゃった。なんかラッキー。 オヤジの目線を釘付けにする衣装のためか、公式カメラマンがかぶりつきで撮影してたなぁ。当然オヤジさ。
おそらく個々のダンスの上手さはダントツなんだろう。だから、拍子ごとに止めを入れたり、わかりやすい動きがなくとも、迫力と見応えのある演舞になっている。幾筋もの流れが重なって大河になるように。ダムや堰を設けて勢いを整える必要がないんだよなぁ。ただ、そのためか遠くから見た構図がず〜っと一定なのが惜しいかな。
YOSAKOIソーラン祭りというくくりの中でもいろんな踊りがあり、それぞれに楽しく、見応えがある。きっとその可能性もまだまだあるんだろうと思うと、早くも来年もまた楽しみでしょうがないのだ。 参加された踊り子の皆さん、裏方さん、実行委員の方々、その他大勢、このお祭りに関わっているすべての方々、ご苦労様でした。 |
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ヒキタクニオ「凶気の桜」を読む(06.6.9) |
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窪塚洋介が主演して映画化されてるんだけど、観ていない。右翼まがいの3人の若者ネオ・トージョーの物語という触れ込みで、ひいてしまったから。格闘家・須藤元気も出てるので、食指は動いたんだけど、どうも・・・ってことで。 でも、それはどうやら間違いだったらしい。きっかけは『消し屋A』を読んだこと。その主人公である消し屋の幸三が、三郎という名前で登場するのが『凶気の桜』だというのだ。消し屋が登場する物語なら、ただの右翼モノとは違うハズ。そう思い、読む決心をしたのだ。それだけ消し屋が魅力的だったのだ。しかし、ちょっと勘違いしていて、窪塚の演じた役が消し屋になるのかと思ってた・・・。 それら先入観や勘違いを大きくうっちゃるほど、『凶気の桜』は面白かった。右翼の皮をかぶったネオ・トージョーの面々、山口・市川・小菅の時代や世間の価値観に対するイラダチと焦燥感。それと対峙するかのようなオトナの筋モノ、青田・兵藤・三郎の持つ時代や世間の価値観。この世代による水平構造に加え、山口・市川・小菅のパーソナルな考えと、青田・兵藤・三郎のそれが縦割り構造で対応する。その5つのラインのコントラストが、物語を鮮明にもするし、複雑にもする。上手く使い分けられて、ワクワク・ドキドキさせられる。 舞台は渋谷。一見若者が占拠する街のようだけど、実はしっかり筋モノが抑えている。その構造が物語とともに明らかになっていき、若者たちが巻き込まれていく。遠まわしにしか書けないよ。ネタバレしちゃいそうで。 ちょっとキナ臭く思えるかもしれないけど、とにかく楽しめるので読んでみて欲しい。映画も観ちゃおうかな・・・。三郎、江口洋介だし。 |
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「嫌われ松子の一生」を観る(06.6.7) |
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原作を読んでいないので、どのような作り、展開になっているのかわからないけど、普通に松子の生涯を振り返ったら、そりゃひどい映画ができたことだろう。往年の任侠映画の色合いが目に浮かぶ。主演は当然、梶芽衣子。 ところがどうだ。CP処理された不自然で無機質な画像が多く、目に痛い点も多々あるが、そのPOPなカラーとミュージカル仕立ての作風が、松子の『愛する』という人生を彩っている。『シカゴ』や『ムーラン・ルージュ』みたいだけど、『愛する』という筋がビシッと通っているのだ。上手い。 それにしても、過酷な人生だこと。『日陰』という言葉がピッタリなのだ。しかし、不思議と松子が一番輝いているのが、男と一緒のときではなく、男をひたむきに想って独りでいるときだと思った。一緒にいるのは地獄かもしれない。漠然と独りでいるのも地獄かもしれない。でも、好きな男のことを想って日々を過ごす松子はとても素敵なのだ。 そしてやっぱり中谷美紀。あんなに綺麗なのに、臭い女のイメージも出せるなんて。『ケイゾク』でも不潔さを演じていたけど、今回のは思いっきりだもんね。シーン、シーン、各時代の松子の演じ分けと併せ、すごい女優さんだこと。 松子の一生は昭和晩年の時代を切り抜いていて、象徴していて、面白いだけでは済まされないあれやこれやがいっぱい詰まっていた。 単なる映画にとどまらず、プロモ的要素、パロディ、ディズニー(?)なんかも詰まったこの映画、見ものですぞ。 そうそう、晩年の左足を引きずる松子の姿、今のぼくにかなりダブってるんだよなぁ・・・やばっ! |
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風野潮「ビート・キッズU」を読む(06.6.1) |
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言わずと知れた?『ビート・キッズ』の第2弾。あほのエイジが高校生になって帰ってきたのです。ぼく的にはほぼひと月ぶりの再登場なんだけど、リアルタイムでこのシリーズを読んでいた人たちは待ちに待ったって感じだったんだろうなぁ。第1弾がリズムに目覚めるまでだとしたら、この第2弾は自覚って感じなのかな、自分のリズムに対する。 活動の場がブラスバンドからロックバンドに変わり、それまで大太鼓しか叩いたことがなかったのに、ドラムスでデカイ花火を打上げるエイジ。確実に成長しているのだ。そして疾走。まさしく高校時代の若さをエネルギーとして、バンド仲間と瞬間瞬間を駆け抜ける。 そんなスピード感だけでない。ソウルバンドの大人たちに混じってオフビートの奥深さを知り、ニューヨークで活躍する親友であり師匠の七生の活躍を見て、嫉妬を覚える。技術だけでなく、精神の成長も見逃せない。そして恋も・・・。 でもね、立ちはだかるのよ、エイジの前には。読んでてやるせなくなるような、運命と呼ぶには酷過ぎる障害が。 それらすべてがキラキラと輝いていて、とても素敵な物語となっている。 続きはあるのかな・・・。でも、さすがに次は児童小説というわけにはいかないんだろうなぁ。 |
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「SEVEN SAMURAIS」を観る(06.5.30) |
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パパイヤ鈴木がプロデュースするダンス・ユニット。いろんなダンスの第一人者が集まり、ダンスの可能性を探るようなステージだった。ダンスで、いや、身体で表現できるもののすべて・・・喜怒哀楽、せつなさと滑稽さ、郷愁と華やかさ・・・。それらが見事にあいまって、笑えて見とれて感動できる。すんばらしいステージだった。 まるでスネークマン・ショウのような軽快な構成、個々のバックボーンやキャラを生かした展開。ダンスをもっと身近に、ダンスを生活の一部にと願う彼らの思いが詰まったステージだった。 ダンステクはさておいて、パパイヤの存在感の凄さは格別だ。一番前だったので、その顔と頭の大きさに圧倒され、小技に魅了される。さすが、ツワモノぞろいのサムライたちを束ねるだけある。 なんだろう。ダンスがすぐにぼくらの生活の一部になるのはかなり難しいだろうけど、体の持つ表現力をもっと使ってみよう、リズムに合わせて揺れてみたら楽しそう・・・、まずそこからやってみようかと感じられる、とても楽しいステージだった。 |
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星野智幸「ファンタジスタ」を読む(06.5.27) |
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『砂の惑星』『ファンタジスタ』『ハイウェイ・スター』の短編3作からなる作品集。読んですぐにわかった。この作者はぼくと同年代だって。それらは現代や近未来を描いているようだけど、登場人物から発せられる言葉は明らかにバブル世代の言葉だから。虚構と現実の見境がない・・・いや、本音を隠して世の中に斜に構え、批判で主張しようとするその言葉は、バブル世代の言葉そのものだとぼくは思う。 だから、これらの作品を読んでいると昔の自分を思い出してしまい、かなり気恥ずかしくなってしまう。自己中心的正義感や体制批判、妄想とも呼べるような嘘で固められた世界。それらは今もなおぼくの中にしっかりと根付いており、おそらく根本となっている。けど、さすがに大人になった今、本当の言葉を話せるようになった今、あの頃の言葉を真正面からぶつけられると、かなりイタいかな。 これは何もかもが虚構で終わったバブル期へのオマージュなのかもしれない。あの頃を生きたぼくらがタイムカプセルに入れて、校庭に埋めた文集のような。もちろん斜に構えたぼくらがそんなことするわけないんだけどね。 皮肉屋なぼくらが隠し持っていたナイフは、どこにいったっけかなぁ・・・。 |
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「グッドナイト&グッドラック」を観る(06.5.20) |
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1950年代、冷戦による東西の緊張が高まった頃のアメリカ。共産主義排他が人権を侵し、緊張が圧力に変わり、言論をも奪われ始めた時代に、『愛国心と忠誠』を武器に自由を求めて権力と闘った報道人、エド・R・マローとその仲間達の物語。これが実に面白かった。 彼らの闘いには信念がある。『アメリカ』は自由の国であり続けなければならないと。誰かを裁くにはまず双方の意見に耳を傾け、客観的な判断を下さなければならないと。何人たりとも一人の権力者の独断によって、裁かれてはいけないと。『自由の国』を唱えるアメリカがそれを忘れてはいけないと。彼らの信念に基づく報道により言論を奪還し、人権が再び尊ばれるまでが描かれている。50年代を象徴するかのような、全編モノクロ映像で。 ジョージ・クルーニー、会心の出来だったのではないか。モノクロの画像は単に当時の世代を映すだけでなく、登場する人物一人一人の喜怒哀楽をも映し出していく。カラーなら白さで飛んでしまうような、白人の肌の粗さや皺の数々。それらが表情を的確に伝えてくれる。そして眼力(めぢから)。多くを語らないマローの信念が、忠誠と愛国心が眼力に表れている。立ち上る煙草の煙に込められた想いも、モノクロの映像だから伝わってくる。いい仕事してくれるよ、まったく。 静かで落ち着いた流れの合い間に見られる、酒場や会議室での彼らチームの躍動感が、爽やかな風のように感じられるのも上手かったなぁ。 報道は時として権力を持つこともある。『愛国心と忠誠』は日本では希薄すぎて通用しないのかもしれないが、誰もが『人権と誠実』を尊ぶ気持ちを忘れないことが大切だということが伝わる映画だった。 さすがに思想の自由にまでは踏み込んでいないけど、それは当時を忠実に描くためということで。 グッドナイト、そしてグッドラック。 |
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風野潮「ビート・キッズ」を読む(06.5.9) |
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ホラーが苦手でミステリーから一歩身を引く本選びをしていると、辿り着くのは児童書になってしまうのか・・・。いやいや、児童書にも面白いものがいっぱいあるんだと、つくづく思い知らされた。 普段はおとなしく、一見トロくさえも見える転校生・英二は、なぜかブラバンを仕切る天才音楽少年・七生に見初められて、吹奏楽部に入部する。そこで初めて叩いた大太鼓の空気を切り裂く音の響きに魅せられて、七生との友情を築いていく。 英二の強さと脆さ、七生の強さと脆さ。少年達の感性が文章の中でみずみずしく弾けている。そのリズムが彼らの腕に、スティックに、スネアに大太鼓にシンバルに伝わって、大きな花火が上がっていく。その勢いと爽快感に、読んでいて心躍らされるのだ。 それにしても、青春小説の主人公になるには、やはり家庭に問題がなければダメなのかな・・・。 書きたいことはいっぱいあるんだけど、書いてたらネタバレにもなりそうなので、とにかく面白くさわやかな気分になったことだけお伝えして、この文章を締めたいと思うのです。 |
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「ブロークン フラワーズ」を観る(06.5.5) |
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どちらから褒めようか・・・。監督?役者? どっちもとても好きなのよ。監督ジム・ジャームッシュと主演ビル・マレー。どっちとも高校〜大学の頃に影響を受けたんだよなぁ・・・。 ではジム・ジャームッシュについてから。最初の画を観たとき、「変わらないなぁ・・・」と思った。デジタル技術が発達し、画面の鮮度がことさら向上している昨今、ざらついたフィルムの質感が20年ほど前に観たジャームッシュそのままで、古き良きって訳じゃないけどとても安心できる質感だった。そして心温まるほんわかムードのロードムービー風な創り。そんで、年老いたプレイボーイに旅をさせるところなんか、実に痛快。あれから20年。本編でも重要となる年月は、ジム・ジャームッシュ自身にとっても重要な年月なのだ。 そしてビル・マレー。言わずと知れた喜劇役者。『サタデーナイトライブ』でもベルーシやチェビーチェイスの陰に隠れがちだったけど、今となっては一番出世か。とにかくとぼけた感じながらも、老いた色男の哀愁が滲み出てるんだよね。すごいよ。日本で言うなら・・・伊東四朗? 差出人不明の手紙に書かれた「20年前に別れた後に生まれた19歳になる息子」。差出人を探しに、20年前に別れたた恋人達に会いに行く主人公ドン。そこで彼が見るそれぞれの20年という年月。それはシビアでもあり残酷でもあり、微笑ましくもあり。そしているかどうかも判らない息子への愛情が・・・。 面白かった。シチュエーションがや仕草が笑わせてくれ、涙をも誘う。上手いなぁ。 自分なら・・・。ふとそう考えてしまった。残念ながら色男ではないので、そんなに付き合った女性も多くないんだけど、今の自分が恥ずかしくて会いに行けないなぁ。彼女たちがあきれて離れていく原因となったであろう性格が、そのまんまなんだもん。お恥ずかしや。 質のいい笑いと心温まるドラマ。良かった。 |
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吉村達也「家族会議」を読む(06.5.1) |
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最愛の妻が急死してしまった男。残された2人の息子と妻の母との暮らしの中で癒しを求め、再婚を望んだ男の前に立ちはだかったのは、かつて亡き妻と定めた家族のルール、家族会議だった。オトナの意見を正当化するために自らが設けたルールに翻弄されていく・・・。 スピード感のある小説だった。主人公の気持ちの変わり方がそのスピードに表現されているかのように。それと、主人公が自らを肯定するために自らにする言い訳の面白さは絶品である。 しかし、そのスピード感のせいなのか、終焉も物凄いスピードで、突如として訪れる。そして、あっけなくエピローグに突入してしまう。なんだかとてももったいない。 オチはビターで効いているんだけど、あっけに取られている状態でオチを言われても・・・。 ってことで、実に惜しい物語だったかな。 |
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「プロデューサーズ」を観る(06.4.29) |
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いやいや、面白かった。知的で計算された笑いが随所に散りばめられていて、それにコミカルな歌と踊りがあいまって、終始笑える映画だった。 舞台はSHOWビジネスが全盛ながらも、まだどこか胡散臭さを残していた、古きよきアメリカ。日本でもよく耳にするようになった『粉飾決済』をすると、当たらないSHOWの方が儲かると気付いた会計士とプロデューサーが、絶対当たらないミュージカルを作ろうと奮闘する物語。 最初に気付いたのは、フィルムの色使い。いかにも昔の『総天然色』と銘打たれてた頃のような色と質なのだ。そこからして古きよきアメリカが表現されている。その中でドタバタする、SHOWを失敗させるために集められたあまりにも滑稽な登場人物に笑え、SHOWの成否にドギマギする2人に笑え、稚拙な恋に笑え。笑いどころ満載なのだ。 『オペラ座の怪人』『シカゴ』を超えたかどうかは観る人それぞれなのだろうけど、これほど笑えたミュージカル映画をぼくは他に知らない。 GW初日、幸先がいいよね。 |
artな戯れ言MOVIE |
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田口ランディ「富士山」を読む(06.4.26) |
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富士山を見つめながら、富士山に見守られながら生きる人々を描いた短編小説集『富士山』を読んだ。北海道にいると富士山の持つ力強さ、富士山に寄せる人々の想いなどはわかりづらいのである。でも、就職して上京してた頃は富士山の存在をぼくも意識していたと思う。ビル街の向こうに見える富士山、中央道の行くてを阻むかのようにそびえる富士山。館山の海水浴場で東京湾越しに見た富士山にはただただ驚きだった。 なので、富士山に依存するとまでではないが、絶えず富士山を意識して生きている登場人物たちの気持ちはなんとなくわかる気がする。そして、富士山の持つ生命力が彼らの『生きる』に大きな影響を与えていることも。 田口ランディの描く『生きる』は実にクセのあるもので、毎回ある種異様とも思える『生きる』感に首をひねりながら読んでいたんだけど、今回の連作で登場する『生きる』は富士山効果もあり、少し共感しながら読むことができたかな。 改めて間接的ながらも富士山の凄さを感じた一冊だった。 |
artな戯れ言BOOK |
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野村萬斎スピカスーパー狂言ライブ
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やっぱりこの男はすごいのだ。伝統に胡坐をかくことなく、いかに楽しませるか、いかに現代に馴染ませるかを考えている。こんなことこのHPで何度も書いているとは思うんだけど、改めてそう感じた。 今回の会場はホール。しかも大きなスクリーンを持つ。これを生かした、映像を駆使した狂言が演じられた。曲は『墨塗』と『弓矢太郎』。どちらもタイトルにあるとおり、うそにまつわる曲である。『墨塗』は演者のアップをスクリーンに映し出すことにより、曲の効果を際立たせ、『弓矢太郎』ではCG映像を映し出すことで臨場感を高める。『弓矢太郎』は過去に劇場効果をふんだんに使った劇場狂言でも観たことがあるが、効果が倍増されたような感じがした。他にも彼の実験的狂言は過去に数作観たが(いずれもHPにアップしているので探してみて)、今回のはそのどれとも違った趣きで、少しばかり反則技も入ってはいるけど、能楽堂では味わえない楽しさを満喫できたのだ。『弓矢太郎』は明るい能楽堂では雰囲気でないもんなぁ。 いやはやそれよりも驚いたのが、野村萬斎のスケジュール(こちら)。なんだ?この過密日程は・・・。いつ今回の演出や映像を手掛けたの?そして、今回のような試みは他ではやらないの?これって使い捨て? なんとも美味しい狂言ライブだった。 |
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「三人の侍〜旅情編〜」を観る(06.4.18) |
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Char(竹中尚人)と民生と山崎まさよしでござる。豪華な顔ぶれのユニット・三人の侍でござる。言うまでもなく、カッコいいんでござる。ギターでハートを滅多斬りでござる。 オープニングアクト(前座くノ一)がアナム&マキでござる。まだ明るい会場で三曲熱唱でござる。しかもバックはギターのみでござる。3曲目、中島みゆきのカヴァー『ファイト!』を聴いたらもう、うるうるものでござる。 そんでもっていよいよ三人の侍登場でござる。やはりギターのみで和洋の名曲をカヴァーするでござる。3本のギターが紡ぐ濃密な音に酔いしれるでござる。Charの渋み、民生の実直、山崎まさよしのうぶさ(?)にやられるでござる。 ソロパートの入り、民生渾身の(?)『冬のソナタ』には笑わされてしまうでござる。 とにかく「すごい」の一言でござる。アンコール以外座りっぱなしだけど、みんなノリノリのオトナのLiveなのでござる。最高のひとときを堪能したでござる。 彼らが札幌のイベンターに捧げたオリジナル、札幌ネタ満載で面白かったんだけど、サビは『Tuu−Fuu!』の大合唱。いままさに足が痛いぼくには苦笑いかな。 |
artな戯れ言LIVE |
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いしいしんじ「トリツカレ男」を読む(06.4.11) |
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そりゃもうおどろいたね。だってすごく薄っぺらい本なんだぜ。本屋でパラ見したら行間がものすごく広くてさ。これならなにも考えずに早く読めるかなんて思っちゃった。それが購入のきっかけかな。ハズレてもダメージは少ないだろうって。 読んでみたらやっぱりかと思ったね。主人公のジュゼッペってやつがとても奇妙なトリツカレ男でさ。いつもなにかに夢中で、それ以外は考えられなくなっちゃうんだから。気付いたらプロをも凌ぐ腕前の持ち主になるんだぜ。街のみんなも「またジュゼッペが・・・」なんていいながら、暖かく見守ってくれるんだ。まったく馬鹿げてるよ。 でも、読み進めると趣きが変わってくるんだ。ジュゼッペの相棒ハツカネズミが登場してから。ハツカネズミがジュゼッペのよき理解者になることで、ぼくらとジュゼッペの距離を縮めてくれるのさ。 そしてマドンナ・ペチカ登場。そこから先は自分で読んでくれよ。ぼくなんか胸をうたれっぱなしさ。ちょっと照れくさいけど、ジュゼッペの純粋無垢さにやられてる。広い行間にジュゼッペの気持ちがいっぱい詰まってるんだ。なんて素敵な小説だろう。これはぜひお薦めだね。いや、絶対かな。 芸は身を助く・・・かな。 以上、この感動を『トリツカレ男』の作風で記してみました。 |
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ヒキタクニオ「消し屋A」を読む(06.4.8) |
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他人の戸籍を購入し、名前を変えながら各地を転々として消し屋家業に励む幸三。とは言えこの幸三という名前も、彼が名乗ってきた幾多の名前のひとつでしかない。若かりし頃の別の名前のエピソードは『狂気の桜』にあるんだとか(解説によると)。確か右翼に傾倒していく若者達の話だよね。窪塚洋介や須藤元気で映画化した・・・。読んでも観てもいないけど。 なにが言いたいかというと、予備知識も何もいらずに楽しめるということ。『消し屋』とはありていに言うと『殺し屋』なんだけど、ゴルゴみたいに殺せばいいというのではなく、『必殺』みたいに情で動くというわけでもない。幸三の美学は彼が殺める死には事件性すら感じさせないということ。それは偶然の事故みたいに・・・、本人が望んだ失踪のように・・・。存在が社会から消える。だから消し屋。なんとも面白いではないか。 そして今回彼が受けた依頼は、殺さずに1試合だけプロ野球の看板選手を消すこと。果たして彼はそんなことどうやってやってのけるのか? 本題の面白さもさることながら、幸三の嗜好(同性愛)から生まれるエピソードや、「これは別の物語として発表できるんじゃないの?」と思ってしまうほど完成度の高い手本引きのエピソードなんかがてんこ盛り。なんともお得で面白い。 ヒキタクニオという作家のくすぐり・遊び心を堪能してみてはいかがでしょうか。面白いですぞ。 |
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一青窈「Yo&U Tour'06」を観る(06.4.5) |
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一青窈の色、一青窈の味ってなんだろうか・・・。 2年ぶりに観た彼女のライブ。彼女の試行錯誤が色濃く出ていたと思う。 不勉強で申し訳なかったのだが、彼女の新譜は聴いていない。楽曲にRock色が強まったと何かの記事で読んだっけ。今回のライブもそこのところを強調した構成になっていた。独唱(?)で始まって、2曲目からアップテンポナンバーに。そこですかさず「札幌のみなさん、立ってくださ〜い!」。そこは相変わらずかよ。 そのパートが終わると、あとは座って楽しむライブに戻ったんだけど、全体的にリズム隊(ドラム&ベース)が強く響く編曲。そこにRockを見出したかのような。でも、重低音が響くほど、彼女の声が届きにくくなる。彼女の言葉が伝わりにくくなる。 一青窈の色、一青窈の味。ぼくは彼女の声を媒介して伝わってくる、彼女の感性が紡ぎだした言葉だと思う。その大切な部分が伝わりにくくなってしまったことは非常に残念。大好きなアップテンポナンバーを期待してライブに行ったら、アコースティックヴァージョンで演奏されて、ガッカリしたことってあるじゃない。その逆。『もらい泣き』が激しすぎてもらい泣けない。 脱マンネリ化なのかもしれないけど、いい曲は無理に手を加えなくっても残れるんだから、突き進んで欲しい気もするのよね。 でも、いいライブだったよ。脚がきれい!おそらくメガネをかけたら・・・。 2年前にもらったハナミズキ、元気に育ってます。 |
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「シリアナ」を観る(06.3.29) |
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気の抜けない、観る者に緊張感をもたらす映画だ。なにせシーンがあちゃこちゃ飛びまくるので、追うだけで大変なのだ。同時多発的にコマ切れにザップするシーンたちを記憶にとどめ、徐々に明らかになるつながりに納得しなければならないのだから。でも、そこがスティーブン・ギャガンの脚本の面白いところかな。『トラフィック』同様。 中東・アメリカ・スペインを飛び回り、CIAと連邦裁判所と石油会社と王家とイスラム社会が入り乱れる。石油という利権を争奪するために、理想も人権も何もかもを踏みにじりながら。暗殺・テロ・戦争を繰り返しながら。 この映画をアメリカが作ったこと、ジョージ・クルーニーがプロデュースしたことに拍手を送りたい。それは簡単なことではないだろうから。しかも、大増量までして。 観終えた瞬間、放心状態になった。緊張感から開放されたことと、核心に近づいたような高揚感から。それだけすごい映画だったということ。う〜ん。 疲れるけど、面白い! |
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大崎善生「パイロットフィッシュ」を読む(06.3.21) |
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「紀伊国屋書店担当者のイチ押し!二押し!!」ってことだったので、読むことにした。「至高のロングセラー青春小説」とのこと。確かにすんなりハイペースで読むことができた。とても読みやすい。でも、読むのを中断するたびに早く次を読みたいという衝動が起きることはほとんどなく、そんなに抜けてくのも早い小説かな。抑揚に乏しい、抑えたクールな文章がそうさせているのか、客観的に自分を、過去を振り返ることができるようになった余裕が足を引っ張っているのか。荒波の真っ只中にいなきゃ、臨場感は湧かないのと同じかな・・・なんて考えたりした。 40歳のエロ本編集者が記憶や人の繋がりを、深夜にかかってきた若き日の友と恋人からの電話で思い考え、自分の中で整理していくという物語。ぼくも主人公と同じ年代なので、もうちょっと感情移入するのかなと思ったけど、前述の理由のためかいまひとつ。ある意味読者に優しい小説なのかな。 でも、今は会わない人とも繋がっている、影響を受け続けているという主人公の言葉は、とてもよく理解ができた。大切なことに気付かされたのかもしれない。 |
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バナナマン傑作選ライブ
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バナナマンが好きなのだ。お笑いコンビ。ゴールデンにはあまり登場しない。でもすごく面白いのだ。突き抜けて売れる芸人って、華があるとよく言う。光り輝いてるってイメージがあったり。バナナマンは色白なんだけど、光っているんだけど、翳を併せ持っている。日村の得意な容姿と設楽のウラ番的な雰囲気がなせる技なのか。『妖しい』って言葉がよく合うというか。そんなコンビ、なかなかいないじゃない。太陽じゃなく月みたいなコンビ。 そんなバナナマンの傑作選ライブが札幌であったのだ。実は去年の夏にも札幌でライブをやる予定だったんだけど、残念ながら中止になったので、ぼくにとっては待ちに待ったうれしいライブ。のっけから『妖しい』全開。二人のシルエット姿だけで大笑いし、幕が開いてからの出で立ちに咳込みまでしてしまう。 『妖しい』んだけど、情緒が溢れてるコントたち。速さとキレだけでなく、ぬくもりまでも感じさせる。でも、決して『癒し系』じゃないんだな。やっぱりそれは『妖し系』。 TVの尺や輝度では伝わりきれない彼らの面白さが詰りに詰まったライブだった。 日村演じる『後藤さおり』、いるよいる、そんな女の子。その個性、素晴らしい。それを引き出す設楽の作家・演出家センスにも脱帽。 〜光だけが光じゃないことだけは、太陽より知ってる〜 そんなバナナマンがますます好きになったのだ。 |
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「ビジョメガネ」「ガールズメガネ」を読む(06.3.18) |
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『萌え』だなんだで昨今めがねっ娘人気が急上昇だそうで。ぼくは時代に流されることなく、めがねっ娘が大好きで、メガネをかけている女の子を見るたびに、ほくそ笑んだりしている。 そもそもぼく自身、6歳のころからメガネをかけ続けている、今で言うところの『メガネ男子』なのだ。誰もそうは呼んでくれないけど。密かにメガネお洒落を楽しんでいる者として、同じ感覚を持つ女性を見ると、うれしくなるというわけ。安くてお洒落なフレームがいっぱい売られ、メガネがお手軽なアイテムになったのを受けて、街にめがねっ娘がいっぱいいる。うれしい限りである。 そんな時代を反映してか、『ビジョメガネ』『ガールズメガネ』なる写真集が売れているということで、早速購入したのだ。 まずは『ビジョメガネ』。人気の女優やアイドルにメガネをかけさせるという雑誌の連載企画を1冊にまとめたもの。ただでさえかわいい女の子にメガネをかけさせるんだもん、マニアにはたまりません。総勢16人の女の子のメガネ顔が楽しめます。個人的には麻生久美子さんと上野樹里さんに見とれてしまう。特に麻生久美子はただでさえゾッコンなんだから、メガネをかけるなんて反則ですよ。いや、うれしすぎですよ。今回は掲載されなかったものの、連載に登場した女の子もたくさんいるみたいで、個人的には田中麗奈さんと相武紗季さんと酒井若菜さんが見たい!あと、写真のサイズを小さくしていいから、もっと多くのカットを掲載して欲しいなぁ。 続いて『ガーズルメガネ』。こちらはみんな素人さんのようで。これがメガネの本領発揮・・・といいましょうか。素養に差があっても、かわいいといいましょうか。ピンきり感は否めないけれど、街で見かけるめがねっ娘がいっぱいです。惜しむらくはメガネが単調なこと。みんなプラスチック系の大きめレンズで統一されてるんだよね。メタルフレームや小さいレンズにもお洒落なものはいっぱいあるんだから、もっと選択肢を増やせばいいのに。お洒落アイテムのひとつとしてクローズアップしているわりには、その素晴らしさをだしきれていないぞ。桜坂洋氏の書き下ろし小説『サーティースリー・マイナスマイナス・ドットドット』は、委員長の見せる意外な一面・・・的な清々しいSTORY。40代のイメージするめがねっ娘だよなぁ。 内気で真面目な女の子だけがめがねっ娘じゃない。アイテムとして楽しむ女の子が増えることで、メガネのイメージがもっと変わって、ぼくがニンマリできる機会がもっと増えればいいなぁ。 |
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「県庁の星」を観る(06.3.12) |
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織田裕二の映画はついつい観に行ってしまう。なにを観ても青島くん(『踊る大捜査線』)を思い浮かべてしまうんだけど、今回は前半が司馬先生(『振り返ればやつがいる』)で、後半が青島くんだったかな。織田裕二は青島くんから脱却できないから、安心して観に行ける・・・本人にしてみれば痛し痒しかも知れないけれど、安心感のある役者はそういないんだから。田中邦衛とか・・・。計算しているとしたら・・・。 ぼくら民間にしてみればお役人さまは・・・って感覚、そんなにないんだよなぁ。仕事柄、お付き合いする機会が多いんだけど、あんなエリートぶった人には会ったことがない。きっと本庁の中に入るんだろうなぁ。それにしても県庁ってどこも立派だよね。 原作が先か、映画が先かで映画派を宣言したくせに反則なんだけど、柴咲コウ演じるパートさんの原作での設定を知っちゃったんだよね。だから、ついつい先入観が働いちゃって、柴咲コウを素直に観られなかった。でもね、そのうち柴咲コウが梶芽衣子に見えてきてさ。なんか納得したりして。 青島くんの上に予定調和なので、ホント安心して楽しめた。そのくせちょっぴりビターなラストも好印象。みんながこんな意識を持てば、日本はもっといい国になるんだろうになぁ。 ホントの県庁さん、道庁さんは観てどう思うのかな? |
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あさのあつこ「The MANZAI2」を読む(06.3.10) |
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第2巻である。中学生ながらも逃れることのできない過去を持ってしまった少年・歩が、転校先で出会った同級生・貴史に漫才コンビを組もうと誘われる青春小説である。第1巻ではなぜ人気者の貴史が漫才?と、歩むも読者も思っていたんだけど、少しづつ明らかになるのだ。そして、歩の心の中で何かが動き始めるのだ。陸上トラックに入場したのが第1巻で、スタート位置について今まさに号砲がなろうかとしているのがこの第2巻。連作がいよいよ走り始めるのだ。 第1巻を読み終えたとき、ぼくは明らかに勘違いをしていた。この小説は歩と貴史の小説だと。二人の少年の物語だと。でも、第2巻を読んで間違いに気が付いた。軸こそ歩と貴史だけれど、これは彼らを囲む仲間の物語なんだ。少年だけじゃない。逸脱した文学少女や凛とした美少女も含めた、仲間の物語だと。 歩の言葉(気持ち)にすごく共感を覚えた。 「みんなといることが楽しい。もしかしたら、ぼくも幸運なのかもしれない」 いつも終わってから気が付くんだ。一番楽しく、一番美しい時間のことを。いつかは終わってしまう時間なんだけど、リアルタイムではその大切さに気付かずに、終わった後で懐かしむばかりで。でも、歩は気付いたんだ。それがどれくらい素敵なことかを。なんとも羨ましいことか。 そして貴史の言葉。 「だって、おかしくて笑ってるときに、人を傷つけたりはせんやろう」 ちくしょう。素敵な小説だ。 |
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小川洋子「博士の愛した数式」を読む(06.3.2) |
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映画『博士の愛した数式』で深津絵里があまりにもキュートだったから、いやいや、心温まる物語だったから、原作本も読んでみた。こちらもまた、心温まる物語だった。 映画のような優しさに加え、小説には博士のおかれた「記憶が80分しか持たない」という現実の厳しさが描かれている。それは少しせつなくもあるけれど、当然必要な記述であり、作者が書き手にも読み手にもリアリティを失わないようにと考えていた成果だと思った。その平衡感覚、すごいなぁ。 映画ではぼくたちの想像力に一任された情感が、小説によって謎解きのように明かされていく。まるで数学の証明問題の答えを見るように。そんな感じがした。それは主人公の一人称で語られる構成によるところもかなり大きいと思う。 でも、語り手を母から子(ルート)に置き換えた映画の構成力も素晴らしかったよ。数字を語るところはただの回想じゃわかりづらいもん。脚本家さん、ナイスでした。 映画では語られなかった(語ることのできなかった)エピソードが、読んでいてキラキラしてた。ナイター照明で照らされた野球場、江夏のプレミアカードを探す母子、別れを予感させる歯医者の帰り道。確かにアナザーワールドが広がっていた。 最終結論としましては、映画・小説ともに良い作品だった・・・ってとこでしょう。 |
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奥田民生「Cheep Trip 2006」を観る(06.2.28) |
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そんな野郎に応えるかのようなライブだった。民生にとっての助さん格さんことDr.Strange Loveがいなく、うっかり八兵衛ことDrsしったかがいない。ベースは熟練の小原礼が、ギターは民生1本で勝負。音の厚みが減った分、民生渾身の骨太ギターソロを存分に聴くことができたのだ。ぶっきらぼうで女子をけん制するトークといい、ギターソロといい、野郎どもは『く〜ぅっ』ときたに違いない。 新譜を引っさげてのツアーでない分、過去の名曲がオンパレード。なんとも美味しいライブではないか。新曲(発売日未定)『すすきのブルース』『オーバー ザ K点』(いずれも仮称)も聴けたし、陽水のカヴァー『最後のニュース』、ユニコーンのラストシングル『すばらしい日々』までも。 なにより心に響いたのがミスター・ギブソンこと民生が生ギター1本で歌った『CUSTOM』。この曲の「伝えたい」という歌詞と想いがストレートに伝わってきて、すごくすごく胸が熱くなった。名曲。 当然ながら『さすらい』や『マシマロ』があって、アンコールの大ラスは『イージュー★ライダー』の大合唱。ぼくの十八番であり、とっても大好きなこの曲。39歳の歌い初めが民生と、そして民生を愛する多くの人たちと一緒であったことに感動。 いいライブだった。うん、うん。 |
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恩田陸「ねじの回転 上・下」を読む(06.2.20) |
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恩田陸のタイムトラベルもの。しかも舞台は昭和近代史の謎『二・二六事件』。その昔、澤地久枝の『雪はよごれていた』を読み、不可解な事実と青年将校たちの無念を感じていただけに、学校では習わない日本の近代史を作者がどう描くのか興味津々で読み始めた。 う〜む、そうきたか。最近のタイムトラベルものは構造を多重にし、物語に厚みを持たせるものが多いけれど、多重構造・行きつ戻りつが前提となる小説できたか。しかも、タイムトラベルモノの大前提、『過去を変えてはいけない』を覆して。 二・二六事件が日本の歴史の、世界の歴史の分岐点になったと考える人はどのくらいいるのだろうか。前述の通り、日本史の授業における近代史の位置づけは、3月に入り授業日数も少なくなって、時間がないからはしょる的なポジション。謎が多いだけに、史実が既にミステリアスなだけに、小説の舞台にはもってこいなのかも。 本文の中には現在・過去・未来・現実・記憶・夢・抽象が入り乱れる。それは暗示であり、警告であり、答えであり。謎の多い史実の中の物語にさらに疑問を投げかける。一体どれだけ読者を惑わせれば気がすむのですか? 多くの作品で日本陸軍の奇人であったり蛮勇として登場する石原莞爾が、それらと異なり印象的に描かれているのが特に目をひいた。 きっと、すべての答えを理解した後でもう一度読み直してみると、面白さも倍増なんだろうなぁ・・・。面倒なのでなかなかやらないけれど。 秀作です。 |
artな戯れ言BOOK |
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「シムソンズ」を観る(06.2.19) |
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ぼくが今、トリノ五輪ですっかり夢中になっている女子カーリング。大活躍しているサードの林さんとスキップの小野寺さんがかつて所属していたソルトレーク五輪代表チーム・シムソンズをモデルにした映画『シムソンズ』が公開されたとなると、観に行くでしょう。 決して伝記的な映画ではないので、事実とは違う点も多々あるんだろうけど、『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『リンダ リンダ リンダ』に続く青春ムービーの王道を行く作りとなっている。弱いのよ、おじさんはこのテの映画。人集めの困難、素人集団、仲間割れ、コーチの過去、重鎮の存在・・・。おおっと、要素を挙げるだけでネタバレになってしまいそうな。でも、それを気にさせず押し切れる清々しさがこの映画には詰まっているのだ。 ホタテとたまねぎと流氷ソーダとカーリング。オホーツク海に面した常呂町(現・北見市)の素朴さをふんだんに詰め込んで、少女たちの若さが、大人たちの温もりが広がっている。青春ムービーって都会じゃ成立しないのかな。気を惹くものが多すぎて。 北海道のキラ星・大泉洋がいい味出してる。今や中央お笑い界のいじられ役に定着しているけど、素朴な道産子やらせたらピカ一だね。 今日(イギリス戦)も大活躍の小野寺さんと林さんをモデルにしたのは映画『シムソンズ』のどの役だったんだろうか?名前だけ見たら小野菜摘(高橋真唯)と林田史江(星井七瀬)なんだろうけど、かつての天才少女・尾中美希(藤井美菜)はシムソンズのスキップで長野五輪にも出場した加藤章子さんのようだし。ちなみに実在のシムソンズのあと一人は小仲美香さん。ちょっとづつ名前を変えてずらしているみたい。主人公・伊藤和子(加藤ローサ)が小野寺さんのような気がするなぁ・・・。 ソルトレークシティからトリノまでの話もなんかいろいろありそうなので、そこら辺も続編で作ってくれたらうれしいんだけど、どうなのかなぁ。 とってもタイムリーで話題先行だけじゃなく、楽しくて心温まるいい映画です。トリノでカーリングを応援している人には特にお奨め。 |
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「スキージャンプ・ペア〜Road to TORINO 2006〜」を観る(06.2.10) |
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これは究極の観る者を選ぶ映画だ。 大ヒットDVD作品『スキージャンプ・ペア』。その一見奇抜な架空の競技が生まれるまでの背景をドキュメントタッチで描いたのがこの映画。まずは『スキージャンプ・ペア』という競技を認識しなければ、知らなくとも受け入れるだけの許容がなければ、この映画を楽しむ資格は生まれない。っていうか、観ても面白くないだろう。心にゆとりとお馬鹿に対し広い許容範囲を持つ人のみが楽しめる映画なのだ。キネ旬の会員なんかが観たら、『これは映画とスキージャンプへの冒とくだ!』と怒りかねないのではないか。 そんな了見の狭い人はほっといて、正直笑い転げた。北海道中央テレビ(当然架空)制作のドキュメントを土台に(当然そんなものなくすべて新作)、スキージャンプ・ペアの生みの親で正式競技化に奔走した北海道工科大学(もちろん架空)の原田敏文教授(やっぱり架空)と、初のペアジャンパーとなった教授の双子の息子(いるわけないじゃん)、世界各地のペアジャンパーたちが描かれている。スキージャンプ・ペアの礎となる原田教授の提唱した『ランデブー理論』なんて、チューチューキャンディーの進化論だぞ。『ミレニアム108』で闘魂注入だぞ。競技中に選手が消えて、『バミューダ事件』だぞ。これを笑わずにはいられないだろうがっ! そんなお馬鹿な数々を真面目に演じる役者陣と、真顔でドキュメントをナビゲートする平成の色男・谷原章介。君たちは最高だぜっ!ドイツの皇帝・ヴィドヘルツルのもみ上げとクロ豹はイメージどおりだったぞ。 この映画はDVDシリーズをよりディープに楽しむための必須プログラムだ。映画からDVDに入っても面白いに違いない。『THE有頂天ホテル』みたいな普遍的な面白さはないけれど、お馬鹿を純粋に楽しみたい人は必見ですぞ。 |
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村山由佳「星々の舟」を読む(06.2.6) |
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直木賞受賞作か・・・。ほとんどそれだけで内容を確認せずに購入。読み始めて違和感を感じた。率直に言えば、『他人の不幸は蜜の味』。家族の赤裸々な部分を綴って読者に問いかける。それはアリか?家族みんながそれこそ小説になるような・・・事実だと重すぎるけど、小説としてはありきたりな問題を抱えている。なにか切り貼りの印象を強く感じる。 読んでいる間、次の展開が気にはなるものの、他人の秘密を覗き見しているようで、気まずさと後味の悪さが残る。それでも最後まで読破したのは作者の腕のなせる技か。 そして、最終章の父・重之の戦争にまつわるエピソード、家族感を読み終えたとき、胸の痞えがコトリと落ちた気がした。腑に落ちたわけではない。でも、この小説を読んでよかったかなと思えた。最終章がなければ、ぼくはこの小説を嫌悪感を持ったまま読み終えたことだろう。 上手くは言えない。決して楽しい小説じゃないし、激しく共感することも・・・一部の人を除いてはないだろう。でも、最終章のための前フリだと思えば・・・。 そんな感じです。ぼくには。 |
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「博士の愛した数式」を観る(06.1.31) |
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誰がなんと言おうと、深津絵里。深津絵里のための映画だと、ぼくは断言するのだ。TVドラマで見る勝気な深津絵里に少しマンネリを感じていたけど、今回の深津絵里は素敵すぎる。穏やかさの中に芯の強さがあって、スクリーンに釘付けになってしまった。深津絵里が毎日来てくれるなら、ぼくの記憶も80分しか持たなくっても・・・。いやいや、来てもらうだけの財源がないや。 朴訥とした映画。大きな事件があるわけでもないんだけど、博士にとっては80分の繰り返しなのかもしれないけど、その時間の永遠さに浸れることができる映画。「20年前の別荘地にそんな洒落た喫茶店はないぞ!」ってツッコミを入れたくもなったけど、大切なシーンでハエが博士にたかっていてもカメラを止めず、修正も入れなかったところに、朴訥さとリアリティを感じることができたかな。 それにしても、朴訥な青年の代名詞・吉岡秀隆、この映画でも力を発揮しておりました。しかし、役者としてはあればっかでいいのかなんて勝手に心配したりします。風俗通いする吉岡秀隆、ヤク中・アル中の吉岡秀隆も見たいなぁ。 とにもかくにも、深津絵里の魅力が満載の上に物語もよい、ファンには最高の映画だった。 |
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「THE 有頂天ホテル」を観る(06.1.21) |
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三谷幸喜、正月から飛ばしてるなぁ。『新選組!!』の続編に『古畑任三郎』のラスト、舞台『十二人の優しい日本人』。そして監督三作目の『THE 有頂天ホテル』。 これは三谷作品の集大成ですぞ。正直、やり過ぎというほどのプロモーションを鵜呑みにできるほどの大爆笑はなかったけど、上質な笑いと三谷作品のエッセンスがすべて詰まった作品だ。エピソードのひとつひとつが「あの作品のあの部分・・・」って感じで。それを再構築して、ごった煮にして、キッチリ収めて笑わせる。作家の才能もさることながら、プロデュースの才能に長けてなくっちゃこうはいかないよなぁ。 三谷ファンだから周りより早く笑いに気付くってところが多々あって。オチの前に「あっ、これっ!」て気付いて笑ってしまう。予測笑ってヤツかな。ぼくだけが笑っていると、ちょっと優越感だったりして。 あて書き(役者に合わせて脚本を執筆)してるだけあって、豪華なキャストを思う存分に操って笑いに結び付けている。これもまた、三谷作品ならではの特徴であり、三谷幸喜にしかできない技だよなぁ。うらやましい。 個人的には戸田恵子がすごく良かった。そばにいて欲しいくらい。FAIRCHILDファンとしては、YOUの歌声を久々に聴けたのも嬉しかったかな。 高島彩の登場シーンが一番うけてたのは、『めざましテレビ』効果だよね。 次はどんな笑いでぼくらを楽しませてくれるのか・・・。早くも次回作が楽しみです。でも、過剰なプロモートは必要ないですよ。 |
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あさのあつこ「バッテリーW」を読む(06.1.19) |
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いやいや、児童文学界の松本大洋とぼくが勝手に呼んでいるあさのあつこの名作第4弾です。トラブルに巻き込まれながらも投手は己の、捕手は投手の力を信じて上を目指しているバッテリーに、挫折が訪れるのです。互いが信じた力が理由の・・・。 むかうところ敵なしのようなバッテリーなのに、バッテリーだからゆえの挫折。伴宙太は根性と特訓で乗り越えた挫折。でも、実際のところ精神論だけでレベルアップできるわけはなく、限界を感じてしまうから精神的なダメージが大きいわけで・・・。いやはや、よくぞそんな試練を作者はこのバッテリーに与えたものだ。そんな試練を思いつくなんて、一体この作者の脳ミソはどんなもんなんだろうか・・・。なにか経験があるのでは?と勘繰ってしまう。 面白いだけにすらすら読めてしまう。しかも、行間がたっぷり空いている上に薄いんだもん、あっという間。このシリーズ、単行本では第6弾で既に完結している。ならばまとめて一冊で文庫化してくれよ!じらすなよ!W〜Yを一冊にしたって、『神様のくれた指』よりボリュームはないだろうがっ!こんな暴言も、面白いがゆえに吐ける言葉なのです。 ただ・・・。文庫書下ろしの『空を仰いで』はいただけなかった。ネタバレだけど、主人公の二人が実は幼い頃に既に会っていたっての。あまりにもありふれていて。祖母と孫の生命の対比を、枯れ行く冬が終わり生命の芽吹く春という季節で描くという情感は理解するけどさ。 ってことで、回り道も回想もいらないから、巧みの投げ込むストレートのように、第5弾・第6弾をビシバシ文庫化してください。単行本は読まない主義なので・・・。腕が痛くなるから。 |
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佐藤多佳子「神様がくれた指」を読む(06.1.12) |
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いやいや、これ面白かった。昨年末から読み始め、すごくボリュームがあったのと、ぼくの読書の時間があまりなかったことから、読破に時間がかかったんだけど、途中でダレることもなく読みきることができた。しかも楽しく。 ムショ帰りで職人気質のスリと女装の占い師の二つの視点から物語りは描かれている。 職人気質としてゲーム感覚のスリを許せず、復讐を誓う男と、別世界に触れて自分を見つめなおす男。生い立ちも性格もまるで違う二人の想いの差がアクセントとなって、面白いストーリーをさらに楽しくさせてくれる。 なんだろな。この面白さを上手く表現できない。とにかく読んでみてとしか書けない。ぼくが物書きになれないのは、そこの表現力が足りないからなんだろうなぁ。 この本を読んでいる途中から、地下鉄の中で妙に鞄やポケットを気にするようになった。スリに狙われてはいないだろうか?カモと呼ばれてはいないだろうか?自意識過剰すぎなんだけどね。 |
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「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」を観る(06.1.2) |
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いよいよ核心に入ってきた第4弾。小説を読んでいるわけじゃないんで、今後どうなるのかはわからないけど、今回は過去3作のエピソードが少しづつ交錯したり、あのお方も・・・。 なんだろう・・・。率直な感想は詰め込みすぎ。恋愛・友情・魔法大会・出生の秘密。全部観せようとするから中途半端に終わっている。なにもそこまで欲張らなくても・・・。小説もこうなのかな?それとも尺を合わせるために無理が生じたのかな? これは日本人の感覚なのだろうけど、ラドクリフくんどう見ても14歳には見えないよなぁ。新聞記者に12歳とからかわれるくだりは『???』だったし。おかげでハリーのライバルとなるセドリックやクラムが17〜18歳には見えず、成人男子って感じだったもん。んで、クラムがハーマイオニーにお熱になってるのがロリコン野郎に見えちゃうし。 ただ、これから続く全7作(で完結するんだよね・・・?)の折り返し地点としてみれば、今後への期待も膨らむ仕上がりにはなっていたけどね。 シリーズとしては重要な位置を占めるだろうけど、単品としてはかなり不満な第4弾でした。 今年一発目は辛口でした。 |
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